ASUSゲーミングモニターは、OSD(モニター本体の設定メニュー)に「GameVisual」「Shadow Boost」「Trace Free」「ELMB / ELMB Sync」「GamePlus」など、ゲーム向けの調整機能が多く搭載されています。一方で、モニターの性能を最大限に引き出すためには、OSDだけを整えても十分ではありません。実際の表示品質や滑らかさ、遅延感は、PC(Windows)側の出力設定やGPU(NVIDIA/AMD)側の設定、さらに接続端子とケーブルの条件に大きく左右されます。
特に多い失敗は、次のようなケースです。
せっかく240Hz対応モニターを買ったのに、Windows側が60Hzのままになっている
VRR(可変リフレッシュレート)を有効にしたつもりが、GPU側で無効になっている
Trace Freeを上げ過ぎて逆残像(輪郭の白いにじみ)が出ているのに、原因が分からない
ELMB系をオンにしたら暗くなった/HDRと同時に使えず混乱した
GamePlusの十字線が消えず、故障と勘違いする
本記事は、こうしたつまずきを避けるために、設定の順番と用途別のおすすめ設定をセットで提示し、短時間で「自分の環境で再現できる」ことを重視して解説いたします。
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ASUSゲーミングモニター設定で最初に押さえる全体像
まずPCや本体側で決まる項目とOSDで決まる項目
設定の全体像を把握するうえで、まずは「どこで何が決まるか」を分けて理解すると、調整が一気に楽になります。結論として、滑らかさ(Hz)やVRRはPC/本体側の影響が大きく、残像や視認性はOSD側の影響が大きいと整理できます。
PCやゲーム機側で決まる要素(優先度が高い)
解像度(例:1920×1080、2560×1440、3840×2160)
リフレッシュレート(例:120Hz、144Hz、165Hz、240Hz)
VRR(Adaptive-Sync/FreeSync/G-SYNC Compatibleなど)の有効/無効
HDRの有効/無効(Windows/PS5の設定が影響)
出力フォーマット(RGB/YCbCrなど、環境によって関係)
モニターOSD側で決まる要素(体感差が出やすい)
Trace Free(オーバードライブ)による残像のバランス
Shadow Boostによる暗部の持ち上げ(視認性)
GameVisual(映像プリセット)
ELMB / ELMB Sync(ブレ低減系。条件や排他がある)
GamePlus(十字線、タイマー、FPSカウンター等の表示)
重要なのは、OSDをいくら追い込んでも、Windows側で60Hzのままだと「滑らかさ」の上限が60Hzで頭打ちになる、という点です。逆に、HzやVRRが正しく設定できていれば、OSD側の調整は「仕上げ」として効いてきます。
設定の優先順位と検証のやり方
おすすめの優先順位は、次の順番です。これは多くの環境で通用する「失敗しにくい作法」です。
接続・端子・ケーブルを整える(物理条件が合っていないと設定が出ません)
Windowsで最大Hzを選ぶ(最重要)
GPU側でVRRや出力条件を整える(次に重要)
OSDでTrace Freeを調整する(残像の最適化)
Shadow BoostやGameVisualで視認性と色味を整える
HDRは最後に判断する(排他や色変化が絡みやすい)
「検証のやり方」も、事前に型を決めておくと迷いません。おすすめは以下です。
Hzの確認:Windowsの設定画面、GPUコントロールパネル、ゲーム内表示(可能ならFPS/Hzの表示)で三重チェック
残像の確認:同じゲーム内シーンで、一定速度の視点移動(左右に振る)を繰り返し、Trace Freeだけを動かして比較
暗部視認性の確認:屋内→屋外、暗所→明所など明暗差のある場面でShadow Boostの影響を見る
色味の確認:肌色、空、白背景、黒背景の4種類が見える場面を用意する(動画でも可)
検証は「1項目ずつ」動かすのが原則です。2つ以上同時に変えると原因の切り分けができず、最終的に迷子になります。
設定を触る前のバックアップと初期化の考え方
