SpO2を測ったら「94%」「92%」「90%」――数字を見た瞬間、頭の中が真っ白になる方は少なくありません。しかも本人は「苦しくない」と言う。救急車を呼ぶべきか、測り直せばいいのか、明日まで様子を見るべきか。家族を見守る立場ほど、判断の重さに押されてしまいます。
しかしSpO2は、数字だけで危険かどうかを決める指標ではありません。指先の冷えや体の動きで低く出ることもあれば、逆に症状が乏しいまま低酸素が進むこともあります。大切なのは、よくある“危険値の目安”を知ったうえで、測り方の見直し・症状の赤旗チェック・普段値との比較をセットで行い、「今すぐ動くべき状況」と「落ち着いて確認してよい状況」を分けることです。
この記事では、SpO2の標準的な考え方を押さえたうえで、96〜100%、93〜95%、91〜92%、90%以下のレンジ別に「まず何をするか」を具体的に整理します。さらに、誤測定を防ぐチェックリスト、苦しくないのに数値が低いときの見方、COPDなど持病がある場合の例外、受診時に医師へ伝えるテンプレまでまとめました。読んだ後に「次の一手」が迷わず決まるように、順番に解説していきます。
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SpO2危険値を判断するために最初に知ること
SpO2(エスピーオーツー)は、血液中のヘモグロビンがどれくらい酸素と結びついているかを示す「酸素飽和度」です。指先に挟むパルスオキシメーターで簡単に測れるため、体調不良のときや家族の見守りで使う方が増えています。
ただ、SpO2は体温計のように「この数値なら必ず同じ意味」とは言い切れません。理由は大きく3つあります。
1つ目は、測定条件(冷え・体動・装着の仕方)で値がぶれやすいこと。
2つ目は、同じ人でも体調や姿勢、安静かどうかで変わること。
3つ目は、持病(COPD、心不全など)や生活環境(高地など)によって「その人にとっての普通」が違うことです。
だからこそ、この記事では「危険値の数字」だけを並べて終わりにせず、家庭で実際に迷いがちな場面に合わせて、測り直し→判断→受診の準備まで一続きで理解できるように整理します。読み終えたときに「次に何をすべきか」が明確になることを目標にしています。
SpO2の基準と標準値の考え方
一般的に、健康な成人が安静にしているときのSpO2は高い値になり、目安として「96〜99%」がよく示されます。ただし、ここで大切なのは「基準=固定の正解」ではない点です。たとえば、寝不足や発熱、強い咳、脱水、緊張、呼吸が浅い状態などがあると、普段より低めに出ることがあります。逆に深呼吸を繰り返すと一時的に上がることもあります。
また、機器の特性として、表示が安定するまでに少し時間がかかります。装着してすぐの数字を見て一喜一憂すると、必要以上に不安になりやすいです。「安静で、値が落ち着いた状態の数字」を確認することが、判断の第一歩になります。
さらに、SpO2は「酸素が足りているか」を推測する指標ではありますが、呼吸の苦しさ(自覚症状)と完全には一致しません。特に高齢者では、本人が「苦しくない」と言っていても数値が低いことがあります。これは、加齢や持病などで体が低酸素に慣れてしまっている場合や、感覚が鈍くなっている場合があるためです。
まとめると、標準値はあくまで目安であり、家庭では次の2つをセットで考えると安全です。
いつもの値(普段の安静時SpO2)
今回の値が、いつもの値からどれくらい下がっているか
この「普段比」が分かるだけで、判断が格段にしやすくなります。
数値だけで決めない理由
SpO2が低い=必ず肺炎、とは限りません。もちろん肺炎や喘息発作、感染症による呼吸状態悪化などで下がることはありますが、家庭でよくあるのが「測定条件による見かけの低下」です。たとえば、指先が冷えて血流が悪いと光の読み取りが不安定になり、低めに出ることがあります。手が震えていたり、測定中に指が動いているだけでも数字がばらつきます。マニキュアやジェルネイル、付け爪なども影響することがあります。
さらに重要なのが、「症状とのセット」です。SpO2が同じ92%でも、次の2人では緊急度が違います。
