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アナログ盤とは何かを徹底解説|レコードの仕組み・種類・始め方まで一気に理解

「アナログ盤とは何ですか?」
そう聞かれて、はっきり説明できるでしょうか。

配信やCDが当たり前になった今、レコードを指す「アナログ盤」という言葉は、どこか曖昧なまま使われがちです。
レコードのことだとは分かっていても、デジタルとの違い、LPやEPの意味、再生に必要な機材、針圧や設定の注意点まで含めて理解できている方は、決して多くありません。

その結果、
「買ったのに家で聴けなかった」
「音が小さい・歪むのは不良品?」
「アナログ盤って本当に音が良いの?」
といった戸惑いに直面してしまうこともあります。

本記事では、アナログ盤とは何かという基本から出発し、
・アナログとデジタルの本質的な違い
・レコードの仕組みと音が生まれる流れ
・LP・EP・回転数など盤の見分け方
・再生に必要な機材と配線の考え方
・初回再生で失敗しない設定と扱い方

までを、初心者の方でも順を追って理解できるよう、丁寧に解説します。

「なんとなく難しそう」「詳しい人の趣味」というイメージを外し、
買う前に知っておくべきこと・最初にやるべきことが分かる構成になっています。

アナログ盤に初めて触れる方も、改めて基礎を整理したい方も、
この記事を読み終える頃には、レコードを“安心して楽しめる状態”になっているはずです。

※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。

目次

アナログ盤とは何を指すのか

近年は配信やサブスクが当たり前になりましたが、好きなアーティストの限定盤、ショップで見かける大きなジャケット、あるいは「アナログ盤のほうが音がいいらしい」といった評判をきっかけに、レコードへ興味を持つ方が増えています。ただ、いざ調べると「アナログ盤=レコードで合っているのか」「CDとどう違うのか」「買っても再生できるのか」といった疑問が一気に出てきます。

ここではまず、言葉の意味のズレを解消し、購入・再生で迷わないための土台を固めます。用語が整理できるだけで、次に取るべき行動(盤種を確認する、機材を確かめる、設定を間違えない)が自然に見えてきます。

アナログ盤とはレコードのこと、まずはここを整理する

「アナログ盤」という言葉は、日常的にはほぼ「レコード盤」を指します。つまり、黒い円盤状の媒体に音が刻まれていて、ターンテーブルで回して針で音を読み取る、あの形式です。ショップの販売ページでも「アナログ盤」と書かれていれば、基本的に「レコード」と同義だと考えて問題ありません。

ただし混乱が起きやすいのは、「アナログ盤」という言葉が、次の2つの意味を混ぜて使われることがあるためです。

  • 媒体としてのアナログ盤:レコードという“物”そのもの

  • 制作方式としてのアナログ:録音やミックス、マスタリングがアナログ機材中心かどうか、あるいは工程にアナログがどれだけ関与したか

多くの人が知りたいのは、まず前者です。「買ったら何が届くのか」「どうやって聴くのか」という実務的な疑問は、媒体としての意味を押さえれば解決します。一方で後者(制作方式)は、作品ごとに事情が異なります。現代の作品では録音や編集のどこかでデジタル工程が入ることも珍しくなく、「レコードだから全部アナログ録音」という単純な話にはなりません。

したがって最初にやるべきは、「アナログ盤=レコード」という軸を確定し、そのうえで「デジタル盤(CDや配信)と何が違うのか」「LPやEPとは何か」「自分の環境で再生できるか」に進むことです。

アナログとデジタルの違いを最短で押さえる

アナログとデジタルの違いは、音をどう“記録・保存・再生”するかの方式の違いです。ポイントは難しい数学ではなく、イメージで捉えることです。

  • アナログ:音の波(連続的な変化)を、連続的な形のまま扱う

  • デジタル:音の波を一定間隔で区切って数値化し、データとして扱う

デジタルは、データとして保存できるため、複製・配信・編集が非常に得意です。例えば同じ曲を何度コピーしても“データ自体”は劣化しにくく、スマホやPCで管理しやすいのが利点です。一方、アナログ盤は物理媒体です。盤面に刻まれた溝を針がなぞることで音が生まれるため、盤の状態や針、設置環境がそのまま音に反映されます。

