「コスパ最強」と評されることも多いXiaomiスマホ。
しかし同時に、「中国企業だから危険なのでは?」「個人情報が抜かれるらしい」といった不安の声も絶えません。
価格と性能のバランスに強く惹かれつつも、見えにくいリスクが気になって一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、噂や印象論ではなく、2025年時点で判明している事実や技術レポート・法制度の情報をもとに、Xiaomiスマホの「危険性」を冷静に分解します。
そのうえで、「どんなリスクがあり」「どの程度現実的で」「どんな設定や使い方で軽減できるのか」を具体的に整理し、最終的にご自身で「買う/買わない」「どう使うか」を判断していただける材料をご提供いたします。
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Xiaomiを選んでもよい可能性が高い人
コスパ重視で、ある程度のデータ収集は合理的な範囲で許容できる。
設定画面を自分で確認し、アップデートや権限管理などの基本対策を実行できる。
銀行・証券・重要なログインは、慎重に扱い(2段階認証等)、端末紛失時のリスクにも備える。
別メーカーを検討した方がよさそうな人
「中国」という要素自体に強い抵抗があり、少しでも不安が残る選択肢は避けたい。
セキュリティ設定や権限管理に自信がなく、「買ってそのまま使う」前提で考えている。
扱う情報が極めてセンシティブ(政治活動・人権活動など)で、万一に備えてリスクを最小化したい。
いずれの場合も、
正規販売モデルを選ぶこと
基本的なセキュリティ対策を行うこと
はXiaomiに限らず必須です。
Xiaomiスマホの「危険性」とは何を指すのか
「xiaomi 危険性」というキーワードで検索される方の多くは、
個人情報が勝手に中国へ送られていないか
バックドアやマルウェアが仕込まれていないか
法律や地政学的なリスクはないか
といった点を心配されているはずです。
しかし、「危険性」という言葉だけでは範囲が広すぎます。まずは以下の4つに分けて考えると整理しやすくなります。
プライバシー・データ収集のリスク
どのデータが、どこに、どのような目的で送られているのか。
セキュリティ脆弱性・不正アクセスのリスク
脆弱性や設定の不備により、第三者に乗っ取られたり情報を盗まれたりする可能性。
物理的な安全性・品質のリスク
バッテリーの発熱・膨張、PSEマークの有無、技適の有無など。
法制度・地政学に起因するリスク
中国の国家情報法など、企業が政府に協力を求められる可能性。
本記事では、これらの観点ごとに「事実として確認されていること」と「よくある噂や誤解」を分けて解説し、最後に「どの程度なら許容できるか」をご自身で判断できるよう整理していきます。
Xiaomiスマホに関してよく挙げられる主な懸念点
データ収集・プライバシー(ブラウザ・クラウドなど)
最も話題に上がりやすいのが、「どこまで個人情報を集めているのか」というプライバシーの問題です。
Miブラウザのインコグニートモード問題
2020年、セキュリティ研究者がXiaomi製のWebブラウザ(Mi Browser / Mint Browser)について、シークレットモード中であっても閲覧履歴や検索クエリ等を収集していると指摘し、Forbesなど複数メディアが報じました。
Xiaomi側は、
データは匿名化されており、ユーザー体験の改善のためだ
法令に準拠している
と説明しつつ、批判を受けてインコグニート時のデータ収集をユーザーがオフにできる設定を追加しました。
ポイントは以下のとおりです。
過去に問題視された挙動が存在したのは事実。
その後、設定でオプトアウト可能になり、現在は挙動が変わっている。
ただし、標準ブラウザに対する不信感から、Chrome等に切り替えるユーザーも多い。
Xiaomiアカウント・クラウドサービスのデータ処理
Xiaomiは、Xiaomiアカウントやクラウドサービス(バックアップ、同期、Mi Cloud等)を通じて、ユーザーデータを複数の地域のデータセンターで処理しています。プライバシーポリシーでは、インド・オランダ・ロシア・シンガポールなどのデータセンターを利用し得ることが明記されています。
また、外部の監査・認証として、
GDPRコンプライアンスについてTRUSTeによる監査を受けていること
ISO/IEC 27001、27018など情報セキュリティ・クラウドプライバシー関連の国際規格への準拠
を公表しています。
ただし、
どこまで「必要最小限のデータ」に絞られているか
中国本国の法制度との関係で、後述のような懸念が残る
という点は、他社のクラウドサービスと同様に注意が必要です。
セキュリティ脆弱性・バックドアと誤解されやすいポイント
2024年に報告された複数の脆弱性
