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テレビはオワコンなのか|地上波と配信の差で見える本当の現実

「テレビはオワコン」。SNSでそんな断定を見かけるたびに、なんとなくモヤモヤしませんか。たしかに地上波をリアルタイムで見る人は減ったように感じます。一方で、スポーツの大一番や特番、話題作の見逃し配信など、“テレビ由来のコンテンツ”が消えた実感もありません。
混乱の原因は、みんなが言う「テレビ」が同じ意味ではないことです。地上波の話をしている人もいれば、配信やSNSの切り抜きまで含めて語っている人もいます。
この記事では、テレビを「地上波リアルタイム」「見逃し配信」「SNSなど外部展開」の3つに分け、視聴行動・広告・制作環境の3軸で整理します。煽りに振り回されず、「結局どう捉えればいいのか」を自分の言葉で説明できる判断軸が手に入ります。

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テレビがオワコンと言われる背景を整理する

オワコンの意味が人によって違う

「テレビはオワコン」という言い方には、少なくとも次の3種類の主張が混ざっています。

  1. 視聴率が落ちている=テレビは見られていない

  2. 番組がつまらない=テレビの価値が下がった

  3. 広告が弱い=テレビはビジネスとして終わる

しかし、これは同じ話ではありません。たとえば①の主張は主に「地上波リアルタイム」の指標(視聴率)を根拠にします。一方、②は感想や文化的評価が中心で、数字だけでは説明できません。③は広告費・広告効果測定・投資回収の話です。

ここを混ぜると、議論は一生噛み合いません。まずは「どのテレビの話か」を揃えるだけで、結論の見え方が変わります。

地上波リアルタイムが弱く見える理由

地上波リアルタイムが弱く見える最大の理由は、生活者の時間の使い方が変わったからです。
昔は「夜◯時に家族で同じ番組を見る」ことが娯楽の中心でした。今は、スマホで短尺動画を挟み、移動時間にニュースを読み、好きな作品はサブスクで一気見する。娯楽の入口が増えた結果、視聴は“分散”します。

分散するとどうなるか。
視聴率という単一指標が、影響力や人気を測りにくくなるのです。リアルタイムで見なくても、後で配信で見る、SNSで見どころだけ触れる、という行動が普通になりました。
つまり「地上波リアルタイムが弱い」ことと、「テレビ番組が見られていない」ことは、同義ではありません。

体感としてつまらないと感じやすい要因

「昔よりつまらない」と感じるのにも、構造的な理由があります。個人の好みだけに帰結しない要因を整理すると、主に次のようになります。

  • 炎上リスクとコンプライアンス対応:挑戦的な表現や企画が慎重になりやすい

  • 失敗の許容度低下:SNSで評価が即時に可視化され、叩かれると回復が難しい

  • 競合の増加:YouTubeやサブスクの当たり作品と比較され、相対的に見劣りしやすい

  • 視聴体験の変化:CM・テンポ・尺の長さが“スマホ基準”でストレスに感じられる

ここで押さえるべきは、「テレビが怠けた」だけで劣化したわけではない、ということです。環境が変わり、視聴者の期待値と比較対象が変わった結果、“同じ作り”でも厳しく評価されやすくなりました。


テレビ視聴は減ったのか利用データの見方を押さえる

視聴時間はどこへ移動したのか

「テレビ離れ」という言葉は便利ですが、実態は“テレビという時間の使い方”が解体され、他に分散した面が大きいです。代表的な移動先は次の通りです。

  • 見逃し配信:放送時間に縛られず、後から自分のペースで視聴

  • サブスク動画:作品として没入できる長尺(ドラマ・映画・アニメ)

  • SNS短尺・切り抜き:短時間で面白い部分だけ触れる

  • ゲーム・配信・音声:映像以外の娯楽も競合に

ポイントは、「映像が見られなくなった」のではなく、「映像の消費の仕方が分割された」ことです。
だからこそ、地上波だけを見て「終わった」と決めるのは早計になりやすいのです。

若年層ほど起きやすい視聴の分散

若年層ほど視聴が分散しやすいのは、そもそも生活の中心がテレビデバイスではなくスマホだからです。
総務省系の継続調査(情報通信政策研究所の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」)は、テレビ・ネット・SNSなど複数メディアの利用実態を継続的に追っています。少なくとも「世代によって接触するメディアが違う」ことを前提に語る必要がある、という点で重要な根拠になります。

ここで大事なのは、「若者がテレビを見ない=テレビが終わる」ではない、ということです。
若年層がテレビに触れる入口が、地上波ではなく“配信”や“SNSの断片”に移っているなら、テレビの競争相手はテレビ局ではなく、YouTubeやサブスクのUXです。評価軸も変わります。

