Windows 10からWindows 11へのアップグレードを試みた際に、「プロセッサは現在、Windows 11でサポートされていません」という表示が出て、不安になられた方は多いのではないでしょうか。突然のエラーメッセージに、「このパソコンはもう使えないのか」「今すぐ買い替えが必要なのか」と心配になってしまいますが、結論から申し上げますと、必ずしも「今すぐ高額な新PCを購入しなければならない」というわけではありません。
本記事では、このメッセージが意味する「本当のところ」を整理しながら、今お使いのPCで何が原因になっているのか、そしてこれからどのような選択肢があるのかを、順を追って分かりやすくご説明いたします。CPU(プロセッサ)の対応状況の調べ方、TPMやセキュアブートの確認方法、裏技的なWindows 11インストールの是非、さらにはPC買い替えのタイミングとスペックの目安まで、疑問になりやすいポイントを一つずつ丁寧に解説します。
「難しい専門用語はよく分からないが、損も失敗もしたくない」「できるだけ今のPCを活かしながら、安全に次の一手を選びたい」という方にこそ、本記事の内容はお役に立てるはずです。「プロセッサは現在、Windows 11でサポートされていません」という不安な一文を、「自分にとって最適な判断ができた」という安心に変えていただくことを目指して、最後まで丁寧にご案内いたします。
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「プロセッサは現在、Windows 11でサポートされていません」というメッセージは、突き詰めると「搭載されているCPUが、Windows 11の公式サポート対象一覧に含まれていない」という技術的な通知に過ぎません。しかし、その一文をどう受け止め、どのような行動を選ぶかは、利用目的や予算、PCに求める安心感によって大きく変わってまいります。
まずはPC 正常性チェックやCPUの型番・世代、TPM 2.0やセキュアブートの状態を確認し、「本当にCPUがボトルネックなのか」「設定で解決できる部分はないか」を整理することが重要です。そのうえで、①Windows 10をサポート終了まで使い続ける、②リスクを理解したうえで裏技的にWindows 11を導入する、③Windows 11対応PCへ計画的に買い替える、という三つの選択肢の中から、ご自身にとって納得感の高い道を選んでいただくことになります。
「プロセッサは現在、Windows 11でサポートされていません」とは?
エラーメッセージが表示される場面
このメッセージは、主に次のような場面で表示されます。
Microsoftが配布している「PC 正常性チェック」アプリで、Windows 11への対応可否を診断したとき
Windows 10からWindows 11へのアップグレードを実行しようとしたとき
インストールメディアからWindows 11をセットアップしようとしたとき
メッセージ全文としては、次のような表示になることが多いです。
この PC は現在、Windows 11 のシステム要件を満たしていません。
プロセッサは現在、Windows 11 でサポートされていません。
つまり、「あなたのPCに搭載されているCPU(プロセッサ)が、Windows 11の対応リストに入っていないため、正規の方法ではインストールできません」という意味です。
Windows 11のCPU要件の概要(Intel・AMDの対応世代)
Windows 11では、CPUの要件が比較的厳しく設定されています。おおまかな目安は以下のとおりです。
| メーカー | Windows 11での基本的な対応世代の目安 |
|---|---|
| Intel | 第8世代 Core プロセッサ以降(一部の第7世代は例外的に対応) |
| AMD | Ryzen 2000 シリーズ以降 |
上記より古い世代、例えば第6世代 Intel Core(i5-6200U など)や多くの第7世代(i5-7400 など)は、原則としてWindows 11の正式サポート対象外となっています。
このため、PC正常性チェックやアップグレード中に「プロセッサは現在、Windows 11でサポートされていません」と判定されます。
なぜ古いCPUがサポートされないのか(セキュリティ・安定性の観点)
古いCPUがサポートされない主な理由は、次のような点にあります。
セキュリティ機能の不足
新しいCPUでは、脆弱性対策や暗号化処理の支援機能など、セキュリティ関連の機能が強化されています。古いCPUでは同等のレベルが期待できない場合があります。最新OS向けの最適化不足
