Wordで仕上げたはずの資料に、コメントや変更履歴がそのまま印刷されてしまう──この事故は、社内配布でも社外提出でも一度起きると手戻りが大きく、場合によっては情報管理上のリスクにも直結します。しかもWordは、印刷画面の設定と校閲の表示設定がそれぞれ出力に影響するため、「チェックを外したのに消えない」「PDFにしたら混ざった」といった混乱が起こりがちです。
本記事では、Wordでコメントを印刷しないための最短手順を目的別に整理し、Windows・Macなどの環境差を踏まえつつ、消えないときの原因切り分けと配布前の確認ポイントまで一気通貫で解説いたします。読了後には、コメント混入の不安なく、本文だけの印刷・PDF提出を確実に行えるようになります。
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Wordでコメントを印刷しない方法
まず最初に押さえるべきポイントは、Wordの「コメントが印刷される/されない」は、次の2系統で決まることが多い点です。
印刷側の設定:印刷画面にある「変更履歴とコメントの印刷」をオン・オフする
校閲側の表示:画面の表示モード(最終版/最終版(マークアップなし)等)で、そもそもマークアップを見せるかどうかを切り替える
この2つを混同すると、「画面では見えているのに印刷されない」「画面では消えたのにPDFに入る」といった行き違いが発生します。したがって本記事では、目的別に「どちらを主に使うべきか」を明確にし、その上で失敗しにくい確認手順まで提示します。
本文だけ出したい場合の最短手順
本文のみ(コメントも変更履歴も一切出さない)で印刷したい場合は、結論として次の運用が最も安全です。
校閲側で「変更履歴・コメントが見えない表示」に切り替える
印刷プレビューで吹き出し・余白のマークアップ領域がないことを確認する
念のため、印刷画面でも「変更履歴とコメントの印刷」がオフになっていることを確認して出力する
本文だけを出す場合は、細かい粒度調整(コメントだけ消す等)が不要なため、「配布用の見え方」=「出力の見え方」になるように、校閲側で先に整えてしまうのが事故防止として有効です。
特に社外送付や提出物では、コメントが機密情報や個人情報になり得ますので、本文のみ出力は「確実性」を最優先にしてよい領域です。
変更履歴だけ出したい場合の最短手順
変更履歴(トラック変更)だけを印刷したい、つまり「修正箇所は見せたいが、コメントは印刷しない」場合は、本文のみより難易度が上がります。理由は次のとおりです。
変更履歴とコメントは、Word上ではどちらも「マークアップ」に分類され、表示・印刷の制御が絡み合いやすい
Wordの機能更新や環境差(Windows/Mac/Web/モバイル)によって、「コメントだけ制御」の見え方が変わる場合がある
文書の状態(校閲の表示モード、バルーン表示、簡易マークアップ等)によって、印刷結果が変わったように見えることがある
そのため、最短ルートとしては以下を推奨いたします。
まずは印刷画面の設定で「変更履歴とコメントの印刷」を制御する
次に校閲側の表示で「何が表示対象になっているか」を整理し、コメント表示が残る状態を避ける
仕上げに印刷プレビューで「コメントが出ていない」ことを必ず確認する
「変更履歴だけ」は要件が繊細ですので、実務では「社内校正用」「提出用」でファイルを分ける運用も非常に有効です(後述の配布前チェックで扱います)。
コメント一覧だけ出したい場合の最短手順
本文中に吹き出しとしてコメントが出るのは避けたいが、コメント内容そのものは別紙で共有したい、というケースも多いはずです。たとえば次のような場面です。
文章の本文は確定して配布したいが、校正指示の履歴は別途残したい
レビュー会議でコメント一覧だけを印刷して議論したい
コメントが多く、本文のレイアウトを崩したくない
この場合は、運用として「本文は本文で印刷/PDF化」「コメントは一覧で出力」という分離が効果的です。
コメント一覧の出力は、本文への混入リスクを減らし、配布物の体裁を保ちやすくなります。
