「札幌ドームは無能だ」
そんな言葉を、ニュースやSNSで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
プロ野球・北海道日本ハムファイターズの移転、大きく報じられた赤字決算、
そして経営トップの発言をめぐる炎上──。
これらが重なり、「札幌ドーム=失敗」「税金の無駄遣い」といった印象が
一気に広がりました。
しかし、その評価は事実に基づいたものでしょうか。
それとも、数字や制度を十分に理解しないまま
感情的に語られている部分が大きいのでしょうか。
本記事では、札幌ドームをめぐる
「無能」という強い言葉の背景を、
赤字の構造/日ハム移転の争点/指定管理と条例の制約という
3つの軸から整理します。
誰かを断罪するための記事ではありません。
札幌市民として、またニュースを読む一人として、
「何が問題で、どこまでが事実なのか」を
冷静に判断できる視点を持つことが目的です。
読み終えたとき、
「なるほど、そういう構造だったのか」
と腑に落ちることを目指して解説していきます。
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札幌ドームが無能と言われる理由は?
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「札幌ドーム 無能」は、特定個人の能力批判というより、赤字・契約(料金)・意思決定の遅さ・説明不足が混ざって炎上しやすい“論点の束”として使われがちです。
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収支は年度で振れます。2023年度決算は大幅赤字が報道される一方、札幌市資料ではR6年度は黒字見込み、R7年度以降も改善見通しが示されています。
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料金は条例改正で見直しが可決され、施行日も明示されています。判断には「年度」と「施行日」をそろえることが不可欠です。
札幌ドームが無能と言われる場面はどこか
札幌ドーム無能という言葉が出る典型パターン
「無能」という強い言葉は、検索では“怒り”や“呆れ”を帯びて見えます。しかし実際の検索意図は、次のようにかなり実務的(※この語は使いません)ではなく、判断材料が欲しい方向に集約されます。
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ニュースで赤字額を見て「税金で穴埋めされるのか」と不安になった
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日ハム移転をめぐる議論を見て「何が争点だったのか」を短時間で整理したい
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料金改定や命名権の話を見て「状況は変わったのか」を知りたい
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誰がどこまで決められるのか(札幌市なのか、運営会社なのか)を明確にしたい
本記事では「無能」を、誰かの人格を貶める言葉としては扱いません。代わりに、炎上や批判が起きやすい論点を以下の4つに分けます。
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収支(赤字・黒字)の振れ
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契約・料金(上限、加算、付帯収益)の不満
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公共施設ゆえの意思決定の制約(条例・議会・公平性)
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説明不足(時点の混線、断定的な言い回し)
この4点を「事実」「制約」「判断ポイント」に分解できれば、感情的な断定から距離を取りつつ、自分の意見を持てるようになります。
札幌ドーム無能論で混ざりやすい事実と感想
SNSやコメント欄で混ざりやすいのは、「数字(事実)」と「評価(感想)」です。たとえば、命名権の契約期間や愛称変更の開始日は公式資料で確認できます。
一方で「経営陣が無能」「行政が悪い」といった断定は評価であり、根拠の置き方次第で結論が変わります。
そこで、まず“論点の地図”を表に固定します。
| 批判されがちな点 | 事実として確認しやすいこと | 制約・反論として出やすい視点 | 判断ポイント |
|---|---|---|---|
| 赤字が大きい | 2023年度決算で大幅赤字が報道 | 多目的施設は年度で振れやすい | 単年で断定せず、複数年度で見る |
| 日ハムが出ていった | 本拠地移転で売上構造が変化 | 公共性・公平性・手続きがある | 誰がどこまで譲歩できたか |
| 料金が高い | 条例改正で上限・加算が改定 | 維持費・物価高・委託費増 | 値上げが稼働に与える影響 |
| 説明が不十分 | 切り取りで炎上が起きやすい | 情報の時点が混線 | 年度・施行日・根拠をそろえる |
この表を軸に、次章から「収支」「争点」「制約」「今後」を順番に見ていきます。
札幌ドームの赤字はなぜ起きたのか
札幌ドームの決算で何が起きたかを時点付きで整理
まず重要なのは、“いつの年度の数字か”です。ここがズレると、話がすべて噛み合わなくなります。
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2023年度決算:報道で「6億5000万円超の赤字」と伝えられ、大きな注目を集めました。
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札幌市の委員会資料(令和7年2月26日提出):R6年度(2024年度)について黒字見通し、R7年度以降も改善を見込む資料が示されています。さらに「収支悪化分の補填は運営会社が内部留保で対応(税補填なし)」との記載もあります(資料の時点での整理)。