Aさん:普段98%、今日は息切れが強く、歩くと会話が途切れる
Bさん:COPDで普段92〜93%、今日は症状はいつも通りで食事も取れている
Aさんは急性の悪化が疑われ、早急な受診の優先度が高い一方、Bさんは「普段通り」の可能性もあります(ただし自己判断は禁物で、主治医の指示が最優先です)。このように、SpO2は「単独で決める」より、症状・普段値・測り方を必ず組み合わせて判断する必要があります。
そして、家庭で最も悩ましいのが「本人が苦しくないのに低い」ケースです。ここで“安心材料”として誤測定の可能性を確認しつつ、同時に“見逃し防止”として赤旗症状や普段比の低下もチェックする。この両面がそろって初めて、落ち着いて判断できます。
SpO2危険値の早見表と行動チャート
SpO2の数値は、見る人の状況によって受け止め方が変わります。ここでは「家庭で測ったときに迷いにくい」ように、よく使われるレンジ(範囲)ごとに、行動を整理します。ポイントは、数値を見たら終わりではなく、次の手順が決まる形にすることです。
以下の早見表は、あくまで一般的な目安です。持病があり医師から個別の目標値や対応指示を受けている場合は、その指示が最優先になります。
レンジ別の目安と取るべき行動
| SpO2(目安) | 体の状態の目安 | まずやること | 次の行動 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 96〜100% | 多くは問題なし | 安静で再測定(念のため) | 症状が強ければ受診相談 | 発熱・咳が続く場合は別途評価 |
| 93〜95% | 要注意域になり得る | 正しい測り方で測り直し(3回) | 症状がある/普段より低いなら医療機関へ連絡 | 感染症療養中などは指示に従う |
| 91〜92% | 低酸素の可能性が上がる | 測り直し+安静、症状確認 | 早めに医療機関へ連絡・受診を検討 | 高齢者は自覚が乏しいことがある |
| 90%以下 | 呼吸不全レベルの可能性 | すぐに医療機関へ連絡 | 指示に従い受診・救急対応を検討 | 迷うときは救急相談も視野 |
この表を見たとき、まず確認したいのは「一番下の行に当てはまるか」ではなく、測り直しをしたうえで当てはまるかです。特に93〜95%あたりは、冷えや体動で簡単に出てしまうレンジでもあります。だからこそ、焦って結論を出す前に「正しく測り直す」を組み込んであります。
また、93〜95%だからといって、必ずしも危険ではありません。一方で、普段98%の人が94%になっているなら「いつもより明らかに低い」と言えます。この“普段比”が受診判断の精度を上げます。
さらに、91〜92%は、誤測定を除外したうえで続くなら、受診の優先度が上がりやすいレンジです。ここで「苦しくないから大丈夫」と決めつけず、症状のチェックや、歩行で悪化するかなどもあわせて確認すると安全です。
救急車を考える赤旗症状チェック
SpO2は強力な指標ですが、家庭では数値の誤差があり得ます。そのため、数値がそこまで低くなくても、症状が強い場合は急ぎの対応が必要になることがあります。逆に、数値が低くても症状が乏しいこともあります。だからこそ、赤旗症状を別枠で覚えておくと判断がブレにくくなります。
次のような症状がある場合は、救急相談や救急受診を検討してください。
意識の異常:呼びかけへの反応が鈍い、会話の辻褄が合わない、強い眠気で起きていられない
強い呼吸困難:息が吸えない感じが強い、肩で息をしている、横になれない
会話が続かない:数語話すだけで息継ぎが必要、言葉が途切れる
顔色や唇の異常:明らかに青紫っぽい、血色が悪い
胸の強い痛みや圧迫感:冷や汗を伴う、動くと悪化する
急な悪化:さっきまで普通だったのに短時間でぐったりした、歩けなくなった
ここで重要なのは「全部そろわないと救急ではない」という発想を捨てることです。1つでも強く当てはまるなら、まずは相談する。相談先が地域の救急相談窓口であっても構いません。家族を見守る立場では、迷って様子見を続けることのほうがリスクになる場合があります。