データを見るときの注意点

テレビに関するデータは、読み方を間違えると簡単に誤結論に着地します。特に注意したいのは次の3つです。

  • 視聴率=人気のすべて、と誤認する

  • 平均値だけで語り、世代差を消してしまう

  • 地上波と配信の数字を、同じ意味で比較してしまう

視聴率は「放送時刻に見た人の割合」を測る指標であって、「番組に触れた人数の総量」を必ずしも表しません。配信は配信で、指標(ユニーク数、再生数、再生時間、完視聴率など)が多様です。
だから本記事では、視聴行動を「地上波」「配信」「外部展開」に分け、指標の意味を揃えた上で考えます。


TVerなど見逃し配信が伸びる理由を理解する

TVerの利用が伸びている事実

「テレビ番組は見られなくなった」という断定に対して、反証になりやすいのが見逃し配信の成長です。
TVerは2025年12月に、月間ユーザー数4,460万MUB、月間再生数6.5億回、コネクテッドTVでの月間再生数2.1億回を公表しています。

この数字が示すのは、「テレビ番組が誰にも見られていない」ではなく、視聴の入口が放送から配信へ強くシフトしているという現実です。
もちろん、TVerの数字だけで業界全体を断定はできません。しかし、「テレビ=地上波リアルタイム」だけで評価するのが不正確になっている、という結論はかなり堅いといえます。

コネクテッドTVが視聴習慣を変える

配信の拡大は「スマホ視聴の増加」とセットで語られがちですが、実はもう一段階あります。
それがコネクテッドTV(ネットにつながるテレビデバイス)です。

TVerの公表でも、コネクテッドTVでの再生が初めて2億回を超えたとされています。
これは、「テレビ番組がスマホに奪われた」だけでなく、テレビ画面そのものが“放送を見る装置”から“配信も見る装置”に再定義されていることを意味します。

言い換えると、テレビデバイスは“オワコン”どころか、UXがアップデートされて生き残っている面があるのです。
問題は、地上波の旧来モデル(時間に縛る・測りにくい・編成中心)であり、映像視聴や大画面体験そのものが不要になったわけではありません。

テレビ局が配信に力を入れる必然

テレビ局が配信を強化するのは、流行だからではなく必然です。

  • 地上波リアルタイムだけだと、若年層との接点が先細りしやすい

  • 番組IPの価値を“放送枠”だけで回収するのが難しくなった

  • 指標が多様化し、広告商品(動画広告など)も再設計が必要になった

結果として、「テレビ局は配信会社になるのか?」という問いが出てきます。
しかし現実的には、テレビ局の強み(制作力、取材網、ライブ運用、IP開発)を、配信という流通に乗せ直す動きだと捉えるほうが理解しやすいでしょう。


テレビ広告が弱いと言われる理由を広告費の流れで読む

広告主が求める指標が変わった

テレビ広告が相対的に弱く見える理由は、「効かなくなった」だけではありません。
広告主が重視するものが、測定しやすい成果へ寄っていることが大きいです。

電通の「日本の広告費 2024」では、インターネット広告費が過去最高を更新し、動画広告需要の高まりなどが市場拡大に寄与したと整理されています。
これは、広告が“計測できる体験”へ向かいやすいことを裏づけます。クリック、視聴完了、サイト遷移、購買などが追えるほど、予算は動きやすい。テレビは、認知・好意・信頼といった価値が強い反面、短期の行動指標だけで見ると不利になりやすいのです。

つまり「テレビ広告は終わり」ではなく、テレビが得意な役割と、ネットが得意な役割が分離したと見るのが自然です。

それでもテレビ広告が効く場面

では、テレビ広告が今も強いのはどんな場面でしょうか。代表例は次の通りです。

  • 一気に広く認知を取りたい(話題の土台を作る)

  • 信頼が重要な商材(金融・不動産・人材など“安心”が効く)

  • イベント・スポーツ等のライブ性(同時体験で記憶に残りやすい)

  • 検索需要の創出(CM→検索→比較→購入の導線を作る)

ここで重要なのは、テレビを“最後の刈り取り”に使うのではなく、最初の波を作る役割として位置づけることです。
テレビ単体で完結させず、ネットで回収する設計(検索・SNS・LP・動画)と組み合わせるほど、合理的になります。

これからのテレビとネットの使い分け

媒体選定は「テレビかネットか」ではなく、「目的から逆算」するのが最短です。以下は“考え方の型”としての目安です(業界・商材で調整してください)。

目的 向く媒体の型 理由 KPI例
認知拡大 テレビ+デジタル 広く波を作り、接触を重ねる 検索数、指名検索、リーチ
検索需要創出 テレビ+SNS+検索広告 きっかけ→検索→比較の連鎖 検索量、CTR、CVR
短期CV デジタル中心 行動に紐づけて最適化しやすい CPA、ROAS
信頼醸成 テレビ+公式情報 “安心”は積み上げ型 ブランド指標、指名検索
ファン化 SNS・コミュニティ・動画 継続接触が作りやすい 継続率、視聴時間

「テレビはオワコン」という断定が刺さるのは、テレビ“だけ”で完結する設計が弱くなったからです。
逆にいえば、テレビを起点にデジタルを設計できる企業ほど、テレビを“使いこなす側”に回れます。