Windows 11は、新しいCPUアーキテクチャを前提としてパフォーマンスなどが調整されています。古いCPUでは、十分な性能や安定性が出ない可能性があります。サポートコストの問題
非常に多くの古いCPUまでサポート対象にすると、Microsoft側のテスト・サポートコストが膨大になります。そのため、一定以上の世代にラインを引いていると考えられます。
このような理由から、あえて古いCPUはサポート外とし、安全性と安定性を優先する方針が取られています。
まず確認すべきこと:本当にCPUが原因かチェックする
エラーメッセージには「プロセッサ」が強調されますが、実際にはほかの要件(TPMやセキュアブートなど)が問題になっているケースもあります。順番に確認していくことが重要です。
PC正常性チェックアプリの使い方と結果の見方
最初の一歩として、Microsoft公式の「PC 正常性チェック」アプリで診断する方法を整理します。
Microsoftの公式サイトから「PC 正常性チェック」をダウンロードする
アプリをインストールし、起動する
「Windows 11の準備ができているかを今すぐチェックする」をクリック
結果画面で、どの項目が要件を満たしていないかを確認
結果画面には、例えば次のような項目が表示されます。
このPCは現在、Windows 11のシステム要件を満たしていません
プロセッサは現在、Windows 11でサポートされていません
TPM 2.0 が有効になっていません
セキュアブートが有効になっていません
CPUだけが問題なのか、他の要件も満たしていないのかを、まずここで整理いたします。
CPUの型番・世代の調べ方(タスクマネージャー・設定・コマンド)
続いて、自分のCPUがどの世代に当たるかを確認します。
1. タスクマネージャーから確認する方法
キーボードで
Ctrl + Shift + Escを押す「パフォーマンス」タブを開く
左側の「CPU」を選択する
右上に「Intel(R) Core(TM) i5-7400 CPU @ 3.00GHz」などの型番が表示される
2. 設定アプリから確認する方法
スタートボタン → 設定
「システム」 → 「バージョン情報」
「デバイスの仕様」の「プロセッサ」の欄を確認する
3. コマンドで確認する方法(Windows 10/11 共通)
Windowsキー + Rを押し、「ファイル名を指定して実行」を開く「cmd」と入力し、Enter
黒い画面(コマンドプロンプト)で次を入力してEnter
CPUの正式名称が表示される
表示された型番をもとに、「第何世代か」「Windows 11対応リストに含まれているか」を公式情報や検索結果で確認します。
TPM 2.0とセキュアブートの有効化も確認しよう
CPUが要件を満たしていても、次の要件を満たしていないと「Windows 11にアップグレードできない」という結果になることがあります。
TPM 2.0(ハードウェア暗号化を担当するモジュール)
セキュアブート(起動時の不正なプログラムを防ぐ仕組み)
これらはBIOS/UEFIの設定で有効化されていないことが多く、オンにするだけで要件を満たすケースもあります。
したがって、
PC正常性チェックで「TPM 2.0が有効になっていません」「セキュアブートが有効になっていません」と表示される
PCメーカーのマニュアルや公式サイトを参考に、BIOS/UEFI設定でこれらを有効化する
再度PC正常性チェックを実行する
という流れで、CPU以外の要因を解消できる場合があります。
CPUがWindows 11非対応だった場合の3つの選択肢
CPUが明らかにWindows 11非対応だった場合、現実的な選択肢は大きく次の3つに分かれます。
Windows 10のまま使い続ける
非対応CPUのまま裏技でWindows 11をインストールする
PCを買い替えてWindows 11対応機に乗り換える
それぞれ見ていきます。
選択肢1:Windows 10のまま使い続ける
Windows 10は、2025年10月14日までセキュリティ更新プログラムが提供される予定です。
この日までは、インターネットに接続して通常利用しても、基本的にはサポートされているOSとして扱われます。したがって、
すぐにPCを買い替える予算がない
裏技でWindows 11にするのは不安
特別な新機能が必要なわけではない
といった場合には、「サポートが切れるまではWindows 10を使い続ける」という選択が現実的です。
ただし、サポート終了後はセキュリティ更新が提供されなくなるため、長期的にインターネットに接続して使い続けるのはリスクが高まります。その時点までに、買い替えや他の選択肢を検討しておく必要があります。