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札幌市長の会見記録(2025年6月):2024年度の収支が「4,200万円の黒字」という言及があり、赤字から転換したという扱いで質問が行われています。
この並びからわかることは、次の2点です。
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赤字は確かに大きな出来事だったが、以降の年度で“改善の資料・言及”が出ている
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したがって「赤字=永久に続く」「黒字=完全復活」といった単純化は危険で、年度で確認すべき
次に、なぜこのように振れやすいのかを、施設の構造から整理します。
札幌ドームの収益構造と多目的施設の弱点
多目的ドームは、毎年の収支が“イベントの当たり外れ”に影響されやすい性質があります。特に、固定的に日程が入るコンテンツ(例:年間一定数のホームゲーム)が失われると、次の課題が一気に増えます。
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予定が埋まらず、稼働が落ちやすい
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空きを埋めるために営業コストが上がる
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コンサートなど収益性が高い案件は競争が激しく、安定供給になりにくい
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物価高や賃上げで委託費が上がる局面では、固定費が重くなりやすい
札幌市の資料でも、物価高騰・賃上げに伴う委託料増加を見込む旨が示されており、運営努力だけで吸収しにくい外部要因があることが読み取れます。
収支はどう改善し得るのか(イベント日数・広告・命名権)
改善に効きやすいのは、基本的には「稼働日数」「広告収入」「固定収入(命名権等)」の積み上げです。札幌市資料には、R6年度の取組効果として「イベント日数の増加」「命名権(8か月分)や新規広告販売による広告料収入の増加」「コスト削減継続」などが記載されています。
ここで、見通しを一目で把握できるよう、資料に基づく主要項目を表にまとめます(単位:百万円、イベント日数:日)。
| 区分 | 2023(R5)決算 | 2024(R6)見込 | 2025(R7)予測 | 補足 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,271 | 1,669 | 1,765 | 貸館・商業・広告等 |
| 経常利益 | ▲560 | 24 | 40 | R6黒字見込み |
| 当期純利益 | ▲651 | 24 | 40 | ▲は赤字 |
| 総イベント日数 | 98 | 129 | 120 | 見込み含む |
※上表は札幌市の委員会資料(令和7年2月26日)に記載の数値を整理したものです。
この表が示すのは、「赤字の年度がある」ことと同時に、「改善の見込みが資料として提示されている」ことです。議論の出発点としては、ここを同時に見ておくのが安全です。
札幌ドームの命名権が効く範囲と限界
命名権は、収支の“下支え”になりやすい一方、万能薬ではありません。札幌ドームは2024年7月19日に命名権契約を締結し、2024年8月1日から愛称が「大和ハウス プレミストドーム」となっています。契約期間は2024年8月1日〜2028年7月31日(4年間)と公式資料に明記されています。
ただし、命名権で稼働が自動的に増えるわけではありません。命名権が効くのは主に「固定収入の追加」「広告露出の増加」「営業上の信用補強」といった領域で、稼働増は別途、イベント誘致や運営改善が必要です。札幌市資料でも、R6は命名権が8か月分、R7以降は1年分を反映と記載されており、年度によって寄与の出方が変わることが示されています。
札幌ドームと日ハム移転で何が争点だったのか
札幌ドームの利用料金と加算方式の考え方
移転の議論で繰り返し触れられるのが「利用料金」です。ここで注意したいのは、料金が“固定”ではなく、条例改正で見直され得るという点です。実際に札幌市議会で札幌ドーム条例改正が可決され、利用料金が約10%値上げされる旨が報道されています。
報道によれば、クローズドアリーナでの大規模催物の利用料金限度額は 1日770万円(税込み847万円)→850万円(税込み935万円)へ。入場者が2万人を超える場合の加算は 1人につき385円→425円へ。施行は 2025年4月1日とされています。
この情報は、議論の前提を整理するのに非常に重要です。そこで、ポイントを表にします(※税込・税抜の表記は情報源の記載に従い、混同しないよう注意します)。
| 項目 | 旧 | 新 | 施行日 |
|---|---|---|---|
| 利用料金の限度額(大規模催物) | 1日770万円(税込み847万円) | 850万円(税込み935万円) | 2025年4月1日 |
| 入場者2万人超の加算 | 1人385円 | 1人425円 | 2025年4月1日 |
このように、料金は「いつ時点か」で意味が変わります。日ハム移転を語るときも、議論の材料がどの時点の条件なのかを揃えなければ、議論が空中戦になりがちです。
札幌ドームの付帯収益と不満が生まれやすい構造
球場運営では、利用料金そのもの以上に、広告・飲食・物販・駐車場などの付帯収益が重要になります。一般論として、球団が施設を保有・主導するモデルでは、付帯収益を取り込みやすく、投資判断も速くなります。逆に、球団が“借りる側”に回ると、付帯収益の配分や意思決定の速度に不満が出やすくなります。
ここで重要なのは、札幌ドームに限らず「公共施設×指定管理」という枠組みは、競争的なスポーツビジネスの速度と噛み合いにくい場面が出るということです。つまり“能力の問題”だけではなく、制度と構造の問題が含まれます。
札幌ドームの改修要望と公共施設としての制約
