UbuntuでOneDriveを使いたいのに、「そもそも同期できるのか」「24.04のMicrosoft 365連携で十分なのか」「設定を間違えてデータが消えないか」と不安になっていませんでしょうか。LinuxにはWindows版の公式OneDriveクライアントがないため、選択肢が複数に分かれ、記事によって手順や推奨が食い違うことも少なくありません。結果として、導入だけ成功しても自動起動ができずに同期漏れが起きたり、全量同期で容量が枯渇して止まったり、認証で詰まって原因が分からなくなったりしがちです。
本記事では、UbuntuでOneDriveを扱う方法を「同期クライアント」「rclone」「Microsoft 365連携」の3ルートに整理し、目的に合う最短ルートを迷わず選べるように解説いたします。さらに、初回同期前の安全確認、選択同期と除外設定の考え方、自動起動とログ確認までを一連の手順としてまとめ、導入後も安定して使い続けられる状態を目指します。個人OneDriveとMicrosoft 365、SharePointの違いにも触れ、職場・学校アカウントで起こりやすい制約やトラブルの回避策も押さえます。読み終えたときには、「何を選び、どこから始め、どう運用すれば安全か」が明確になり、UbuntuでもOneDriveを安心して日常のファイル置き場として活用できるようになります。
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UbuntuでOneDriveを使う方法を選ぶ
同期クライアントとrcloneとMicrosoft 365連携の違い
OneDriveをUbuntuで利用する代表的な選択肢は次の3つです。
OneDrive同期クライアント(Linux向けクライアント):ローカルフォルダとOneDriveを同期し、普段の作業フォルダとして使いやすい方式です。
rclone:OneDriveを含むクラウドを横断して「コピー」「同期」「マウント」などができるツールです。バックアップや定期転送、サーバ用途に適します。
Ubuntu 24.04前後のMicrosoft 365連携(GUI統合):環境によっては、デスクトップのアカウント連携からクラウド領域へアクセスできる場合があります。ただし「同期」ではなく、制約や不安定さが残ることがあります。
違いを一目で判断できるよう、比較表を提示いたします。
| 観点 | OneDrive同期クライアント | rclone | Microsoft 365連携(GUI) |
|---|---|---|---|
| 目的 | 日常的なファイル同期 | バックアップ・転送・自動化 | 参照・簡易アクセス |
| 双方向同期 | 可能(方式により挙動差あり) | 原則は片方向の考え方が基本(同期は慎重に) | 同期ではない |
| 自動起動 | 可能(ユーザーサービス運用が一般的) | 可能(cron/systemd timer等) | 環境依存 |
| 使い勝手 | Windows/Macに近い運用が可能 | 自由度が高いが設定が必要 | GUIで見えるが制限が出やすい |
| 事故リスク | 設定次第で低減可能 | コマンド誤りで大きな影響が出やすい | 想定外の挙動が起きる場合あり |
| 向く人 | 普段使い重視 | 管理・自動化・サーバ | 参照中心・簡易運用 |
最も大切な判断基準は次の2点です。
クラウドを「置き場」として常用するか(常用するなら同期クライアント寄り)
自動化・バックアップ・転送が主目的か(それならrclone寄り)
GUI連携は「できれば便利」ですが、最初から主軸に置くと環境差で詰まることがあるため、確実性重視なら同期クライアントまたはrcloneを主軸に据えるのが無難です。
個人OneDriveとMicrosoft 365とSharePointの違い
同じ「OneDrive」に見えても、アカウント種別や保管場所により、認証や権限制御が大きく異なります。ここを取り違えると、手順通りに進めても認証エラーやアクセス拒否で止まりやすくなります。
個人OneDrive(Microsoftアカウント)
個人向けのOneDriveです。一般に自己承認で進められ、組織ポリシーの影響は受けにくいです。Microsoft 365のOneDrive(職場/学校アカウント)
