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眼科医がレーシックをしないのはなぜ?リスク・適応・後悔を避ける判断軸を一次情報で解説

「眼科医はレーシックをしないらしい」
検索すると、こうした言葉を目にして不安になった方も多いのではないでしょうか。
視力が良くなり、眼鏡やコンタクトから解放される――そんな大きなメリットがあるはずのレーシックを、なぜ“目の専門家”である眼科医自身は選ばないことが多いのか
そこには、一般にはあまり語られない「医療者ならではの判断軸」と、「後悔を避けるために本当に知っておくべき視点」が存在します。

本記事では、「眼科医がレーシックをしない=危険」という単純な結論に流されることなく、
不可逆性・長期的な不確実性・見え方の質(QOV)・職業や生活への影響といった観点から、その理由を丁寧に分解して解説いたします。
さらに、レーシックが向く人・慎重に考えるべき人の違いや、ICL・SMILE・眼鏡・コンタクトといった代替手段との比較、後悔を避けるための具体的なチェックポイントまで網羅します。

「自分は受けるべきなのか、それとも別の選択肢があるのか」
その答えを感情や噂ではなく、納得できる判断基準で導き出すために、ぜひ最後までご一読ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療の代替ではありません。最終判断は必ず術前検査を含め、担当医とご相談ください。

※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。

目次

「医師がしない=危険」ではなく“判断軸”の違い

「眼科医がレーシックをしないのはなぜか」という問いは、単なる噂話ではなく、意思決定の構造を理解するうえで重要な視点を含みます。結論から申し上げますと、「眼科医がしない=レーシックが危険」という短絡は成り立ちにくく、医療者特有の判断軸(リスク最小化・職業要件・代替手段の存在)によって選好が分かれやすい、という整理が最も実務的です。

レーシックは、多くの方にとって生活の質を上げ得る一方、医療の世界では「正常な組織に侵襲を加える」行為は、一般に慎重に扱われます。特に眼科医は、視機能の微細な変化が生活や仕事に与える影響を日常的に目の当たりにしているため、メリットの大きさだけでなく、小さな確率でも起きうる取り返しのつかない不利益を強く意識します。

また、レーシックには眼鏡・コンタクト・ICL・SMILEといった代替手段があり、「視力を得る」という目的自体は複数の方法で達成可能です。目的達成のルートが複数ある場合、人はより保守的な選択(不可逆性が低い、やめやすい、調整しやすい)に傾きやすく、これは医療者に限らず合理的な意思決定モデルとして理解できます。

以下では、なぜそうした判断になるのかを、4つの理由に分解して詳しく解説いたします。

理由1 不可逆(角膜を削る)で、合併症がゼロではない

レーシックは、角膜の形状をレーザーで調整して屈折異常(近視・乱視など)を矯正する手術です。角膜にフラップを作り、角膜実質を削る工程が含まれるため、角膜の形状変化は基本的に元へ戻せません。ここが、眼鏡やコンタクトと根本的に異なる点です。眼鏡やコンタクトは「外付けの矯正」であり、合わなければ外す・度数を変える・中止するといった変更が容易です。一方レーシックは、術後に何か問題が起きた場合、「完全に元の状態に戻す」という解決策が取りにくい性質を持ちます。

また、合併症や術後症状は「必ず起きる」わけではありませんが、医療行為である以上、ゼロにはできません。患者側からすると「確率が低いなら大丈夫」と捉えやすい一方、医療者側は「ゼロではない事象」を現実の臨床として捉えます。特に視機能は、日常のほぼ全行動に関わるため、少しの違和感でも生活満足度に影響し得ます。医療者が避けたいのは、重篤な合併症だけでなく、軽度でも長期化する不具合が残ってしまうケースです。

さらに、手術の評価は「視力表の数値」だけで完結しません。視力が1.0出ていても、乾燥で視界が揺らぐ、光がにじむ、夜間に見え方が不安定になる、といった「質」の問題が残ることがあります。不可逆性がある以上、こうした質の問題が残ったときに、患者の納得感を取り戻すのは簡単ではありません。医療者が慎重になるのは、こうした意思決定の後戻りの難しさを知っているからです。