OSDを触る前に、必ず「戻り道」を作ってください。ここを省くと、調整中に画が崩れたときに復旧できず、時間だけを消耗します。
OSD内に「リセット」「すべてリセット」などがある場合、場所を先に把握する
現在の設定(明るさ、GameVisual、Trace Free、Shadow Boost、HDRなど)をスマホで撮っておく
PC側(Windows/GPU側)も、変更前に設定値をメモしておく
また、対応モデルではDisplayWidget CenterのようなツールでWindows上から設定できる場合があります。OSD操作が苦手な方は、OSDの代わりにPC側で調整できると、試行錯誤の負担が下がります(ただし、全モデル共通ではないため、対応状況はモデルごとに確認が必要です)。
ASUSゲーミングモニターを最大性能で使う接続とHz設定
この章は、体感差が最も大きい部分です。ここが整っていないと、どれだけおすすめ設定を真似しても同じ結果になりません。とくに「最大Hzが選べない」問題は、OSD以前の条件不足が原因であることが非常に多いです。
DisplayPortとHDMIの使い分け
基本方針は次のとおりです。
PCで高リフレッシュレートを狙うならDisplayPortが第一候補
PS5などのゲーム機はHDMIが前提(機種によってはHDMI 2.1等が関係)
そして、同じHDMIでも「どの端子でも同じ」とは限りません。モニター側にHDMI端子が複数ある場合、端子によって仕様が異なることがあります。説明書や背面表記で「HDMI 1」「HDMI 2」などを確認し、120Hzや4K高Hzを出したい端子を優先してください。
また、ケーブルは軽視されがちですが、最大Hzが出ない場合の主要原因です。特に次のときは疑う価値があります。
古いHDMIケーブルを流用している
型番不明・付属品でない安価なケーブル
長いケーブル(取り回しの都合で長尺にした)
症状としては「最大Hzの選択肢が出ない」「映像が不安定」「一瞬ブラックアウトする」などが典型です。まずは短い高品質ケーブルで切り分けると、原因特定が早くなります。
Windowsでリフレッシュレートを最大にする
Windowsでは、モニターが対応していても初期状態が60Hzになっていることがあります。ここは必ず確認してください。
Windowsの「設定」→「システム」→「ディスプレイ」
「関連設定」付近の「ディスプレイの詳細設定」
対象モニターを選択し、リフレッシュレートを最大値に変更
注意点は2つあります。
デュアルモニター環境では、対象モニターを間違えると変更したつもりでも変わっていません
解像度が特殊な値になっていると、選べるHzが制限される場合があります(まず標準解像度で検証すると安全です)
さらに、ゲーム側の設定も重要です。ゲームが「ボーダーレス」や「ウィンドウ」だとHzが固定になったり、挙動が変わることがあります。まずはフルスクリーン(またはフルスクリーン相当)で検証してください。
NVIDIAとAMDの設定で確認するポイント
GPU側のコントロールパネルは、Windowsよりも「本当にその信号を出せているか」を確認しやすいのが利点です。確認したいポイントは以下です。
解像度とリフレッシュレートが最大になっているか
VRR関連(G-SYNC互換/FreeSyncなど)が有効になっているか
色深度、出力範囲(フル/リミテッド)、出力形式(RGB/YCbCr)が不自然になっていないか
スケーリングやカスタム解像度を過去に設定した場合、影響が残っていないか
「Windowsでは最大Hzが選べるのに、ゲームでは選べない」場合、原因は以下に寄りがちです。
ゲーム内の解像度が異なる(例:4Kにしたら上限Hzが下がる)
表示モードがフルスクリーンになっていない
ゲーム側の上限設定(FPS上限、Hz固定)が効いている
マルチモニター環境で表示先が想定と違う
まずは「単純な状態」に戻して検証してください。すなわち、単一モニター、標準解像度、フルスクリーンです。ここで最大Hzが出れば、要因は設定の組み合わせです。
PS5で120HzやHDRを有効にするチェック項目
PS5で120HzやHDRを使う場合、「モニターのOSD設定を弄る前に」以下をチェックしてください。PS5はPCよりも自動判定が絡むため、どこかが欠けると目標の出力になりません。