改修(設備更新、座席、導線、演出設備など)は、収益改善に直結し得る一方で、公共施設には「公平性」「予算」「議会手続き」という制約があります。民間施設のように、関係者が即断して投資できるとは限りません。
この点を踏まえると、「改修が遅い=無能」と短絡するより、“誰が投資を決められるのか”を先に固定するほうが、議論が正確になります。次章で権限を見える化します。
札幌ドームの指定管理と条例が意思決定をどう縛るか
札幌ドームの意思決定が遅く見える理由
札幌ドームをめぐる議論では、「もっと柔軟にやればよかったのに」という感情が生まれがちです。ところが公共施設では、柔軟性と引き換えに、透明性や公平性を担保する設計になっています。その結果、スポーツビジネスの“速度”と摩擦が起きやすくなります。
この摩擦を理解するために、「誰が何を決められるか」を表にします。
| 主体 | 立場 | 決められること(例) | 制約(例) | 説明責任 |
|---|---|---|---|---|
| 札幌市 | 所有者・制度設計 | 条例、予算、指定管理の枠 | 議会手続き、公平性、公共性 | 市民への説明 |
| 運営会社(札幌ドーム) | 指定管理者・運営 | 営業、イベント誘致、運営改善 | 条例・契約の枠、費用上限 | 利用者・市への説明 |
| 利用者(主催者・クラブ等) | 採算主体 | 企画、集客、収支設計 | 施設条件、料金、日程 | 観客・顧客への説明 |
この表が示す通り、「やりたくてもできない」領域が発生しやすいのです。逆に言えば、改善策を考えるなら「枠の外(条例・制度)」を動かすのか、「枠の中(営業・運営)」で詰めるのかを切り分ける必要があります。
札幌ドーム条例改正と料金上限の見直しが示すこと
条例改正が可決され、料金が改定されるという事実は、制度側も“維持費や経費”を踏まえて見直しを進めていることを示します。報道では「経常経費を踏まえた適正な額に改定するため」と説明されている旨も記載されています。
ただし、料金を上げれば必ず改善するわけではありません。利用者側の採算が悪化して稼働が落ちれば、全体最適にならない可能性があります。したがって、料金改定は「稼働への影響」とセットで評価すべきです。
札幌ドームは今後どう立て直すか
札幌ドームの稼働率を上げる現実的な施策
札幌ドームの収支改善は、結局のところ「稼働日数」「収益性の高い案件」「固定収入の積み上げ」に依存します。札幌市資料でもイベント開催日数(年間120日程度)を前提に試算している旨が記載されています。
稼働を上げる施策は、机上の空論になりやすいので、現実的な打ち手を分解します。
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大型案件(コンサート等)を継続的に獲得する
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1回取れれば大きいが、競争が激しく、年度変動が出やすい
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したがって“単発勝負”ではなく、主催者との関係構築と再来訪の設計が重要
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展示会・企業イベントなど連日型を増やす
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連日型は稼働日数を底上げしやすい
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札幌の季節要因(冬期)を踏まえた誘致戦略が鍵
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平日利用の促進(価格・導線・運営の工夫)
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稼働の谷は平日に出やすい
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平日枠の使いやすさ(搬入導線、スタッフ手配、料金設計)が効く
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自主・共催イベントで“自分で需要を作る”
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ただしリスクも負うため、採算設計と段階的実験が必要
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この中で“何が効いているか”は、資料にあるイベント日数や収支の改善の要因から逆算できます。つまり、改善策は精神論ではなく、すでに示されている数字の動きから評価できます。
札幌ドームの料金戦略と利用者への影響
料金改定は、収益改善としては直感的ですが、利用者にとってはコスト増です。とりわけ、収益力が限られる主催者やクラブは影響が出やすいです。
このジレンマを解くためには、単純な“値上げ”ではなく、次のような設計が必要になります。
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需要が弱い枠(平日・閑散期)を取りやすくする
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料金だけでなく、搬入やスタッフ動線、セットアップ支援なども含めて“使いやすさ”を上げる
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高収益案件の価値を上げる(追加支払いに納得が出る状態)
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例えば観客動線、物販・飲食の回転、演出設備、案内のUXを整える
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料金の説明を透明化する
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「何の費用(維持費、委託費、光熱等)に対応するのか」を説明しないと、反発は減りにくい