組織の管理下にあります。条件付きアクセス、多要素認証、デバイス制限、第三者アプリ制限、管理者承認が必要、といった制約が入りやすい領域です。Linux側のツールが「第三者アプリ」と見なされ、認証が止まることもあります。SharePoint(サイト・ドキュメントライブラリ)
OneDriveと同じくMicrosoft 365基盤ですが、格納場所がSharePointのサイト配下である点が異なります。ツール側で「SharePointのライブラリ指定」が必要になる、権限やパスの扱いが異なる、といった差が出ます。
とくに職場・学校アカウントを扱う場合は、次の確認が重要です。
管理者が第三者アプリの利用を制限していないか
条件付きアクセス(場所・端末・準拠デバイス)でブロックされないか
SharePointサイトに対して必要権限が付与されているか
セキュリティ上、Linux端末での同期が許可されているか
これらは個人側で解決できない場合があるため、「うまくいかない=設定ミス」と決めつけず、組織ポリシーの可能性を必ず織り込んでください。
目的別おすすめ早見表
目的別に最適解を短くまとめます。迷った場合は、まずここに立ち戻ると選定を誤りにくくなります。
UbuntuでOneDriveを普段の作業フォルダとして使いたい(双方向同期が必要)
→ OneDrive同期クライアントが第一候補です。自動起動や除外設定を整えると運用が安定します。LinuxサーバからOneDriveへバックアップ転送したい(片方向の転送が中心)
→ rcloneが適します。まずはcopyで安全運用を作り、その後に必要なら同期へ段階的に進めるのが安全です。Ubuntuの設定から簡単にアクセスできれば十分(参照中心)
→ Microsoft 365連携(GUI)を試し、制約で詰まる場合は同期クライアントへ切り替える判断が合理的です。
加えて、導入前に最低限の安全確認を行ってください。同期は便利ですが、設定や操作を誤ると削除・上書きが連鎖しやすい特性があります。
初回同期前の安全確認チェックリスト
ローカルにしか存在しない重要データを別媒体にバックアップ済み
OneDrive側で「ごみ箱」や「バージョン履歴」を復元手段として把握済み
初回は同期対象を小さくしてテスト運用する方針を決めた
ノートPCの場合、スリープ・省電力が同期を途切れさせる前提で考える
職場/学校アカウントは組織ポリシー(第三者アプリ・条件付きアクセス)を確認済み
UbuntuにOneDrive同期クライアントを導入する
ここでは、UbuntuでOneDriveを日常的に使うための中心ルートとして、同期クライアント導入から「使い続けられる状態」までを整理いたします。特に重要なのは、導入の成功だけではなく、自動起動・同期対象設計・ログ確認までをセットで整えることです。
インストール方法の選び方
同期クライアントには複数の導入経路があります。大切なのは「Ubuntu標準の古いパッケージを入れてしまい、機能不足や認証問題で詰まる」状態を避けることです。一般に、次の優先順位で選ぶと安定しやすいです。
開発元が案内する導入手順に沿う方法
バージョン追随、設定例、既知の注意点が揃いやすく、復旧情報にも辿り着きやすいです。Ubuntuのパッケージ(公式リポジトリ)での導入
導入は容易ですが、ディストリの更新タイミングによっては機能が古い場合があります。導入後に認証や同期挙動で問題が出るなら、別経路を検討してください。ソースからのビルド
事情がある場合の選択肢です。依存関係や更新管理の負荷が上がるため、初心者の方には推奨しにくいです。
導入で最も多い失敗は「インストールはできたが認証で止まる」「同期は始まったが自動起動できない」「同期対象が広すぎて終わらない」の3つです。よって、インストール前に次を決めてから進めるのが安全です。
同期フォルダをどこに置くか(容量とバックアップ観点)
初回はどのフォルダだけ同期するか(小さく始める)
自動起動をどの方式で実現するか(ユーザーサービスが基本)
初回サインインと同期開始
同期クライアントの初期設定は、概ね次の流れになります(細部はクライアントにより異なりますが、考え方は共通です)。
初回設定の手順(代表例)
同期クライアントをインストールする
初回起動し、認証フローを開始する
表示されたURLをブラウザで開き、Microsoftアカウントでサインインする
