「請求書や給与明細をメールで送りたいが、そのまま添付するのは不安」「Windows11でパスワード付きZIPを作りたい」という場面は多いと思います。
しかし、Windows11の標準機能だけでは、ZIPファイルにパスワードを設定することはできません。
ZIPフォルダーを作成する機能はありますが、暗号化・パスワード保護はサポートされていないため、別途ソフトが必要です。
本記事では、無料で利用できる圧縮ソフト「7-Zip」を使って、Windows11でパスワード付きZIPを作成・解凍する方法を、実務でそのまま使えるレベルまで丁寧に解説します。
暗号化方式(AES-256 / ZipCrypto)の違いや、よくあるエラーの原因と対処、ZIP以外の選択肢までまとめています。
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Windows11標準機能だけではZIPにパスワードは設定できません。
パスワード付きZIPが必要な場合は、7-Zipなどのツールを導入します。
7-Zipを使えば、右クリックメニューから簡単にパスワード付きZIPを作成できます。
アーカイブ形式を「zip」に設定し、暗号化方式とパスワードを指定するだけです。
暗号化方式は「互換性優先ならZipCrypto」「安全性優先ならAES-256」が基本方針です。
AES-256を選ぶ場合は、受信側にも7-Zipなど対応ソフトが必要になります。
エラーが出る多くの原因は『暗号化方式の不一致』か『パスワード誤り』です。
7-Zipでの解凍を試す、パスワードの再確認を行うことで多くのトラブルは解消できます。
パスワード付きZIPはあくまで“簡易的な保護”です。
機密性の高い情報や紛失リスクが大きい場合は、BitLockerや7z形式など、より強力な手段もあわせて検討してください。
Windows11でZIPにパスワードを設定する前に知っておきたいこと
Windows11標準機能でできること・できないこと
まずは前提の整理です。
できること
ファイルやフォルダーを右クリックし、「送る」→「圧縮 (ZIP) フォルダー」でZIPファイルを作成する
できないこと
作成したZIPファイルに対して、「パスワードを設定する」「暗号化方式を選ぶ」といった操作
Windows11 / 10にはZIPファイルを作成する標準機能はありますが、パスワードを設定する機能は搭載されていません。そのため、パスワード付きZIPを作りたい場合は、7-ZipやWinRARなどのサードパーティ製ツールを利用する必要があります。
パスワード付きZIPの仕組みと限界
パスワード付きZIPは、ファイルを圧縮する際に暗号化を行い、復号するときにパスワードを要求する仕組みです。
ポイントは次の2点です。
暗号化方式によって強度が大きく異なる
古い方式:ZipCrypto
多くの環境で互換性が高く、Windowsの標準機能でも解凍できることが多い
ただし現代の攻撃手法に対しては十分とは言えない強度とされます
新しい方式:AES-256
強度の高い暗号化方式で、7-Zipや対応ソフトを使えば安全性が高い
一方で、Windows標準の展開機能が対応しておらず、エラーになるケースがあります
「パスワードをかけたから絶対安全」というわけではない
短く簡単なパスワードは総当たり攻撃(ブルートフォース)に弱い
パスワードの渡し方が不適切だと、暗号化しても意味がなくなります
そのため、暗号化方式の選び方とパスワード運用のルール作りが重要です。
準備編|無料ソフト「7-Zip」をインストールする
7-Zipとは?
7-Zip(セブンジップ)は、無料で利用できる定番の圧縮・解凍ソフトです。
無料(オープンソース)
ZIP / 7z / RAR など多数の形式に対応
ZIPに対してAES-256による暗号化をサポート
右クリックメニューから簡単に操作できる
Windows11でパスワード付きZIPを扱う場合、まず候補に挙げてよいソフトです。
7-Zipのダウンロードとインストール手順
公式サイトを開く
7-Zip公式サイト(7-zip.orgなど)にアクセスします。Windows用インストーラーをダウンロード
「64-bit x64」など、使用しているWindows11に合ったバージョンを選びます。
インストールする
ダウンロードしたインストーラーを実行します。
基本的には「Next」や「Install」を順にクリックして進めれば問題ありません。
インストールの確認
任意のファイルを右クリックした際、「7-Zip」というメニューが表示されていれば準備完了です。
手順編①|7-Zipでパスワード付きZIPファイルを作成する
ここでは、もっとも利用頻度が高い「右クリックメニューからパスワード付きZIPを作る方法」を紹介します。
右クリックメニューからZIPに圧縮する基本手順
圧縮したいファイル/フォルダーを選択
1つでも複数でも構いません。
右クリックメニューを開く
対象を右クリックし、表示されたメニューから
「7-Zip」→「圧縮…」(または「Add to archive…」)を選択します。
アーカイブ設定画面を確認
「アーカイブ名」:任意のファイル名を設定
「アーカイブ形式」:必ず「zip」を選択します(初期値が7zの場合があります)。
ここまでで「ZIPファイルとして圧縮する」準備が整います。次にパスワードと暗号化方式を設定します。
暗号化設定(パスワード・暗号化方式)の具体的な入力例
同じ画面の下部に「暗号化」というエリアがあります。
パスワードを入力
「パスワードを入力」「パスワードを再入力」の両方に同じパスワードを入力します。
暗号化方式を選択
「暗号化方式」または「Encryption method」のプルダウンから
AES-256
ZipCrypto
のいずれかを選択できます。
(必要に応じて)ファイル名の暗号化