ここで大事なのは、「どちらが上か」を最初から決めないことです。アナログ盤には次のような特徴があります。

  • ジャケットや所作を含めた“体験”が楽しい(所有感、儀式性)

  • 再生機器や調整で音の傾向が変わり、好みを作り込める

  • 盤のコンディションが良ければ、独特の質感を心地よく感じる人が多い

一方で弱点もあります。

  • 埃・静電気・傷でノイズが出やすい

  • 針圧などの設定を間違えると盤を傷める

  • 管理(清掃・保管)に手間がかかる

  • 再生環境の影響が大きい(同じ盤でも環境で印象が変わる)

つまり「アナログ盤は面倒だが面白い」「デジタルは便利で安定」と考えると整理しやすいはずです。あなたが求めるのが、手軽さなのか、音と体験の“手触り”なのかで、選ぶ基準が変わります。

アナログ盤の仕組みと音が生まれる流れ

アナログ盤の魅力を正しく理解するには、「どうやって音になっているのか」を一度だけでも掴んでおくと役に立ちます。仕組みが分かると、ノイズや音飛びといったトラブルが起きたときに、原因の当たりがつけやすくなります。

溝に刻むとはどういうことか

レコード盤には、中心から外周に向かって螺旋状の溝(グルーブ)が刻まれています。この溝の形が、音の情報です。針(スタイラス)が溝の凹凸をなぞると、針先が微細に振動します。振動はカートリッジ内部で電気信号へ変換され、アンプで増幅され、スピーカーから音として出ます。

ここで重要なのは、レコードが「物理的な接触」で音を取り出す方式だという点です。だからこそ、次のような要素が音に直結します。

  • 盤面の汚れ(埃が針先に当たる=ノイズ)

  • 盤面の傷(針が引っかかる=プチ音、音飛び)

  • 盤の反り(針の追従が乱れる=歪み、音飛び)

  • 針先の摩耗(溝を正しくなぞれない=歪み増大、盤への負担)

  • アームやプレーヤーの精度(追従性、安定性が変わる)

またステレオ再生では、溝の左右の壁に左右チャンネルの情報が割り当てられていると説明されることが多く、これも理解の助けになります。左右の情報が物理的に混在しているため、針が溝を正しくトレースできないと、片チャンネルが弱くなったり、定位が不安定になったりといった症状が出やすくなります。

ノイズや音の傾向が変わる理由

「アナログ盤は温かい」「柔らかい」「空気感がある」といった表現を見かけることがありますが、これをそのまま鵜呑みにすると期待がズレることがあります。なぜなら、アナログ盤の音は“盤だけ”で決まらないからです。

アナログ盤の音の傾向が変わる主な理由は、次の3つです。

  1. 再生系(針・フォノイコ・アンプ・スピーカー)の個性が出やすい
    カートリッジの種類やフォノイコの設計で、音の立ち上がり、低域の量感、高域の伸び、ノイズの出方などが変わります。デジタルではプレーヤーの差が相対的に出にくい場面でも、アナログは差が表面化しやすい傾向があります。

  2. 盤の個体差・プレス品質・盤の状態が影響する
    同じタイトルでも、版(リイシューか初版か)、プレス工場、盤の重量、盤の反りなどで印象が変わることがあります。中古盤ならなおさらで、同じ“作品”でも別物のように感じることもあります。

  3. ノイズが“ゼロにはならない”構造
    どれだけ丁寧に扱っても、盤の材質や静電気、埃などで微細なノイズが残る場合があります。これを「味」と捉える人もいれば、「気になる」と感じる人もいます。ここは好みが分かれるポイントです。

よくある誤解は、「アナログ盤にすると自動的に音が良くなる」というものです。実際には、盤が良い状態で、機材が適切で、設定が合っていて初めて“良いと感じる確率が上がる”と考えるのが現実的です。逆に、針圧が合っていない、盤が汚れている、設置が不安定だと、デジタルよりストレスが増えます。

したがって最初のゴールは、「最高の音」をいきなり狙うことではなく、音飛びや過度なノイズが出ない“安全で安定した再生”を作ることです。そのうえで、必要に応じて音の方向性を調整していくほうが満足度が高くなります。

アナログ盤の種類を見分ける

アナログ盤を買うときの最大の落とし穴は、「作品は合っているのに規格が合わずに満足に聴けない」ことです。ここではLP・EP・SPといった呼び方、回転数、サイズの関係を整理し、購入ミスを潰します。