アクセス許可(同意)を行う
リダイレクト後のURLをコピーし、端末側へ貼り付けて認証を完了する
初回同期を開始する(まずは小さく)
初回同期は、データ量・回線品質・ファイル数に大きく左右されます。容量よりも「ファイル数」がボトルネックになることもあります。初回は次の工夫が有効です。
テスト用に小さなフォルダだけ同期する
写真・動画・過去アーカイブは後回しにする
スリープが入らない時間帯に実施する
途中で大量のリネームや移動をしない(差分が増えるため)
また、職場/学校アカウントの場合は、認証時点で次の問題が起きやすいです。
多要素認証や条件付きアクセスで弾かれる
「管理者の承認が必要」と表示される
ブラウザでは通るが、クライアント連携が拒否される
これらはユーザー側で回避できないことがあります。その場合は無理に手順を変えて試行錯誤するより、管理者へ確認するほうが早く安全です(後述のトラブルシューティングに整理いたします)。
自動起動の設定
同期クライアントは「起動している間だけ同期する」挙動が一般的です。つまり、手動起動のままだと同期漏れが起きやすく、OneDriveを置き場として使う体験が不安定になります。よって、ログイン後に自動起動する状態を必ず作ることを推奨いたします。
一般に、Ubuntuでは次のいずれかの方式で自動起動を実現します。
systemdのユーザーサービスとして起動する(推奨)
ログインセッションと連動し、ログ取得・再起動制御がしやすい方式です。デスクトップ環境の自動起動(GUIのスタートアップ)
手軽ですが、ログや再起動制御が弱く、問題切り分けが難しい場合があります。
ここでは、考え方としての「確認ポイント」を提示いたします。設定後は、次の状態になっていることを確認してください。
自動起動の確認ポイント
ログイン後に同期プロセスが起動している
再ログインしても自動で起動する
スリープ復帰後に同期が再開する(再接続が必要な場合もあります)
ログを確認できる(同期が止まった理由を追える)
自動起動がうまくいかない場合は、次の順で切り分けると原因に辿り着きやすいです。
サービス(または自動起動項目)が有効化されているか
起動直後に落ちていないか(ログで確認)
認証が失効していないか(再認証が必要なケース)
設定ファイルの場所・権限が正しいか
ネットワーク環境(プロキシ・VPN)で接続が遮断されていないか
UbuntuでOneDriveの同期設定を最適化する
導入直後は「同期が回っている」だけで安心しがちですが、長く使うほど事故の原因は「同期対象設計」「除外」「削除・競合」から発生します。ここでは、データ損失や同期トラブルを避けるための最小限の整え方を詳しく解説いたします。
同期フォルダの場所と容量設計
同期フォルダの設計は、使い勝手だけでなく「復旧しやすさ」に直結します。基本方針は次の通りです。
同期フォルダは1か所に固定し、途中で頻繁に移動しない
途中変更は再同期や状態情報の再構築が必要になり、競合や取りこぼしが起きやすくなります。空き容量に余裕のあるストレージに置く
特に写真・動画が多い場合、ローカル側の枯渇で同期が止まります。止まったことに気付かず、クラウド側だけ更新が進み、後で差分が爆発することがあります。「常用データ」と「保管データ」を分ける
全量同期は便利ですが、初期負荷と事故リスクが高くなります。
運用例として、次のように分類すると設計しやすいです。
常に必要(同期する):仕事/学習のドキュメント、表計算、設定メモ、軽量な素材
必要時のみ(段階的に同期):写真、動画、過去のアーカイブ、巨大な素材
同期しない(除外):キャッシュ、ビルド成果物、テンポラリ、再生成可能なデータ
また、ノートPCでは次の点も意識してください。
バッテリー駆動で回線が不安定になりやすい
スリープで同期が中断され、再開時に差分が増えやすい
モバイル回線で大量同期すると通信制限や電池消費につながる
このため、ノートPCほど「同期対象を絞る」「大容量は後回し」のメリットが大きくなります。
選択同期と除外設定
同期クライアントの多くは、同期対象を絞る仕組みや除外ルールを持っています。ここでは「どう設計すると事故が少ないか」を中心に説明いたします。
設計の基本
最初は「必要最小限を同期」から開始する
安定したら徐々に対象を広げる
除外は「再生成できるもの」「巨大で更新頻度が高いもの」を優先する