PS5本体の映像設定で120Hzを許可しているか
120Hz対応ゲームで、ゲーム内の120fpsモードを選んでいるか
モニター側の接続端子が120Hz対応の端子になっているか
ケーブルが条件を満たすか
HDRについても同様です。
PS5本体でHDRをオン
モニター側のHDR設定(自動/オン)が正しい
HDR時は画が暗い・白いなどの違和感が出やすいので、後述の「HDRのおすすめ設定と注意点」に沿って調整する
PS5の場合、ゲームによっては「120Hzモードがゲーム内設定に隠れている」「パフォーマンス優先にしないと出ない」などがあるため、ゲーム側の設定も必ず確認してください。
ASUSゲーミングモニターOSDの基本操作と必須項目
ここからはOSD側の調整です。ASUSのゲーミングモニターはモデルごとにOSDの見え方や項目名が若干異なることがありますが、考え方は共通です。役割を理解し、強くし過ぎないことが最も重要です。
OSDの開き方とメニュー移動の基本
OSD操作の基本は次の流れです。
背面/下部のボタンやジョイスティックでメニューを開く
上下(左右)で項目移動
決定で選択
値を調整して戻る
操作が面倒な場合、対応モデルであればPC上から設定できるツールを検討してください。OSDを何十回も開いて比較するのは疲れますし、調整の精度も下がります。調整を長引かせない工夫が、最終的な満足度に直結します。
GameVisualと色の基本設定
GameVisualは「映像プリセット」であり、色味やコントラスト、ガンマの傾向をまとめて変えます。便利ですが、最初から強いプリセットを選ぶと、後で微調整が難しくなることがあります。
おすすめは以下です。
まずは標準寄りのモード(例:Racing/Standard/sRGB系など)を基準にする
明るさを環境に合わせて調整(眩しさが消えるところ)
そこから必要に応じてGameVisualを変える
色は「好み」になりやすい一方、ゲーム用途では「視認性」との両立が必要です。派手にして気持ちよくする方向もありますが、派手さは目の疲れや暗部の階調崩れを招く場合があります。まずは落ち着いた基準を作り、そこから用途別に分岐させるのが安全です。
Shadow Boostの使いどころ
Shadow Boostは、暗部を持ち上げて見やすくする機能です。FPSでは特に有効で、暗所の敵を見つけやすくなります。ただし副作用もあります。
上げ過ぎると黒が浮き、画が白っぽく眠くなる
雰囲気のあるゲーム(ホラー、映画的演出)では没入感が下がる
暗部だけでなく中間階調まで影響し、全体のコントラストが崩れる場合がある
使い方のコツは「必要最低限」です。
FPS:低〜中で様子を見る(上げ過ぎない)
バトロワ:屋内外が激しいため、中までに留める
RPG/動画:基本は低またはオフ
Shadow Boostを上げる代わりに、明るさやガンマで全体を整えた方が破綻しないことも多いです。
Trace Freeで残像を減らす基準
Trace Free(オーバードライブ)は、体感差が大きい一方で、やり過ぎると悪化します。多くの方が「残像が気になるから最大にする」という方向へ行きがちですが、これは危険です。
Trace Freeの典型的な状態
低い:残像が伸びる(動く物体が後ろに尾を引く)
高い:逆残像が出る(輪郭に白い縁、にじみ、黒い影など)
最適:残像が減り、逆残像が目立たない
おすすめの調整手順は以下です。
Trace Freeを中間(例:50前後)に置く
よく遊ぶゲームで、左右に素早く視点を振る
残像がまだ長いなら少し上げる
逆残像や輪郭の破綻が出たら一段戻す
最後に「自分が違和感を覚えない」地点で止める
ポイントは、テストは実ゲームで行うことです。テストパターンよりも、実際に目が追う動き(敵のストレイフ、振り向き、草むらの揺れ)で差が出ます。
Adaptive-SyncとELMBとELMB Syncの使い分け
ここは混同が多いので、整理して説明いたします。
VRR(Adaptive-Sync/FreeSync/G-SYNC互換):フレームレートが変動してもティアリングやカクつきを減らし、滑らかさを保つ仕組み
ELMB(ブレ低減系):残像感(動きのブレ)を軽減する方向の仕組み(暗くなる、条件がある場合がある)
