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トラックの『あおり』とは?種類・用途別の選び方とメンテナンス完全ガイド

トラックの荷台を囲む「あおり」。普段は当たり前のようにそこにある部品ですが、その素材や形状、メンテナンスの状態ひとつで、現場の安全性や作業効率、さらには車両コストにまで大きな差が生まれることをご存じでしょうか。
「最近あおりの傷みが気になる」「アルミと鉄、どちらが自社の用途に合うのか分からない」「高さを変えたいが、法的に問題はないのか不安」——運送業・建設業の現場では、このような悩みや疑問が少なからず聞かれます。

本記事では、トラックのあおりについて、基礎知識から素材別の特徴、用途別の選び方、メンテナンスや交換の判断基準、法令・安全面の注意点までを、現場でそのまま活用できるレベルで分かりやすく整理いたしました。さらに、点検チェックリストや用途別の選定ポイントもご紹介し、「何となく」ではなく根拠を持ってあおりを選べる・管理できる状態を目指します。
日々の運行を少しでも安全に、そして効率的にしたいとお考えの経営者様・現場責任者様・ドライバーの皆様に、ぜひお読みいただきたい内容です。

※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。

この記事のまとめ

トラックのあおりは、単なる「荷台の囲い」ではなく、積載物の落下防止・安全運行・作業効率化・法令順守のすべてに関わる重要なコンポーネントです。アルミ・鉄・ステンレス・木製といった素材ごとの特徴や、額縁型・船底型・ツライチ型などの形状の違いを理解し、自社が扱う荷物の種類や現場環境に合わせて最適な仕様を選定することで、事故リスクの低減とコストの最適化を同時に実現できます。

また、どれだけ適切なあおりを選んでも、日常点検とメンテナンスを怠れば安全性は一気に損なわれます。サビや歪み、ヒンジやロック機構の不具合を早期に発見し、軽微なうちに補修・交換を行うことは、重大事故や高額な修理費用を防ぐうえで極めて有効です。あおりの状態を定期点検項目に組み込み、ドライバー教育とセットで運用していくことが、長期的な車両管理の鍵となります。

目次

トラックの「あおり」とは — 基礎知識

あおりの定義と荷台構造における役割

トラックの「あおり」とは、平ボディ車やダンプ車などの荷台の側面・後面に取り付けられた板状の部材を指します。一般的には、

  • 左側あおり

  • 右側あおり

  • リア(後)あおり
    の3面で構成されることが多く、車種や仕様によっては前あおりがあるケースもあります。

あおりは、多くの場合「開閉」や「脱着」が可能です。

  • 平ボディ車では、側面あおりを倒してフォークリフトやクレーンで積み込みを行えるように設計されています。

  • ダンプ車では、リアあおりを開けることで土砂などがスムーズに排出されるようになっています。

したがって、あおりは単なる「囲い」ではなく、

  1. 積載物の落下・飛散を防ぐ安全装置

  2. 荷役作業を効率化するための可動部品
    という2つの重要な役割を持つ部材です。

なぜ「あおり」が必要か — 安全性と効率性の観点から

あおりが必要とされる理由は、主に以下の3点です。

  1. 積載物の落下・飛散防止

    • カーブ走行時や急ブレーキ時、積載物は遠心力や慣性の影響を受けます。

    • あおりがない、あるいは強度不足の場合、荷物が荷台から飛び出し、後続車両の追突事故や路上障害物の発生につながります。

  2. 荷役作業の効率化・標準化

    • あおりがあることで、荷物を「決まった枠の中」に積むことができ、積み方の基準が作りやすくなります

    • 荷崩れしにくい積み方の教育や、作業マニュアルの標準化にもつながります。

  3. 法令・リスクマネジメントの観点

    • 積載物の落下防止は、道路交通法・道路運送車両法においても事業者の責務とされる領域です。

    • あおりの破損や不適切な使用による事故は、企業責任の追及や損害賠償リスクに直結します。

総じて、あおりは「付いていて当たり前」の部品ですが、一度トラブルが起こると重大事故につながるリスクポイントでもあります。そのため、構造や役割を正しく理解しておくことが重要です。