除外候補の典型例は次の通りです(開発用途や大量ファイルがある場合に特に有効です)。
node_modules、target、dist、buildなどのビルド関連各種キャッシュフォルダ、サムネイル、ログの巨大化領域
一時ファイル(自動生成されるもの)
除外を入れる際の注意点として、次を必ず守ってください。
除外を入れた直後に「大量削除が発生していないか」を確認する
除外対象を間違えると、必要なファイルが同期されず、端末間で欠落します
まずは小さな範囲で試し、挙動を確認してから本番フォルダへ適用する
おすすめの段階運用
テスト用フォルダで除外ルールを試す
想定通りに同期されるか確認する
本番の同期フォルダへ適用する
大量変更の直後は同期完了を待ってから次の変更をする
段階運用にするだけで、事故の確率が大きく下がります。
競合と削除を防ぐ運用ルール
OneDriveの同期で最も怖いのは、意図しない削除と競合です。同期は「差分を一致させる」仕組みなので、片方で削除が発生すると、もう片方にも反映されやすい特性があります。
避けたい操作(事故が起きやすい例)
同期中に大量の移動・リネーム・削除を行う
複数端末で同じファイルを同時編集する
同期対象のルートを丸ごと変更する(途中で同期フォルダを移動する等)
再同期・再スキャン系の操作を深く理解せずに実行する
事故を防ぐ運用ルール(最低ライン)
同じファイルの同時編集は避ける(共同編集はOffice Web等に寄せる)
大整理(大量移動・改名・階層変更)は分割して行う
同期が落ち着いたタイミングで変更を入れる
危険操作の前にバックアップを取る
「消えて困る唯一の原本」は同期フォルダに置かない(必ず二重化する)
ここでいうバックアップは、OneDriveのごみ箱やバージョン履歴だけに依存するのではなく、ローカルの別媒体(外付け、別パーティション、暗号化アーカイブ等)を併用すると復旧力が上がります。
rcloneでOneDriveを同期やバックアップに使う
rcloneは「OneDriveを普段の作業フォルダにする」よりも、「バックアップ」「転送」「自動化」で真価を発揮します。同期クライアントと競合するものではなく、用途が異なる道具として使い分けるのが最も安全です。
rcloneが向くケース
rcloneが向くケースは明確です。次のいずれかに当てはまる場合、rcloneは強力な選択肢になります。
LinuxサーバやNASから、定期的にOneDriveへバックアップしたい
あるフォルダを「クラウドへ退避」して災害対策に使いたい
OneDriveと他クラウド間でデータ移行をしたい
GUI不要で、ログを残しながらジョブとして運用したい
SharePointや複数アカウントを扱いたい(組織環境の要件次第)
一方、次の目的には向きません(または慎重設計が必要です)。
双方向同期を常用して「常に同じ状態」を維持したい
利用者がコマンドに不慣れで、誤実行のリスクが高い
ファイル衝突を避けながらリアルタイムに更新したい
rcloneは自由度が高い分、操作ミスの影響も大きくなり得ます。だからこそ、段階導入が重要です。
初期設定と認証
rcloneでは、まずリモート(接続先)を設定し、認証を通します。ここでの要点は次の2つです。
個人アカウントは比較的通りやすいが、組織アカウントは制約を受けやすい
認証が通っても、権限範囲が適切でないと後で運用上の問題になる
職場/学校アカウントで詰まりやすい論点は以下です。
管理者が第三者アプリの利用を制限している
「ユーザー同意」が禁止され、管理者承認が必要になっている
条件付きアクセスにより、特定環境からのサインインが拒否される
セキュリティ要件として「準拠デバイス」が求められている
この場合、ユーザー側で無理に迂回するのではなく、管理者に「Linux端末での利用」「必要な権限」「承認フロー」を確認するのが適切です。
同期コマンド例と注意点
rcloneには「copy」「sync」など複数の動作があります。この違いを曖昧にしたまま運用すると、削除が連鎖する事故につながります。
copy:コピー(基本的に削除を反映しない)
sync:同期(削除も含めて一致させる方向に動く)
安全運用の基本は、次の順番です。
まずは copy で挙動を確認する
ログと結果を確認し、想定通りであることを確かめる
どうしても必要な場合にのみ sync を検討する