ELMB Sync:ELMBとVRRの両立を狙う仕組みとして案内されることが多いが、条件や排他があるため、万能ではない
運用の原則は、次の判断基準で迷いにくくなります。
フレームレートが不安定で上下するゲーム:VRRを優先
フレームレートが高く安定するゲーム(特にFPSで200fps前後が安定するなど):ELMB系を検討
HDRを使いたい:HDRを優先し、ELMB系は切る判断も現実的
また、ELMB系は「常時オン」よりも「目的があるときにオン」が向いています。例えば、競技FPSを短時間集中して遊ぶときはELMB系、普段のマルチ用途ではVRR、といった使い分けです。
GamePlus表示のオンオフと誤操作復旧
GamePlusは、十字線(照準)やタイマー、FPSカウンターなどを画面に重ねる機能です。便利ですが、誤ってオンにすると「消し方が分からない」問題が起きます。
対処の基本は以下です。
OSDを開く
GamePlusメニューを探す
十字線、FPSカウンターなどの項目をオフにする
それでも戻らない場合は、最終手段として「OSDリセット」が有効です。設定が初期化されるため、リセット前に念のため現在値を控えておくのが安全です。
ASUSゲーミングモニターのおすすめ設定プロファイル
ここでは、用途別に「失敗しにくい初期値」を提示し、その後に「微調整の基準」もセットで説明いたします。なお、モニターは個体差や部屋の明るさ、好みによって最適値が変わります。そのため本章は、まず再現できる土台として利用し、最後に微調整してください。
FPS向けおすすめ設定
FPS向けは、「見える」「遅れない」「残像が少ない」を優先し、派手さは二の次にします。
推奨設定の考え方
Hz:最大(最重要)
VRR:オン(対応する場合)
Trace Free:中間から上げ、逆残像が出ない地点で止める
Shadow Boost:低〜中(暗所の視認性を確保しつつ上げ過ぎない)
GameVisual:FPS系があれば適用。色が派手なら標準寄りへ戻す
微調整の目安
暗所で敵が溶ける:Shadow Boostを1段上げる
白っぽい・眠い:Shadow Boostを戻し、明るさを少し下げる
輪郭がギラつく・白い縁が出る:Trace Freeを1段下げる
画面が疲れる:明るさを下げ、派手なプリセットを避ける
FPSは視認性を上げたくなりますが、上げ過ぎは「色の破綻」と「疲労」に繋がります。短期の勝ちと長期の快適性のバランスが重要です。
バトロワ向けおすすめ設定
バトロワは遠景、草むら、屋内外の差が激しく、「状況が変わる」ことが前提です。極端な設定は場面によって逆効果になりやすいため、安定性を重視します。
推奨設定
Hz:最大
VRR:オン推奨(フレームレートが変動しやすいため)
Trace Free:中(上げ過ぎない)
Shadow Boost:中まで(上げ過ぎは白っぽさの原因)
GameVisual:FPS系または標準寄り
微調整の目安
遠景が霞む:派手なプリセットをやめ、ガンマ/コントラストを標準寄りへ
屋内が暗い:Shadow Boostを1段上げる、または明るさを少し上げる
草むらがにじむ:Trace Freeを下げて輪郭の破綻を抑える
また、GamePlusの十字線は競技規約やゲームの規約に触れる可能性がある場面もあるため、常用より「必要時のみ」に留めるのが安全です。
RPGとオープンワールド向けおすすめ設定
RPGやオープンワールドは、映像の雰囲気や階調が重要です。索敵のために暗部を持ち上げ過ぎると、映像が薄くなり没入感が下がります。
推奨設定
Hz:最大(もちろん高い方が快適ですが、必須度はFPSほどではありません)
VRR:フレームレートが揺れるならオン
Trace Free:低〜中(安定性重視)
Shadow Boost:低またはオフ
GameVisual:RPG系または標準
微調整の目安
夜のシーンが見づらい:明るさを少し上げる(Shadow Boostより先に)
色が派手すぎる:標準寄りのモードへ戻す
文字やUIが眩しい:明るさを下げ、ガンマを標準へ
RPG用途では「自然さ」を優先すると、総合満足度が上がりやすいです。
動画と映画向けおすすめ設定
動画視聴では、ゲーム向け補正が強いと「白飛び」「黒つぶれ」「肌色が不自然」になりやすいです。動画は階調と色の自然さが重要です。
