残業が月40時間前後で続くと、「これって違法なのでは」「残業代はきちんと払われているのか」「このまま体がもつのか」と不安になります。けれど、月40時間という数字だけでは、違法かどうかは決まりません。判断には、36協定の有無、時間外労働の上限規制、そして見落としがちな未払い(打刻修正・持ち帰り)や健康リスクの確認が欠かせません。
本記事では、まず「違法・未払い・健康」の3点を3分で自己判定できるチェック表で整理し、そのうえで、残業代の概算と給与明細の見方、証拠の残し方、会社と揉めにくい伝え方、相談先の使い分けまでを、迷わない順番で解説します。読み終えたときに、「自分の状況がどこに当てはまるか」「次に何をすればいいか」をはっきり決められる状態を目指します。
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残業40時間は違法になる?3分で分かる自己判定
3分自己判定表 違法 未払い 健康リスク
最初に、難しい理屈よりも「あなたの状況がどのタイプか」を見極めるための判定表を置きます。Yesが多いほど、早めの対処が必要です。
| 判定項目 | Yesの場合 | Noの場合 |
|---|---|---|
| 36協定があるか分からない/見たことがない | 違法運用の可能性。人事・総務に協定内容の確認を依頼。改善しないなら外部相談も検討。 | 次へ |
| 月45時間を超える月がある(または近い) | 上限規制の枠に注意。特別条項の有無と条件を確認。 | 次へ |
| 打刻の修正を指示された/残業申請が通らない | 未払い(サービス残業)の疑い。証拠を残し、記録を整える。 | 次へ |
| 家での作業・移動中対応が当たり前になっている | 持ち帰り残業が“労働時間”になっていない恐れ。記録を開始。 | 次へ |
| 固定残業代があるが「何時間分」か不明 | 未払いリスク。明細・契約書で内訳確認。曖昧なら要注意。 | 次へ |
| 睡眠障害・強い不安・動悸などが続く | 時間数に関わらず受診・相談を優先。体調記録も開始。 | 次へ |
この表の目的は、「違法だ/違法ではない」を断定することではありません。危険なサインを早めに見つけ、適切な順番で動ける状態をつくることです。
ここで分岐 まず確認すべき3つの書類
自己判定で引っかかったら、次の3点を先に揃えると判断が早くなります。
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就業規則(または労働条件通知書):所定労働時間、残業命令の前提、手当の扱い
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給与明細(最低3か月分):固定残業代の有無、時間外/休日/深夜手当の支給状況
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勤怠(打刻)記録(最低3か月分):残業時間の推移、締日(起算日)によるズレの確認
特に「起算日(締日)」がずれていると、月60時間超の割増や、上限規制の判断が分かりにくくなります。まずは“会社がどう集計しているか”を確認するのが近道です。
残業40時間のルール 36協定と上限規制を押さえる
原則の上限 月45時間 年360時間
厚生労働省の整理では、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできません。
ここで大事なのは、月40時間は単月だけ見れば“原則上限の範囲内”に近い一方、積み上がると年360時間に達しやすいという点です。
例として単純計算すると、月40時間×12か月=480時間となり、原則枠を超える可能性があります(実際は月ごとの変動・休日労働の扱い等も確認が必要)。
特別条項でも超えられない上限 年720時間など
繁忙期などで月45時間を超えざるを得ない場合、会社は「特別条項付き36協定」を使うことがあります。ただし、特別条項があっても無制限ではありません。厚生労働省の説明では、臨時的な特別の事情があっても、次を超えることはできません。
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年720時間以内
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複数月平均80時間以内(休日労働を含む)(2〜6か月平均)
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月100時間未満(休日労働を含む)
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原則の月45時間を超えられる回数にも制限(年6か月まで)
この章で覚えるべきことは一つです。
「月40時間でも、他の月で超過していないか」「特別条項を前提にした運用になっていないか」をセットで確認する――これが、違法リスクの見落としを防ぎます。
36協定はあるのに危ないパターン
「36協定はある」と言われても、次のような状態だとリスクが残ります。
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協定に書かれた上限が実態と合っていない(守られていない)
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特別条項の発動理由が形骸化している(“毎月恒常的に特別条項”)
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業務区分が曖昧で、何に対して残業が認められているのか分からない
36協定は“紙があるか”だけではなく、“守る仕組みになっているか”が重要です。会社に確認するときは、協定書の有効期間と上限時間、特別条項の条件を具体的に見せてもらうのが効果的です。
36協定の様式や届出の確認先
会社側が労基署へ届け出る協定届(36協定届)の様式・情報は、厚生労働省や各労働局のページで確認できます。協定内容の説明が曖昧な場合、一次情報に照らして「何が必要か」を把握しておくと話が早いです。
残業40時間でも危険な会社のサイン 未払いが起きやすい原因
サービス残業を生む3つの典型
未払いは「払わない」と明言されるより、“仕組み”として起きます。典型は次の3つです。
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打刻と実態がずれる