選択肢2:非対応CPUのまま裏技でWindows 11をインストールする
インターネット上には、次のような「要件回避」のインストール方法が多数紹介されています。
レジストリを編集して、セットアップ時のCPUチェック・TPMチェックを無効化する
インストールメディア内の
appraiserres.dllを差し替える/削除するサードパーティツールを使って回避インストールを行う
これらの方法を使うことで、非対応CPUのPCにもWindows 11をインストールできたという報告は多数あります。しかし、重要な注意点があります。
Microsoftの公式サポート対象外の構成になる
将来的にWindows Updateが受け取れなくなる可能性がある
不具合が発生した場合に、サポートを受けにくい
「どうしてもそのPCでWindows 11を試したい」「自己責任でリスクを理解した上で実施したい」という中級〜上級者向けの選択肢と言えます。
選択肢3:PCを買い替えてWindows 11対応機に乗り換える
もっとも安全で、長期的に安定した選択肢が「PCを買い替える」ことです。
最新のCPU・セキュリティ機能を搭載している
Windows 11を正式サポートしており、通常通りWindows Updateを受け取れる
将来のアップデートやアプリにも対応しやすい
初期費用はかかりますが、仕事で使うPCや日常的にオンラインバンキング・ショッピングなどを行うPCでは、最も安心感の高い選択肢です。
選択肢別のメリット・デメリット比較
ここでは、先ほどの3つの選択肢を比較して整理いたします。
セキュリティ・安定性・サポートの観点から比較
| 選択肢 | セキュリティ | 安定性 | メーカー・Microsoftサポート |
|---|---|---|---|
| 10のまま | サポート終了までは良好 | 現状維持 | サポート対象内(終了までは) |
| 裏技11 | 構成次第で不確実 | 不具合リスク増加 | 基本的にサポート対象外 |
| 買い替え | 高い | 高い | 正式サポート対象内 |
費用・手間・将来性の比較
| 選択肢 | 初期費用 | 手間 | 将来性 |
|---|---|---|---|
| 10のまま | ほぼ無し | 少ない | サポート終了で限界が来る |
| 裏技11 | ほぼ無し | 設定・インストールに手間 | 将来の更新可否が不透明 |
| 買い替え | 数万円〜 | セットアップが必要 | 数年単位で安心して使える |
個人利用・仕事利用でのおすすめシナリオ
個人利用(ネット閲覧・事務作業中心)
予算に余裕がない場合:今はWindows 10のまま使い続ける
サポート終了前〜終了直後を目安に買い替えを検討
自己責任でチャレンジしたい場合:
サブPCとして裏技Windows 11を試す
メインPCの環境は慎重に判断する
仕事利用(業務で重要なデータを扱う・トラブルが許されない)
裏技インストールは避け、早めにWindows 11対応PCへの買い替えを検討
予算の都合で即時買い替えが難しい場合でも、計画的なリプレース計画を立てる
非対応CPUでWindows 11をインストールする場合の注意点
代表的な回避方法の概要(レジストリ編集・DLL差し替えなど)
代表的な回避方法として、以下のような手順が紹介されています。
セットアップ時にコマンドプロンプトを開き、レジストリキー
AllowUpgradesWithUnsupportedTPMOrCPUを追加するインストールメディア内の
appraiserres.dllを差し替え、CPUチェックをバイパスするサードパーティツールを使い、自動で要件回避インストールを行う
本記事では具体的な手順は詳細に記載しませんが、「通常はブロックされるチェックを無理やり解除している」という性質を理解しておく必要があります。
Microsoftのサポート対象外となるリスク
Microsoftは、非対応CPUやTPM要件を満たしていないPCにWindows 11をインストールすることを推奨していません。
そのため、
Windows Updateが将来的に提供されなくなる
不具合が発生しても、サポート窓口で「サポート外構成」として扱われる
アップグレードや機能更新で問題が発生する可能性がある
などのリスクを前提にする必要があります。
実際に報告されているトラブル例と想定される影響
非対応CPUでWindows 11を動作させたケースでは、次のような問題が報告されています。
特定のアップデート以降、ブルースクリーン(エラー画面)が頻発する
Windows Updateが「このPCはサポートされていません」と表示し、更新を拒否する
一部アプリ(例:Androidアプリ環境など)がインストールできない
