配信や大会の解説で「このチームのIGLは〜」という言葉を耳にして、「IGLって結局なに?」と気になった方も多いのではないでしょうか。
本記事では、eスポーツの文脈で使われる IGL(In Game Leader) という用語について、意味・役割から向いている人、具体的な練習方法までを体系的に解説します。
ApexやVALORANTといったFPSタイトルを想定しつつ、どのゲームにも共通する考え方として整理しています。
1. IGLとは?一言でいうと「試合中の司令塔」
IGLの意味と読み方
eスポーツにおける IGL とは、一般的に次のような意味で使われます。
- 略語:In Game Leader(イン・ゲーム・リーダー)
- 読み方:アイ・ジー・エル
- 役割:試合中に作戦を決め、次に何をするかを判断し、チームメイトに指示を出す「司令塔」
FPSやバトルロイヤル、タクティカルシューターなど、複数人で連携する対戦ゲームでよく使われる言葉です。
似た言葉との関係(オーダー/ショットコーラー)
IGLと似た意味で、次のような言葉も使われます。
- オーダー:日本語コミュニティで以前から使われていた「指示役」の呼び方
- ショットコーラー(shot caller):試合中の細かい指示を出す人
- リーダー/キャプテン:チーム運営やメンバー管理も含めた広い意味のリーダー
現在は、これらをひっくるめて 「IGL=試合中の指揮をとる人」 として使うケースが多いです。
なぜチームにIGLが必要なのか
通話がカオスになると何が起きるか
フルパで対戦ゲームをしていると、ボイスチャットが次のような状態になることがあります。
- 「あっち行こう」「いや、こっちじゃない?」と意見が割れる
- 誰かが先に詰めて、誰かはまだ迷っていて、動きのテンポがバラバラ
- 結果として「各個撃破」されてしまう
このような状況を避けるために、意図的に 「最終的に方針を決める役」 を置くのがIGLです。
IGLがいることで得られる3つのメリット
意思統一のスピードが上がる
- 迷ったときに「最終的に決める人」がいるため、判断が早くなります。
動きの一貫性が出る
- チームとして「どう勝つか」のイメージが共有されやすくなり、試合の流れをつかみやすくなります。
メンタルが安定しやすい
- 困ったらIGLの判断に乗ればよい、という土台があると、プレイヤーそれぞれがプレイに集中しやすくなります。
IGLの具体的な役割5つ
ここからは、IGLが試合中・試合外で担う具体的な役割を整理します。
役割1:情報を集めて整理する
IGLは、単に思いつきで指示を出すわけではありません。まず、次のような情報を集めて整理します。
- 自チームの状況(位置・体力・アビリティ/ウルトの有無・装備)
- 敵の位置・人数・構成、聞こえた足音や銃声などの情報
- マップ上の安全地帯や有利ポジション、残り時間
この「情報整理」ができていないと、IGLの判断は当て勘に近づいてしまいます。
役割2:方針を決める(攻め/引き・ポジション選択)
集めた情報をもとに、IGLは大きな方針を決めます。
- いまは 攻めるのか、引くのか
- どのポジションを取りに行くのか
- 次の○秒〜○分で、どのルートを通るのか
例えばApexであれば、「ここでファイトして装備を整える」か「無理に戦わず、次のリングに先入りする」か、といった判断が典型例です。
役割3:短く分かりやすくコールする
IGLは決めた方針を、短く・具体的に・誤解がないように伝える必要があります。
悪い例
- 「そっち行こう!」(そっちとはどこか不明)
- 「やってもいいかも?」(結局行くのか引くのか曖昧)
良い例
- 「今から左上の家まで詰めるよ。3、2、1で前出て」
- 「ここは撃ち合わずに右側から回って次のリング入る。撃たれても走り切る」
このように、「方向・目的・タイミング」が伝わるようにコールするのが理想です。
役割4:チームのメンタルを整える
eスポーツは「メンタルスポーツ」と言われるほど、気持ちの状態がパフォーマンスに影響します。
IGLに求められるのは、次のような声掛けです。
- 味方がミスしても責めず、「次のラウンドで取り返そう」と空気を戻す
- 難しい状況でも、「まだ勝てる」「ここからやれる」と前向きな雰囲気を作る
- 負け試合でも、改善点を整理して次に繋げる
IGL一人だけが背負う必要はありませんが、率先して空気を立て直す のも大切な役割です。
役割5:試合後の振り返りをリードする