LP・EP・SPと回転数の早見

レコードは主に以下の要素で分類されます。

  • サイズ(インチ):7インチ、10インチ、12インチなど

  • 回転数(rpm):33 1/3、45、78 など

  • 収録形態:アルバム、シングル、古い録音の規格 など

一般的に現代でよく見るのは、次の2つです。

  • LP(12インチ、33 1/3回転):アルバムに多い

  • EP/シングル(7インチ、45回転):シングル曲や限定盤に多い

SP(78回転)は歴史的規格で、現在の一般的なプレーヤーでは対応していない場合があります。古い盤を聴く目的がある場合は、対応回転数だけでなく、針や溝の規格にも注意が必要です。

購入の場面では、名称よりもまず「回転数」を見るのが安全です。なぜなら、同じ7インチでも33回転のものが存在したり、12インチでも45回転のプレスが存在したりするためです。限定盤や高音質盤で「45回転12インチ」といった仕様が採用されることもあります。

サイズと収録時間、購入時の見落としポイント

ここでは、購入時に見落としやすいポイントを、失敗例ベースで具体化します。

見落とし1:回転数の不一致

  • 45回転の盤を33回転で再生すると、テンポが遅くなり、音程が下がって別の曲のように聞こえます。

  • 33回転の盤を45回転で再生すると、テンポが速くなり、音程が上がります。

「音が変だ」「歪んでいる」と感じたとき、まず回転数を疑うのは基本です。盤のラベル、スリーブ、商品説明の表記を確認してください。プレーヤー側が自動判別しない場合、手動切替が必要です。

見落とし2:盤の状態を軽視する(中古・保管品)

中古盤や長期保管品は、盤の状態が音を決めます。チェックしたいのは以下です。

  • 盤面の傷(深い傷はプチ音や音飛びの原因)

  • 反り(針の追従が乱れて歪みや音飛びが出る)

  • 汚れ(埃がノイズや針詰まりの原因)

  • カビ臭やジャケットの傷み(保管環境の悪さのサイン)

最初の数枚は、できるだけ状態が良い盤を選ぶと、アナログ盤の楽しさを素直に感じやすくなります。状態の悪い盤から始めると、「アナログってこんなにノイズが出るのか」と誤解しやすいからです。

見落とし3:センターアダプターの有無(7インチ)

7インチ盤には、中心の穴が大きいタイプがあります。これをターンテーブルに載せるには、センターアダプターが必要になる場合があります。購入時に「穴が大きいタイプか」を確認しておくと安心です。プレーヤー付属のケースも多いですが、ないと再生できない(あるいは安定しない)ことがあります。

見落とし4:曲数や収録内容の勘違い

アナログ盤は片面の収録時間に制約があります。アルバムでも、曲順や収録曲が別バージョンになっていることがあります。限定盤や再発盤では、ボーナストラックの有無、ディスクの枚数(2枚組など)も異なることがあるため、購入前に商品説明を確認すると納得感が上がります。

アナログ盤を聴くために必要なもの

「盤を買ったけれど、家で鳴らない」というのは初心者にとって最も避けたい失敗です。ここでは、最低限そろえるべき機材と、フォノイコが必要になる条件を整理します。難しく見える配線も、構造が分かれば単純です。

最低限そろえる機材一式

基本の構成は次のとおりです。

  • ターンテーブル(レコードプレーヤー)
    盤を回し、針で溝をトレースする装置です。回転数(33/45)が切り替えられるかを最初に確認します。

  • カートリッジ/針(スタイラス)
    針先で溝をなぞり、振動を電気信号に変換します。プレーヤーに付属していることも多いですが、交換可能です。

  • フォノイコライザー(フォノアンプ/フォノステージ)
    レコードの信号を増幅し、再生に必要な補正を行い、ラインレベルへ変換します。これがないと「音が小さすぎる」「音が薄い」などの問題が起きやすくなります。