こうしたトラブルが発生した場合、自力で原因を切り分けて対処する必要があります。PCに詳しくない方には、負担が大きい選択肢であると言えます。
PC買い替えを検討する場合のポイント
Windows 11対応スペックのチェック項目
PCを買い替える場合、次の項目を確認しておくと安心です。
Windows 11 を正式サポートしているか(メーカーの製品ページで明記されているか)
CPUがWindows 11対応の世代か(Intel第8世代以降 / Ryzen 2000以降程度を目安)
メモリ:最低でも8GB、余裕があれば16GB
ストレージ:SSD(256GB以上)推奨
TPM 2.0 / セキュアブート対応であること(最近のPCならほぼ対応)
一般的な家庭用・仕事用で十分なスペックの目安
家庭用(ネット・動画・Office中心)
CPU:Intel Core i3 / Ryzen 3 以上(第10世代以降など)
メモリ:8GB
ストレージ:SSD 256GB 以上
仕事用・長く使いたいPC
CPU:Intel Core i5 / Ryzen 5 以上
メモリ:16GB
ストレージ:SSD 512GB 以上
予算に余裕があれば、ビジネス向けモデル(Pro版OS・保守サービス付き)も検討
買い替えタイミングと旧PCの活用方法
今すぐの買い替えが難しい場合:
Windows 10サポート終了前後(2025年〜2026年頃)を目安に計画的な買い替えを検討します。旧PCの活用例:
インターネットから切り離して、オフライン専用の作業用PCにする
家族用・予備PCとして活用する
データバックアップ用・メディアサーバーなど、限定的な用途で使う
インターネットに常時接続して使うメインPCとしては、新しいWindows 11対応PCを用意するのが安全です。
よくある質問(FAQ)
Windows 10はいつまで安全に使えますか?
Microsoftによるセキュリティ更新プログラムの提供は、2025年10月14日までと案内されています。
それ以降もPC自体は動作しますが、新たな脆弱性に対する更新が提供されなくなるため、長期的なインターネット利用にはリスクが高まります。インターネット接続を前提としたメインPCとしての利用は避けることをおすすめいたします。
CPUだけ交換すればWindows 11にできますか?
デスクトップPCであれば、CPUだけ交換できる場合もあります。ただし、
マザーボードが対応しているCPUに制限がある
BIOSアップデートが必要になることがある
ノートPCは基本的にCPU交換が難しい
といった制約があるため、結果的にPCごと買い替えた方が安定・確実なケースも少なくありません。CPU単体の価格と作業の手間、リスクを考えると、一般ユーザーにはあまりおすすめしにくい方法です。
裏技で入れたWindows 11は違法ではありませんか?
正規のライセンスを持っているWindowsからのアップグレードであれば、ライセンス上ただちに違法になるわけではないと考えられます。ただし、
Microsoftが想定していない構成(非推奨)での利用となる
サポート対象外の状態になる
という点を理解しておく必要があります。ライセンス違反というよりも、「サポート外・自己責任の構成」と捉えるのが適切です。
中古PCを買うときの注意点は?
中古PCでWindows 11の利用を考えている場合、次の点に注意してください。
CPUがWindows 11対応世代かどうか(Intel第8世代以降など)
メーカーがその機種でWindows 11の動作を確認しているか
TPM 2.0とセキュアブートが利用できるか
ストレージがHDDのみの場合、SSDへの換装コストも含めて検討する
「安いから」といって古い世代のCPU搭載機を買ってしまうと、再び「プロセッサは現在、Windows 11でサポートされていません」と表示される可能性がありますので注意が必要です。
まとめ:焦らず状況を整理し、自分に合った選択を
「プロセッサは現在、Windows 11でサポートされていません」とは、CPUがWindows 11の公式対応リストに含まれていないという意味です。
まずはPC正常性チェックとCPUの型番・世代、TPM 2.0/セキュアブートの状況を確認し、本当にCPUだけが問題なのかを整理することが重要です。
CPUが非対応だった場合の主な選択肢は、
Windows 10のままサポート終了まで使う
裏技でWindows 11をインストールする(中級者以上・自己責任)
Windows 11対応PCに買い替える
の3つです。
セキュリティや安定性を重視する場合、特に仕事利用では、早めの買い替えが最も安全な選択となります。