試合が終わったあと、次のような観点で振り返りをリードできると、チーム全体の成長スピードが上がります。
- どの判断は良かったか(攻め/引きのタイミングなど)
- どこで情報が足りなかったか、コールに抜けがなかったか
- 同じ状況が来たとき、どう動くとより良かったか
「誰が悪いか」を探すのではなく、「チームとして何を改善するか」を整理することが重要です。
IGLに向いている人の特徴
エイムより「考えるのが好き」なタイプ
競合記事でも、IGLは必ずしも個人スタッツが高い必要はないとされています。
むしろ、次のような人がIGLに向いているケースが多いです。
- マップや状況を俯瞰して見るのが好き
- 「なぜこのチームは勝てたのか」を考えるのが楽しい
- 自分のキル数より、チームとして勝てたかどうかを重視できる
人の話を聞ける・空気を読める
IGLは自分だけの考えを押し付ける役割ではありません。味方の情報や意見を踏まえたうえで、最終判断をする立場です。
- 味方の「ここきつい」「こっち行きたい」という声を聞き取れる
- メンバーの得意・苦手を理解して、動き方を調整できる
- 試合中の空気が悪くなったときに、状況を変える一言を出せる
こうした「人を見る力」があると、IGLとして成長しやすくなります。
即断即決しつつ、間違いを認めて修正できる
IGLには 決断力 と 柔軟性 の両方が求められます。
- 情報が完璧にそろっていなくても、時間内に決める
- 間違えたと感じたら、「ごめん、さっきの判断はこう直そう」と修正をかける
「絶対に正解だけを出さないといけない」と思い込むと苦しくなります。
その場でベストと思う判断を出し、試合後に学んで次に活かす ことが大切です。
IGLになるためのステップと練習方法
ここからは、今日から試せる具体的なステップを紹介します。
今日からできる「IGL入門」3ステップ
まずは1試合、方針だけ決めてみる
- 例:「この試合は“先入り”を基本にする」など、たった1つでよいので方針を決めてスタートします。
コールを「方向+目的+タイミング」で言うことだけ意識する
- 「右の家を取るよ。今から走る。撃たれても止まらないで」のように、型を決めてしまうと楽です。
試合後に、良かったコールを1つだけメモする
- 「この判断は良かった」「このコールは伝わりやすかった」というポイントを1つ残します。
最初から完璧なIGLを目指す必要はありません。
「1試合1つだけ、意識することを決める」くらいの気持ちで始めるのがおすすめです。
1週間で試したい練習メニュー例
ソロでできること
- プロ選手や上手いIGLの配信・VODを観る
- 「いつ」「どんな情報を集めて」「どう決断したか」をメモします。
- マップ研究
- よく戦うエリアの有利ポジション、射線の通り方、回復に使えるポジションなどを書き出しておくと、試合中の判断が速くなります。
フレンドとできること
- シンプルな作戦テンプレを2〜3個決める
- 例:Apexなら「先入り構成のときの動き」「アンチ外から入るときの動き」など。
- 試合後の振り返りを5分だけ行う
- 「良かった動き」「もう少し良くできた動き」を1つずつ挙げるだけでも効果があります。
試合後の振り返りテンプレ
振り返りでは、次の3つをベースにすると整理しやすくなります。
- どの判断が良かったか
- どの場面で情報が足りなかったか
- 同じ状況が来たらどう動くか
メモは長くなくて構いません。
例として、1試合につき1〜3行程度の短いメモから始めてみてください。
タイトル別に見るIGLの違い(Apex / VALORANT / その他FPS)
ここでは、代表的なタイトルを例にIGLの違いを整理します。
バトロワ系(Apexなど)のIGL
- リングの収縮や地形の有利不利を踏まえた「ローテーション計画」が重要
- 「どのタイミングでどの位置を取りに行くか」「どのファイトを受けて、どれは避けるか」を決める
- 周囲の銃声・部隊数・リング位置から、「この先の混み具合」を予測する力が求められます
ラウンド制FPS(VALORANTなど)のIGL
- 各ラウンドごとに「ラッシュするのか/ゆっくり情報を取るのか」など、作戦の骨組みを決める
- 相手の経済状況やウルト状況を踏まえた作戦選択が重要
- セットプレイやラウンド中の「プラン変更(プランB/プランC)」を決断する役割も担います
共通する考え方と違い
共通点
- チームの情報を集め、整理し、方針を決め、コールする役割であること
