夜中に突然、子どもが激しく咳き込み、その勢いで吐いてしまうと、多くの保護者の方が「これって普通なの?」「救急に行くべき?」と強い不安を感じます。Yahoo!知恵袋などにも、同じような悩みや体験談が数多く投稿されています。
実は、小さな子どもが咳き込みをきっかけに吐いてしまうこと自体は、珍しいことではありません。しかし、その裏に別の病気が隠れている場合や、脱水・呼吸状態の悪化などに注意が必要なケースもあります。
本記事では、小児科や公的機関の情報をもとに、
なぜ咳き込んで吐いてしまうのか(仕組みと原因)
どんな状態なら様子見でよいか、どんなときに受診・救急が必要か
夜中に実際にどう動けばよいか(具体的な対処手順)
繰り返す場合や夜だけひどい場合に考えられること
今後同じことが起きたときに慌てないための備え
を整理して解説いたします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。少しでも不安が強い場合や、ここで挙げる危険サインがある場合には、早めの受診や「#8000(子ども医療電話相談)」等の公的窓口を必ずご利用ください。
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子どもが咳き込んで吐くことは、乳幼児では珍しいことではありませんが、回数・経過・全身状態のチェックが重要です。
「様子を見てもよい」「早めに受診」「今すぐ救急」の目安を、
呼吸の苦しさ
元気さ・意識
発熱・脱水
などの観点で確認しましょう。
夜中に実際に起きたときは、
まずは安全な姿勢と呼吸の確認
吐いた後の水分補給は少量から
回数や時間、様子をメモしておく
という流れを意識しておくと落ち着いて動けます。
繰り返す咳き込み嘔吐や夜だけひどい咳の場合は、喘息やアレルギーなど、長期的なケアが必要な病気が隠れていることもあります。早めに小児科で相談しましょう。
判断に迷うとき、すぐに受診できないときは、#8000(子ども医療電話相談)や「こどもの救急」などの公的な相談窓口を積極的に活用してください。
子どもが咳き込んで吐くのはなぜ?よくある原因と仕組み
咳き込み嘔吐とは?仕組みと乳幼児で起こりやすい理由
激しい咳が続くと、その振動や腹圧によって胃が刺激され、吐き気や嘔吐が起こることがあります。これを一般的に「咳き込み嘔吐」と呼びます。
特に乳幼児では、
胃と食道をつなぐ「噴門」の筋肉が未熟で逆流しやすい
体が小さく、少しの咳でも胃の中身が押し戻されやすい
ミルクや食事の量に比べて胃の容量が小さい
といった理由から、大人よりもちょっとした咳でも吐きやすい特徴があります。
年齢による違い:乳児と幼児の「吐きやすさ」の特徴
乳児(0〜1歳前後)
胃の入り口が未熟で逆流しやすく、授乳後や寝転んだ姿勢で咳き込むと吐きやすい
ミルクの飲み過ぎ、ゲップが十分に出ていない場合も、咳き込み嘔吐のきっかけになります
幼児(1〜5歳)
乳児期よりは吐きにくくなりますが、激しい咳や長く続く咳のときには、やはり吐きやすくなります
感染性胃腸炎など、そもそも吐き気を伴う病気の場合「咳 → 吐く」の順番に見えることもあります
学童以降
咳き込みで嘔吐する頻度は徐々に減りますが、喘息や百日咳など、強い咳を伴う病気では起こることがあります
よくある原因疾患と特徴(例)
以下は、咳き込み嘔吐の背景としてよく見られる病気の一例です。
かぜ(上気道炎)
鼻水・鼻づまり・軽い発熱を伴うことが多い
痰が絡んだ咳が続き、夜間に悪化しやすい
気管支炎・肺炎
発熱、元気のなさ、呼吸が早い・苦しそうなどのサイン
咳が強く長引き、嘔吐を伴うこともあります
気管支喘息・咳喘息
