同人誌という言葉は知っていても、「二次創作の本のこと?」「商業漫画と何が違うの?」と曖昧なままになっていませんか。SNSや通販、イベント案内で目にする機会が増えた一方で、どこで買えるのか、即売会はどんな雰囲気なのか、マナーや著作権で気をつけることはあるのかなど、初めての人ほど不安が重なりやすいものです。
この記事では、同人誌の基本的な定義から、一次創作・二次創作の違い、漫画や小説・評論などのジャンル、入手方法(即売会・通販・電子)の選び方までを、初心者が迷わず理解できる順序で丁寧に解説します。読み終えたときに「これなら安心して買える」「自分に合う探し方が分かった」と思える状態を目指して、必要なポイントを一つずつ整理していきましょう。
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同人誌とは何を指す言葉か
同人誌という言葉は、SNSや通販サイト、イベント案内などで目にする機会が増えました。一方で「二次創作の本のこと?」「商業漫画とどう違うの?」といった疑問を持つ方も多く、さらに「どこで買えるのか」「イベントは難しそう」「著作権は大丈夫なのか」と不安が重なることもあります。
ここでは、まず同人誌の基本的な意味を整理し、誤解が起きやすいポイントを押さえたうえで、種類・入手方法・マナー・注意点まで、初めてでも迷いにくい順序で解説していきます。
同人誌の基本定義と商業誌との違い
同人誌とは、一般的に「同じ趣味や志を持つ人たち(同人)が、資金を出し合い、企画・編集・制作・発行までを自分たちで行う刊行物」を指します。今の感覚に置き換えると、個人または小さなグループが主体となって作り、届ける本と考えると分かりやすいでしょう。内容は漫画に限らず、小説、評論、イラスト、写真、旅行記、ノウハウ本など多岐にわたります。
商業誌(出版社から出る本)との違いは、「誰が責任を持って企画し、どう流通させるか」という点にあります。イメージしやすいよう、違いを整理します。
制作の主体
商業誌:出版社(編集部)が企画を立て、編集・流通を管理します。
同人誌:個人やサークル(創作グループ)が企画・制作・頒布まで担います。
目的と成り立ち
商業誌:広い読者に届けることを前提に、販売と継続性が強く意識されます。
同人誌:好きや研究、表現欲、コミュニティでの共有など、動機が多様です。利益を主目的にしないケースもあります。
流通の形
商業誌:書店流通、取次、電子書店などの大規模な流通に乗ることが多いです。
同人誌:同人誌即売会、同人ショップの委託、個人通販、ダウンロード販売など、発行者がルートを選びます。
編集方針と表現の自由度
商業誌:編集方針や媒体の方向性に沿って制作が進むことが多いです。
同人誌:テーマや形式を自分で決められ、実験的な表現やニッチな題材にも挑戦しやすい傾向があります。
ただし、近年は「同人誌=薄い本」「同人誌=二次創作」という固定イメージが強くなり、言葉の使われ方も広がっています。重要なのは、同人誌は発行形態(自主制作・自主発行)を示す言葉であり、内容が何であるか(一次創作か二次創作か、全年齢か成人向けか等)は別の軸だと理解することです。これを押さえると、後の「買い方」「注意点」も整理しやすくなります。
同人誌が「二次創作だけ」ではない理由
同人誌が二次創作と強く結びついて語られやすいのは、人気作品のファン活動として同人誌が広く知られ、イベントや通販でも大きな存在感があるためです。しかし、同人誌の世界には二次創作だけでなく、オリジナル作品(一次創作)や、作品鑑賞・研究・生活知識をまとめた評論・実用系などが昔から存在します。
同人誌が二次創作だけではない理由は、大きく3つあります。
「同人」という言葉が示すのは“同じ志を持つ人の集まり”だから
同じ作品のファンで集まることもあれば、同じ創作ジャンル(オリジナル漫画、小説、写真、評論など)で集まることもあります。中心にあるのは「同じ関心を共有する仲間意識」であり、二次創作に限定されません。同人誌は“表現や研究の場”として機能してきたから
作品の感想や考察、特定テーマの研究、レビュー、旅行記など、商業出版ほど大規模な需要が見込みづらい題材でも、同人誌なら少部数で形にできます。必要な人に届けば価値がある、という発想が成立しやすいのです。流通・制作手段が多様化し、ジャンルがさらに広がったから