syncを使うなら、対象パス固定・事前バックアップ・ログ保全を必須にする
rclone運用チェックリスト
いきなりsyncしない(copyから始める)
対象パスはスクリプト化し、手入力を減らす
ログ出力を常に有効にし、失敗時に追えるようにする
定期実行は段階的に(手動→短期間のテスト→本番スケジュール)
組織環境では、権限・承認・ポリシーを確認してから本番投入する
UbuntuでOneDriveがうまく動かないときの対処
ここでは、実際につまずきやすい症状を「原因別」に切り分けます。重要な注意点として、復旧作業を始める前に現状データの退避を必ず行ってください。同期の問題に対して操作を重ねるほど、状況が悪化する場合があります。
認証が通らない
認証エラーは、原因が複数に分かれます。代表的には次の通りです。
ブラウザでのサインインが完了していない(途中で閉じた等)
多要素認証の追加ステップで止まっている
組織の条件付きアクセスでブロックされている
「管理者の承認が必要」で止まっている
過去の認証情報が残り、整合が取れない
対処の優先順(安全な順)
アカウント種別の確認:個人/職場/学校のどちらでログインしているか
サインインのやり直し:一度ログアウトし、再度同じ手順で認証する
別ブラウザで試す:拡張機能やCookie設定が干渉する場合があります
組織アカウントは管理者へ確認:承認要否・条件付きアクセス・第三者アプリ制限
ネットワーク環境の見直し:プロキシ、VPN、社内ネットワーク制限
ここで無理に「別の非推奨手順」へ飛ぶと、結果的に認証情報が混線して復旧が難しくなることがあります。必ず原因の区分を意識して進めてください。
マウントできない・開けない
GUI連携で「表示はされるが開けない」「途中で切れる」「権限がない」などの現象が起きる場合があります。これは環境差の影響が大きいため、対処方針は次のように割り切ると損をしにくいです。
参照中心なら、ブラウザでOneDriveへアクセスする運用に切り替える
ローカルで編集・保存を安定させたいなら、同期クライアント方式へ切り替える
ファイルマネージャ統合に固執せず、目的(同期か参照か)に戻って選び直す
特に職場/学校アカウントの場合、権限はクラウド側で制御されており、Linux側の操作だけでは解決しないことがあります。SharePoint配下で権限が細かい場合も同様です。
同期が終わらない・一部だけ失敗する
同期が終わらない場合、単に「時間がかかっている」ケースと、何らかのエラーでリトライを繰り返しているケースがあります。切り分けの観点は次の通りです。
主な原因
ファイル名やパスに制約違反がある(禁止文字、長すぎるパス等)
競合が大量に発生している(複数端末で同時更新)
除外設定が意図通りでない
ネットワークが不安定(スリープ、回線断、VPN)
大量変更直後で、差分処理が追いついていない
切り分けチェックリスト
失敗しているファイル名・パスが特定できるか
一時的に同期対象を絞って改善するか
ログで同じエラーが繰り返されていないか
直近で大量の移動・リネーム・削除をしていないか
スリープや回線断が頻発していないか
改善の定石は、「対象を減らす」「変更を止めて落ち着かせる」「ログで原因を特定する」の3点です。焦って設定を大きく変えるほど、競合や削除の連鎖を招く可能性が高まります。
UbuntuでOneDriveを安全に使うための注意点
最後に、OneDriveをUbuntuで扱ううえで、事故を防ぐための注意点を体系的にまとめます。ここを押さえるだけで、導入後のトラブル率と復旧コストが大きく下がります。
データ損失を招きやすい操作
同期の事故は、多くが「削除や上書きが意図せず伝播する」ことで発生します。特に注意すべき操作は以下です。
同期対象のルートを丸ごと変更する(移動・差し替え)
大量の移動・改名・削除を一度に行う
同期中にフォルダ構造を大きく変更する
再同期や状態初期化の操作を理解せずに実行する
同じファイルを複数端末で同時編集し続ける
事故防止のルール(推奨セット)
重要データは必ず二重化する(別媒体、別クラウド、暗号化アーカイブ等)
大規模変更は分割し、同期完了を確認してから次へ進む
同期中は「整理作業」を避ける
変更前に復旧手段(バックアップ・ごみ箱・履歴)を確認する
「同期=バックアップ」ではありません。同期は便利な反面、誤操作の影響も同期される可能性があるため、バックアップは別に用意する必要があります。