Wordの印刷設定でコメントを出さない手順
ここでは「印刷画面で制御する」ルートを、なるべく迷わない形で整理します。Windows版を軸に説明しつつ、Macなどでも考え方は同じです。
印刷画面で変更履歴とコメントの印刷をオフにする
基本手順は次の流れです(名称は環境により若干前後します)。
Wordで対象の文書を開きます。
ファイル → 印刷 を開きます。
印刷画面の「設定」付近にあるメニュー(例:すべてのページを印刷)を開きます。
変更履歴とコメントの印刷 のチェックを外します。
印刷プレビューで、右側の余白に吹き出し領域が出ていないことを確認して印刷します。
ここで重要なのは、チェックを外した後に、必ず次の2点を目で確認することです。
プレビュー上でコメントが消えたか(余白の吹き出し、本文中のコメントマーカー)
ページ数やレイアウトが想定どおりか(コメント領域が消えることで行数や改ページが変わる場合があります)
また、印刷設定だけで消えない場合は、校閲側の表示が影響している可能性があります。その場合は「印刷設定が間違っている」と決めつけず、次章の校閲設定も併用してください。
目的別の最短手順早見表
| 目的 | 推奨ルート | 操作の要点 | 失敗しやすい点 |
|---|---|---|---|
| 本文のみ | 校閲表示でマークアップなし→印刷 | 表示を配布用にしてから出力 | プレビュー確認を省略しがち |
| 変更履歴のみ | 印刷設定+校閲表示の整理 | コメントの表示・印刷を抑制 | コメントだけ残るケースがある |
| コメント一覧のみ | 一覧出力+本文は別出力 | 本文とコメントを分離する | 出力先(プリンタ/ PDF)が混在しがち |
上記のとおり、本文のみは単純ですが、変更履歴のみは条件次第で段取りが増えます。早見表の「失敗しやすい点」を先に意識しておくと、手戻りが減ります。
PDF保存でも同じ設定が効くポイント
「印刷はしないがPDFで提出する」ケースでも、コメント混入の事故は多発します。PDFは見た目が固定されるため、混ざってしまうと差し替えの手間も大きくなります。
PDF保存時に意識すべきポイントは次のとおりです。
Wordの出力は、保存メニューよりも印刷系の設定に引きずられることがある
PDF作成の導線(エクスポート、印刷→Microsoft Print to PDF、プリンタドライバ等)が複数あるため、設定を揃えないと結果がぶれる
安全策としては、次の運用が堅いです。
まず「校閲側でマークアップなし」の状態にする(配布用の見え方を作る)
次に「印刷画面」で「変更履歴とコメントの印刷」がオフであることを確認する
その状態でPDFを作成し、PDFを開いて最終確認する
特に「保存時のプレビューで見えなかったのにPDFに入る」場合、保存導線が異なる可能性があります。社内で手順を統一し、PDF出力の導線を決めておくと再発防止になります。
Wordの校閲設定でコメントを出さない手順
印刷設定で制御できるケースも多いですが、「配布用の体裁を確実にする」「レビュー痕をゼロにする」目的では、校閲設定の理解が重要です。
変更履歴とコメントなしへ切り替える
本文だけを出したい(レビュー痕を一切出したくない)場合、校閲側の表示を「マークアップなし」に寄せるのが有効です。考え方としては以下です。
校閲タブにある表示モード(最終版、簡易マークアップ、オリジナル等)を、「変更履歴やコメントが表示されない状態」へ切り替える
画面上でもレビュー痕が見えない状態を作ってから、印刷・PDF化する
印刷プレビューでも同じ見え方であることを確認する
この手順のメリットは、「出力だけ消す」のではなく「見え方そのものを配布用にする」ため、事故が起きにくい点です。
なお、変更履歴を完全に“なくす”には承諾・却下など別の操作が必要ですが、まず「印刷しない」要件であれば表示を切り替えるだけでも達成できる場合が多いです。
コメントだけ除外して変更履歴を残す考え方