また、赤旗症状があるときは、SpO2を測り直している間に状態が変わることもあります。測り直しに時間をかけすぎないことも大切です。「数値が確認できないと動けない」と考えるより、「症状が強いから相談する」という順番のほうが安全です。
SpO2が低いときにまず確認する測り方
SpO2が低いと出たとき、最初にやるべきことは「正しい条件で測り直す」です。これは、誤測定を減らすだけでなく、医療機関へ相談するときの情報の質を上げるためでもあります。医師や看護師が知りたいのは、単発の最低値よりも、安静時に安定した値がどのくらいか、そしてそれがどれくらい続いているかです。
誤測定が起きやすい条件チェックリスト
以下は、家庭で特に起きやすい誤測定の原因をまとめたチェックリストです。該当するものがあれば、改善してから測り直してください。見守りの場面では「本人に任せる」のではなく、測定環境を整えてあげるだけで数字が変わることがよくあります。
指先が冷たい:冬場、冷え性、手が冷たく青白い
対策:手をこすって温める、温かい飲み物やカイロで温める、室温を上げる
手や指が動いている:震え、落ち着きがない、咳込みで体が揺れる
対策:肘を机に置いて手を固定する、背もたれに寄りかかって安静にする
装着が浅い/ずれている:爪側が正しく当たっていない
対策:表示が安定する位置に調整し、締め付けが強すぎないかも確認する
マニキュア・ジェル・付け爪:光の透過に影響しやすい
対策:可能なら外す、難しければ別の指で測る(左右や指を変えて比較)
強い光が当たっている:直射日光、強い照明
対策:手を覆う、場所を移動する
測定時間が短い:装着直後の数値を見ている
対策:数十秒〜1分ほど待ち、値が落ち着いてから読む
末梢循環が悪い:低血圧、脱水、冷え、ショック、末梢血管の問題
対策:温める、安静にする、別の指や反対の手でも測る
爪の長さや形:装着がうまくいかないことがある
対策:装着しやすい指を選ぶ(一般に中指や人差し指が測りやすい)
呼吸が浅い/息を止めがち:不安で呼吸が乱れる
対策:ゆっくり呼吸し、落ち着いて測る
測定している指が圧迫されている:指先が机に押し付けられている
対策:軽く置く、圧迫を避ける
機器の電池が弱い/機器の不具合:表示が不安定
対策:電池交換、別機器があれば比較、説明書の確認
このチェックリストを一度実行するだけで、94%が97%に戻る、といったことは珍しくありません。逆に、チェック後も低いままなら「測り方の問題ではない可能性」が上がり、受診判断に活用しやすくなります。
測り直しの手順
測り直しは、単にもう一回測るだけではなく、情報として信頼できる形に整えることがポイントです。以下の手順で行うと、医療機関に伝えるときにも強い材料になります。
安静の確保
椅子に座って背もたれに寄りかかり、1〜3分ほど落ち着いて呼吸します。咳込みが強い場合は、咳が少し落ち着くタイミングを待ちます。手指を温める
指が冷たい場合は、温めて血流を改善します。急いでいるときほど省略しがちですが、ここが一番効くことがあります。装着と固定
指先にしっかり装着し、手や指を動かさないようにします。肘を机に置くと安定しやすいです。値が安定するまで待つ
途中で上下する場合があります。数十秒〜1分ほど待ち、数字が落ち着いてから読み取ります。
このとき、SpO2だけでなく脈拍も一緒に確認します。脈拍が極端に速い・遅い、表示が飛ぶなどがあれば、測定が安定していない可能性があります。3回測って記録する
1〜2分おきに合計3回測り、安定した値をメモします。
例:安静時SpO2 92, 93, 92/脈拍 102, 98, 100/右中指必要なら負荷で変化を見る
安静時は92%だが、歩くと88%まで下がる、というような変化は重要です。ただし無理は禁物です。息切れが強いときは歩行テストは避け、安静時の情報だけで相談してください。
「測り直し」は、様子見のための作業ではありません。受診・相談の判断材料を作る作業です。測り直しても低い、あるいは悪化傾向があるなら、そこで行動に移せるようになります。
SpO2危険値でも苦しくないときに考えること