2024年には、セキュリティ企業によってXiaomi端末のアプリやシステムコンポーネントにまたがる20件の脆弱性が報告されました。
問題となった点の例:
システム権限で任意のアクティビティやサービスにアクセスできてしまう
システム権限で端末内の任意ファイルを取得できてしまう
電話設定やXiaomiアカウント情報が漏洩する可能性
また、Xiaomi公式アプリストア「GetApps」のWebViewにおいて、DOMベースのクロスサイトスクリプティング(XSS)脆弱性が見つかり、ユーザーの操作を悪用すると任意のアプリをインストールさせることが可能とされました(CVE-2024-4406)。
これらは、
「バックドア」ではなく「脆弱性」(設計上の不備)と位置付けられる
ベンダーによるパッチで順次修正された
という点で、意図的なスパイ機能とは区別されます。
「バックドア」と脆弱性の違い
バックドア:通常の仕様には記載されていない、意図的に仕込まれた裏口・アクセス手段。
脆弱性:意図していないコードのバグ・設計ミスにより、攻撃者に悪用され得る問題。
一般ユーザー向けの記事では、この二つが混同され、「脆弱性が見つかった=バックドアがあった」と表現されることが少なくありません。しかし、技術的には大きく異なるため、「問題の種類」を分けて理解することが重要です。
中国の法制度・地政学リスク
Xiaomiを含む中国企業について必ず言及されるのが、中国本国の法制度との関係です。
国家情報法などの概要
中国の国家情報法(2017年)には、組織や市民が国家の情報活動を『支持・協力・援助』する義務を負うとする条文が含まれています。
これにより、
中国政府が企業に対してデータ提供を要請する可能性
その対象に海外利用者のデータが含まれ得るのか
といった点が国際的な議論の対象となっています。
さらに、サイバーセキュリティ法やデータセキュリティ法など、ネットワーク運用や個人情報に関する法律も整備されており、これらの組み合わせによるリスクが懸念されています。
一方で、中国政府は「違法な方法で企業や個人にデータ提供を求めることはない」と反論しており、2025年にはEUのプライバシー団体がXiaomiを含む中国企業をGDPR違反で訴えた件に対しても、同様の立場を表明しています。
一般ユーザーにとっての現実的な影響
「確実に政府にデータが渡っている」と断定できる公開証拠は現時点で限られています。
ただし、「要請があれば協力義務がある」法制度は存在しており、リスクポテンシャルがゼロとは言えない状況です。
特に、政府・防衛・機微技術などの領域では、このポテンシャル自体が問題となり得ます。
一般的な個人利用では、
GoogleやApple等の大手も大規模なデータ収集を行っていること
多くのオンラインサービスが各国政府の要請に応じてデータ提供を行っていること
を踏まえると、「中国であるがゆえの追加リスク」をどこまで重く見るかは、利用者の価値観と扱うデータの機密性によって変わります。
物理的な安全性・品質(バッテリー・技適など)
Xiaomiに限らずスマホ全般では、
バッテリーの発熱・膨張
充電中の発火事故
といった物理的なリスクが話題になることがあります。
ここで重要なのは、
日本国内で正規販売されているモデルかどうか
PSEマーク・技適マークが付いているか
です。正規国内モデル:PSE・技適など法定の安全基準を満たしている前提。
並行輸入・技適なし端末:電気用品安全法・電波法上のリスクに加え、サポート・保証も限定的。
また、安価な充電器・ケーブルの使用や、高温環境での長時間充電など、ユーザー側の使い方も事故リスクに大きく影響します。Xiaomiだから特別に高リスクというより、「非正規品+乱暴な使い方」が危険と理解しておく方が実態に近いと言えます。
Xiaomiは本当に他社より「危険」なのか?客観的な整理
他の中国メーカー・欧米メーカーとの比較視点
技術レポートやCVEデータベースを見ると、
Huawei、OPPO、vivo、Samsungなど、多くのメーカーで脆弱性が報告されています。
Xiaomiに「だけ」重大な脆弱性があるわけではなく、モバイルOS+サードパーティアプリという構造上、どのメーカーにも一定のリスクは存在します。
違いが出やすいのは、
アップデートの速さ・継続期間(どれだけ長くセキュリティパッチが提供されるか)
メーカーがどれだけ透明性を持って問題を公表・修正しているか
法制度・地政学に関する「追加リスク」をどう評価するか
といった点です。
欧米メーカー(Apple/Google等)に比べると、
中国法制との関係上、「政府からの要請リスク」を高く評価する専門家が多い
一方で、GDPR対応や外部監査など、国際基準に沿った取り組みも進んでいる
という二面性があります。
「データの価値」と「端末価格」のトレードオフ
Xiaomiは、
端末価格が比較的安価
OSやアプリ内に広告・レコメンド機能を組み込む