あおりの種類 — 素材・形状ごとの特徴

アルミ製あおりの特徴とメリット・デメリット

アルミ製あおりは、近年多くのトラックに採用されている一般的な仕様です。

メリット

  • 軽量で開閉が容易
    女性ドライバーや高齢ドライバーでも扱いやすく、日常作業負荷の軽減につながります。

  • 錆びにくい
    鉄に比べて腐食しにくく、見た目が長期間きれいに保ちやすいです。

  • 燃費への影響が少ない
    車両自体の重量が軽くなるため、長距離運行が多い場合には燃費面で有利です。

デメリット

  • 強度は鉄より劣る
    鋼材や重機部品など、硬くて重い荷物を頻繁に積む用途では、へこみや変形が起きやすくなります。

  • 局部的な衝撃に弱い
    角の立った荷物が当たると、傷やへこみが目立ちやすい傾向があります。

したがって、アルミ製あおりは、

「一般貨物」「軽量物」「見た目や扱いやすさを重視する場合」に適した選択
と考えると分かりやすいです。

鉄/鋼製あおりの強度・用途と留意点

鉄・鋼製あおりは、強度と耐衝撃性を最優先する用途で選ばれます。

メリット

  • 高い強度と剛性
    鋼材、H形鋼、重機のアタッチメントなど、重量物・衝撃の大きい荷物に適合します。

  • 変形しにくい
    荷重が繰り返しかかる現場(建設現場、解体現場など)でも安定した性能を維持しやすいです。

デメリット

  • 錆びやすい
    防錆塗装や定期的なケアを怠ると、腐食が進行し、強度低下や穴あきにつながります。

  • 重くて扱いが大変
    開閉に力が必要なため、作業者の負担や事故(指挟み・落下)のリスクに注意が必要です。

適しているのは、

「土砂運搬」「建設資材運搬」「重機・鋼材の輸送」など、強度を最優先する現場
です。

ステンレス製・木製あおりの利点と注意点

ステンレス製あおり

  • 鉄と比べ錆に強く、海沿い・降雪地域(融雪剤による塩害)などで特に有利です。

  • 強度も高く長寿命ですが、価格が高いため、予算とのバランスを考慮する必要があります。

木製あおり

  • 荷物が滑りにくく、家具や機械類など、キズを避けたい荷物との相性が良いです。

  • ただし、雨水や紫外線に弱く、劣化や腐食が早い点に注意が必要です。

  • 定期的な塗装や交換を前提とした「消耗部材」として考えておくと、運用上のストレスを抑えられます。

デザイン・形状のバリエーション(額縁、船底、ツライチ等)と用途

あおりの形状には、以下のようなバリエーションがあります。

  • 額縁型
    周囲にフレームがあり、板をはめ込んだ構造。強度が高く、「重量物向け」です。

  • 船底型
    荷台中央がやや低く、両サイドが高くなっている形状。土砂・砕石など、流動性の高い荷物に向きます。

  • ツライチ(フラット)型
    荷台床とあおりの内側がほぼフラットになっており、長尺物・大判パネルなどが積みやすい形状です。

  • 板チョコ型(リブ付き)
    軽さと強度のバランスを取った形状で、一般貨物や資材運搬で広く使われます。

形状選定は、

「どのような荷物を、どの頻度で、どのような積み方で運ぶか」
によって変わりますので、素材とあわせて検討することが重要です。


用途別 あおりの選び方ガイド

ここでは、現場でよくある「用途別」に、あおり選定の考え方を整理します。

建設資材/重機部品など「重くて硬い荷物」の場合

  • 推奨素材:鉄製・ステンレス製

  • 理由

    • 鉄骨、H形鋼、コンクリート二次製品などは荷重と衝撃が大きく、アルミでは変形リスクが高いです。

    • フォークリフトやクレーンでの積み込み時、あおりに荷重が直接かかる場面が多いため、強度を最優先します。

ポイント

  1. あおりの高さは「荷物が越えない高さ」を基本としつつ、クレーン作業の邪魔にならない範囲で設定する。