理由2 長期予後には不確実性が残り、慎重に適応を選ぶ必要がある

レーシックは長い歴史があり、多数の症例も存在しますが、医療者の視点では「長期的に何が起き得るか」を常に問い続けます。例えば、加齢による変化(老視の進行、白内障など)や、体質・生活習慣の変化(ドライアイの悪化、睡眠不足、コンタクトの使用歴など)が重なると、術後の満足度が変わる場合があります。つまり、術後直後の結果が良好でも、長い目で見たときに不満や問題が出る可能性を完全には排除できません。

ここで重要なのは、「不確実性=危険」という意味ではなく、不確実性がある領域では、適応選択と説明責任がより重要になるという点です。医療行為においては、利益と不利益のバランスを個別に評価することが基本です。屈折矯正手術は、命に関わる疾患治療とは異なり、「生活の利便性向上」が主目的になりやすい領域です。そのため、医療者は「得られる利益が十分に大きいか」「生じ得る不利益を許容できるか」という視点で、より慎重に見立てます。

また、適応判断が難しいのは、単に角膜の厚さや形状だけではなく、患者の価値観(夜間の見え方を最重要視する、多少のにじみでも許容できない、乾燥がつらいなど)も関与するからです。長期予後に不確実性がある以上、医療者は「誰にでも同じ提案」をしにくくなります。結果として、医療者自身が自分に手術を適用する場面では、より保守的に判断しやすい構造があります。

理由3 眼科医は“見え方の質”低下を避けたい職業要件がある

「視力が良くなるなら医師こそ受けそう」と考える方もいらっしゃいますが、実際には逆の側面もあります。眼科医は日常業務で、顕微鏡や細かな所見の観察、微細な濁りや反射の判断、患者の訴えの微妙な差の読み取りなど、「視覚情報の精度」が求められます。ここで重要なのは、視力表で測る“視力”と、仕事で要求される“視覚性能”は一致しないことがある点です。

例えば、以下のような状態は、一般生活では我慢できても、仕事では大きなストレスになり得ます。

  • 夕方以降に乾燥して視界が揺らぐ

  • 夜間の対向車ライトがにじむ

  • コントラストが落ちたように感じる

  • 片目の見え方が微妙に違う(左右差)

  • 体調で見え方がブレる

眼科医は、患者が「見え方が変」と訴える背景に、涙液の状態、角膜の微細変化、乱視成分、瞳孔径、収差などが絡むことを知っています。つまり、起こり得る質の問題を“具体的に想像できる”のです。想像できるリスクは心理的に重くなりやすく、これが行動(選好)を変えます。

また、医療者は「自分が手術を受ける=患者へも推奨しやすい」という関係を無意識に意識する場合があります。自分の経験が患者の意思決定に影響し得ることを理解しているため、個人的な体験に依存しない説明をしたい、と考える医療者もいます。そうした姿勢も、結果として「自分は受けない」という選択に寄与し得ます。

理由4 眼鏡・CL・ICL・SMILEなど代替手段がある

屈折矯正のゴールは「裸眼で見えること」ではなく、より広く言えば「日常生活を不自由なく過ごせる視機能を確保すること」です。この目的に対して、現代は選択肢が多様です。

  • 眼鏡:安全性が高く、度数調整が容易

  • コンタクト:活動性が高く、見た目やスポーツ適性に利点

  • ICL:角膜切除を避けたい場合の選択肢になり得る

  • SMILE:術式特性が合うケースもある

このように複数ルートがあるとき、人は「後戻りのしやすさ」「調整のしやすさ」「リスクの種類」を比較して選びます。レーシックは、メリットが明確な一方で不可逆性があり、リスクの性質が眼鏡・コンタクトとは異なります。そのため、医療者は「どうしてもレーシックである必要があるか」を問いやすくなります。代替があるからこそ、より保守的な手段に価値を置きやすい、という構造です。


レーシックの基礎|何が変わり、何が戻せないのか

レーシックを検討する際、多くの方が「メリット・デメリット」という二分法で情報を集めます。しかし実際の意思決定では、「何が変わるのか」「何が戻せないのか」を理解することが極めて重要です。ここを曖昧にしたまま進むと、術後に想定外の不満が出た際、納得感が崩れやすくなります。