  • アンプ(またはフォノ入力付き機器)
    スピーカーを鳴らすための増幅器です。アンプにPHONO入力がある場合、フォノイコが内蔵されていることがあります。

  • スピーカー
    パッシブスピーカー(アンプが必要)か、アクティブスピーカー(アンプ内蔵)かで構成が変わります。

初心者が迷うのは、フォノイコの位置づけです。要点はこれだけです。

  • レコードの信号は“そのまま”では小さく、補正も必要

  • だから フォノイコ(内蔵または外付け)を必ずどこかに用意する

フォノイコが必要になるケース

フォノイコが必要かどうかは、「プレーヤー」と「受け側(アンプ・スピーカー)」のどこにフォノ機能があるかで決まります。代表的な3パターンを押さえましょう。

パターンA:プレーヤーにフォノイコが内蔵されている

プレーヤー背面にPHONO/LINE切替があり、LINE出力にできるタイプです。この場合、スピーカーやアンプのAUXなど、通常のライン入力へ接続できます。初心者にとって最も分かりやすい構成です。

注意点は、切替がPHONOのままだと「音が小さすぎる」症状が出やすいことです。配線は合っているのに音が小さい場合、まず切替を疑ってください。

パターンB:アンプ側にPHONO入力がある

アンプ背面にPHONO端子があり、そこへプレーヤーを接続するタイプです。プレーヤーはPHONO出力(またはPHONOモード)で接続します。アンプがフォノイコを内蔵しているため、外付けフォノイコは不要です。

注意点は、PHONO端子に繋ぐべきものをAUXに繋いでしまったり、逆にLINE出力のプレーヤーをPHONOに繋いで音が歪んだりするミスです。端子の種類は必ず確認してください。

パターンC:どちらにもフォノ機能がない

この場合、外付けフォノイコが必要です。接続は次の順です。

  • プレーヤー(PHONO出力) → 外付けフォノイコ → アンプ/アクティブスピーカー(LINE入力)

「鳴らない」「音が小さい」と感じたら、フォノ機能がどこにあるかを逆算すると原因に辿り着けます。

購入前チェックリスト

最後に、購入前にこれだけ確認すれば失敗が大きく減るチェックリストをまとめます。

  • 盤の回転数(33/45/78のどれか)を把握している

  • プレーヤーがその回転数に対応している(少なくとも33/45)

  • 7インチで中心穴が大きいタイプならセンターアダプターの用意がある

  • フォノ機能が「プレーヤー内蔵」「アンプPHONO」「外付けフォノ」のどれで成立するか説明できる

  • アンプやスピーカーの入力端子(RCA、3.5mm、Bluetooth等)に合う接続方法がある

  • 針圧調整が必要な機種なら、説明書で推奨針圧を確認できる

  • 設置場所が安定している(水平が取りやすい、振動が少ない)

  • 保管方法(立てて保管、内袋、直射日光回避)を用意できる

このチェックが通れば、少なくとも「買ったのに鳴らない」「すぐ傷める」可能性は大幅に下がります。

初回再生で失敗しない設定手順

初回再生で一番大切なのは、音の好み以前に「盤と針に無理をさせない」ことです。設定が合っていないと、音が悪いだけでなく、盤の寿命を縮めてしまうことがあります。ここでは最低限の調整を、順番に整理します。

針圧の合わせ方と適正の考え方

針圧(トラッキングフォース)は、針先が溝を安定してトレースするための圧力です。初心者が誤解しがちなのは、「軽いほうが盤に優しいはず」という発想です。しかし実際は、軽すぎると針が溝で暴れやすく、音飛びや歪みを起こし、結果的に溝へ不自然な負担がかかることがあります。反対に重すぎても摩耗が進みやすくなります。

だからこそ重要なのが、メーカー推奨の適正範囲に合わせることです。最初は“自分の好み”で動かさず、説明書やカートリッジの仕様に書かれた推奨針圧に合わせてください。これが一番安全で、音の基準点になります。

針圧を合わせるときの考え方は次のとおりです。

  • 「推奨範囲」があるなら、まずは範囲の中ほどを狙う

  • 音飛びが出るなら、範囲内でわずかに増やす方向で検討する

  • 歪みが強い、針先が沈み込みすぎる印象があるなら、範囲内で見直す

  • ただし、範囲を逸脱して“無理やり”解決しようとしない(別原因の可能性が高い)