組織アカウントの制約と確認ポイント
職場/学校アカウントでは、技術的に正しい手順でもブロックされることがあります。その場合、試行錯誤で回避するのではなく、方針として「管理者に確認すべき事項」を押さえるのが安全です。
管理者へ確認すべきポイント
Linux端末でOneDrive同期(第三者アプリ利用)は許可されているか
ユーザー同意が許可されているか、管理者承認が必要か
条件付きアクセスで、社外・特定OSがブロックされていないか
SharePointサイトの権限が適切か(閲覧のみ、編集可など)
プロキシ/VPN/社内NW要件があるか
これらはセキュリティ要件と密接に関係するため、個人判断での回避は推奨できません。正攻法で確認し、許可された範囲で運用設計を行ってください。
バックアップと復旧の考え方
復旧力を高めるには、「復旧手段を複数持つ」ことが重要です。次の3層で考えると整理しやすくなります。
OneDrive側の復旧:ごみ箱、バージョン履歴
ローカル側の復旧:バックアップ、スナップショット、別媒体退避
運用で事故を減らす:同期対象の絞り込み、変更の分割、ログ監視
最低限のおすすめは次の通りです。
重要フォルダは定期的に別媒体へバックアップする
変更の大きい作業の前後でバックアップポイントを作る
同期トラブル時にログを確認できるよう、ログの保管方針を決める
復旧作業の前に、現状データを退避して「戻れる状態」を確保する
よくある質問
Ubuntu 24.04のMicrosoft 365で個人OneDriveは使えますか
環境によっては認証や参照が可能な場合もありますが、そもそも「同期」ではないため、ローカルで安定して編集・保存まで行いたい用途には不向きになりがちです。個人OneDriveを普段の置き場として使う目的であれば、同期クライアント方式を主軸にするほうが安全です。
特定フォルダだけ同期できますか
多くの場合可能です。運用上は、最初から全量同期にせず、重要かつ小さい範囲で安定運用を確立してから対象を広げることを推奨いたします。除外対象を誤ると欠落につながるため、テストフォルダで挙動確認を行うと安全です。
同期フォルダを途中で変更できますか
可能な場合がありますが、再同期や状態情報の再構築が絡み、競合や取りこぼし、想定外の削除を招くリスクが上がります。変更する場合は、事前バックアップ、対象の縮小、段階移行(旧フォルダを保持したまま新フォルダでテスト)をセットで実施してください。
会社アカウントで認証がブロックされます
組織のポリシーや条件付きアクセスの可能性が高いです。管理者へ、第三者アプリの利用可否、管理者承認の要否、Linux端末の扱い、ネットワーク要件(プロキシ/VPN)を確認してください。ユーザー側の設定変更で解決しないケースが多いため、早めの確認が最短です。
間違って消した場合は復旧できますか
復旧手段は複数あります。OneDrive側のごみ箱やバージョン履歴で戻せる場合がありますが、同期トラブル時は状態が変化し続けることがあるため、復旧操作の前にローカルの現状データを別場所へ退避し、戻れる状態を確保してから進めてください。バックアップを併用していると復旧が確実になります。
まとめ
UbuntuでOneDriveを利用する際は、目的に合う方式を選び、導入後は「運用まで整える」ことが安定利用の鍵になります。
普段の作業フォルダとして双方向同期したい場合は、OneDrive同期クライアントが最有力です。自動起動と除外設計まで整えると、継続利用が安定します。
バックアップや定期転送、サーバ用途では、rcloneが強力です。まずはcopyで安全運用を作り、必要な場合のみ同期へ進めてください。
GUIのMicrosoft 365連携は参照用途で便利な場合がありますが、環境差や制約があるため、詰まる場合は同期方式へ切り替える判断が堅実です。
次に取るべき行動は、以下の順が安全です。
同期対象を小さくしてテスト運用する
バックアップ(最低1系統)を確保する
自動起動とログ確認を整備する
安定後に同期範囲を段階的に広げる
なお、UbuntuやMicrosoft側の仕様変更、組織ポリシーの変更で挙動が変わることがあります。導入後もアップデート情報を確認し、問題が出た場合はログと症状から原因を切り分け、復旧前に必ずデータ退避を行ってください。