印刷所のサービス充実、オンデマンド印刷、電子配信の普及により、個人が本を作って頒布するハードルが下がりました。その結果、創作・研究・趣味の成果物としての同人誌が、より幅広い形で増えています。
この前提を踏まえると、「同人誌を買う」場合も「同人誌を作る」場合も、まずはどの種類の同人誌を想定しているか(一次創作・二次創作・評論・実用等)を自分の中で明確にすることが、迷いを減らす最短ルートになります。
同人誌の種類を知る
一次創作と二次創作の違い
同人誌の内容を理解するうえで、最初に押さえたい分類が「一次創作」と「二次創作」です。これは、同人誌の“作り方”というより“題材の権利関係や創作の出発点”を整理するための区分です。
一次創作(オリジナル)
キャラクター、世界観、設定、物語、文章、絵などを自分で生み出し、自分の著作物としてまとめた作品です。
たとえば、オリジナルの漫画や小説、オリジナルキャラクターのイラスト集、創作設定資料集、オリジナルの写真集などが該当します。一次創作は、自分の著作物として扱いやすい一方で、当然ながら他者の著作物(写真素材、フォント、画像など)を無断で使わないといった基本的な注意は必要です。二次創作(パロディ、ファン創作)
既存作品(アニメ、漫画、ゲームなど)のキャラクターや世界観を前提に、独自の解釈や表現を加えて作る作品です。
二次創作は、好きな作品への愛情やコミュニティでの共有が魅力ですが、権利者との関係やガイドライン、表現の配慮がより重要になります。同人誌を「買う側」であっても、権利者が二次創作をどう扱っているかは、文化を理解するうえで知っておくと安心です。
初心者が混乱しやすい点として、二次創作は「何でも自由に使ってよい」という意味ではありません。たとえば、公式の画像・ロゴ・スクリーンショットをそのまま流用したり、他人の作品を無断転載したりする行為は、二次創作の枠を超えた問題になりやすいです。二次創作を扱うなら、後半で説明する「ガイドライン確認」と「避けるべき行為」をセットで理解しておくことが大切です。
漫画・小説・評論・イラスト集・実用本などの例
同人誌の形式は、思っている以上に幅広いです。ここでは、代表的な例を具体的に挙げます。自分が「どれを読みたいのか」「どれを作りたいのか」をイメージする参考にしてください。
漫画同人誌
ストーリー漫画、ギャグ、短編集、4コマ、再録集など。一次創作・二次創作どちらも多い形式です。
初心者が入りやすい一方で、ページ数や装丁(表紙の加工など)で価格帯が幅広くなります。小説同人誌
短編、掌編、シリーズものの番外編、長編の上巻・下巻など。二次創作小説も多く、文章表現の魅力を楽しめます。
文字中心のため見た目はシンプルでも、内容が濃いことが多く、読み応えで選ぶ人もいます。イラスト集・画集
一枚絵の集合、テーマ別イラスト、キャラクターデザイン集、ラフ集など。
画面の美しさが魅力で、紙の質や印刷方式にこだわる作品も多いです。評論・考察・研究本
作品考察、歴史・文化研究、技術解説、レビュー、統計、フィールドワークなど。
いわゆる“薄い本”のイメージとは異なり、知的好奇心を満たす同人誌の代表例です。実用・ノウハウ本
レシピ、旅行記、生活の工夫、学習法、ソフトの使い方、創作の手順書など。
「同人誌でここまで実用的な情報が読めるのか」と驚くジャンルでもあります。写真集・記録集
風景写真、コスプレ写真、イベント記録、制作過程のドキュメントなど。
被写体や権利関係(撮影許可・肖像権)に関わる配慮が必要な場合もあります。
同人誌は、商業出版のように“店頭で偶然手に取る”よりも、イベントや通販で“探して出会う”傾向が強いため、ジャンルを知るほど出会いの精度が上がります。まずは「漫画か小説か」だけでなく、「評論・実用もある」と知るだけで選択肢が大きく広がります。
同人誌はどこで買えるか
同人誌即売会で買う流れと用語(頒布・サークル等)
同人誌の代表的な入手先が「同人誌即売会」です。即売会は、作り手(サークル)が机を出し、来場者が会場を回って作品を手に取る形式が中心です。直接選べる楽しさがあり、同人文化の雰囲気を体験できる場でもあります。
初心者がまず覚えておくと安心な用語を整理します。
サークル:同人誌を制作し頒布する側。1人でもサークルとして参加します。
スペース:会場内でサークルが配置される場所(机の位置)。