角膜フラップとレーザー切除の概要

レーシックでは、角膜表層にフラップ(薄い蓋のようなもの)を作り、これをめくって角膜実質にレーザーを照射し、角膜のカーブを調整します。角膜はカメラのレンズのような役割を持つため、カーブが変わると光の屈折が変化し、結果として近視・乱視が矯正されます。

ここで押さえるべきポイントは、次の2点です。

  1. 角膜の一部を切除するため、角膜の厚みが減る

  2. 形状変化は基本的に不可逆であり、元通りに戻す治療は困難

もちろん医療技術は進歩しており、適切な適応評価と技術・設備・術後管理が行われれば良好な結果が得られることも多いです。ただし、意思決定の材料としては「戻せない性質がある」という事実を軽視しないことが重要です。

起こりうる代表的な症状(ドライアイ/ハロー・グレア等)

レーシックに関連して語られやすい症状は、主に「乾燥」と「光のにじみ」です。ただし、これらは単純に有無だけで判断できず、程度・期間・生活影響で評価する必要があります。

  • ドライアイ
    乾燥感、異物感、しょぼしょぼする、夕方に見え方が落ちるなど、多様な症状があり得ます。もともとドライアイ傾向の方は、術後に乾燥が強まると、見え方の安定性が落ちる場合があります。特にデスクワーク中心の方は、瞬目(まばたき)が減りやすく、乾燥が表面化しやすい傾向があります。

  • ハロー・グレア(光のにじみ)
    夜間の街灯や車のライトが輪っか状に見える、まぶしく感じる、といった訴えです。夜間運転が多い方や、暗所での作業がある方にとっては、生活のストレスになり得ます。

  • 見え方の質の変化(コントラスト、にじみ、左右差)
    視力表では問題がなくても、細かい文字が見づらい、輪郭が甘い、片目だけ微妙に違和感がある、などの訴えが生じることがあります。こうした質の問題は、説明が不足していると「こんなはずではなかった」という後悔につながりやすい領域です。

これらは起こるか起こらないかだけではなく、どの程度なら許容できるかが重要です。ご自身の生活に照らし、許容範囲を具体化しておくことが、術前の合意形成(同意説明)において非常に役立ちます。


眼科医が慎重になるポイントを“生活影響”に翻訳

「医師が慎重」という言葉は抽象的ですが、実務上は「生活影響に直結するポイント」を強く警戒している、と捉えると理解が進みます。ここでは、読者の生活場面に落とし込んで整理いたします。

夜間運転・精密作業・ドライアイ体質での注意点

以下に当てはまる方は、「見え方の質」に対する要求水準が高い可能性があります。要求水準が高いほど、わずかな変化でも満足度が下がり得るため、より慎重な検討が必要です。

  • 夜間運転が多い方
    ハロー・グレアは、夜の安全運転に心理的負担を与え得ます。事故リスクそのものというよりも、「見え方が気になる」ことが集中力を削ぐ場合があります。夜間運転の頻度、仕事での運転の必要性、雨天時の運転など、具体場面を想像し、許容範囲を整理してください。

  • 画面作業が長い方(IT職・事務職など)
    乾燥は、見え方の揺らぎとして現れることがあります。午前中は問題なくても夕方から疲れとともに見えにくい、というパターンは、仕事の効率に影響し得ます。ドライアイ傾向がある場合は、術前から乾燥対策を徹底し、検査で評価してもらうことが重要です。

  • 精密作業・医療従事・研究職など
    微細なコントラスト差やにじみが作業精度に影響し得ます。視力が良くても「目が疲れる」「細部が読み取りづらい」という不満は、業務ストレスになります。こうした職業要件の方は、メリット(眼鏡の煩わしさ解消)とデメリット(質変化リスク)をより厳密に比較する必要があります。

以上のように、同じ手術でも「生活影響」は人により異なります。医師が慎重になるのは、こうした差を理解しているからでもあります。

不適応・慎重適応になりやすい条件

レーシックの適応は、単に近視度数だけでは決まりません。代表的には、角膜の厚み・形状、角膜疾患の有無、ドライアイの程度、屈折の安定性など、多要素で判断されます。ここで大切なのは「自己判断で決めない」ことです。なぜなら、同じ条件に見えても、測定値の微差や所見の読み取りで判断が変わる場合があるからです。