というビジネスモデルを採用しており、ユーザーデータを分析してサービス改善や広告最適化に活用する前提があります。
これは、
GoogleのAndroidエコシステム
無料のSNS・検索サービス
と同様、「データを提供する代わりに、低価格・無料でサービスを使う」構図です。
したがって、
「データをほとんど渡したくない。端末にも広告を出してほしくない」
→ iPhoneなど、よりプライバシー重視を掲げる高価格帯端末を選択する価値がある「合理的な範囲でデータ提供は許容し、コスパを優先したい」
→ Xiaomiを含むコスパ端末も選択肢に入る
という価値観・優先順位の問題でもあります。
Xiaomiスマホをできるだけ安全に使うための具体的な設定
ここからは、「Xiaomiを使う」と決めた前提で、リスクを抑える具体的な対策を整理します。
最初に確認すべき基本設定チェックリスト
新しくXiaomi端末を使い始めたら、最低限次の項目を確認してください。
OS・セキュリティパッチの最新化
設定アプリからシステムアップデートを確認し、最新の更新を適用する。
自動更新を有効にしておく(モバイルデータを使うかは環境に応じて選択)。
不要なXiaomiサービス・診断データ送信のオフ
「ユーザー体験向上プログラム」「使用状況の送信」などの項目を確認し、必要性が低ければオフにする。
広告のパーソナライズ設定も、不要であれば無効化。
アプリ権限の棚卸し
位置情報、連絡先、カメラ、マイク、ストレージなどの権限がどのアプリに付与されているか確認。
明らかに不要な権限は取り消し、「使用中のみ許可」など最小権限にする。
画面ロック・2段階認証の設定
PIN・パスワード・指紋など、推測されにくいロック方式を設定。
Googleアカウント、主要なクラウドサービスでは2段階認証(2FA)を有効にする。
ブラウザとクラウドサービスの安全な使い方
ブラウザの選択と設定
標準ブラウザを使う場合:インコグニート時のデータ収集オプションが用意されているか確認し、不要ならオフ。
不安が強い場合:ChromeやFirefoxなど、別ベンダーのブラウザをメインで利用する。
Xiaomi Cloudの同期範囲を絞る
写真・連絡先・メモ・通話履歴など、項目ごとに同期オン/オフを確認。
バックアップがなくても困らない情報は同期しない選択も検討する。
Googleアカウント側でのバックアップと役割分担を意識する。
ログイン端末・セッションの管理
Xiaomiアカウント、Googleアカウントともに、「ログイン中の端末一覧」を定期的に確認し、身に覚えのない端末を削除する。
アプリ・ネットワーク周りで注意したいポイント
アプリの入手元を厳格にする
原則としてGoogle Playストアと正規ストアのみを利用し、野良アプリ(未知の提供元)を入れない。
評判が極端に悪いアプリ、過剰な権限を要求するアプリは避ける。
公共Wi-Fiの利用方法
パスワードなしのWi-Fiや、出どころが不明なアクセスポイントには接続しない。
どうしても利用する場合は、VPNの導入や、重要なログイン操作を避けるなどの対策を取る。
定期的なセキュリティ見直し
数ヶ月に一度は、不要アプリの削除・権限の再チェック・アップデート状況の確認を行う。
セキュリティアプリを導入する場合も、信頼できる大手ベンダーに限定する。
ビジネス用途・高機密データでの利用を考える場合
情報システム担当者の視点で見るべき論点
法人でXiaomi端末導入を検討する際は、個人利用とは次元の異なる検討が必要です。特に以下のポイントを整理してください。
扱うデータの機密性
個人情報(顧客データ)、機微情報(医療・金融)、機密技術情報など。
法令・規制との関係
個人情報保護法、GDPR等の域外適用、業種別ガイドライン。
中国法制との整合性
国家情報法・サイバーセキュリティ法等に起因するポテンシャルリスクを、社内ポリシーとしてどう評価するか。
技術的・組織的な補完策
MDM(モバイルデバイス管理)によるアプリ配布・設定統制。
業務データをコンテナ化し、端末OSからの分離を図る。
ゼロトラストネットワークやDLP(情報漏洩対策)との連携。
「導入してよいケース/避けるべきケース」の例
導入を検討しやすいケース(例)
機密性が比較的低い業務用端末(店舗スタッフ・社用連絡用など)、かつ
正規販売モデルのみ利用
MDMで設定を一括管理
業務データはクラウド+ブラウザ経由でアクセスし、端末に残さない設計
慎重または回避が望ましいケース(例)
防衛・政府機関・重要インフラ・先端技術研究など、国家レベルの標的となり得る領域
契約上、特定国へのデータ移転が禁止されている案件
顧客の要求水準が非常に厳しく、「疑義の可能性自体を排除したい」場合
このようなケースでは、たとえ現在具体的な違反・漏洩の証拠がなくとも、「疑義を挟まれやすい要素」を避けること自体がリスクマネジメントとなります。