頒布(はんぷ):配布・販売の中間のように使われる言い方。イベントでは「販売」より「頒布」と表現されることが多いです。
新刊:新しく発行された本。イベント合わせで初出となることが多いです。
既刊:以前に発行された本。再販や持ち込みで並ぶことがあります。
即売会で買う基本の流れは、実は難しくありません。大事なのは「公式案内を先に読む」ことです。
イベント公式の案内を確認する
入場方法、年齢確認、持ち込み禁止物、撮影ルール、会場内の移動ルールなどはイベントごとに異なります。ここを飛ばすと、当日困りやすくなります。目当てのサークルやジャンルを事前に把握する
事前にサークルリストや配置図が公開されることがあります。目的なく入ると広く感じるので、「まずはこのエリアだけ回る」と決めると楽になります。当日は会場の導線に従い、必要なら列に並ぶ
人気サークルは列ができます。最後尾札やスタッフの案内が出る場合は従いましょう。通路を塞がない、歩きながらスマホを見過ぎないなど、基本の安全意識が大切です。スペースで頒布物を選び、代金を支払って受け取る
会場では現金が中心のこともあれば、キャッシュレスに対応しているサークルもあります。小銭を用意しておくとスムーズです。
作品の内容を質問するときは、混雑状況に配慮し、短く丁寧に伝えるのが無難です。購入後は袋にしまい、会場内での閲覧や取り扱いに配慮する
会場で広げて読むと通行の妨げになったり、周囲の目に触れたりします。落ち着いた場所で確認するのが安全です。
即売会は「慣れている人の場所」と感じるかもしれませんが、実際には初心者の来場も多く、ルールを守れば問題ありません。最初は“買い物”というより“展示会を回る”感覚で臨むと緊張が和らぎます。
通販で買う(BOOTH、メロンブックス、とらのあな等)
イベントに行かなくても、同人誌は通販で購入できます。通販は「落ち着いて選べる」「地方でも入手しやすい」「支払い方法が整っている」などの利点があります。代表的な選択肢を特徴とともに整理します。
BOOTH
作り手が自分のショップを持ち、在庫販売や受注生産を行えるサービスです。作品説明やサンプルが丁寧なことも多く、作り手の他作品に辿り着きやすい利点があります。匿名配送などの仕組みが用意されることもあります(設定はショップにより異なります)。メロンブックス/とらのあな等の同人ショップ
同人誌を専門に扱う店舗・通販で、検索性やランキング、特集ページなどから探しやすいのが強みです。委託販売として流通している同人誌が多く、初めての人でも“普通の通販”に近い感覚で買いやすいでしょう。サークルの自家通販(個人ショップ)
サークルが独自に運営する通販です。再販情報や制作背景の説明が詳しいこともあり、作者の方針を理解しながら買える利点があります。一方で、発送時期や連絡方法などがサークルごとに異なるため、購入前に案内文をよく読む必要があります。
通販で初心者がつまずきやすいのは「すぐ届くと思っていた」「送料や発送時期を見落とした」「匿名配送の有無を確認していなかった」といった点です。購入前に、次の項目を確認すると安心です。
発送予定日(在庫販売か、受注生産か)
送料と配送方法(追跡の有無、匿名配送の有無)
支払い方法(クレジット、コンビニ、銀行振込等)
返品・交換の条件(基本的に返品不可のケースも多い)
成人向け表示の有無(年齢確認の方法)
「作品を買う」という行為だけでなく、「個人が制作したものを受け取る」という前提に立つと、期待値のズレが起きにくくなります。
電子で買う(DLsite、BOOTHダウンロード等)
紙の本と並んで、電子同人も一般的になりました。電子は「すぐ読める」「保管場所がいらない」「再入手がしやすい」などの利点があります。代表的な入手先としては、電子同人の取り扱いが多いサービスや、BOOTHのダウンロード販売などがあります。
電子同人を初めて買うときに意識したいのは、紙とは違う“体験の差”です。
閲覧環境の差
スマホで読むのか、タブレットで読むのか、PCで読むのかで快適さが変わります。漫画の見開きや細かい文字が多い評論本は、画面が大きいほど読みやすい傾向があります。ファイル形式と管理
PDF、画像形式、専用ビューア形式など、作品によって形式が異なります。購入後にどこへ保存されるのか、再ダウンロード可能期間があるのかなど、サービス側の仕様を確認しておくと安心です。“所有感”より“アクセス”に近い場合がある