ただし、読者側が「慎重適応の可能性」を把握しておくことは有益です。少なくとも、次のような要素がある方は、術前検査の説明をより丁寧に受ける必要があると考えてください。

  • 乾燥が強く、点眼が欠かせない

  • 角膜が薄いと言われたことがある、または角膜の形状に不安がある

  • 強度近視である

  • 眼科疾患の既往(緑内障、角膜疾患など)がある、または疑いを指摘された

  • 夜間の見え方が職業上重要である

  • リスクを許容しにくい性格・状況(絶対に後悔したくない、仕事に支障が出たら困る等)

重要なのは、これらに当てはまるから「できない」と決めつけることではなく、「説明と評価の深さが必要」と理解することです。


他の視力矯正(ICL/SMILE/眼鏡・CL)との比較

レーシックを検討する際、比較対象を持たないまま「手術をするかしないか」で悩むと、思考が行き詰まりやすくなります。比較対象を明確にすることで、「何を優先したいのか」が整理され、決断の質が上がります。

比較表(可逆性・角膜侵襲・費用傾向・向き不向き)

選択肢可逆性角膜への侵襲主な懸念(例)向く人の傾向
レーシック(LASIK)低い(角膜形状は不可逆)あり(フラップ+切除)ドライアイ、ハロー・グレア、再治療不可の場合適応条件を満たし、メリットが明確な人
ICL(有水晶体眼内レンズ)相対的に高い(取り出し得る)角膜切除はしない(眼内手術)眼内手術の一般リスク、適応条件角膜を削りたくない、強度近視などで検討されやすい
SMILE手技特性上、LASIKと差異角膜内でレンチクル作製適応・長期評価は個別検討適応を満たし、術式特性が合う人
眼鏡/コンタクト高い(中止できる)なし乾燥・感染、手入れ負担リスク最小化を最優先する人

比較表の読み方としては、「どれが一番優れているか」ではなく、リスクの種類が違うと捉えるのが重要です。例えば、眼鏡は生活の自由度が下がる場面がある一方、手術に伴う合併症は基本的にありません。ICLは角膜切除を避けられる可能性がありますが、眼内手術である以上、別種のリスク評価が必要になります。SMILEも術式特性があり、向き不向きがあります。つまり、比較は「安全か危険か」ではなく、「どの不利益が自分にとって致命的か」で行うべきです。

レーシックが向く人/向かない人

向きやすい人(目安)

  • 術前検査で適応が明確である

  • 近視・乱視の状態が安定している(度数変化が大きくない)

  • 眼鏡やコンタクトによる不便・ストレスが大きく、得られる利益が明確

  • 夜間視の質低下や乾燥の可能性を理解し、一定の不確実性を受け入れられる

向きにくい人(目安)

  • 乾燥が強い、または乾燥による見え方の揺らぎがすでにある

  • 夜間運転や暗所作業が多く、光のにじみが許容しにくい

  • 角膜や眼圧など、眼科的に注意点がある(疑いを含む)

  • 生活・仕事上、わずかな質変化でも困る可能性が高い

  • リスクを許容できない(手術に伴う不確実性が精神的負担になる)

ここでのポイントは、「向く/向かない」は能力評価ではなく、価値観と生活条件の話だということです。視力矯正は、正解が一つではありません。自分にとっての最適解を選ぶために、比較の軸を先に作ることが重要です。


失敗(後悔)を避けるための手順

後悔の多くは、「情報不足」か「期待値のズレ」から生じます。手術自体の技術だけでなく、術前検査・説明・同意・術後フォローというプロセス全体が、満足度を左右します。ここでは、実務的に有効な手順を整理いたします。