推奨設定
GameVisual:シネマ系または標準
Trace Free:低(映像の輪郭破綻を避ける)
Shadow Boost:オフまたは低
明るさ:部屋の明るさに合わせる(暗めの部屋なら下げる)
微調整の目安
黒が浮く:明るさを下げる、Shadow Boostをオフ
暗すぎる:明るさを上げる(ガンマは大きく動かさない)
肌色が不自然:派手なプリセットを避け、標準へ戻す
動画では「盛る」より「整える」が基本です。
作業と目の負担を抑えるおすすめ設定
仕事や学習などの作業用途では、最重要は「明るさ」です。明るさが合っていないと、どんな設定でも目が疲れます。
推奨設定
明るさ:低〜中(白背景が眩しくない範囲)
GameVisual:sRGB系があれば優先、なければ標準
Shadow Boost:オフ
Trace Free:低(不要な補正を避ける)
必要に応じてブルーライト低減機能(ただし色が変わるため用途で使い分け)
微調整の目安
目が疲れる:まず明るさを下げる(色設定より先)
白背景が眩しい:明るさを下げ、可能なら色温度を少し暖色寄りに
文字がにじむ:Trace Freeを下げ、シャープネス系があれば標準へ
長時間作業では「快適性>派手さ」です。ゲーム用設定をそのまま流用しない方が結果的に良くなります。
HDRを使う場合のおすすめ設定と注意点
HDRは、環境によっては非常にきれいに見える一方で、導入すると「色が変」「暗い」「白い」と感じやすい領域です。HDRは最後に調整するのが安全です。
運用の基本
まずSDRで納得できる基準設定を作る
その上でHDRをオンにし、差分を確認する
違和感がある場合、HDR時は補正を減らし、素直な設定に戻す
HDRで起きやすい問題と対策
暗すぎる:明るさを上げ過ぎる前に、HDRの設定(Windows/PS5側のキャリブレーション)を確認
白っぽい:Shadow Boostをオフにし、GameVisualを標準寄りへ
色が派手:派手なプリセットを避ける
また、HDRは他機能と同時に使えないケースがあるため、同時利用の可否を意識して「今日はHDRを優先」「今日は残像対策を優先」と割り切るのが現実的です。
ASUSゲーミングモニター設定のトラブルシューティング
この章は「時間を溶かさない」ための章です。トラブル時は、闇雲に設定を触るほど悪化しがちです。必ず切り分けの順番で確認してください。
最大Hzが選べないときの切り分け
最大Hzが選べない場合、原因はほぼ次のどれかに分類できます。
端子が違う(対応端子で接続していない)
ケーブルが足りない(規格不足、品質、長すぎる)
Windows側が60Hz固定(設定未変更)
GPU側が制限(カスタム解像度、設定の残骸)
ゲーム内設定が制限(解像度、表示モード、上限設定)
おすすめのチェックリストです。
DisplayPortまたは適切なHDMI端子に接続している
ケーブルを別のものに変えて同じ症状か確認した
Windowsの詳細ディスプレイ設定で最大Hzを選んだ
GPUコントロールパネルでも最大Hzが選べる
ゲームをフルスクリーン相当にし、解像度を標準に戻した
デュアルモニターなら、対象モニターに出力しているか確認した
このチェックを上から順に潰すだけで、原因は高確率で特定できます。
画面が暗い白い色が変の対処
この症状は、多くの場合「HDR」か「暗部持ち上げ・派手なプリセット」が原因です。復旧の型を持っておくと速いです。
復旧の手順(戻し方)
HDRをオフ(Windows/PS5側も確認)
GameVisualを標準寄りに戻す
Shadow Boostをオフまたは低へ
明るさとガンマを中間へ戻す
それでもだめならOSDリセット
特にHDRは、オンにした瞬間に色味が変わるため「壊れた」と感じやすいですが、まずは落ち着いてSDRに戻して基準を取り直してください。
ちらつきや不安定の対処
ちらつきは、VRR環境やケーブル品質、フレームレートの振れ幅が原因になることがあります。次の順で切り分けます。
VRRを一旦オフにして改善するか
改善する場合、ゲーム側でFPS上限を設定し、振れ幅を抑える
それでも残る場合、ケーブル交換や端子変更で切り分ける
