ニコニコ動画やYouTubeのコメントでよく見る「TAS」という言葉。
なんとなく“人間離れしたプレイ”というイメージはあるものの、「TASとは結局何なのか」「RTAと何が違うのか」をきちんと説明できる方は意外と多くないのではないでしょうか。
本記事では、ゲーム用語としてのTAS(Tool-Assisted Speedrun)をテーマに、その基本的な意味から、RTAとの違い、どのような仕組みであの超人的なプレイが作られているのかまでを丁寧に解説します。
視聴者としてTAS動画をもっと深く楽しみたい方はもちろん、RTAに親しんでおられる方が「ゲーム研究としてのTAS」を理解するための入門ガイドとしてもご活用いただけます。
TASは何の略?基本用語と前提知識
TASの正式名称と訳し方
TASは主に次の2つの英語表現の略とされています。
Tool-Assisted Speedrun
Tool-Assisted Superplay
日本語では「ツール支援スピードラン」「ツール補助付きスーパープレイ」といった言い方をされることが多いです。いずれも「ツールの力を借りて、ゲームの限界に挑戦するプレイ」というイメージです。
ポイントを整理すると、TASは次のような特徴を持ちます。
実行環境としてエミュレータ等のツールを使用する
スローモーションや一時停止、巻き戻し、セーブステートなどの機能を前提とする
1フレーム(1/60秒など)単位で入力を調整できる
人間ではほぼ不可能な精度や反応速度のプレイが可能になる
どんなツールを使うのか(概要)
具体的なソフト名や設定手順は環境やゲームによって大きく異なるため、本記事では概念レベルに留めますが、TASでは一般に以下のような機能を備えたエミュレータや専用ツールが利用されます。Scientific Hub
スローモーション:ゲームの進行速度を落として、難しい場面で落ち着いて入力を検討できる
セーブステート:任意のタイミングで状態を保存し、何度でもやり直せる
フレーム単位の入力編集:1フレームごとに「どのボタンを押すか」を細かく指定できる
入力の記録・再生:完成した入力データを保存し、同じプレイを何度でも再生できる
このような機能を組み合わせることで、「理論上もっとも速い・美しい・面白い」と考えられるプレイを構築していくわけです。
RTAとTASの違いをわかりやすく整理
RTAとは何かの復習
TASとよく比較される用語に「RTA」があります。RTAは「Real Time Attack」の略で、人間がリアルタイムにゲームをプレイし、そのクリアタイムを競う遊び方を指します。タイムアタック(Speedrun)の一種であり、「早回しなどをせず、実時間でどれだけ速くクリアできるか」を測るのが特徴です。
TASとRTAの決定的な違い
両者の違いをシンプルにまとめると、次のようになります。
誰が操作するか
RTA:人間がその場でリアルタイム操作
TAS:ツールを使って作成した「入力データ」がゲームを操作する
目的のニュアンス
RTA:プレイヤー同士の腕前を競う「競技」の色が強い
TAS:ゲームの仕組みや限界を研究し、超人的なプレイを「作品」として見せる色が強い
制約
RTA:原則として巻き戻し・やり直しは不可。ミスも含めて一発勝負
TAS:同じ場面を何度もやり直し、最良の結果だけをつなぎ合わせられる
TASで発見されたルートやテクニックが、後にRTAで人力再現されることも珍しくありません。TASは「理論値を探る研究」、RTAは「人間がどこまで近づけるかの挑戦」と考えるとイメージしやすいです。
TASはどうやって作られる?ざっくり制作フロー
必要な環境と大まかな流れ
ここでは違法行為や具体的な改造手順には触れず、あくまで高レベルな流れのみを説明します。
プレイするゲームとカテゴリを決める
例:Any%(とにかく最速でクリア)
例:100%(アイテムやステージを全回収してクリア)
ルートを設計する
どの順番でステージを攻略するか
どのバグ技・ショートカットを使うか
どこでダメージを受けてもよいか など
フレーム単位で入力を作る
エミュレータをスローモーションにしたり一時停止したりしながら、
「このフレームでは右+ジャンプ」「次のフレームでは右だけ」のように入力を詰めていく難しい場面ではセーブステートから何十回もやり直し、ベストなパターンを探す
通しで再生して問題がないか確認する
ラグや乱数のブレで想定と違う挙動になっていないかをチェック
気になる箇所があれば、その区間だけ入力を修正して再度テスト
動画として録画・投稿する
完成した入力データを使ってゲームを再生し、その映像を録画