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ここが弱いと、「値上げ=無能」のような短絡が起きやすくなります。料金は“結果”なので、説明の品質が世論の温度を大きく左右します。
札幌ドームをめぐる税負担リスクの見方(不安に直撃して整理)
税負担の不安は、「赤字なら税金で穴埋めでは?」という直感から生まれます。ここで大切なのは、年度・契約・整理の仕方を分けて考えることです。
札幌市の委員会資料には、収支悪化分の補填について「運営会社が内部留保にて対応(税補填なし)」と記載があります。
これは「すべての年度で必ず税補填がない」と断言する材料ではありませんが、少なくとも当該資料の時点で、税補填を前提にしない整理が示されている、という意味で重要です。
市民として不安を減らすために、確認の順番を提示します。
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(1)年度をそろえる:赤字・黒字はどの年度か
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(2)補填の整理を確認する:市の資料・会見でどう説明されているか
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(3)改善要因が“再現可能”かを見る:イベント日数、固定収入(命名権)、コスト増要因
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(4)料金改定の影響を観察する:値上げ後に稼働が落ちないか(中期で見る)
この4つを押さえると、「怒り」ではなく「判断」に戻れます。
札幌ドーム無能論でよくある誤解と確認ポイント
札幌ドームを単純比較すると見落とす前提条件
札幌ドームは、しばしば“新しい施設”や“民間主導の施設”と比較されます。しかし比較には前提があり、前提を揃えない比較は誤解を生みます。
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多目的施設か、特定競技に最適化された施設か
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所有者が自治体か、民間か
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条例・議会・公平性の制約があるか
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収益モデルが周辺開発と一体か、単体運営か
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設備更新の負担(建設時期の違い)がどうか
前提が違うと、同じ結果でも評価が変わります。「無能」というラベルは前提差を消してしまうので、比較前に前提を一度だけでも言語化することが重要です。
札幌ドームの情報を見るときのチェックリスト
情報の質を見抜くためのチェックリストです。SNSで見た主張を、そのまま信じないための“簡易フィルター”として使ってください。
| チェック項目 | 見るべきポイント | 一次・公的情報の例 |
|---|---|---|
| 数字に年度があるか | 2023年度なのか2024年度なのか | 札幌市の委員会資料、市長会見 |
| 料金に施行日があるか | いつから適用か | 条例改正の報道・議会情報 |
| 命名権の期間が明確か | 何年契約か | 札幌ドーム公式の発表 |
| 稼働の指標があるか | イベント日数など | 札幌市資料(イベント日数) |
| 断定が多すぎないか | 人格攻撃に寄っていないか | 事実と評価の分離 |
このチェックを通すだけで、極端な主張に振り回されにくくなります。
札幌ドームに関するよくある質問
Q1. 札幌ドームは本当に「無能」だったのでしょうか?
「無能」という評価は感情的な側面が強く、事実と評価が混在しています。
赤字や日ハム移転という“結果”だけを見ると失敗に見えますが、
実際には公共施設としての制度的制約や
契約構造の問題が大きく影響しています。
単純に能力不足と断定できる問題ではありません。
Q2. 日ハムが移転した最大の理由は何ですか?
最大の争点は、
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利用料金の仕組み
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付帯収益(広告・飲食・物販)の配分
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改修要望への対応スピード
でした。
特に、球団側が「集客しても利益が残りにくい」と感じる構造が、
移転判断を後押ししたと考えられています。
Q3. 札幌ドームの赤字はすべて税金で補填されるのですか?
必ずしもそうではありません。
赤字の扱いは、
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指定管理契約の内容
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札幌市の判断
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年度ごとの収支状況
によって変わります。
「赤字=即税金投入」と単純化するのは正確ではありません。
Q4. 命名権(ネーミングライツ)で問題は解決しますか?
命名権は安定した固定収入として有効ですが、
それだけで経営課題がすべて解決するわけではありません。
稼働率の向上や運営コストの最適化と
セットで考える必要があります。
Q5. 札幌ドームは今後、黒字経営を続けられますか?
短期的に黒字化する可能性はありますが、
多目的施設の特性上、
イベントの成否によって収支は大きく変動します。
重要なのは単年の黒字・赤字ではなく、
中長期での安定性を見ることです。