海外の友人や取引先から「WhatsAppで連絡しよう」と言われたものの、「危険性はないのか」「LINEと何が違うのか」と不安を感じていませんか。
WhatsAppは強力な暗号化によってメッセージ内容自体は高い水準で守られている一方、電話番号をIDとして使う設計や、利用状況に関するデータ収集など、日本のLINEユーザーには見落としがちなリスクも抱えています。
本記事では、2025年時点の最新情報を踏まえながら、WhatsAppの安全な点と注意すべき点を整理し、「どこまでなら安心して使えるのか」を具体的な設定方法とともに分かりやすく解説いたします。
※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。
WhatsAppは、メッセージ内容については強力なエンドツーエンド暗号化により高い安全性を持つ
一方で、電話番号ベースの設計とメタデータ収集にはプライバシー上の弱点があり、2025年には電話番号列挙問題なども報告された
日本のLINEユーザーは、
プロフィール公開範囲
連絡先同期
不審メッセージへの対応
に特に注意する必要がある
本文の15項目チェックリストを実施することで、一般的なリスクは大きく軽減できる
最終的には、
「日常の連絡にどこまでの安全性を求めるか」
「どの程度プライバシーを重視するか」
を踏まえ、LINE・WhatsApp・Signalなどを使い分けることが重要
WhatsAppは危険?
WhatsAppは、メッセージや通話の内容そのものについては、エンドツーエンド暗号化(E2EE)により高い安全性が確保されています。一方で、
電話番号がそのままIDになる設計
メタデータ(誰と・いつ・どれくらいやり取りしたか)が収集されること
最新の研究で指摘された、電話番号の大量列挙が可能だった問題
といった点に、プライバシー上の弱点や注意点が存在します。
そのため本記事では、
一般的な個人利用では「きちんと設定すれば十分安全」
しかし、高い匿名性を求める人や、機密情報を扱う立場の人には向き・不向きがある
というスタンスで、具体的に解説していきます。
日本のLINEユーザーが特に注意すべき3つのポイント
日本ではコミュニケーションの大半がLINEで行われており、「LINE感覚のままWhatsAppを使う」と危険を見落としがちです。特に次の3点に注意が必要です。
電話番号=アカウントID
相手があなたの電話番号を知っていれば、WhatsAppアカウントを特定される可能性があります。
プロフィールや最終オンライン表示の公開範囲
初期設定のままだと、予想より広い範囲に情報が見える場合があります。
メタデータや利用ログの扱い
メッセージ内容は暗号化されていますが、「誰と・いつ・どれくらい話したか」といった情報はサーバ側に残ります。
これらを理解した上で、適切な設定と使い方をすれば、WhatsAppは強力なコミュニケーション手段として活用できます。
WhatsAppの仕組みと「安全」と言える部分
エンドツーエンド暗号化で守られるもの
WhatsAppでは、テキストメッセージ・音声通話・ビデオ通話・写真・ファイルなどがデフォルトでエンドツーエンド暗号化されています。
あなたの端末で暗号化
相手の端末で復号
その途中であるサーバや通信経路では、内容が読めない
という仕組みのため、仮に通信が盗み見られても、メッセージの中身は解読されにくい構造になっています。
公式アプリと最新版アップデートの重要性
暗号化の仕組みがしっかりしていても、
公式アプリではない改造版を使う
古いバージョンのままアップデートしない
といった使い方をすると、一気に安全性が下がります。WhatsApp公式も、非公式版アプリの利用は重大なリスクがあると明確に警告しています。
したがって、
App Store / Google Playからダウンロードした公式アプリのみ利用する
アップデート通知が来たらできるだけ早く更新する
という基本を守ることで、既知の脆弱性を突かれるリスクを大きく減らせます。
LINE・Signalと暗号化の仕組みをざっくり比較
暗号化の仕組みだけを単純化すると、以下のイメージです。
WhatsApp
すべての個別チャット・通話がデフォルトでE2EE
Signalと同じプロトコルをベースにしている
LINE
「Letter Sealing」など暗号化機能があるが、設定や対象が機能によって異なる
Signal
強いプライバシー志向で知られ、WhatsAppよりも収集するメタデータを絞っている
つまり、メッセージ内容の暗号化自体はWhatsAppも十分強力ですが、
「どんなデータをサーバに残すか」「運営企業のビジネスモデル」が異なる点が、プライバシー観点での評価の分かれ目です。
WhatsApp特有の危険性・弱点
電話番号=IDという設計が生むリスク
WhatsAppでは、電話番号そのものがアカウントIDです。これは次のようなリスクにつながります。