  2. あおり内部に補強材が入っているタイプを選ぶと、局部的な荷重にも耐えやすくなります。

土砂や瓦礫など「かさ比重が大きく、量が多い荷物」の場合

  • 推奨素材:鉄製、必要に応じてステンレス製

  • 推奨形状:船底型・高めのあおり

理由

  • 土砂・砕石は荷重が大きく、鉄製が適しています。

  • あおり高さが不足していると、走行時の振動で土砂が飛散し、周辺車両や歩行者へのリスクが高まります。

運用の注意

  • ダンプアップ時にリアあおりに過大な衝撃がかからないよう、排出方向や開閉角度を事前に確認しておく必要があります。

家具・器具、精密機器など「壊れやすい荷物」の場合

  • 推奨素材:アルミ製または木製

  • 理由

    • 荷物を保護しやすく、あおり自体に傷がついても荷物への影響が少ない。

    • 手積み・手降ろしが多い場合、軽いあおりは作業者の負担軽減に大きく寄与します。

ポイント

  1. 内側にラバーや養生材を使用し、荷物への当たりを柔らかくする。

  2. あおりの高さを「人が抱えた状態の荷物の重心より少し高い」程度にしておくと、荷崩れ防止に有効です。

長尺物・パイプ類など「形状が不定・特殊な荷物」の場合

  • 推奨形状:ツライチ型・フラット構造

  • 理由

    • 荷台全長を有効に使え、長いパイプや鋼材を効率的に積載できます。

    • あおりを倒してフラットにすることで、サイドからの積み込みも容易になります。

注意点

  • 長尺物は前後方向へのはみ出し量が大きくなりがちです。

  • あおりだけに頼らず、ラッシングベルトやチェーンでの確実な固定が必須です。


メンテナンス・点検の実務 — 安全運搬のために

定期点検の頻度とチェックすべき項目

推奨頻度(目安)

  • 月1回以上の定期点検

  • 荷台・あおりを酷使する現場では「週1回」または「現場終了ごと」の簡易点検

チェック項目の例

  1. 外観確認

    • サビ、塗装剥がれ、へこみ、曲がり

  2. ヒンジ・丁番部

    • 固着していないか、異音はないか

    • ボルト・ナットの緩みはないか

  3. ロック機構

    • 確実にロックされるか

    • ロックピンの摩耗・変形

  4. フック・ロープ掛け部

    • 破損や亀裂、変形がないか

  5. あおりと荷台の接合部

    • ガタつき・隙間・クラックの有無

日常メンテナンス方法(防錆処理・潤滑など)

日常メンテナンスは、**「錆を抑え、動きをスムーズに保つ」**ことが目的です。

  1. 防錆処理

    • サビが出やすい継ぎ目・溶接部・切断面に防錆スプレーを塗布します。

    • サビが広がる前に早い段階でのケアを行うことで、交換時期を大幅に延ばせます。

  2. 潤滑作業

    • ヒンジ・丁番・ロック機構には、定期的に潤滑油を塗布し、開閉動作をスムーズに保ちます。

    • 動きが重いまま使用すると、部品の摩耗や破損の原因になります。

  3. 清掃

    • 荷役後は、土砂・泥・塩分を含んだ水分などをしっかり洗い流し、乾燥させます。

    • そのまま放置すると、サビや腐食の進行が加速します。

不具合があったときの対処 — 軽微な修理から交換まで

軽微な不具合の例

  • ヒンジの動きが重い

  • ロックピンの摩耗

  • 一部のサビ発生

→ 部品交換や部分補修で対応可能です。

交換を検討すべき不具合の例

  • あおり全体が大きく歪んでいる

  • 広範囲の腐食・穴あき

  • ロックしても確実に固定できない

→ 安全性に大きく影響するため、本体交換を前提に検討することが望ましいです。


あおりの交換/修理 — 費用目安と判断基準

軽微な補修(丁番交換、防錆・潤滑など)の費用・タイミング

  • 丁番やロックピンの交換:数千円〜数万円程度(部品代+工賃)