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早めに打刻するよう言われる
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退勤打刻後に仕事が続く
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後から勤怠が修正される
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申請しない文化がある
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残業申請を出すと嫌がられる
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申請に上限がある(なぜか月20時間まで等)
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“みなし”で処理され、実時間が反映されない
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見えない労働が増える
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自宅での資料作成やメール対応
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移動中の連絡対応
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休日にチャットが常態化
ここで重要なのは、「会社のルール上は残業していない」形でも、実態として働いていれば労働時間に当たり得る点です。まずは“記録”で現状を言語化することから始めます。
固定残業代がある会社で起きる未払い
固定残業代(みなし残業)があると、未払いが見えにくくなります。確認ポイントは4つです。
| 確認ポイント | 見方 | 曖昧だと起きやすい問題 |
|---|---|---|
| 何時間分か | 契約書・明細に時間数の明記 | 固定分の範囲が不明で過少支給 |
| 基本給との区分 | 明細で別項目になっているか | 基本給が実質的に下がる |
| 超過分の追加 | 固定分を超えたら支給されるか | 超えた分が支払われない |
| 起算日 | 残業時間のカウント開始日 | 月60時間超割増などがズレる |
固定残業代があるだけで違法というわけではありません。しかし、内訳が説明できない、超過分が払われない、勤怠が整合しない――このどれかがあると、未払いリスクは上がります。
管理監督者と言われたときの注意点
「管理職だから残業代は出ない」と言われるケースがありますが、肩書きだけで決まりません。実際には、職務権限や裁量、勤務時間の自由度など“実態”が関係します。疑問がある場合は、まずは記録と明細の整合を取り、必要なら相談窓口で整理するのが安全です(いきなり対立構図にしない)。
残業代はいくら?月40時間の概算と 給与明細での確認手順
割増率の基本 25% 35% 深夜加算 月60時間超は50%以上
残業代の計算は複雑に見えますが、まずは割増率の枠組みを押さえると整理できます。厚生労働省資料では、代表的に次が示されています。
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法定時間外労働:25%以上
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法定休日労働:35%以上
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深夜労働(22時〜5時):25%以上(時間外・休日と重なると加算)
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月60時間を超える法定時間外:50%以上(中小企業も対象)
割増率早見表
| 区分 | 割増率(目安) | 補足 |
|---|---|---|
| 法定時間外(通常) | 25%以上 | 法定外残業 |
| 法定休日 | 35%以上 | 週1日の法定休日 |
| 深夜(22〜5時) | 25%以上 | 他の割増と重なり加算 |
| 月60時間超の法定時間外 | 50%以上 | 起算日から累計 |
「自分の残業40時間が、法定時間外として何時間なのか」「深夜・休日が混ざっていないか」で、金額は大きく変わります。ここを曖昧にしたまま概算すると、見落としが起きやすいので注意してください。
残業代の計算式 まずは“概算”で違和感を探す
残業代の基本式は次の通りです。
1時間あたりの賃金(基礎) × 割増率 × 対象時間
ただし、1時間あたり賃金の“基礎”は、手当の扱いなどで差が出ます。厳密計算を目指すよりも、まずは「明細に対して違和感があるか」を見つける目的で概算すると、行動が進みやすくなります。
概算シミュレーション 月給別の目安
以下は“モデルケース”の概算です。所定労働時間、固定残業代、深夜休日、法定内/法定外で大きく変動します。あくまで目安として使い、違和感があれば次の「明細チェック」に進んでください。
モデル前提(例)
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所定労働時間:160時間/月(20日×8h)
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月40時間はすべて法定時間外(25%割増)
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深夜・休日なし、固定残業代なし
| 月給 | 時給換算(概算) | 40時間の残業代(概算) |
|---|---|---|
| 25万円 | 約1,563円 | 約78,125円 |
| 30万円 | 約1,875円 | 約93,750円 |
| 35万円 | 約2,188円 | 約109,375円 |
| 40万円 | 約2,500円 | 約125,000円 |
「思ったより少ない」と感じた場合、次のどれかが原因であることが多いです。
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法定内残業として扱われ、割増対象が少ない