夜間や明け方に咳が悪化しやすい
「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった喘鳴を伴うことが多く、発作時に咳き込み嘔吐を起こすことがあります
百日咳・マイコプラズマ肺炎など
特徴的な「こんこんと続く」咳が長期間続く
咳き込みの最後に嘔吐を伴うことがあり、ワクチン歴や流行状況も重要です
胃腸炎・胃食道逆流症などの消化器疾患
もともと嘔吐が主症状の病気で、嘔吐の直前に咳が出ることも
咳が原因というより、胃の状態の悪さから咳と嘔吐が同時に見られるケースもあります
今すぐ確認したい「危険サイン」と受診・救急の目安
ここでは、一般的な目安として「様子を見てもよいことが多いケース」「できるだけ早めに受診したいケース」「救急・119番を検討すべきケース」を整理します。
様子を見てもよいことが多いケース
次のような場合は、一般的には大きな問題がないことも多く、短時間の経過観察が可能なことがあります。
咳き込んで1〜2回吐いたが、その後は
機嫌が良く遊べる
顔色もよく、呼吸も苦しそうではない
水分がとれ、尿も出ている
発熱があっても、解熱中は元気が戻る
吐いた後にスッキリした様子で眠れている
ただし、回数が増える・様子が変わってきたときには受診が必要になります。
早めに小児科受診を検討すべきケース
翌日の日中や、早めのタイミングで小児科を受診した方がよいと考えられる目安です。
咳き込み嘔吐が繰り返し起こる
1晩に何度も吐く
数日間、夜ごとに続いている
発熱が続く(目安:38℃前後以上が2〜3日以上)
咳が1〜2週間以上続いている
ゼーゼー・ヒューヒューなど喘鳴がある、あるいは夜だけ咳がひどい
食欲が落ちているが、水分はなんとかとれている
以前、喘息や肺炎、早産などの既往があり、咳き込みが心配
救急外来・119番を検討すべき危険サイン
以下のような場合は、すぐに医療機関に連絡・受診、あるいは119番通報を検討すべき緊急度の高いサインです。
呼吸が明らかに苦しそう
肋骨の間やみぞおちがペコペコへこむ(陥没呼吸)
肩で息をしている、息が荒い
ゼーゼーしていて、うまく言葉にならない
顔色が悪い、唇や爪が青白い(チアノーゼ)
ぐったりして反応が鈍い、呼びかけに反応しにくい
高熱と嘔吐が続き、水分がほとんどとれない
尿が半日以上出ていない
泣いても涙が出ない、口の中がカラカラ
けいれんを起こした、あるいは意識がはっきりしない
吐いたものに血液やコーヒーかす様のものが混じる
比較表:一般的な受診目安
| 状態・症状の例 | 目安 |
|---|---|
| 1〜2回咳き込んで吐いたが、その後元気・水分も取れる | 短時間の様子見+翌日かかりつけで相談 |
| 咳き込み嘔吐を何度も繰り返す/数日続いている | できるだけ早めに小児科受診 |
| 呼吸が苦しそう・ぐったり・顔色不良・けいれんなど | すぐに救急受診や119番を検討 |
※判断に迷う場合は、全国共通「#8000(子ども医療電話相談)」へ電話すると、小児科医・看護師が受診の目安をアドバイスしてくれます。
夜中に咳き込んで吐いたときの具体的な対処手順
ここでは、夜中に実際に起きてしまったときの「最初の数分〜数時間」でできる対応を、ステップ形式で整理します。
吐いた直後の安全確保と姿勢(窒息予防)
チェックリスト:吐いた直後に行うこと
体勢を横向き・ややうつぶせ気味にする
吐いたものが喉に逆流して気道に入らないようにするため
口の周りと鼻の周りを、やさしく拭き取る
服やシーツが汚れた場合は、可能な範囲で着替え・交換する
吐き気が続いていそうなときは、再度吐いても安全なようにタオルや洗面器を準備する