サービスの利用規約や提供形態によっては、紙のような恒久的所有と同じ感覚にならない場合があります。重要な作品はバックアップや閲覧環境の整備を意識しましょう(規約に従う範囲で行うことが前提です)。
電子は気軽に始めやすい反面、購入後の管理が雑になりがちです。最初に「作品用のフォルダを作る」「端末ごとにどこへ保存するか決める」といった小さなルールを作ると、長く快適に楽しめます。
入手方法の比較表(即売会・通販・電子)
| 入手方法 | 向いている人 | 主なメリット | 事前に知っておきたい注意点 |
|---|---|---|---|
| 即売会 | 現場の雰囲気も楽しみたい、直接選びたい | 新刊に出会いやすい、作り手との距離が近い、偶然の発見がある | ルール確認必須、混雑・列、支払い方法がサークルにより異なる |
| 通販 | 落ち着いて探したい、会場に行けない | 検索しやすい、再販を追いやすい、配送で受け取れる | 送料・発送時期、匿名配送の有無、返品可否、案内文の確認が重要 |
| 電子 | すぐ読みたい、保管場所がない | 即時入手、在庫切れが少ない、持ち運びやすい | 閲覧端末の相性、ファイル形式、再ダウンロード条件、管理の手間 |
どの方法にも良さがあります。最初は「買いやすさ」で選び、慣れてきたら「イベントでしか出会えない本」「紙の質感で楽しみたい本」「電子で読み返したい本」というように使い分けると、同人誌の楽しみが広がります。
同人誌のマナーと初心者が困りやすいポイント
イベントでの基本マナー(列・撮影・差し入れ等)
即売会は、多くの人が同じ空間に集まるため、安全と円滑さが最優先です。マナーといっても難しい作法ではなく、「相手と周囲に負担をかけない」ための工夫だと捉えると理解しやすいでしょう。特に初心者がつまずきやすい点を中心にまとめます。
列ができているときは、最後尾や案内に従う
人気サークルでは列が伸びます。勝手に横入りしない、列の位置を移動しない、最後尾札が出ている場合はその指示に従うことが基本です。列が通路を塞がないよう、スタッフが誘導する場合もあります。スペース前で立ち止まり過ぎない
作品をじっくり見たい気持ちは自然ですが、通路が狭いと後ろが詰まります。混雑しているときは、サンプル確認は短く、迷ったらいったん離れて考えると周囲に優しい動きになります。撮影は原則として無断で行わない
会場全体の撮影ルールがあるほか、スペースや頒布物の撮影は作り手の意向に左右されます。表紙や値札、ポスターが写るだけでも意図しない拡散につながる可能性があります。撮影したい場合は必ず確認しましょう。差し入れは無理に渡さない
差し入れを喜ぶ人もいれば、保管・持ち帰り・衛生面の理由で受け取れない人もいます。渡すなら軽く確認し、断られても気にしない姿勢が大切です。迷う場合は、まずは購入と感謝の言葉だけで十分です。過度な要求をしない
取り置きや値下げ交渉、長時間の会話、過度な感想の押し付けなどは避けた方が無難です。作り手も来場者も限られた時間で動いています。ひとことの感謝や短い感想は嬉しい場合が多いですが、混雑状況を見て配慮しましょう。成人向け作品の扱いに配慮する
会場ルールに沿って年齢確認が行われることがあります。購入後も、会場内で目立つ形で持ち歩かない、閲覧しないなど、周囲への配慮が必要です。
イベントは、ルールと周囲への気配りさえ守れば、初心者でも気持ちよく楽しめます。最初は「目的の数冊を買えればOK」とハードルを低く設定し、無理のない範囲で経験を積むと安心です。
通販での注意(匿名配送、個人情報、返品可否)
通販は便利ですが、同人誌の場合は商業通販と同じ感覚でいると、思わぬズレが生まれることがあります。特に意識したいのは「個人が運営している場合がある」「受注生産や少部数発行がある」「返品・交換の前提が違うことがある」という点です。
匿名配送・個人情報の扱い
住所を出したくない場合、匿名配送の有無は重要です。サービスとして匿名配送の仕組みがあっても、ショップ側が対応していない場合があります。購入前に配送方法を確認しましょう。
また、購入時に入力する情報は必要最小限にし、ログイン情報の管理も徹底すると安心です。発送時期の見落とし