あなたの電話番号を知っている人は、
あなたがWhatsAppを使っているかどうか
アイコン写真やステータスメッセージ
を確認できる可能性がある
番号リストを大量に持つ業者が、WhatsApp利用の有無を自動的に調べることも理論上可能
日本のLINEのように「IDやQRコードを教えないと繋がらない」という設計に慣れていると、“思ったより自分が見えてしまう”危険があります。
メタデータが収集されるというプライバシー上の懸念
エンドツーエンド暗号化が守るのは「メッセージの中身」です。一方で、
誰と
いつ
どれくらいの頻度で
どの国・地域から
コミュニケーションをしているかといったメタデータは、サービス運営側に残り得ます。
こうした情報は広告配信や不正アクセス検知に活用される一方、「特定の個人や組織のつながりを推測できてしまう」ため、プライバシーを重視する人・職業にとっては注意が必要です。
2025年に発覚した「電話番号列挙」問題とは
2025年、ウィーン大学などの研究者が、WhatsAppの「連絡先検索機能」を悪用すると、最大で35億件規模の電話番号とプロフィール情報を自動取得できたことを報告しました。
任意の電話番号を大量に投入し、WhatsApp利用の有無やプロフィールデータを高速に収集できた
メッセージ内容は暗号化されていたものの、「どの番号がWhatsAppユーザーか」という情報が広く露見し得る状態だった
Metaはすでに対策を行ったと説明していますが、
電話番号ベースの設計そのものが持つプライバシー上の弱点を象徴する事例と言えます。
非公式版WhatsApp・マルウェア・偽メッセージのリスク
近年は、WhatsAppのセッションを悪用してWindows端末に感染を広げる「SORVEPOTEL」マルウェアも報告されています。
不審なリンクやファイルの送受信から感染が広がる
WhatsApp Webのセッションを利用し、ユーザーが気づかないうちに拡散する可能性がある
また、公式が強く注意喚起している「非公式版WhatsApp」も危険です。
見た目が同じでも、内部で
メッセージ内容や連絡先を盗み取る
広告やスパイウェアを仕込む
といった挙動をしているケースがあり得ます。
実際に起きている主なリスク事例
事例1:大量の電話番号とプロフィール情報の列挙
前述の研究では、WhatsAppの仕様を利用して、
数十億件レベルで「その番号がWhatsAppユーザーか」「プロフィール情報は何か」を確認できたとされています。
このような情報は、
ターゲットを絞った詐欺メッセージの送信
政治・社会的な監視の一材料
企業・団体の関係性分析
といった目的で悪用される余地があります。
個々人のメッセージ内容が読まれたわけではないものの、「番号を持っているだけで、その人の行動が推測されるリスク」があることを理解しておく必要があります。
事例2:WhatsAppセッションを悪用するマルウェア「SORVEPOTEL」
セキュリティ企業の調査によれば、2025年にWhatsAppを通じて広がる自己増殖型マルウェア「SORVEPOTEL」が確認されています。
特徴としては、
Windowsシステムを標的とし、WhatsAppのアクティブセッションを利用して拡散
ユーザーが意図しないメッセージ送信やファイル共有を行う可能性
などが挙げられます。
これはWhatsApp特有というより、「人気メッセンジャーには攻撃者が集まりやすい」典型例といえます。
事例3:乗っ取り・フィッシング・投資詐欺のパターン
WhatsAppは世界中で約25億人が利用しており、その規模の大きさから、次のような詐欺・攻撃が多数報告されています。
本人や知人になりすました金銭要求メッセージ
「投資で簡単に稼げる」などと誘う投資詐欺グループ
アカウント確認を装った偽の認証コード要求
添付ファイルやリンクからのマルウェア感染
これらはWhatsApp固有の弱点というより、SNS・メッセンジャー全般で共通するリスクです。
しかし、英語や外国語で届く場合も多く、日本人ユーザーは内容を十分理解しないままクリックしてしまう危険があります。
日本人ユーザーの利用シーン別リスク
個人利用(友人・家族・趣味コミュニティ)の場合
個人利用では、主に次の点を押さえておけば、リスクを大きく軽減できます。
プロフィール写真・ステータスは「連絡先のみ」または「誰にも公開しない」に設定
見知らぬ番号からのメッセージは、
いきなりリンクやファイルを開かない
不自然な日本語・英語には特に注意
認証コード(SMSで届く6桁など)は誰にも教えない
この程度を守れば、一般的な利用では過度に怖がる必要はないと言えます。
海外ビジネス・取引で使う場合
海外顧客やパートナーとのやり取りでWhatsAppを利用するケースは増えていますが、ビジネス利用では次のルール作りが重要です。
会社としてWhatsAppで扱ってよい情報のレベルを決める