大きな声で慌てて騒ぎすぎず、落ち着いた声で子どもに声をかけ安心させる
※眠っている最中に吐いた場合は、特に顔が吐物に埋もれていないか、呼吸がしやすい体勢かを確認してください。
水分・食事の与え方と避けたい飲食物
吐いた直後にたくさん飲ませたり食べさせたりすると、再度吐いてしまうことがあります。
吐いた直後(30分〜1時間程度)は、無理に飲食をさせない
その後、吐き気が落ち着いているようなら
スプーン1さじ〜数さじ程度の少量の水・お茶・経口補水液から
5〜10分おきに、少しずつ様子を見ながら増やす
避けた方が良いもの(目安)
炭酸飲料・ジュース類
柑橘系の果汁
牛乳・乳製品(胃腸炎が疑われる場合は特に)
固形物の食事は、嘔吐が落ち着いてからで構いません。翌朝以降、子どもの食欲を見ながら、消化の良いもの(おかゆ、うどん、バナナなど)から再開するとよいでしょう。
落ち着いた後に観察したいポイントとメモの取り方
吐いた直後はバタバタしてしまいますが、落ち着いてきたら、次のポイントを確認してメモしておくと、受診時に大変役立ちます。
観察チェックリスト
嘔吐の回数・時間帯
吐いた量と内容(ミルク・食べたもの・透明な液体など)
発熱の有無と最高体温
咳の様子(乾いた咳か、痰がからんでいるか、ゼーゼーしているか)
子どもの機嫌・元気さ(遊べるか、笑うか、ぐったりしていないか)
尿の回数や量(オムツの濡れ具合)
スマートフォンのメモや、母子手帳の空きスペースに簡単に書いておくと、後で医師に説明しやすくなります。
夜だけ咳がひどい・何度も吐く場合に考えられること
夜間に悪化しやすい咳の例
夜になると咳が悪化し、咳き込み嘔吐につながりやすい病気もあります。
気管支喘息・咳喘息
夜間・明け方に咳が強くなる
ゼーゼー・ヒューヒューする、階段や運動で息が切れやすいなどの特徴
後鼻漏(こうびろう)
日中はそれほどでもないが、寝ているあいだに鼻水が喉に流れ込み、むせるような咳が出る
アレルギー性の咳
ダニ・ハウスダスト・ペットの毛など、寝具や寝室環境がトリガーになることもあります
咳き込み嘔吐を繰り返すときに疑う病気の例
気管支喘息・咳喘息
百日咳やマイコプラズマ肺炎など、長引く咳を特徴とする感染症
胃食道逆流症など、胃の内容物が逆流しやすい状態
これらの可能性がある場合、咳が長く続く・夜だけひどい・毎回吐いてしまうといった特徴が見られます。早めに小児科、必要に応じて小児アレルギー・呼吸器の専門医に相談しましょう。
繰り返す場合の検査・相談の流れ
まずはかかりつけ小児科で、
問診(いつから/どんなときに/どのくらいの頻度で)
聴診(肺の音、喘鳴の有無)
必要に応じて胸部レントゲンや血液検査など
喘息が疑われる場合は、
長期コントローラーとしての吸入薬
発作時の頓用薬の指示
アレルギー検査(ダニ・ハウスダスト・花粉・ペットなど)
家庭でできる夜間の咳き込み予防と環境づくり
寝室の環境(温度・湿度・ホコリ・寝具)を整えるポイント
室温:おおむね20〜23℃程度を目安に、暑すぎ・寒すぎを避ける
湿度:40〜60%程度を目安に、加湿器や濡れタオルなどで乾燥を防ぐ
寝具:
枕元のぬいぐるみやクッションが多すぎるとホコリが溜まりやすい
布団をこまめに干す・掃除機をかけるなどしてダニ・ハウスダスト対策を行う
喫煙:家族に喫煙者がいる場合は、屋外でも衣服・髪についた煙のニオイが刺激になることがあるため、できるだけ減らす・衣服を変えるなどの配慮を
寝る前の過ごし方と生活リズムの整え方
寝る直前の大きな食事や大量の水分は、逆流や咳き込みのきっかけになることがあります
入浴は寝る1〜2時間前までに済ませ、体温が落ち着いてから就寝する