見守りで最も悩むのが「数値が低いのに本人が平気そう」という状況です。ここで“過剰に安心”すると見逃しにつながり、“過剰に恐れる”と本人も家族も疲弊します。大切なのは、落ち着いて次の3段階で考えることです。
誤測定の可能性を除外する
隠れた低酸素の兆候がないか確認する
受診時に伝える情報を整える
高齢者で自覚症状が乏しいケース
高齢者は、低酸素に対する自覚がはっきりしないことがあります。これは、体の反応が若い人と違う場合があること、息苦しさをうまく言語化できないこと、遠慮して「大丈夫」と言いがちなことなどが背景にあります。
そのため、見守り側は「苦しいかどうか」を質問するだけでなく、次のような観察をセットで行うと安心です。
呼吸の様子:いつもより早い、浅い、肩が上下する、話すと息切れする
活動性:立ち上がるのが遅い、歩幅が小さい、いつもより動きたがらない
意識・反応:ぼんやり、返事が遅い、会話が噛み合わない
食事・水分:食欲が落ちる、水分が取れない
睡眠・倦怠感:異常に眠い、だるさが強い
顔色:血色が悪い、唇が紫がかる
ここで、本人の訴えが少なくても、客観的な変化が複数あるなら、受診の優先度は上がります。逆に、測り直しで数値が上がり、観察でもいつも通りなら、慌てず経過を見ながら必要なら相談、という形に落とし込みやすくなります。
隠れた低酸素が疑われるサイン
「苦しくない」と言っているときでも、低酸素が疑われるサインはいくつかあります。覚えやすいのは「いつもと違う」があるかどうかです。
会話の変化:いつもより声が弱い、話が短い、返事が遅い
動作の変化:トイレまでの移動が遅い、途中で休む、階段を嫌がる
見た目の変化:顔色が悪い、唇が紫っぽい、汗をかいている
数字の変化:安静時に低いだけでなく、歩行や体位変換でさらに下がる
脈拍の変化:普段より明らかに速い(身体が酸素不足を補おうとしている可能性)
特に「普段よりSpO2が下がっている」+「脈拍が上がっている」+「活動性が落ちている」の組み合わせは要注意です。こうしたサインがある場合、本人が「平気」と言っていても、早めの相談が安全側になります。
受診の準備テンプレ
受診や電話相談の場面で、短い時間に要点を伝えるのは意外と難しいです。そこで、テンプレを用意しておくと焦らずに済みます。以下の項目をメモにまとめておくと、医療者が状況をイメージしやすくなります。
測定した日時:いつ測ったか(例:12/29 10:00、12:00)
測定回数と安定値:3回測った結果(例:92, 93, 92)
脈拍:同時に出た脈拍(例:100前後)
測定条件:指、姿勢、安静にしてから測ったか、指が冷たくなかったか
症状:息切れ、咳、発熱、胸痛、痰、食欲、会話のしやすさ
普段のSpO2:分かれば(例:普段は97〜98)
持病と服薬:COPD、喘息、心不全、腎臓病、血栓症の既往、利尿薬など
療養指示があるか:在宅酸素、感染症療養の指示など
この情報があると、「今すぐ救急へ」「今日中に受診を」「まずは測り直してこの条件なら再連絡を」など、具体的な指示が出やすくなります。
持病がある人のSpO2危険値は普段値で見る
持病がある方のSpO2は、一般的な“正常値”だけで判断すると混乱しやすいです。特にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や間質性肺炎、心不全などの慢性疾患では、普段からSpO2が低めの方がいます。その場合、重要なのは「絶対値で驚く」ことではなく、普段値からの変化と、主治医の指示に沿っているかです。
COPDなどで目標が88〜92%になることがある
COPDなどの慢性呼吸器疾患では、医療的にSpO2の目標が88〜92%程度に設定されることがあります。これは、病態によっては酸素を上げすぎないように管理する必要があるためです。
ここで押さえておきたいのは、次の2点です。
同じSpO2でも、人によって「危険度の意味」が違う
目標値が設定されている人は、その目標値が“あなたの基準”になる
つまり、家族や周囲が一般的な早見表だけを見て「90%台前半は危険!」と決めつけると、本人の通常範囲なのに不安だけが増えることがあります。逆に、普段92%の人が88%に下がり、戻らないなら、それはその人にとっては「いつもより悪い」可能性が高い。ここが重要です。
