「やりずらい」と書いてしまったけれど、これで合っているのか自信がない。提出前や送信前に気づいて、急に不安になる——そんな経験は多くの方にあります。
実はこの迷いは、「ず」と「づ」が音では区別しにくいことが原因です。文章では小さな表記ゆれが、読み手に「雑に見える」「信頼しづらい」といった印象を与えることもあります。
本記事では、「やりずらい/やりづらい」どちらが推奨されるかを最初に明確にし、なぜそう言えるのかを根拠とともに整理します。さらに、迷ったときにすぐ決められる10秒判断フロー、取引先でも角が立ちにくい言い換えテンプレ、ついでに直せる誤用チェック表までまとめました。
読み終えた頃には、次からは迷わず、安心して文章を出せる状態になります。
※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。
やりずらい・やりづらいで迷うのは普通に起きる
「この操作、やりづらい」と書いたつもりが、送信前に見返すと「やりずらい」になっていて不安になる。あるいは同僚やSNSで「やりずらい」を見かけて、どちらが正しいのか自信がなくなる。これは珍しい悩みではありません。
理由はシンプルで、「ず」と「づ」は発音上ほとんど区別されないため、耳では判断できず、文字にした瞬間にだけ“表記の正しさ”が問われるからです。しかもビジネス文書では、内容が正しくても表記ミスがあるだけで「詰めが甘い」「文章力に不安がある」という印象につながりがちです。
文章では「やりづらい」が推奨
書き言葉としては、「やりづらい」が推奨されます。
「やりずらい」は、少なくとも標準的な表記としては避けたほうが安全です。新聞の校閲実例でも「〜ずらい」を「〜づらい」に直す運用が示されています。
そのまま使える最短ルール
-
文章では「〜づらい」(言いづらい/使いづらい/やりづらい)に統一しやすい
-
取引先や社外向けは「〜にくい」「原因表現」へ言い換えると衝突が減る
-
迷ったら「やりにくい」に置き換え、意味が通れば「やりづらい」系の可能性が高い
やりづらいが推奨される理由を根拠から整理する
「推奨」と言われても、理由が曖昧だと不安は残ります。ここでは“基準となる考え方”と“実際の運用”を分けて説明します。ポイントは、原則(公的基準の枠組み)と、慣用(実際の文章での落ち着きどころ)が同時に存在することです。
文化庁の「現代仮名遣い」は原則と特例を示している
公用文などのよりどころとして参照される文化庁の「現代仮名遣い」では、基本として「ぢ/づ」は「じ/ず」で書く、といった原則が示され、同時に“表記の慣習による特例”が整理されています。
この枠組みを知っておくと、「原則はずでしょ?」という直感と、「でも実際はづらいって見るよね?」という実感が矛盾しなくなります。原則は原則として理解しつつ、慣用として落ち着いている形を選ぶ——文章の表記ではよくある構図です。
校閲の現場では「〜ずらい」を「〜づらい」に直す
次に「実際の運用」です。新聞の校閲では、「利用しずらい」を「利用しづらい」に直す、といった例が明示されています。さらに「やりずらい? やりづらい?」という形で、見出し表記を「やりづらい」に直した事例も紹介されています。
この“校閲の判断”は、日常の文章にもそのまま応用できます。つまり、迷ったら「やりづらい」に直すのが、読み手にとって最も摩擦が少ない選択になりやすい、ということです。
「づらい」と「にくい」は同じではない:ニュアンス差がある
「やりづらい」を「やりにくい」に変えても意味は通りますが、ニュアンスが完全に同じとは限りません。一般的に、
-
「〜づらい」は主観的な抵抗感や心理的な負担がにじみやすい
-
「〜にくい」は客観的な困難さや構造上のやりにくさにも幅広く使える
といった整理がされます。
だからこそ、社外メールや提案書のように“主観の強さ”が誤解を生む場面では、「やりにくい」「手順が複雑」などへ寄せるほうが安全です。
迷ったときに即決できる判断フロー
文章を書いている最中に、毎回じっくり考えるのは大変です。ここでは、迷いを10秒で処理できるように、手順を固定します。
ステップ1:いったん「やりにくい」に置き換える
まず「やりずらい/やりづらい」で止まったら、いったん「やりにくい」に置き換えて読んでみます。
-
「この作業はやりにくい」
-
「この操作はやりにくい」
-
「この手順はやりにくい」
意味が通るなら、「〜づらい/〜にくい」で表せる“困難さ”の話をしています。次のステップへ進みます。
ステップ2:文章の用途で「づらい」か「にくい」を選ぶ
用途別の目安は次の通りです。
-
社内メモ・会話調の文:やりづらい(感想として自然)
-
社外メール・報告書・提案書:やりにくい(説明として角が立ちにくい)
-
相手の設計や手順に触れる可能性がある:原因表現(複雑、手順が多い、導線が分かりにくい)へ
この“用途で選ぶ”ルールを持つだけで、表記の正しさだけでなく、伝え方の事故も減らせます。
ステップ3:「ずらい」を検索して一括点検する
最後に、提出・送信前のチェックとして「ずらい」で検索します。もし引っかかったら、原則「づらい」または「にくい」へ直す、という運用にします。
この方法の良いところは、頭で覚えるより確実な点です。人は焦ると誤字をします。チェック方法を仕組みにしておくのが最短です。
ビジネスで角が立たない言い換えテンプレ集
「やりづらい」は、便利な一方で、相手に「あなたのやり方が悪い」と聞こえることがあります。特に社外向けでは、伝える目的は“困っている”の共有ではなく、“解決のための合意形成”です。ここではそのまま貼れる形でテンプレを用意します。