術前検査で確認すべき項目

術前検査の目的は、単に「手術できるか」を判定することではなく、その人にとって合理的な選択かを評価することです。確認すべき領域は、大きく分けて次の3つです。

  1. 角膜の安全性評価:厚み、形状、疾患兆候、乱視成分

  2. 見え方の質に関わる評価:ドライアイ評価、瞳孔径、生活環境

  3. 期待値調整:どの程度の見え方を目指すのか、どの不利益が許容できないのか

読者の立場で特に重要なのは、検査結果を「はい/いいえ」だけで伝えられるのではなく、数値や所見として説明してもらえるかです。説明が具体的であればあるほど、納得感が上がり、術後に不具合が出た場合でも、事前に理解していた範囲として受け止めやすくなります。

また、検査の場で「あなたはレーシック向きです」とだけ言われた場合は、少なくとも「なぜ向いているのか(何が良好なのか)」「注意点は何か」を必ず聞くべきです。逆に「向いていない」と言われた場合も、「代替手段は何か」「改善可能な要素(例えば乾燥治療で評価が変わる等)があるか」を確認することが重要です。

同意説明で必ず確認したい質問リスト

同意説明は、署名をするための儀式ではなく、意思決定の質を上げるための手続きです。ここが形式化していると、術後に「そんな話は聞いていない」と感じやすくなります。以下の質問は、重要論点を効率よく押さえるための実務的なテンプレートです。遠慮なくご活用ください。

  • 自分の不安(乾燥、夜間のにじみ等)に対し、想定される経過をどう説明しますか?
    → 「起こり得る」だけでなく、「起きた場合、どのくらい続くことが多いか」「どう対処するか」を確認します。

  • 合併症が起きた場合の対応(受診先、治療、追加費用)は明文化されていますか?
    → 万一の際の導線が不明確だと、心理的不安が増えます。紹介先や対応範囲を確認します。

  • 追加治療(再照射)が可能な条件/不可能な条件は何ですか?
    → 「必要ならやり直せる」という理解は危険です。条件と制約を事前に明確化します。

  • 術後フォローの頻度・期間、緊急時の連絡体制はどうなっていますか?
    → 術後症状は時間経過で変化し得ます。フォローが短いと不安が残ります。

  • 自分の職業・生活(夜間運転、精密作業)を踏まえた注意点はありますか?
    → 一般論ではなく、個別最適の説明ができるかを見る質問です。

この質問に対して、曖昧な回答が続く場合は、別の医療機関で説明を受ける(セカンドオピニオン)価値があります。

術後フォロー・セカンドオピニオンの考え方

セカンドオピニオンは「揉めたときに取るもの」と誤解されがちですが、実務上は「重要な意思決定の前に、判断材料を増やす手段」です。特に屈折矯正は、生活の利便性を上げる一方で、完全にゼロリスクではありません。したがって、少しでも不安が強い場合、検査結果と説明を受けた直後にセカンドオピニオンを挟むことは合理的です。

また、術後フォローについても、「通院回数」だけでなく、「症状が出たときに相談しやすい体制か」「説明と対処が一貫しているか」が重要です。術後に乾燥や見え方の不安が出た際、適切な点眼や生活指導、必要な検査を受けられるかどうかで、体感は大きく変わります。


トラブルシューティング|不安が強いときの対処

情報収集を進めるほど、不安が増す方もいらっしゃいます。これは正常な反応です。なぜなら、屈折矯正は「絶対の正解」がなく、価値観が絡む意思決定だからです。ここでは、不安が強いときに実務的に効く対処を提示いたします。

情報が真逆で混乱したとき

レーシックは体験談が豊富である一方、体験談は「条件の違い」を無視すると誤解を生みます。例えば、同じ「ドライアイ」という言葉でも、軽度の乾燥と重度の乾燥では意味が違います。夜間運転の頻度や仕事の要求水準が違えば、満足度も変わります。

混乱したときは、以下の順で情報を整理すると、判断軸が戻りやすくなります。

  1. 一次情報(学会・公的機関・医療機関の説明)で共通項を確認する

  2. 自分の条件(生活・仕事・体質)を書き出す

  3. 許容できない不利益を先に決める(例:夜間ににじむのは不可、乾燥が増えるのは不可 等)