7-Zipのバージョンや設定によっては、「ファイル名を暗号化(Encrypt file names)」のチェック項目がある場合があります。
ZIP形式では制限もあるため、ここでは基本的にパスワード保護を優先し、設定は任意とします。
OKを押して作成
設定が完了したら「OK」をクリックします。
同じフォルダー内に、パスワード付きのZIPファイルが作成されます。
用途別のおすすめ設定(ZipCrypto / AES-256)
暗号化方式を選ぶときの考え方を整理します。
1. 互換性重視(相手の環境が不明な場合)
推奨:ZipCrypto
理由:
多くのZIP展開ソフトや古い環境でも解凍できる可能性が高い
Windows11標準の展開機能で解凍できるケースが多い
ただし、ZipCryptoは解析されやすく、攻撃に対する強度は高くありません。社内規定や情報の機密度を踏まえて利用可否を判断してください。
2. 安全性重視(社内など7-Zip利用が前提の環境)
推奨:AES-256
条件:
送信先・受信先ともに7-ZipなどAES-256対応のツールを使える
「受け取り側は7-Zipで解凍してください」と案内できる
AES-256は強度の高い暗号化方式であり、適切なパスワードと組み合わせれば高い安全性が期待できます。
手順編②|パスワード付きZIPファイルを解凍する方法
7-Zipで解凍する手順
ZIPファイルを右クリック
パスワード付きZIPファイルを右クリックし、「7-Zip」メニューを開きます。
解凍方法を選択
「ここに展開」:同じフォルダーに展開
「~に展開」:任意のフォルダーを指定して展開
パスワードを入力
展開時にパスワード入力ダイアログが表示されます。
正しいパスワードを入力すると、ファイルが展開されます。
Windows11標準機能で解凍できる場合・できない場合
ZipCryptoで暗号化されたZIP
多くの場合、ZIPファイルをダブルクリック →「すべて展開」から操作し、パスワード入力画面が表示されます。
AES-256で暗号化されたZIP
Windows11標準機能では、展開時に
「展開を完了できません。展開先ファイルを作成できませんでした。」
といったエラーが出る場合があります。この場合は、7-ZipなどAES-256対応ソフトを使って解凍する必要があります。
よくあるトラブルと対処法
パスワード入力しても解凍できない場合
考えられる主な原因は次のとおりです。
単純なパスワード誤入力
大文字・小文字、数字、記号の違い
全角・半角の混在
→ コピー&ペーストする場合は、余計なスペースが入っていないか確認してください。
暗号化方式がAES-256で、標準機能では対応していない
送信側がAES-256でZIPを作成し、受信側がWindows標準機能で展開しようとしているケース
→ 7-Zipなど対応ソフトをインストールして解凍してください。
「展開を完了できません」「ファイルを作成できませんでした」と表示される
これは、暗号化方式がAES-256で、Windows標準のZIP展開機能が対応していない場合に発生しやすいエラーです。
対処:
7-Zipをインストールする
ZIPファイルを右クリック →「7-Zip」→「ここに展開」などを選び、パスワードを入力する
パスワードを忘れてしまった場合の注意点
パスワード付きZIPは、正しいパスワードが分からない限り基本的に復号は困難です。
「パスワードを忘れたので、なんとか開けたい」というニーズは多いですが、技術的にも法的にもグレーなツールが多く、安易に利用すべきではありません。
業務で扱うファイルの場合は、パスワードの管理ルールを事前に整備することが重要です。
安全性を高めるためのパスワード運用のポイント
強いパスワードの作り方
推奨されるパスワードのポイントは以下のとおりです。
長さ:最低でも8〜12文字以上(可能なら12〜16文字以上)
構成:
英大文字(A–Z)
英小文字(a–z)
数字(0–9)
記号(!@#$% など)
推奨例:
単語を3つ以上組み合わせた「長いフレーズ+数字+記号」
例)
Sakura_2025!Tokyoのように、自分だけが覚えやすいルールを決める
パスワードの渡し方・管理方法
パスワード付きZIPを送るとき、パスワードをどう渡すかも重要です。
NG例:
ZIPファイルを添付したメールの本文に、パスワードも併記する
ベターな方法:
ZIPファイルはメール、パスワードは電話や別メッセージアプリなど、別経路で伝える
法人であれば、パスワードマネージャーや専用ポータルを利用する
また、社内用としては次のようなルールを決めておくと運用が安定します。
パスワードの最低文字数・構成ルール
社外向け・社内向けでパスワードを使い回さない
退職者や取引終了先に関するパスワードの取り扱い
ZIP以外の選択肢と使い分け(BitLocker・7z形式など)
より強固な保護が必要な場合の選択肢
ZIPパスワードは「簡易的な保護」としては有用ですが、機密性の高い情報には不十分な場合があります。その場合は、次のような手段も検討してください。
BitLockerによるドライブ・USBメモリの暗号化
Windowsの機能を利用し、ドライブ全体を暗号化する方法です。
PCやUSBを紛失した場合でも、中身を読み取られにくくなります。
7z形式での暗号化(7-Zipの独自形式)
7z形式は、高い圧縮率とAES-256による強力な暗号化をサポートしています。
「ファイル名の暗号化」も行えるため、ZIPよりも情報が漏れにくくなります。
ただし、受け取り側にも7-Zipなど対応ソフトが必要です。
ZIPパスワードの位置付けとまとめ
パスワード付きZIP(ZipCrypto)
互換性重視・簡易的な保護
機密度:中程度までを目安に
パスワード付きZIP(AES-256)
安全性重視・7-Zip前提の社内や特定取引先向け
BitLockerや7z形式
高機密情報・紛失リスクを強く懸念する場合に検討
このように、「情報の機密度」と「相手の環境」を軸に使い分けるとよいでしょう。