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固定残業代に含まれているが内訳が不透明
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深夜・休日が混ざっているのに反映されていない
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そもそも勤怠が実態とずれている(打刻修正・持ち帰り)
給与明細チェック どこを見れば未払いに気づけるか
「明細は見ているのに分からない」という場合、見方が“項目単体”になっていることが多いです。ポイントは、明細と勤怠を結びつけることです。
| 見る項目 | 確認ポイント | よくある落とし穴 |
|---|---|---|
| 基本給 | 固定残業代と分離されているか | 基本給が不自然に低い |
| 時間外手当 | 時間数と単価が整合するか | 時間数が少ない/0 |
| 深夜手当 | 22〜5時の勤務が反映されているか | 深夜を残業に“含めた扱い”で不透明 |
| 休日手当 | 法定休日に働いた日があるか | 法定休日と所定休日の混同 |
| 固定残業代 | 何時間分か、超過分支給があるか | 内訳不明、超過分なし |
この表の狙いは、“正確な請求額”ではなく、未払いの疑いを早期に発見することです。疑いが出たら、次章の「証拠」と「相談先」で、揉めにくい順に進めてください。
月60時間超の割増 起算日に要注意
月60時間超の割増(50%以上)は「1か月の起算日から累計して60時間を超えた時点以降」に適用されます。つまり、給与の締日や勤怠の集計期間がずれていると、自分の感覚(暦月)と会社の計算が一致しないことがあります。
疑問がある場合は、まず「起算日(締日)」と「会社が集計している残業時間」を確認してから判断するのが安全です。
今日からできる対処法 証拠の残し方 会社への伝え方 相談先
証拠の残し方 まずは“改ざんされにくいもの”から
残業問題は、感情ではなく「記録」で進みます。最初から完璧を目指す必要はありません。まずは改ざんされにくい、客観性が高いものから揃えます。
証拠リスト チェックリスト
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□ 勤怠記録(打刻履歴のスクショ、CSV、月次集計)
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□ PCログ(ログイン・ログオフ、VPN、業務システムのアクセス履歴)
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□ 入退館記録(ICカード等があれば)
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□ 指示の記録(メール・チャット:期限、残業指示、休日対応依頼)
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□ 成果物の履歴(ファイルの更新履歴、チケット、日報)
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□ 自分のメモ(開始/終了時刻、作業内容、修正指示が来た時刻)
注意点として、会社の機密・持ち出しルールに反しない形で保全する必要があります。疑わしい場合は、相談窓口で「何をどう残すと安全か」から確認してください。
会社に伝える順番 揉めにくい進め方
会社に伝えるとき、いきなり「違法では?」と切り出すと、防御反応が強くなりやすいです。改善を狙うなら“順番”が重要です。
ステップ1 現状を1枚にまとめる
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直近3か月の残業時間(会社集計+自分の体感差)
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残業が増える要因(会議、突発、属人化、顧客対応、締切設定)
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体調・生活影響(睡眠、通院、ミス増加など客観情報)
ステップ2 改善案を「業務の棚卸し」で提示する
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優先度の低い業務の停止・頻度削減
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会議の削減(30分化、資料事前共有、参加者絞り)
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締切の再設定(「何をいつまでに」から合意形成)
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属人作業の分割・テンプレ化・自動化
ステップ3 依頼の形で相談する(例文)
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「月40時間前後が続いていて、品質と体調の面で不安があります。業務を整理して改善したいので相談させてください。」
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「残業が増える要因を整理しました。優先順位と締切を一度すり合わせたいです。」
この“相談→改善→記録”の順で進めると、対立を抑えながら動きやすくなります。
目的別 相談先の使い分け 最短ルートで迷わない
どこに相談するかは、あなたの目的で決めるのが最短です。
| 目的 | 向いている窓口 | 準備物 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| まず状況整理したい | 総合労働相談(労働局等) | 残業推移、明細、勤怠概要 | 相談だけで選択肢整理が可能 |
| 違法運用・未払いの疑いが強い | 労働基準監督署 | 勤怠、指示記録、明細、メモ | 事実関係の整理が重要 |
| 退職・請求・交渉まで進めたい | 弁護士 | 証拠一式、経緯メモ、契約書類 | 費用・方針を確認して進める |
「相談=会社に即通知」とは限りません。まずは情報整理として使い、次の一手を選べる状態にすることが大切です。