針圧の調整は慣れると難しくありませんが、慣れないうちは針圧計を使うと確実です。目盛りだけで合わせるより、実測できるほうが安心感があります。

アンチスケートと水平、置き場所の注意

アンチスケートは、レコード再生中にアームが内側へ引っ張られる力を補正する調整です。これが合っていないと、左右の溝の当たり方が偏り、歪みや片チャンネル寄りなどの症状が出やすくなります。一般的には「針圧と同程度」を目安に合わせ、試聴しながら微調整します。

そして、初心者が軽視しやすいのが水平と設置です。レコードは物理接触で再生するため、振動と傾きに弱い面があります。例えば、スピーカーの振動が直接プレーヤー台に伝わると、低域が暴れる、針が揺れる、音飛びする、といったトラブルが起きます。置き場所は以下を目安にしてください。

  • ぐらつかない台(棚の端や不安定なラックは避ける)

  • スピーカーと同じ台に置かない(可能なら別の台)

  • 歩行振動が伝わりにくい(床が柔らかい場合は注意)

  • 直射日光や熱源の近くを避ける(盤の反り防止にもなる)

「設定しても音が安定しない」というとき、針圧だけでなく置き場所が原因になっていることも珍しくありません。

初回設定の番号付きステップ

ここからは、初回再生の基本手順を、できるだけ迷わない形で並べます。機種差はありますが、流れは共通です。

  1. 設置場所を決める
    まずプレーヤーを置く台を決めます。ぐらつかないこと、水平が取りやすいこと、振動が少ないことが優先です。

  2. ターンテーブルを水平にする
    水平器があれば理想ですが、なければ盤面が傾かないように調整します。水平が取れないと、針が溝に当たるバランスが崩れやすくなります。

  3. アームをバランスさせる
    カウンターウェイトを回して、針先が盤に触れない状態でアームが“ふわりと水平”になるようにします。ここが針圧調整の基準点です。

  4. 針圧目盛りを0に合わせる
    アームがバランスした状態を保ったまま、針圧の目盛りリングを0に合わせます(機種によって手順は異なるため説明書も確認)。

  5. 推奨針圧に設定する
    カウンターウェイトを回して推奨針圧に合わせます。推奨範囲があるなら中ほどから始めます。可能なら針圧計で確認します。

  6. アンチスケートを設定する
    目安として針圧と同程度の値に合わせ、試聴で問題がなければOKです。左右バランスや歪みが気になるなら微調整します。

  7. 回転数を合わせ、試聴する
    33/45を盤に合わせます。最初は音量を上げすぎず、ノイズや音飛び、歪みがないかを確認します。

  8. 必要なら範囲内で微調整する
    気になる症状があれば、まずは盤の汚れ、回転数、針圧、設置を見直します。針圧は推奨範囲内で調整し、逸脱しないことが重要です。

初回は「最高の音」より「安全に安定して鳴る」ことが目標です。安定して鳴るようになってから、カートリッジの変更やフォノイコの追加など、楽しみの幅を広げるほうが失敗しません。

長く楽しむための手入れと保管

アナログ盤は、丁寧に扱えば長く楽しめます。逆に、扱いを間違えると「ノイズが増える」「音飛びする」「盤が反る」といった問題が積み重なります。ここでは“最小の手間で最大の効果”が出る基本を押さえます。

盤を傷めるNG行動

ありがちなNGを、理由とセットで整理します。

  • 盤面(溝)を素手で触る
    指紋の油分が汚れになり、埃を呼び、ノイズや針詰まりの原因になります。持つときは外周とラベル部分を持つのが基本です。

  • 埃だらけのまま再生する
    埃が針先に当たるとノイズになります。さらに針先に埃が絡むと、溝を正しくトレースできず歪みや音飛びが出やすくなります。

  • 針圧が分からないまま再生する
    軽すぎても重すぎても盤に負担が出ます。針圧は“最初に一回きちんと合わせる”だけで事故をかなり防げます。

  • スピーカーと同じ台に置き、大音量で鳴らす
    振動を拾うと針が揺れ、低域が膨らむ、歪む、音飛びする、といった問題が出ます。プレーヤーは振動から隔離するほど安定します。