動画サイトに「TAS」や「TASさん」などのタグを付けて公開する、という流れが一般的です
実際には、ゲームごとに専用ツールや細かなノウハウが存在し、制作には膨大な時間と研究量が必要になります。
代表的なテクニックの例
TASでよく話題に上がるテクニックを、イメージしやすい形で挙げておきます。
フレーム完璧ジャンプ
1フレームでも遅れると落ちてしまう足場を、全て最速タイミングで踏んでいくジャンプ
乱数操作(RNG操作)
ほんのわずかな入力の違いで敵の動きやエンカウント率が変わる性質を利用し、
「必ず会心が出る」「一歩もエンカウントしない」といった展開を引き起こす
バグ・グリッチの極限活用
特定のフレームだけありえない入力を加えることで、壁抜けやワープなどのバグを安定して発生させる
こうした要素が積み重なることで、「人間ではまず再現不可能」なレベルのプレイが完成します。
TAS動画のここを見ると面白い:視聴ポイント
「人間にはできない」レベルの精度を楽しむ
TAS動画の分かりやすい魅力は、「ありえないほど正確な操作」です。
ギリギリでトゲや敵をすり抜けるジャンプ
弾幕シューティングで一発も被弾しない完璧な避け
フレーム単位で敵の弾を誘導し、狙った位置に集める
こうしたシーンは、コメントで「人間卒業」「TASさん本気出しすぎ」などと盛り上がる定番ポイントです。
「ゲーム研究」としての面白さ
もう一つの魅力が、「ゲームの内部仕様を徹底的に研究した結果」が見えることです。
通常プレイでは気づきにくい、判定の大きさ・当たり判定の隙間
マップの読み込みタイミングや、内部タイマーのクセ
条件を満たすとショートカットが可能になる細かな仕様
これらを理解したうえで、TASとRTAを見比べると、「RTA走者がなぜその行動を選んだのか」がより深く理解できるようになります。
初心者におすすめのTASジャンル
初めてTAS動画を見る方には、次のようなジャンルから触れてみると分かりやすいです。
2Dアクション(マリオ系など)
移動が速く画面映えし、TASらしさが直感的に伝わりやすい
RPG
会心の一撃連発、エンカウント完全回避など、乱数操作の面白さが分かりやすい
パーティゲーム・ミニゲーム系
ミニゲームをフレーム単位で攻略し、理論上の最高スコアを叩き出す動画はエンタメ性が高いアットウィキ
チート・改造との違いと、気をつけたいルール
TASとチートの違い
よくある誤解に、「TAS=チート」というものがあります。しかし、TASコミュニティでは、次のような線引きが意識されていることが多いです。ウィキペディア+1
TAS
基本的にはゲームソフト自体は改造せず、「入力」や「実行環境(フレームの巻き戻しなど)」を工夫する
「実機でも理論上再現できる範囲」を重視する文化がある
チート・改造
ゲームデータやプログラムを直接書き換え、通常は起こりえない性能・挙動を実現する
無敵化、アイテム無限化など、ゲームバランスを根本から崩すものが多い
もちろん実際にはグレーゾーンも存在し、「改造ありTAS」などを別ジャンルとして楽しむケースもありますが、その際はタイトルや説明文で明確に区別されることが一般的です。
法律・マナー的な注意点
TASやエミュレータの話題は、法律や規約の観点からも注意が必要です。
ゲームソフト・ROMデータの扱いは、各国の著作権法と利用規約を守ること
オンライン対戦や公式大会において、TAS的なツールを使うことは明確な不正行為であり、絶対に行わないこと
動画投稿時には、「TAS動画である」「実機プレイではない」ことを明示し、視聴者に誤解を与えないようにすること
本記事はTAS文化の理解を目的としており、いかなる違法行為も推奨しません。実際に環境構築等を行う際は、必ず最新の法律・規約を確認してください。
まとめ:TASを知るとゲームの見方が変わる
最後に、本記事の要点を整理します。
TASとは、Tool-Assisted Speedrun / Superplay の略で、ツールを使ってゲームの限界に挑戦するプレイ・動画文化である
RTAとの最大の違いは、「人間がリアルタイムに操作するか」「ツールで理論値を詰めるか」にあり、競技というより研究・作品の側面が強い
フレーム単位の入力や乱数操作、バグ技の活用などにより、人間ではほぼ不可能な超絶プレイを実現している
TASはチートや改造とは区別される文化があり、「実機で再現可能な範囲」を意識しつつ楽しむのが一般的
法律・利用規約・マナーを守りつつ、RTAと合わせてTAS動画を見ることで、ゲームそのものへの理解と愛着がより深まる