相談前の準備 失敗しないための3点セット
相談の場で話が早くなる“3点セット”があります。
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残業時間の推移(直近3〜6か月の一覧)
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明細の該当箇所(時間外/休日/深夜/固定残業代の項目)
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実態を示す記録(打刻、指示、ログ、持ち帰りのメモ)
これだけ揃うと、「違法性」「未払い」「健康」のどこが主戦場かがクリアになり、窓口選びも間違いにくくなります。
体調が限界になる前に 健康リスクの目安と受診の考え方
数字の目安 複数月平均80時間 月100時間など
健康面では、時間外・休日労働が高い水準に達するとリスクが高まることが知られています。厚生労働省の資料でも、複数月平均80時間、月100時間などのラインが整理されています。
ただし注意したいのは、数字に届いていないから安全とは限らない点です。月40時間でも、睡眠が崩れたり、強い不安が出たりするなら、体はすでに限界に近づいている可能性があります。
受診を優先したいサイン 症状ベースで判断する
次のような状態が続く場合は、残業時間の大小に関わらず受診や相談を優先してください。
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寝つけない/途中で目が覚める/朝起きられない
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動悸、頭痛、胃腸症状が続く
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出社前に強い苦痛や涙が出る
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仕事のミス・物忘れが増える
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休日に回復しない、気力が戻らない
「我慢すれば何とかなる」と感じる時期ほど、悪化すると回復に時間がかかります。医療機関の受診は、あなたの状態を客観的に把握し、必要な支援(休養や調整)につなげる手段でもあります。
記録が自分を守る 体調メモと受診記録
体調不良は周囲から見えにくいため、記録があるだけで説明が格段に楽になります。
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睡眠時間、起床時の感覚
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症状(頭痛、動悸、不安、胃痛など)と頻度
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残業時間の推移(週単位でも可)
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受診日・診断・処方・医師のコメント(可能な範囲)
記録の目的は誰かを責めることではありません。自分の状態を守り、必要な調整を得るための材料です。
よくある質問
月40時間ならブラックと断定できる?
断定はできません。36協定が整備され、上限規制の範囲内で、残業代も適切に支払われ、繁忙が一時的で健康に支障がないなら、月40時間でも直ちにブラックとは言い切れません。
一方で、打刻修正や持ち帰り、固定残業代の不透明などがある場合、時間数に関わらず危険度は上がります。
36協定があるか分からないとき どう確認すればいい?
人事・総務に「36協定の内容(上限・有効期間・特別条項の有無)を確認したい」と伝えるのが基本です。社内掲示、社内ポータル、就業規則と合わせて確認できる会社もあります。一次情報としては厚生労働省や労働局のページで様式や考え方も確認できます。
管理監督者と言われたら残業代は出ない?
肩書きだけで決まりません。裁量や権限、勤務時間の自由度など実態が関わります。まずは勤怠と明細の整合、指示の有無などを整理し、相談窓口で状況を言語化するのが安全です。
固定残業代がある場合の確認ポイントは?
最低限、①何時間分か ②基本給と区分表示があるか ③超過分の追加支給があるか ④起算日が合っているか、の4点です。いずれかが曖昧なら、未払いの可能性が高まります。
相談すると会社にバレる?
相談先と進め方によります。まず状況整理として相談する段階では、直ちに会社へ通知されるとは限りません。ただし、申告や調査に進むと会社対応が発生し得るため、「目的(改善したい/請求したい/退職したい)」を決めてから相談すると安心です。
退職前にやるべきことは?
勢いで辞める前に、①証拠整理(勤怠・指示・明細)②残業推移の一覧化③体調不良があれば受診と記録④相談先の目星、を整えると選択肢が増えます。退職後に「証拠がなくて動けない」状態を避けることが重要です。
参考にした情報源
厚生労働省 働き方改革特設サイト 時間外労働の上限規制
https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html
厚生労働省 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf
厚生労働省 36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意事項(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/000350731.pdf
厚生労働省 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/000930914.pdf
厚生労働省 過労死等を防止するための対策BOOK(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001309574.pdf
厚生労働省 労働基準法等関係主要様式ダウンロードコーナー
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunkankei.html
東京労働局 36協定届(協定の有効期間が令和6年4月1日以降の案内を含む)