普段から3〜4%下がったときの考え方
慢性疾患がある方の見守りでは、「普段の安静時SpO2」を記録しておくことがとても大切です。たとえば普段が92〜93%の方なら、
今日は89〜90%が続く
測り直しても戻らない
歩くとさらに下がる
という状況は、悪化のサインとして早めに相談したほうがよい場面になり得ます。
一般に「普段より3〜4%下がる」という変化は、家庭で気づける悪化の目安として役立ちます。ただし、3〜4%という数字は“絶対のルール”ではなく、あくまで「相談する背中を押してくれる目安」と捉えるのが安全です。持病がある方は、医師が「何%になったら連絡」「こういう症状があったら連絡」と指示していることもあるため、その指示があれば必ず優先してください。
普段値の記録のコツは次の通りです。
体調が良い日に、安静で3回測って安定値をメモする
可能なら朝と夜で1週間ほど取り、だいたいの範囲を知る
「普段の脈拍」もあわせて残す(悪化時に比較しやすい)
自己判断で酸素流量を変えない注意
在宅酸素療法中の方は、SpO2が下がったからといって、自己判断で酸素流量を上げたり下げたりしないでください。酸素は「多ければ多いほど良い」という単純なものではなく、病状や体の反応、医師の管理方針に沿う必要があります。
もし普段よりSpO2が下がっている、息切れが強い、戻らない、発熱や咳が増えているといった状況なら、まずは医療機関に連絡し、指示を仰いでください。夜間や休日で連絡が難しい場合も、状態が悪いなら救急相談を使うなど、早めに動くほうが安全です。
SpO2危険値で受診するときの診療科と伝え方
SpO2が低いとき、受診のハードルになるのが「どこに行けばいいのか」と「どう説明すればいいのか」です。ここが整理できると、迷いが減って行動しやすくなります。
目安の診療科
症状や背景によって、適した診療科は少し変わります。目安としては以下です。
咳、痰、発熱、息切れなどが中心:内科、呼吸器内科
胸の痛み、動悸、むくみ、横になると苦しいなどが目立つ:循環器内科
持病がある:まずはかかりつけ医(呼吸器・循環器など)へ連絡できるなら最優先
迷う場合は、近くの内科に電話で相談し、「SpO2が低く出ている」ことを伝えて案内を受けるのが現実的です。救急外来のある病院や休日診療の仕組みが地域で違うため、まずは電話で状況を伝え、どこに行くべきか指示をもらうとスムーズです。
電話・受付で伝えるべき項目
医療機関に電話するときは、情報が多すぎても伝わりにくいので、優先順位をつけて話すのがコツです。次の順番だと、相手が状況を把握しやすくなります。
目的を一言で
「SpO2が低く出ていて、受診が必要か相談したいです」数値と測り方(信頼できる形)
「安静にして測り直しても92%前後が3回続きました。脈拍は100前後です」症状
「息切れがあります/咳が続きます/発熱があります/胸が痛いです」など背景(重要なものだけ)
「普段は98%くらいです」または「COPDで普段92%前後です」「在宅酸素を使っています」希望
「今日受診すべきか、救急が必要か、指示をお願いします」
この順番にすると、相手が緊急度を判断しやすくなり、案内も具体的になります。
救急受診時に役立つメモ例
救急外来では短時間で情報を伝える必要があります。家族を連れて行く場合、本人がうまく説明できないこともあるため、メモがあると非常に助かります。以下の形式でスマホのメモに残しておくと便利です。
症状の開始:12/27から咳、12/29朝から息切れ増加
体温:37.8℃(最高38.2℃)
SpO2(安静時):12/29 10:00 92, 93, 92(右中指)
脈拍:100前後
負荷での変化:トイレ歩行で88%まで低下(無理はしない)
症状:会話はできるが息切れ、食欲低下、痰あり
既往歴:高血圧、心不全/COPDなど
服薬:薬剤名が分かれば、分からなければ「降圧薬、利尿薬」など
アレルギー:薬や食物のアレルギー
普段のSpO2:普段98%/普段92〜93%
メモがあるだけで、診察が早く進み、必要な検査(レントゲン、血液検査など)につながりやすくなります。
よくある質問
95%は危険ですか?