- メンタル面のケアや、試合後の振り返りをリードすること
違い
- バトロワ:マクロな移動計画・ポジショニングがより比重を占める
- ラウンド制:1ラウンドごとの戦術選択と相手の癖・経済状況の読み合いが比重を占める
IGLがやりがちな失敗と改善のコツ
失敗1:しゃべりすぎて味方の声を潰してしまう
意欲のあるIGLほど、「全部自分で説明しないと」と考えてしまいがちです。
対策の例
- コールは「方向+目的+タイミング」に絞る
- 情報報告は味方にも任せ、「IGLは方針決定に集中する」と役割分担する
失敗2:指示がふわっとしていて伝わらない
「とりあえず詰めよう」「いい感じに詰めて」といった曖昧な表現は、具体的な行動につながりにくいです。
対策の例
- 「どこに」「誰が」「いつ」動くのかまで言い切る
- 例:「左の家の2階を3人で取りに行く。投げ物から入って」
失敗3:自分のミスを認められず、空気が悪くなる
IGLはチームの方針を決める立場であるため、プレッシャーを感じやすいポジションでもあります。
対策の例
- 試合後に「さっきの判断はこうすれば良かったかもしれない」と自ら口に出す
- 「誰が悪いか」ではなく、「どうすれば次はうまくいくか」に話題を誘導する
チーム全体でIGLを支えるには
IGLが機能するかどうかは、チームメンバーの協力にも大きく左右されます。
味方ができる3つのサポート
自分から情報を出す
- 敵の位置・使ったウルト・削った体力などを、簡潔に伝える習慣をつける。
IGLの判断に一度乗る
- 「本当にそれでいいの?」と疑問があっても、戦闘中はまず合わせることを優先します。議論は試合後に行う方が安全です。
必要以上に責めない
- IGLも人間なので、判断ミスは起こります。「判断してくれていること」自体に感謝の一言があると、IGLは続けやすくなります。
サブIGLの置き方・役割
競合記事でも紹介されているように、IGL一人に負担が集中するとパフォーマンスが落ちることがあります。
サブIGLの役割の例
- IGLが見落としがちな情報を補足する
- IGLがダウンした後の暫定的な指揮をとる
- 試合後の振り返りで、IGLとは別視点の意見を出す
よくある質問(FAQ)
Q1. エイムに自信がないのですが、IGLに向いていますか?
向いている可能性は十分にあります。
IGLに求められるのは、高いキル数よりも 情報整理・意思決定・コミュニケーション の力です。
もちろん最低限の撃ち合い能力は必要ですが、チームにエイムが強いメンバーがいるなら、IGLは「チームを勝たせる役」に集中した方が勝率が上がることも多いです。
Q2. 野良ランクでIGLの練習はできますか?
完全な意味でのIGLは難しいですが、次のような練習は可能です。
- マップを見て、常に「今ならどこに動くべきか」を自分の中で決めてみる
- ランクマッチのVODを見返し、「自分がIGLならここでこうコールする」と考える
フルパほど明確ではありませんが、「判断→振り返り」のサイクルを回すだけでも、IGLとしての思考は鍛えられます。
Q3. IGLとリーダー(キャプテン)は同じですか?
必ずしも同じとは限りません。
- IGL:試合中の作戦決定・コールを担当する人
- リーダー/キャプテン:メンバー管理・練習計画・コミュニケーション調整など、試合外も含めたリーダー
1人が両方を兼ねるチームもあれば、役割を分けるチームもあります。チームの人数やメンバー構成に応じて決めるとよいでしょう。
まとめ:IGLは「一番偉い人」ではなく「チームの勝ち筋を示す役割」
最後に、本記事のポイントを簡潔に整理します。
IGLとは:In Game Leaderの略で、試合中の司令塔・指揮官のこと
- 役割:情報整理 → 方針決定 → コール → メンタルケア → 振り返りのリード
- 向いている人:考えるのが好き、人の話を聞ける、即断即決と軌道修正が両方できるタイプ
練習の始め方:
- 1試合1つだけ「意識すること」を決める
- 「方向+目的+タイミング」の型でコールする
- 試合後に良かった点・改善点を1つずつメモする
IGLは、「一番偉い人」や「一番キルが取れる人」である必要はありません。
むしろ、チーム全体の力を引き出し、「どうすればこのメンバーで勝てるか」を考え続けるポジションです。
この記事をきっかけに、まずはフレンドとのパーティで 小さなコールから試してみる ところから始めてみてください。