「在庫がある=すぐ届く」とは限りません。受注生産の場合、印刷や梱包の都合で数週間〜数か月かかることもあります。発送予定や注意書きは必ず読み、急ぎの用途には向かない可能性があると理解しておきましょう。返品・交換の考え方
商業商品と異なり、同人誌は原則として返品不可のケースも珍しくありません。乱丁・落丁など明確な不備がある場合の対応方針が書かれていることもあるので、購入前に確認しておくと安心です。成人向け表示と購入条件
成人向け作品は表示や購入制限が設けられます。年齢確認が必要な場合もあるため、表示を読み飛ばさないようにしましょう。
通販は、案内文を丁寧に読むだけでトラブルの多くが防げます。「作品説明」「発送予定」「注意事項」をセットで読む習慣をつけると、初心者でも安心して利用できます。
チェックリスト(初購入・初参加)
どの入手方法にするか決めた(即売会/通販/電子)
予算を決め、支払い方法を確認した(現金、カード、アプリ決済など)
成人向け表示の有無を確認した(年齢条件を含む)
通販なら送料・発送時期・匿名配送・返品可否を確認した
即売会なら公式ルール、会場マップ、入場方法、撮影ルールを確認した
当日の動き方をイメージした(回る範囲、休憩、荷物の管理)
このチェックリストを一度通すだけで、「当日困った」「買った後に不安になった」という事態をかなり減らせます。
二次創作同人誌と著作権の考え方
まず権利者のガイドラインを確認する
二次創作同人誌を理解するうえで最も重要なのは、権利者(原作者・出版社・制作会社など)が示す方針です。近年は、二次創作の可否や条件をガイドラインとして公開する例もあります。二次創作に関心がある場合は、まず「公式が何を許容し、何を禁止しているか」を確認する姿勢が基本になります。
ガイドライン確認が重要な理由は、二次創作には次のような特徴があるためです。
作品ごとに事情が異なる
同じジャンルでも、作品や企業によって方針は異なります。「別作品ではOKだった」が通用しないことがあります。“何が問題になりやすいか”の線引きを知れる
ガイドラインには、禁止事項(公式素材の扱い、商用利用の範囲、過度な表現など)が明記されることがあります。曖昧な不安を、具体的な確認事項に落とし込めます。作る側だけでなく、買う側にも安心材料になる
買う側にとっても、権利者がどのようなスタンスかを知っておくと、文化の背景を理解しやすくなります。
ガイドラインが見つからない場合でも、「ない=何でも自由」ではありません。その場合は、次の項目で説明する“避けるべき行為”を軸にリスクを下げる考え方が重要になります。
避けるべき行為(無断転載・公式素材流用・トレース等)
二次創作にまつわる不安の多くは、「どこまでが創作で、どこからが無断利用なのか」という境界にあります。細部は状況によって変わり得るため、ここでは初心者がまず避けるべき“典型的な危険行為”を整理します。これは二次創作に限らず、創作全般で問題になりやすいポイントでもあります。
公式画像・スクリーンショット・ロゴなどの無断使用
「好きだから載せたい」という気持ちがあっても、公式の画像やロゴは権利者が管理する素材です。そのまま掲載・加工して使う行為はトラブルになりやすい領域です。原作絵のトレースや模写の“自作扱い”
参考にすることと、線をなぞって仕上げることは別問題になり得ます。トレースは疑義が生じやすく、信用面でも大きなリスクになります。他人のファンアート・同人作品の無断転載
二次創作であっても、その表現は創作者の著作物です。SNS画像を勝手に使う、許可なく再録するなどは避けるべき行為です。有料コンテンツや商業作品の違法な複製・配布
商業作品のスキャン、データ共有、転載は禁止コピーは論外です。二次創作の範疇ではなく、明確に問題になります。ガイドラインで禁止されている行為の実施
公式が明確に禁止している事項は、避けるのが基本です。特に、誤解が起きやすいのが「収益化」「広告」「投げ銭」「グッズ化」などの領域で、作品ごとに方針が違う場合があります。
初心者が安心して二次創作文化に触れるためには、「何をすれば安全か」だけでなく、「何をしない方がよいか」を先に覚えるのが効果的です。避けるべき行為を押さえるだけで、不安の多くは整理できます。
グレー不安を減らす実務手順(確認順序)