  4. その不利益に関係する検査・説明が十分かを評価する

特に3が重要です。「欲しいもの(裸眼)」より、「避けたいもの(後悔の種)」を先に定義すると、意思決定が安定します。

ドライアイが強い/夜間ににじむのが心配なとき

この2つは、読者の不安として非常に多い論点です。対処の基本は「状態の可視化」と「代替案の同列検討」です。

  • ドライアイが心配な場合
    まずは、乾燥がどの程度なのかを評価してもらい、必要なら治療で状態を整えてから再評価する、という順序が堅実です。乾燥は体調・環境・季節で変動し、自己評価が当てになりにくい場合があります。評価と対策を先に行うことで、術後の不安要素を減らしやすくなります。

  • 夜間のにじみが心配な場合
    夜間運転の頻度、雨天時の運転、仕事上の運転の有無など、「にじみが出たら困る度合い」を具体化してください。困る度合いが高い方は、レーシック以外の選択肢も同列に検討し、術前説明で夜間視に関する話がどこまで具体的かを重視するのが実務的です。

いずれも、「大丈夫と言われたから安心」ではなく、「どういう前提で大丈夫と言っているのか」を確認することが重要です。前提が明確であれば、納得して進めやすくなります。


よくある質問(FAQ)

眼科医でもレーシックを受けている人はいますか?

受けている方はいらっしゃいます。ただし、「医師はほとんど受けない」「医師も普通に受ける」といった断定は、観測範囲や環境によって印象が変わります。重要なのは、医師であっても適応と価値観で選択が分かれるという点です。医師はリスクをより具体的に想像できるため、保守的になる傾向はあり得ますが、それが「手術は危険」という結論と同一ではありません。

ドライアイやハロー・グレアは必ず起きますか?

必ずではありません。ただし、術後症状として一定の割合で起こり得る、という理解が現実的です。ここでのコツは、「起きるかどうか」をゼロイチで考えないことです。重要なのは、起きた場合の程度と期間、生活への影響、対処の導線です。術前説明でこの3点が具体的に語られるほど、術後の納得感が上がります。

長期的に視力が戻る(近視戻り)ことはありますか?

可能性はあります。屈折は体質や年齢、生活要因によって変動し得ます。術後直後の視力が良好でも、長期的に変化が起こる場合があります。ここも「戻るからダメ」ではなく、期待値を適正化することが重要です。特に、将来的に老視が進むことは多くの方に起こるため、「裸眼で何歳まで何でも見える」というイメージで意思決定しないことが大切です。

ICLやSMILEはレーシックより安全ですか?

一概には申し上げられません。術式が違えば、メリットとリスクの種類が変わります。レーシックは角膜切除を伴う一方、ICLは眼内手術であり、SMILEは術式特性が異なります。したがって、「安全か危険か」ではなく、自分にとって致命的な不利益がどれかで比較してください。医師と相談する際は、「角膜を削りたくない」「可逆性を重視したい」「夜間視が最重要」など、価値観を言語化して伝えると比較が進みます。

セカンドオピニオンはどのタイミングで取るべきですか?

最も有効なのは、検査結果と説明を受けた直後です。この段階なら、別の医療機関でも同じデータ観点で説明を受けやすく、判断材料が増えます。「契約や予約を進めた後」だと心理的に引き返しにくくなるため、不安が少しでも強い方は早めのセカンドオピニオンが合理的です。


まとめ|本日の要点と次の行動

  • 「眼科医がレーシックをしない」は、レーシックが直ちに危険という意味ではなく、不可逆性・不確実性・見え方の質(生活/職業要件)・代替手段という判断軸の違いで説明するのが妥当です。

  • レーシックは「視力表の数値」だけでなく、「乾燥」「夜間のにじみ」「コントラスト」など、見え方の質(QOV)が満足度を左右し得ます。

  • 後悔を避けるためには、①術前検査の説明を数値・所見で受ける、②同意説明で不安点の経過と対処を具体化する、③必要なら早期にセカンドオピニオンを取る、という手順が有効です。

次の行動としては、まずご自身の生活条件(夜間運転の頻度、画面作業時間、乾燥の自覚、仕事の要求水準)を整理し、本文の「質問リスト」を持参して術前相談に臨むことを推奨いたします。その上で、説明の納得感が十分でない場合は、別の医療機関でも同様の説明を受け、比較したうえで意思決定してください。