VRRは便利ですが、環境によっては最適化が必要です。「VRRオン=常に正義」とは限らないため、症状が出る場合は一旦切って比較するのが正攻法です。
ゴーストや逆残像が増えたときの対処
残像が気になってTrace Freeを上げた結果、逆残像が出て「むしろ見づらい」状態になることがあります。対処は明確です。
Trace Freeを1段ずつ下げる
破綻が消える地点を見つける
それでも残像が気になる場合、フレームレートの安定化やELMB系の検討(条件が合う場合のみ)へ進む
逆残像は、慣れると非常に気になります。残像を減らすことよりも「破綻がないこと」を優先した方が、結果として快適になります。
十字線やFPSカウンターが消えないときの対処
これはGamePlusの誤操作が原因であることがほとんどです。故障ではありません。
OSD → GamePlus → 十字線やFPSカウンターをオフ
直らない場合、OSDリセットで復旧
OSDリセットは最後の手段ですが、確実に戻せます。調整を本格化する前に「戻し方」を把握しておく意味はここにあります。
ASUSゲーミングモニター設定のよくある質問
DisplayWidget Centerだけで完結できるか
対応モデルであれば、Windows上からモニター設定を変更できるため、OSD操作の頻度を大きく減らせます。ただし、全モデルが同じ操作に対応するわけではありません。OSDの全項目が触れないケースもあります。
おすすめの考え方は以下です。
普段の微調整:DisplayWidget系ツールで行う
重要な切り分け(入力切替、初期化など):OSDで行う
どちらか片方に寄せるより、役割分担した方が安定します。
ELMB Syncは常にオンでよいか
常用はおすすめしません。ELMB系は、場面によって暗くなったり、条件が合わないと違和感が出たりすることがあります。基本は「目的があるときにオン」です。
競技FPSで高fpsが安定:ELMB系を試す価値が高い
普段のマルチ用途:VRR中心の方が破綻しにくい
常用して違和感がある場合、まずオフに戻して比較してください。
Trace Freeは高いほど良いか
高いほど良いわけではありません。Trace Freeは「残像と逆残像のトレードオフ」です。最適値は、ゲームの動き、Hz、個人の感覚で変わります。
失敗しにくい方法は、次の一点です。
中間から始めて、上げて、破綻したら1段戻す
これで十分に良いところへ着地できます。
Shadow Boostは上げるほど見やすいか
暗所は見やすくなりますが、上げ過ぎると映像全体の階調が崩れ、白っぽくなります。特に動画やRPGでは雰囲気を損ねやすいです。
おすすめは「FPSは低〜中」「それ以外は低またはオフ」です。どうしても暗所が辛いときのみ、必要最低限上げてください。
HDRはオンにすべきか
一概には言えません。HDRはゲームやコンテンツ、部屋の明るさ、好みで評価が変わります。また、HDRをオンにすると画作りが変わり、他の補正と干渉しやすくなります。
おすすめの手順は以下です。
SDRで基準設定を作る(これが土台)
HDRをオンにし、違和感が出るなら補正を減らして整える
HDRが合わないと感じたら、用途別に「HDRを使う日」「使わない日」で切り替える
HDRは“最後の仕上げ”として扱うと失敗しにくいです。
まとめ:ASUSゲーミングモニターおすすめ設定の作り方
ASUSゲーミングモニターの設定は、項目が多いほど「順番」が重要です。最短で満足度を上げるために、必ず次の流れで進めてください。
接続とケーブル、端子を整える
WindowsとGPU側で最大リフレッシュレートを出す(最重要)
VRRを整え、フレームレート変動に強い状態を作る
Trace Freeで残像を詰め、逆残像が出ない地点で止める
Shadow BoostとGameVisualで用途別に視認性と色味を整える
HDRは最後に導入し、違和感が出るなら補正を減らして整える
最後に、用途別のおすすめ設定(FPS/バトロワ/RPG/動画/作業)を「プロファイル」として作っておくと、迷いが消えます。例えば、FPSの日はShadow Boostを少し上げる、作業の日は明るさを下げる、といった切り替えです。設定は一度作れば終わりではなく、「用途に合わせて最小限切り替える」ことで、モニターの満足度は大きく上がります。