鼻水が多い場合は、寝る前に鼻をかませる/吸引するなどして、後鼻漏を減らす工夫も有効です
市販薬・処方薬との付き合い方と注意点
咳は、痰やウイルスを外に出すための大切な反応でもあり、自己判断で市販の咳止めを長く使用することは推奨されません。
処方された薬は、医師の指示通りに使用し、
効果が乏しい
副作用が心配
などがある場合は、自己判断で中止するのではなく、必ず医師・薬剤師に相談してください。
受診すると決めたら:持ち物と医師に伝えるべき情報
夜間受診・救急外来に持っていくと役立つ持ち物リスト
母子手帳
健康保険証・医療証
お薬手帳
いつも使っている薬(吸入薬や頓用薬など)
おむつ・着替え・タオル
ビニール袋(汚れ物・吐物処理用)
飲み物(経口補水液など/医師の指示があれば)
医師に伝えるべき情報(テンプレート)
受診時には、次のような項目を整理して伝えると、診断の助けになります。
いつから咳が出ているか
今夜、何回くらい吐いたか(時間も分かれば)
吐いたもの(ミルク・食べたもの・透明な液体など)
発熱の有無と最高体温
咳の特徴(ゼーゼーする/痰がからむ/乾いた咳など)
既往歴(喘息・肺炎・早産・心臓の病気など)
同居家族や園・学校での流行状況(インフルエンザ、RSウイルス、胃腸炎など)
スマホにメモしておけば、慌てていても落ち着いて伝えやすくなります。
#8000や「こどもの救急」の活用方法
#8000(子ども医療電話相談)
休日や夜間に、受診の目安や家庭での対処について、小児科医・看護師に電話で相談できる公的な窓口です。
携帯・固定電話から「#8000」を押すと、お住まいの都道府県の相談窓口につながります(実施時間は自治体により異なります)。
「こどもの救急」(日本小児科学会)
Web上で症状を選び、「今すぐ受診が必要か」「翌日まで様子を見てもよいか」の目安を確認できるサイトです。
夜間にスマホで利用しやすく、本記事の内容と併用すると判断の助けになります。
よくある質問(FAQ)
1回だけ咳き込んで吐いて、その後元気な場合は?
1回だけの咳き込み嘔吐で、その後は機嫌も良く、飲食もできている場合、乳幼児ではよくあるパターンの一つです。
ただし、
同じ夜に何度も繰り返す
咳や発熱が強い
呼吸が苦しそう
といった変化が出てきた場合には、翌日早めの小児科受診、あるいは夜間の相談窓口に連絡しましょう。
熱はないのに、夜だけ毎日咳き込んで吐きます
高熱がなくても、夜だけ咳がひどく、何度も吐いてしまう場合には、気管支喘息・咳喘息・後鼻漏・アレルギー性の咳などが関係している可能性があります。
数日〜数週間続く場合
家族に喘息やアレルギー体質がある場合
には、早めに小児科(必要に応じてアレルギー・呼吸器専門医)で相談してください。
吐いた後、すぐに寝かせても大丈夫?窒息が怖いです
吐いた直後は横向きまたはややうつぶせ気味の姿勢で様子を見て、呼吸が落ち着いていることを確認しましょう。完全に仰向けに寝かせると、再度吐いたときに吐物が喉に逆流し、窒息のリスクが高まります。
しばらくは大人がそばに付き添い、呼吸の状態を見守る
再び吐きそうな様子があれば、すぐに体勢を整えられるよう準備しておきましょう
兄弟にうつる?嘔吐物の片付け方は?
原因が風邪や胃腸炎などの感染症である場合、咳や嘔吐物を介して兄弟・家族にうつる可能性があります。
吐物は手袋やビニール袋を使って処理する
次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤を薄めたもの)などで周囲を拭き取る
処理後は石けんでしっかり手洗いをする
タオルや食器の共用を避ける
など、一般的な感染対策を行うと安心です。