  • 高温・直射日光で放置する
    レコードは反りやすく、反ると追従が乱れます。車内放置や窓際は避けてください。

これらを避けるだけで、ノイズやトラブルは体感的に大きく減ります。

清掃・静電気・内袋・保管姿勢の基本

手入れは、いきなり徹底しなくても構いません。まずは“続けられる”基本を作ることが重要です。

再生前後のブラッシング

再生前に軽くブラッシングして埃を落とし、再生後にも同様に整えるだけで、盤の汚れの蓄積が減ります。静電気が多い季節は埃が付きやすいため、ブラッシングの効果が出やすいです。

針先のケア

針先に埃が絡むと音が曇ったり歪んだりします。針専用のブラシで、指定方向に優しく取り除きます。乱暴に触ると針先やカンチレバーにダメージが出ることがあるため、強くこすらないのが基本です。

内袋(インナースリーブ)の見直し

紙の内袋は埃が出やすい場合があります。帯電しにくい内袋に替えると、出し入れ時のストレスが減ることがあります。最初から完璧を目指さなくても、気になる盤から順に替えるだけで十分です。

立てて保管する

盤は基本的に立てて保管します。重ねると反りや歪みの原因になりやすいです。ジャケット内で盤が偏って圧がかからないよう、きつく詰めすぎず、適度に余裕を持たせると安心です。

これらは“音を良くする”というより、“悪くしない”ための習慣です。結果として再生が安定し、アナログ盤の楽しさがストレスなく続きます。

よくある質問

アナログ盤は本当に音が良いのか

「アナログ盤は音が良い」という言い方は、半分当たっていて、半分は誤解を生みます。正確に言うなら、アナログ盤は“好まれる音の印象になりやすい条件”があるということです。

音が良いと感じる要因には、次のようなものがあります。

  • レコード用にマスタリングが別で行われ、聴感上心地よいバランスになっている

  • 再生機器の特性(針・フォノイコ等)が、好みの質感を作っている

  • ノイズを含めた“生っぽさ”を味として楽しめている

  • ジャケットを眺め、針を落とす体験が没入感を高めている

一方で、音の純粋な情報量や安定性という点では、デジタルが有利な場面も多いです。アナログ盤は盤の状態や調整でブレます。だからこそ、「音が良いかどうか」を一発で決めるより、次の問いで考えるほうが納得しやすいはずです。

  • 作品を“聴く時間”そのものを楽しみたいか

  • 多少の手間を、趣味として受け入れられるか

  • 自分の環境で安定して鳴らせるように調整する気持ちがあるか

ここに「はい」と言えるなら、アナログ盤は満足度が高くなりやすい選択です。

中古盤は何を見て買えばよいか

中古盤は、購入のコツを押さえると失敗が減ります。見るべきポイントは大きく4つです。

  1. 盤面の状態(傷・スレ)
    深い傷はプチ音や音飛びの原因になりやすいです。写真があるなら光の反射で分かることがあります。説明文に「試聴確認済み」などがあると安心材料になります。

  2. 反りの有無
    反りは追従性に影響します。軽度なら再生できる場合もありますが、初心者のうちは避けたほうが無難です。

  3. コンディション表記の基準
    NM、VG+などの表記がある場合、どの基準で評価しているかを確認すると納得しやすいです。基準が曖昧な個人出品より、基準が明確な店舗のほうが安心な場合があります。

  4. 版・プレス情報(こだわりたい場合)
    同じタイトルでも再発やリマスターで音が変わることがあります。最初は気にしすぎなくて構いませんが、気に入った作品が出てきたら調べる楽しみが増えます。

最初の1〜2枚は「状態の良い盤」を優先してください。アナログ盤の魅力を素直に感じられ、機材や設定の問題と盤の問題を切り分けやすくなります。

針はどれくらいで交換するのか(目安の考え方)

針の寿命は一律ではありません。使用時間、針先形状、盤の清掃状況、針圧の適正、盤のコンディションによって変わります。そこで現実的なのは、次のような“症状”で判断することです。

  • 以前より歪みが増えた(特に高音やサ行が刺さる)

  • ノイズが増えたように感じる(盤の汚れ以外で)

  • 音飛びが増える(盤の反り・傷が原因でないのに)

  • 針先に汚れが付きやすく、取ってもすぐ再発する

  • 片チャンネルが不安定、定位が揺れる(配線以外の原因として)

そして前提として、針の寿命を大きく左右するのが針圧です。推奨針圧に合わせることは、音のためだけでなく、盤と針を守るための基本でもあります。