「コメントだけを除外し、変更履歴は残す」は、現場で非常に需要がある一方、環境差や機能差でつまずきやすい部分です。ここでは、操作手順そのものよりも、まず考え方を整理します。
1. 何を“残す”のかを明確化する
変更履歴と一口に言っても、次が混在します。
文字の追加・削除
書式変更(太字、下線、フォント変更等)
変更のバルーン表示(余白に出るか本文中に出るか)
コメント(本文に紐づく注釈)
「コメントだけ除外」したい場合、書式変更の表示まで含めるのか、削除・追加だけでよいのかで、見え方が大きく変わります。ここを曖昧にすると「消えた/消えない」判断もぶれます。
2. 表示と印刷の両輪で確認する
コメントは、表示設定で消えても、印刷設定がオンだと出力されることがあります。逆に、印刷設定で消しても、表示がレビュー状態のままだと「どこかで混ざりそう」と不安になります。
したがって、コメントだけ除外は次の二重チェックが必要です。
校閲側:コメントが表示対象になっていないか
印刷側:コメントを印刷する設定がオンになっていないか
3. 代替案を持つ
どうしてもコメントだけ制御が難しい環境では、運用面で代替する方が確実な場合があります。
校正用:変更履歴+コメントあり(レビュー用)
提出用:本文のみ(マークアップなし)
議論用:コメント一覧だけ別紙で出力
「目的に合わせて出力物を分ける」設計は、属人的な設定ミスを減らす現実的な解決策です。
Wordでコメントが消えないときの原因別チェック
ここからは、実際に多い「できない」「消えない」「結果が違う」パターンを、原因→確認→対処の順で整理します。
プレビューと印刷結果が違う
原因として多いのは、出力経路が複数あることです。たとえば以下のような違いがあります。
Wordの「印刷」画面から出す(プリンタへ直接)
印刷画面から「PDFプリンタ」を選んでPDF化する
「エクスポート」や「名前を付けて保存」でPDF化する
会社の複合機ドライバ経由で印刷する(ドライバ側で独自処理)
この場合の確認ポイントは、次の順が安全です。
印刷画面の設定で「変更履歴とコメントの印刷」がオフか
校閲側の表示でレビュー痕が見えていないか
同じ導線で出力しているか(担当者によって導線が違うと結果がぶれます)
対処としては、社内運用で「PDFはこの導線」と固定し、チェック項目をテンプレ化するのが効果的です(配布前チェックに記載します)。
コメントだけ外せないことがある
コメントだけが制御できないと感じるケースでは、次のいずれかが起きていることが多いです。
コメント機能の仕様・更新により、表示や設定の位置が変わっている
環境差(Windows/Mac/Web/モバイル)で、同じ操作ができない
変更履歴の表示設定(簡易マークアップ等)との組み合わせで、コメントが残って見える
対処としては、まず「今の状態で、本文中に出ているのが本当にコメントか」を確認してください。書式変更や挿入・削除が、余白のバルーンとして出ているのを「コメント」と誤認している場合もあります。
そのうえで、次の優先順位で解決すると失敗が減ります。
本文のみ(マークアップなし)で出力できるなら、まずそれで配布する
変更履歴が必要なら、コメント一覧を別紙に切り出す運用を検討する
どうしても「変更履歴のみ」にこだわる場合は、出力前のチェックを厳格化する(プレビュー・PDF確認までセット)
設定が毎回戻る
「前回はできたのに、次に開いたらコメントが出た」という場合、次のどちらかです。
文書の状態が保存されている:レビュー表示のまま保存してしまった
アプリの既定や更新が影響:Wordの更新、アドイン、組織のポリシー、端末差など
個人運用での対処としては、次を推奨いたします。
配布用ファイルを別名保存し、配布用の表示(マークアップなし)にしてから保存する
「配布用」フォルダと「作業用」フォルダを分け、取り違えを防ぐ
共同編集の場合、誰かがレビュー表示に戻して保存する可能性があるため、最終出力は担当者が一本化する
設定の戻りは、操作ミスというより「運用設計の不足」で起こることが多いです。再発防止の観点では、次章のチェックリスト化が最も効きます。