95%は、状況次第で出ることがある値で、ただちに危険と決めつける必要はありません。特に冬場の冷え、緊張、体動、測定直後などで低めに出ることがあります。まずは落ち着いて、正しい測り方で3回測り直し、安定した値を確認してください。
一方で、普段が98〜99%の方が、測り直しても95%が続き、咳や発熱、息切れがあるなら「いつもより低い」という意味が出てきます。その場合は、早めに医療機関へ相談するほうが安心です。大切なのは「95%かどうか」より、普段比と症状の組み合わせです。
90%を一度だけ記録しました。どうすれば?
90%は、誤測定で出ることもあれば、体の状態が悪いサインであることもあります。だからこそ、順序立てて確認します。
まず、冷えや体動、装着のずれなどを改善して測り直す
安静で値が安定するまで待ち、3回測る
それでも90%前後が続く、あるいは赤旗症状があるなら、すぐ相談・受診へ
特に、測り直しても90%以下が続く場合は、家庭で様子見を続けるより、医療機関へ連絡して指示を受けるほうが安全です。夜間でも、症状が強いなら救急相談の利用を検討してください。
パルスオキシメーターの値はどれくらい信用できますか?
家庭用のパルスオキシメーターは、日々の見守りに役立つ一方、測定条件の影響を受けやすいのが特徴です。だからこそ「値の精密さ」よりも、同じ条件での変化を見る使い方が向いています。
信用度を上げるコツは次の通りです。
安静にしてから測る
指を温める
体動を減らす
値が安定してから読む
3回測って傾向を見る
脈拍も一緒に確認する
可能なら普段の値を記録しておく
この使い方をすれば、「昨日より下がっている」「測り直しても戻らない」といった変化を早く察知でき、受診の判断材料になります。
コロナ療養中の目安と同じですか?
感染症療養中は、自治体や医療機関から「この数値になったら連絡」「この症状が出たら受診」といった指示が出ている場合があります。その場合は、その指示に従うのが第一です。
一般的な目安としてSpO2が療養中の重症度判断に使われることはありますが、家庭での判断は「数値だけ」では決められません。療養中は、発熱や脱水、咳で測定が安定しないこともあります。測り直しの手順を踏みつつ、息切れや会話のしにくさ、活動性の低下といった症状も合わせて評価し、迷うときは早めに相談するのが安全です。
子どもや妊婦は基準が違いますか?
子どもや妊婦は、体の状態や受診判断が成人一般と異なる部分があります。子どもは症状の訴えが難しく、悪化が早いこともあります。妊婦は母体だけでなく胎児の安全も関わるため、呼吸の異常が疑われるときは早めの相談が推奨されます。
家庭では、無理に「何%なら大丈夫」と決めつけず、次のように考えると安全です。
数値が低いと出たら、まずは正しく測り直す
症状(息切れ、ぐったり、食事や水分が取れない等)があれば受診の優先度を上げる
不安が強いときは、早めに医療機関へ相談する
まとめ
SpO2の「危険値」は、単に数字で切り分けるより、家庭で実際に行動に移せる形で捉えることが大切です。
一般的な目安として、93〜95%は注意して測り直しと症状確認、91〜92%は受診相談の優先度が上がりやすい、90%以下が続く場合は緊急性が高い可能性があります。
ただし、SpO2は測り方の影響を受けやすいため、まずは安静・温め・体動を減らすなどの条件を整えて、3回測って安定値を確認してください。
「苦しくないのに低い」場合は、誤測定を除外しつつ、活動性の低下、会話の変化、脈拍の上昇などのサインも観察し、必要なら早めに相談するのが安全です。
持病がある方は、一般の早見表よりも主治医の指示と普段値が最優先です。普段から「調子が良い日の値」を記録しておくと、悪化に早く気づけます。
受診や相談の際は、いつ・何回・どの条件で測ったか、安定値、脈拍、症状、普段値、既往と服薬をまとめて伝えると、適切な案内につながりやすくなります。
数値が気になるときほど、焦って結論を出さず、「測り直し→症状チェック→相談」の順に進めると、必要なときに必要な行動が取りやすくなります。