  • 防錆・再塗装:範囲にもよりますが、数万円前後から

タイミングの目安

  • 開閉時に異音がする

  • ロックが固くなってきた

  • サビが目視できる

この段階で早めに対応することで、本体交換レベルの大きな出費を抑えることが可能です。

あおり本体の交換が必要なケースと費用の目安

  • あおり全体の歪みでロックがかからない

  • 積載物の重みで変形し、閉まりが悪くなっている

  • 腐食が広範囲に及び、補修では追いつかない

こうしたケースでは、あおり本体の交換が現実的な選択となります。
費用は、

  • 小型トラック:数万円〜十数万円程度

  • 中型・大型トラック:十数万円〜数十万円程度
    がひとつの目安となります(仕様や板厚により大きく変動します)。

コスト対効果を考慮した判断ポイント

交換の判断にあたっては、以下の観点を押さえておくことが重要です。

  1. 安全リスク

    • 「いつ壊れてもおかしくない」状態なら、コストより安全性を優先すべきです。

  2. 車両の残存価値・年式

    • 車齢が高く、近い将来代替予定の車両に高額な投資をするかどうか、経営判断が必要です。

  3. 現場での影響度

    • 荷崩れや作業効率の低下が顕著なら、交換により作業時間短縮・事故リスク低減が期待できます。


法令・安全上の注意点 — 高さ変更、積載制限、固定方法など

“あおりの高さ変更” に伴う構造変更手続きの概要と注意点

あおりを高くする、あるいは鉄板などを継ぎ足して高さを増す改造は、車両の構造・寸法に関わる変更となる場合があります。

  • 場合によっては「構造変更申請」が必要となり、検査を通さないと違法改造車両とみなされる可能性があります。

  • 高さを上げすぎると、風の抵抗や重心位置への影響も大きくなり、走行安定性が低下します。

安全性・法令順守の観点から、専門業者や整備工場に必ず相談したうえで改造を行うことが重要です。

積載物の固定方法と荷重分散、安全運搬のためのルール

あおりは「囲い」であり、荷物を固定するものではありません
安全運搬のためには、以下の点が重要です。

  1. ラッシングベルト・チェーン・ロープによる固定

    • 荷物があおりにもたれかからない前提で固定方法を検討する。

  2. 荷重分散

    • 重いものは荷台の前方かつ中心に近い位置へ。

    • 偏った積載は、横転や操縦性低下の原因になります。

  3. 高さ・幅・長さの制限

    • はみ出し量や高さ制限を守り、無理な積載を避けることが基本です。

運送業者として守るべき安全対策とドライバー教育の重要性

  • あおりの状態を「点検項目」に組み込む

  • 出庫前点検で、ドライバー自身があおりを確認する習慣を定着させる

  • 荷物の積み方・固定方法について、定期的な教育・指導を行う

これらを徹底することで、あおりに起因する事故やクレームを大幅に減らすことが可能です。


現場で使えるチェックリスト&実用ガイド

荷物の種類 × あおり選定チェック表

荷物の種類推奨あおり素材推奨形状・仕様
鋼材・重機部品・鉄骨鉄/ステンレス額縁型・高強度仕様
土砂・砕石・瓦礫鉄/ステンレス船底型・高めのあおり
家具・家電・精密機器アルミ/木製板チョコ型・内側養生しやすい形
長尺パイプ・鋼材・木材用途に応じて選択ツライチ型・倒せるあおり

定期点検チェックリスト(例)

  • あおり外板に大きなへこみ・曲がりはないか

  • サビ・腐食が局所ではなく広範囲に広がっていないか

  • ヒンジ・丁番にグラつきや固着はないか

  • ロック機構が確実にかかり、手で揺すっても緩まないか

  • 固定フック・ロープ掛け部に亀裂・変形はないか

  • あおり開閉時に異音(ギイギイ・ガリガリ)がしないか

不具合発見時の簡易フローチャート

  1. 点検で異常を発見

  2. 安全に直結するかどうかを判断

    • 直結する → 直ちに使用中止・修理/交換の手配

    • 直結しない → 次回整備での対処を計画

  3. 作業後に再度点検し、改善状況を確認


よくある質問(FAQ)

Q1. あおりは本当に必要ですか?

はい。特に平ボディ車・ダンプ車では、積載物の落下防止・作業効率・法令順守の観点から実質的に必須と考えるべき部品です。

Q2. アルミと鉄、どちらを選ぶべきですか?

  • 一般貨物・軽量物中心 → アルミ製が扱いやすく、メンテナンスも比較的容易です。

  • 重量物・土砂・資材中心 → 強度面から鉄/ステンレス製を推奨いたします。

Q3. あおりが錆びているのですが、すぐ交換すべきですか?

  • サビが表面レベルであれば、防錆処理や部分補修で対応可能です。

  • 穴あきや大きな腐食がある場合は、早めに交換をご検討ください。

Q4. あおりの高さを上げたいのですが、自由に改造してもよいですか?

無許可の改造は違法・車検不適合となる可能性があります。必ず専門業者・整備工場と相談し、必要な手続きを経てから実施することをおすすめいたします。

Q5. メンテナンスはどのくらいの頻度で行えばよいですか?

  • 目安として月1回の定期点検

  • 使用頻度が高い車両や、重荷重が多い車両は、週1回程度の簡易チェックを推奨いたします。


まとめ — 適切なあおりの選定と管理で安全・効率を確保

トラックのあおりは、安全・効率・法令遵守のすべてに関わる重要部品です。

  • どのような荷物を運ぶのか

  • どの頻度で運ぶのか

  • どのような現場環境なのか

これらを整理した上で、素材・形状・高さを検討し、さらに日常点検とメンテナンスを組み合わせることで、事故リスクを抑えつつ、長期的なコスト削減にもつながります。