Wordで配布前に確認すべき注意点
ここからは「印刷事故を起こさない」ための実務的な(※表現上は運用的な)観点を整理します。コメントは内容次第で重大な情報漏えいになりますので、最後はチェックリストで潰すことを推奨いたします。
機密情報の観点での見落とし
コメントには、次のような情報が含まれがちです。
社内の意思決定の過程(却下理由、内部事情)
個人名、評価、未確定情報
契約・価格・条件など交渉情報
顧客情報、案件情報
このため、配布前は「コメントが見えない」だけでなく、「見えない状態で出力した」ことを担保する必要があります。次のチェックを必ず行ってください。
印刷プレビューで、余白に吹き出し領域が出ていない
PDFの場合、PDFを開いて検索し、コメントが含まれていない(表示上も)
変更履歴も不要なら、マークアップなし表示になっている
コメント一覧を別紙に出していないか(別紙配布の誤添付が起きやすい)
共有ファイルで起きる印刷事故の予防
共同編集やレビューが入るファイルほど、事故が増えます。理由は単純で、編集者ごとに以下が異なるからです。
表示モード(最終版/簡易マークアップ等)
印刷設定(コメント印刷オン/オフ)
出力導線(印刷、PDF、プリンタドライバ)
そこで、組織内での予防策として、次の運用が有効です。
配布用ファイルを別名保存し、配布用の状態にして固定する
最終出力担当者を決め、出力導線を統一する
出力前の確認を、担当者の手順書(チェックリスト)に落とす
配布前チェックリスト(印刷・PDF共通)
校閲表示がマークアップなし相当になっている
印刷画面で「変更履歴とコメントの印刷」がオフになっている
印刷プレビューで、余白の吹き出し領域が消えている
PDFの場合、PDFを開いて最終確認した
コメント一覧を別紙出力している場合、配布先と添付物を再確認した
ファイル名に「配布用」「提出用」などの識別が入っている
このチェックリストを、チームで固定化するだけでも事故率は大きく下がります。
Wordのコメント印刷に関するよくある質問
コメントを完全に削除したい
「印刷しない」と「削除する」は別物です。印刷しない設定は、コメントが文書内に残ったままでも出力から除外できる場合があります。一方、削除は文書自体からコメントを消す操作であり、取り返しがつかない場合があります。
運用の目安は次のとおりです。
提出・配布で「見せなければよい」:まずは印刷・PDFから除外
社外共有で「ファイル自体も渡す」:削除や承諾・却下を含めた整理を検討
社内の履歴として残す:削除せず、配布用を別ファイルにする
本記事の主題は「印刷しない」ですが、社外にWordファイルを渡す場合は、コメントが残存していること自体がリスクになるため、配布方法も含めて検討することを推奨いたします。
特定の人のコメントだけ印刷したい
特定の人のコメントだけを出したい、という要望は監査やレビュー議事録で発生します。ただし、一般的には以下の課題が伴います。
出力対象の絞り込みが環境や仕様により分かりにくい
コメントだけ抽出して別紙化するほうが管理しやすい場合が多い
誤って他者コメントも印刷されると、目的に反する(機密の増加)
このため、実務上は「コメント一覧をエクスポートして対象者だけ共有」など、別手段の方が安全な場合があります。どうしても印刷で行う場合は、対象者の絞り込みができる環境かどうかを確認し、必ずプレビューで検証してから運用化してください。
余白の吹き出し領域だけ消したい
余白の吹き出し領域は、コメントだけでなく、変更履歴の表示方式(バルーン表示)に関わる場合があります。したがって「余白だけ消したい」という相談は、実際には次の2種類に分かれます。
コメントが余白に出ているので消したい
変更履歴が余白に出ていて、本文に戻すか非表示にしたい
配布目的であれば最も確実なのは、校閲側でマークアップなし相当へ切り替えて出力する方法です。
一方、校正目的で余白だけ整えたい場合は、表示方式の変更(バルーンの扱い)も絡むため、文書の状態を整理し、プレビューでレイアウト崩れが起きないか確認しながら調整してください。