二次創作に関して「完全に安全と言い切れるライン」を短文で示すのは難しいことがあります。だからこそ、不安を小さくするには、確認手順を決めて機械的にチェックするのが有効です。迷ったときに戻れる“型”を用意しておきましょう。
権利者のガイドラインを探す
公式サイト、公式SNS、配信・利用規約ページなどを確認します。検索結果だけで判断せず、公式発信に辿り着く意識が大切です。禁止事項と許容事項を抜き出してメモする
「OK」「NG」を自分の言葉でメモすると、制作中の判断がぶれにくくなります。特に、収益化の範囲、成人向け表現の扱い、公式素材の扱いなどは注目ポイントです。素材由来のリスクを先に潰す
公式素材の流用、スクリーンショット、ロゴ、他人の作品の転載など、“創作以前の問題”になり得る要素が混ざっていないかを最優先で点検します。公開・頒布の形(紙/電子/通販)に合わせて表記と運用を整える
成人向け表示、年齢確認、説明文の書き方など、頒布形態によって必要な配慮が変わります。電子は拡散力が高いため、表記の丁寧さがより重要になることもあります。不安が残る場合は、表現や素材を作り直す
無理に出すより、引っかかりの原因を取り除く方が結果的に安心です。創作は一度きりではなく、何度でも更新できます。
この順序で確認すると、「よく分からないから諦める」でも「勢いで出して後悔する」でもなく、落ち着いた判断がしやすくなります。
チェックリスト(二次創作で公開前)
権利者ガイドラインを確認した(あれば遵守できている)
公式画像・ロゴ・スクリーンショット等の流用がない
トレースや他人作品の転載がない
成人向け表示が必要な場合、適切に表示し頒布方法も配慮した
通販ページや説明文に誤解を招く表現(公式と誤認させる表現)がない
不安点が残る場合、出す前に表現や素材を見直した
チェックリストは、創作の自由を縛るためではなく、安心して活動を続けるための“保険”です。二次創作に関わるなら、習慣として持っておくと心が軽くなります。
よくある質問で誤解をほどく
同人誌は違法なのか
同人誌そのものが一律に違法というわけではありません。一次創作の同人誌は、自分の著作物として制作・頒布する形になりやすい一方で、二次創作は権利者の方針やガイドライン、表現内容、頒布方法などによって注意点が増えます。
ここで大切なのは、「同人誌=違法」という短絡ではなく、どの要素が問題になり得るのかを分解して理解することです。
一次創作:自分の著作物が中心。ただし他者素材の無断利用は避ける。
二次創作:権利者の方針確認が重要。公式素材流用や転載は禁止転載、トレースなどは特に避ける。
成人向け:表記と頒布方法の配慮が必要。イベント・サービスのルールに従う。
不安が強い場合は、「ガイドライン確認」「公式素材を使わない」「他人の作品を転載しない」という基本に戻るのが最も効果的です。
作者本人が出す本も同人誌なのか
作者本人が制作した本であっても、出版社を介さず、自主的に編集・発行し、同人イベントや個人通販などで頒布する形であれば、同人誌と呼ばれることがあります。
重要なのは「誰が書いたか」よりも、「どのように作られ、どのように届けられているか」という発行形態です。
たとえば、商業で活動している作家が、趣味のテーマで少部数の本を作ってイベントで頒布する場合もありますし、プロ・アマという区分ではなく、自主制作・自主発行という枠組みで同人誌と捉えられることがあります。
自費出版との違いは何か
同人誌と自費出版は、どちらも「自分で費用を出して本を作る」という点で重なる部分がありますが、一般的には次のような違いで語られやすいです。
目的と届け方の違い
自費出版:書店流通やISBN取得、一般読者への広い流通を意識して“出版”として届ける文脈で語られやすい。
同人誌:即売会や通販など、発行者自身がコミュニティに向けて“頒布する”文脈で語られやすい。
コミュニティ性の違い
自費出版:読者は不特定多数で、一般市場に乗せる設計になりやすい。
同人誌:同じ趣味・関心を持つ層に向けて作られ、イベント文化や交流と結びつきやすい。
ただし、境界が完全に固定されているわけではありません。自費出版の形で作った本をイベントで頒布することもありますし、同人誌として始めた活動が書店流通に乗ることもあります。初心者は、言葉の厳密さよりも「自分がどの届け方をしたいか/どの買い方をしたいか」を基準に考えると迷いにくいでしょう。