個人情報・契約書ドラフト・機密情報は扱わない など
業務用と私用のアカウント・端末を分ける(可能であれば)
退職者・担当者変更時に、顧客との連絡手段を整理する
特にコンプライアンスや取引先との契約上の制約がある業種では、
「業務に使うならどこまでか」を事前に確認しておくことをお勧めいたします。
子ども・学生が使う場合の注意点
子どもや学生がWhatsAppを使う場合、保護者としては次の3点を必ず伝えてください。
知らない人から届いたメッセージは無視する
個人情報(名前・住所・学校名・写真など)を送らない
困ったことがあったら必ず大人に相談する
あわせて、端末のパスコード設定やアプリの通知内容表示を調整することで、
周囲に画面をのぞき見されるリスクも減らせます。
今すぐ確認したいWhatsApp安全設定チェックリスト15項目
ここでは、日本人ユーザーが最低限やっておきたい設定をチェックリスト形式でまとめます。
(実際のメニュー名は端末やバージョンにより多少異なります。)
プライバシー設定(プロフィール・最終オンライン表示など)
プロフィール写真の公開範囲を「連絡先のみ」または「誰にも公開しない」にする
「最終オンライン」や「オンライン状態」の表示を制限する
「ステータスメッセージ」の公開範囲を「連絡先のみ」にする
グループへの追加を「連絡先のみ」または「一部の連絡先のみ」に制限する
既読通知(青いチェックマーク)のオン/オフを目的に応じて調整する
セキュリティ設定(二段階認証・端末管理など)
二段階認証(PINコード)を必ず有効にする
認証用PINコードを家族・友人を含め誰にも教えない
ログイン中の端末(リンク済みデバイス)を定期的に確認し、身に覚えのないものは削除する
バックアップの暗号化設定を確認し、不要であればクラウドバックアップをオフにする
端末そのものにパスコード/生体認証を設定する
日常の使い方で気をつけたいポイント
公式アプリのみ使用し、非公式版・改造版は絶対に入れない
不審なリンク・添付ファイルは開かない(特に見知らぬ相手・外国語)
「認証コードを教えてほしい」「お金を送ってほしい」というメッセージは、たとえ知人からでも一度別の手段で確認する
公衆Wi-Fi利用時はVPNの利用や機密情報の送受信を控えるなど、基本的なセキュリティ対策を行う
定期的にアプリとOSを最新バージョンに更新する
この15項目を実施しておけば、多くの一般的なリスクは十分に抑えられます。
LINE・Signalと比べてWhatsAppは安全?使い分けの考え方
セキュリティ・プライバシーの比較(ざっくり)
WhatsApp
メッセージ内容は強力なE2EEで保護
Metaによるメタデータ収集がある
LINE
日本市場向けに最適化され、利用者が非常に多い
暗号化はあるものの、機能によって挙動が異なる部分がある
Signal
プライバシー最重視で、収集するメタデータを極力絞っている
日本国内の利用者はまだ少なめ
「どれが一番安全か」というより、何を優先したいかで選び方が変わります。
使いやすさ・周囲の利用状況の比較
日本国内の友人・家族との連絡
多くの場合LINEが最もスムーズ
海外の友人・取引先との連絡
WhatsAppが事実上の標準となっている国が多い
高い匿名性やプライバシーを重視する用途
Signalなど、メタデータを極力残さないサービスも選択肢
**「周りが何を使っているか」と「自分がどこまでプライバシーを気にするか」**を基準に考えると整理しやすくなります。
どのアプリをどんな用途で選ぶべきか
一例として、次のような使い分けが現実的です。
日常生活(家族・友人):LINE
海外との連絡・海外旅行:WhatsApp
機密性の高い相談・活動:Signalなど、よりプライバシー重視のサービス
このように役割を分けることで、それぞれのメリットを活かしつつリスクをコントロールすることができます。
WhatsAppを使うべき人/控えたほうがよい人
WhatsApp利用が向いているケース
海外に友人・家族・取引先がいて、相手がWhatsAppをメインに使っている
通話料金を抑えながら国際通話・メッセージをやり取りしたい
メッセージ内容の盗聴よりも、「とにかく便利に連絡が取れること」を重視する
このようなケースでは、本記事のチェックリストを実施した上で利用することで、利便性と安全性のバランスを取りやすくなります。
他アプリを優先したほうがよいケース
一方で、次のような場合はWhatsApp以外の選択肢も検討すべきです。
匿名性を重視し、電話番号と紐づくこと自体を避けたい
ジャーナリスト・活動家・機密情報を扱う職種など、相手や頻度といったメタデータの露見自体がリスクになる立場
会社や組織のポリシーでWhatsApp利用が禁止・制限されている
こうした場合は、Signalなどプライバシー指向の高いサービスや、組織が承認したコミュニケーションツールを優先するほうが安全です。