社外メールで無難な言い換え
次の3つは、相手を責めずに課題を共有できる定番です。
-
手順が複雑なため、こちらで整理してご共有します
-
操作が分かりにくい点があるため、手順書を追記します
-
現状の運用では負荷が高いため、改善案をご提案します
「やりづらい」を使わず、“原因(複雑/分かりにくい/負荷)”で語ることで、受け手の防御反応が起きにくくなります。
社内向けでも、対立を避けたいときの言い換え
社内でも、部署をまたぐ調整やレビューの場では言葉が刺さることがあります。そんなときは次が便利です。
-
「この手順、少し手戻りが出やすいので順番を整えたいです」
-
「入力項目が多いので、最小構成にできないか相談したいです」
-
「初見だと迷いやすいので、図を1枚足すと分かりやすくなりそうです」
困りごとを“改善提案”に変換すると、会話の空気が前に進みます。
「づらい/にくい/がたい」使い分け早見表
| 表現 | 伝わり方 | 向く場面 | 例 |
|---|---|---|---|
| 〜づらい | 主観・心理的負担がにじむ | 社内、感想、会話 | 言いづらい/入りづらい |
| 〜にくい | 比較的客観寄り、説明向き | 社外、資料、報告 | 理解しにくい/操作しにくい |
| 〜がたい | 硬い・強い・制約感 | 公式文、断り | 承諾しがたい/実現しがたい |
迷ったら、社外は「にくい」優先、社内は文脈次第で「づらい」も可、と覚えておくと運用が安定します。
ついでに直したい「ずらい/づらい」誤用チェック表
「やりずらい」だけ直して終わりにすると、別の箇所で同じタイプの誤りが残ることがあります。ここで一括で点検できるようにまとめます。
誤用→正用の一覧(まとめてコピペで確認)
| 迷いやすい表記 | 推奨される表記 |
|---|---|
| やりずらい | やりづらい |
| 使いずらい | 使いづらい |
| 言いずらい | 言いづらい |
| 書きずらい | 書きづらい |
| 読みずらい | 読みづらい |
| 分かりずらい | 分かりづらい |
この表を自分用のメモにしておくと、次回から迷いが激減します。チームで文章を書いているなら、表記ルールとして共有しておくのも効果的です。
混同注意:同じ「ず/づ」でも別ルールが混ざる
「ず/づ」には、今回の「〜づらい」とは別の話題もあります。たとえば「ずつ」は、表記の基準や媒体方針で扱いが揺れやすい語として知られます(今回の主題とは別枠)。
そのため、文章内検索で「ず」を見つけたからといって機械的に「づ」へ直すのは危険です。今回のチェックはあくまで「ずらい」に絞って行うのが安全です。
よくある質問:会話ならOK? 指摘されたらどう返す?
最後に、実際に困りやすい点をQ&Aで整理します。
話し言葉なら「やりずらい」でも問題ない?
会話では「ず/づ」の区別が音で出ないため、口頭で問題になることは多くありません。ただし、文章にした瞬間に“表記の正しさ”が可視化されます。メール・資料・投稿文では「やりづらい」へ統一しておくのが安全です。
取引先メールで「やりづらい」は失礼?
文脈次第で、相手の責任を示唆するように聞こえる可能性があります。社外向けでは「やりにくい」や原因表現(複雑、分かりにくい、負荷が高い)に寄せると安全です。ニュアンス差の整理としても「〜にくい」の守備範囲は広いとされています。
指摘されたとき、角が立たない返し方は?
おすすめは「ありがとう+修正+運用」で返すことです。
-
「ご指摘ありがとうございます。表記を『やりづらい』に修正いたします。」
-
「同音で紛らわしいので、文書では『〜づらい』に統一して運用しています。」
相手を正す必要はありません。自分の運用として淡々と直すのが一番スムーズです。
迷わないための運用ルールまとめ
最後に、今日からそのまま使える運用ルールに落とし込みます。
今日から使う3つのルール
-
文章は「やりづらい」(「やりずらい」は避ける)
-
社外は「やりにくい」や原因表現(角が立ちにくい)
-
送信前に「ずらい」検索(一括で潰す)
この3つだけで、表記ミスと伝え方の事故をまとめて減らせます。
チームで表記ゆれを防ぐなら
複数人で文章を作るチームでは、次の仕組みが効きます。
-
表記ルール表(スプレッドシートでも可)に「〜づらい」例を登録
-
テンプレ文(社外向け言い換え)を共有
-
レビュー時のチェック項目に「ずらい検索」を追加
“個人の記憶”ではなく“チームの仕組み”にすると、表記は安定します。
参考にした情報源
-
文化庁「現代仮名遣い(国語施策・日本語教育)」https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/gendaikana/
-
文化庁「現代仮名遣い|本文 第2(表記の慣習による特例)」https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kijun/naikaku/gendaikana/honbun_dai2.html
-
毎日ことばplus「やりずらい? やりづらい?」https://salon.mainichi-kotoba.jp/archives/189140
-
毎日ことばplus「『~づらい』(×『~ずらい』)と『~にくい』の違いは」https://salon.mainichi-kotoba.jp/archives/86868
-
光村図書 みつむらwebmaga「じ?ぢ? ず?づ?」https://www.mitsumura-tosho.co.jp/webmaga/kotoba-to-manabi/kotoba-qa/detail10