テレビがまだ強い領域と今後の勝ち筋を知る

災害速報とスポーツなど同時体験

テレビの本質的な強みは、同時に多くの人が同じものを見る体験です。
スポーツ中継、選挙特番、年末の大型番組、災害時の速報などは、今もテレビが中心になりやすい領域です。SNSが強くても、同時体験の“場”としてテレビが選ばれる局面は残ります。

ここで「テレビが強い=地上波が永遠」ではありません。
ただ、ライブ性と社会的共有は、映像メディアの価値の核であり続けやすい。だからこそ、テレビが完全に消える未来を断定するのもまた、極端です。

番組はSNSで拡散して初めて完結する

今の番組は、放送して終わりではありません。放送中の反応、見どころの短尺化、見逃しへの誘導、次回予告の拡散まで含めて“作品体験”が設計されます。

この構造を見ると、現実はこう言い換えられます。

  • 「テレビはオワコン」ではなく、「テレビだけでは完結しない」

  • 「視聴率がすべて」ではなく、「接触点が複数になった」

だからこそ、古い評価軸(視聴率だけ)でテレビを裁くと、誤差が大きくなります。
逆に、視聴行動を“分散前提”で捉え直すと、「テレビはどこで価値を出せるか」が見えます。

放送局は何を変えると生き残れるか

テレビ局(放送局)が今後生き残るための方向性は、派手な予言ではなく、すでに起きている“構造対応”として整理できます。

  1. 配信で接触点を増やす(見逃し・アーカイブ)
    放送時間に縛られない入口を増やし、若年層を含む接触を確保する。

  2. 番組IPの収益源を分散する(イベント・商品化・外部展開)
    放送枠だけで回収しない設計へ。

  3. ライブ性・同時体験に投資する(スポーツ・大型特番・速報性)
    “テレビが強い領域”に集中し、差別化する。

  4. 広告商品を再設計する(動画広告、CTV、デジタル連携)
    広告主が求める指標と接続し、測定と運用の余地を作る。

ここまで来ると、「テレビは終わるか?」という問い自体が少しズレてきます。
問うべきは、「地上波中心の旧モデルは縮むか?」であり、その答えは“縮む局面がある”です。
しかし「テレビコンテンツの価値が消えるか?」は別で、配信や外部展開に“移る”可能性が高い、という整理のほうが現実に合います。


テレビはオワコンか迷ったときの判断チェックリスト

まず自分のテレビ観を言語化する

世の中の断定よりも、自分にとって必要かを考えるほうが早いです。次の10項目で、あなたの“テレビ適性”を確認してください。

チェックリスト(Yes/No)

  1. スポーツやライブイベントをリアルタイムで見たい

  2. 災害・速報を一つの画面で素早く把握したい

  3. 家でBGM的に映像を流すことがある

  4. 家族や同居人と一緒に見る時間がある

  5. 話題の番組を「みんなと同じタイミング」で共有したい

  6. 長尺をスマホで見るのが疲れる(目・姿勢)

  7. 仕事終わりに“考えずに見られる”娯楽が欲しい

  8. CMを含めた“世の中の空気感”を掴みたい

  9. ニュースの一次情報を映像で確認したい

  10. いま契約中のサブスクだけでは満足できていない

判定ロジック(行動に落とす)

  • Yesが7個以上:テレビ(またはTVデバイス視聴)は生活の満足度に直結しやすい。地上波+見逃し配信の併用がおすすめ。

  • Yesが4〜6個:見逃し配信中心が最適。地上波はスポーツ・特番など“必要時だけ”で十分。

  • Yesが3個以下:短尺+サブスク中心で問題なし。テレビは“なくても困らない”可能性が高い。

ここまで言語化できると、「テレビはオワコンか?」という大きすぎる問いが、「私はどう使うべきか?」に変わり、迷いが減ります。

目的別に最適な視聴手段を選ぶ

次のように目的で分けると、テレビとの付き合い方が一気に楽になります。

  • 同時体験・速報:地上波リアルタイム

  • 好きな番組を効率よく:見逃し配信(TVer等)

  • 面白い部分だけ素早く:SNS短尺・ハイライト

  • 作品として没入:サブスク動画

「テレビかネットか」を決める必要はありません。
“目的に合った入口”を持っておくことが、情報過多の時代のいちばん合理的な姿勢です。

断定に流されないための3つの問い

最後に、SNSで「テレビは終わった」を見たときは、この3つだけ確認してください。

  1. その人が言う「テレビ」は地上波リアルタイムのことか、それともテレビコンテンツ全体

  2. それは数字の話か、体感の話か、広告の話

  3. “代わりに伸びている入口(配信・CTV・短尺)”を無視していないか

たいていの場合、断定が極端なだけで、現実は「弱くなった部分」と「伸びた部分」が同居しています。
その同居を受け入れたうえで使い分けられる人ほど、情報に振り回されにくくなります。


参考にした情報源