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父親が怒りやすくなった70代:原因の優先順位と受診の進め方

70代の父親が、以前より怒りやすくなった。些細な一言で怒鳴る、物に当たる、家の空気が一気に悪くなる――そんな変化が続くと、家族は「性格が変わったのでは」「認知症の始まりかもしれない」と不安になります。さらに厄介なのは、受診を勧めても本人が拒否し、正面から向き合うほど衝突が増えてしまうことです。

しかし、怒りっぽさの背景は認知症だけとは限りません。体調不良や脱水、痛み、便秘、睡眠不足、薬の影響など、原因次第では早めの対応で落ち着く可能性もあります。大切なのは、家族がひとりで抱え込みながら「説得」に疲れ切る前に、原因を“優先順位”で整理し、安全を守りつつ、受診や相談へつなげる道筋を作ることです。

本記事では、まず確認すべき危険サイン、原因を見立てる順番、怒りを増幅させない声かけ、受診拒否でも進められる手順、そして地域の相談先までを、今日から動ける形で具体的に解説します。読み終えたときに「次に何をすればよいか」が明確になる構成でお届けします。

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目次

70代の父親が怒りやすくなったときに最初に確認すること

急に変わったなら体調・薬・せん妄を優先する

怒りっぽさが「以前からの性格」か、「最近になって明らかに強くなった変化」かで、優先順位が変わります。特に次のような変化があるなら、まずは急性の要因を疑います。

  • 数日〜数週間で、別人のように怒りっぽくなった

  • 会話が噛み合わない時間帯が増えた

  • 昼は普通なのに、夕方〜夜に急に荒れる(または逆)

  • 落ち着きがなくソワソワする/反対にぼんやりする

  • 「ここはどこだ」「今何時だ」など見当識が揺れる場面がある

せん妄は、急性に発症し、症状が揺れ動き(日内変動がみられることがある)点が特徴として整理されます。原因は単一ではなく、感染・脱水・薬の影響・環境変化など多因子で起こり得ます。
重要なのは、せん妄が疑われる場面で「家庭で見分け切ろう」としないことです。家族ができるのは、危険を避け、情報を記録し、医療につなぐことです。

表:原因の優先順位と見分けのヒント

優先度 代表例 変化の特徴 家庭で気づきやすいサイン
高(まず疑う) せん妄、感染、脱水、便秘、痛み、薬の影響、転倒後 数日〜数週間で急に変化/波がある 夜に悪化、急な混乱、注意が続かない、普段と違う言動
うつ、睡眠障害、ストレス、聴力低下、喪失体験 数週間〜数か月でじわじわ 不眠、意欲低下、外出減、怒りの頻度増
低(ただし重要) 認知症の周辺症状(易怒性など) 月単位で徐々に 物忘れ、段取り低下、混乱や不安が背景にある

※目安です。急性と慢性が重なることもあります。


危険サインがある場合の行動(当日受診・緊急相談)

次のチェックリストに該当する場合は、様子見よりも医療相談を優先してください。特に「急な混乱」「意識の変化」「転倒後の変化」「強い身体症状」は放置しない方が安全です。

チェックリスト:当日中に医療相談を検討したいサイン

  • 急に別人のように怒りっぽくなった、混乱が強い

  • 会話が成立しない時間が増えた(理解・注意の低下が疑われる)

  • 幻覚・妄想が疑われる(いない人が見える、誰かに狙われている等)

  • 発熱、強い痛み、息苦しさ、嘔吐、極端な食事・水分低下がある

  • 便秘が続いている、尿が少ない/色が濃い(脱水の疑い)

  • 転倒して頭を打った可能性がある、歩き方が急に変わった

  • 暴力・物の破壊・自傷他害の恐れがある

  • 車の運転が危険な状態(判断の低下、怒りのまま運転しようとする)

迷うときは「安全側」に倒すのが基本です。緊急性が高いと判断される場合は119番の利用も含めて検討してください。


家族の安全確保(距離・退避・運転・刃物・金銭)

怒りが爆発している最中に、家族が説得を試みるほど状況が悪化することがあります。ここは「正しさ」より「安全」です。

安全確保の基本ルール

  • 距離を取る:同じ部屋で対峙しない。出入口を塞がない。

  • 逃げ道を確保:自分が部屋の奥に追い込まれない位置に立つ。

  • 危険物を遠ざける:刃物、工具、ガラス製品、硬い置物など。

  • 運転は止める:怒りや混乱が強い日は車の鍵を管理する(トラブルを避ける言い方は後述)。

  • 一人で対応しない:同居者が単独で受け止め続けない。連絡体制を作る。

  • 記録を残す:後で医療・相談につなげる材料になる(具体は受診準備で解説)。

暴力・物損が現実的であれば、家族内で抱え込まず、自治体・関係機関へ相談することが重要です。高齢者虐待対応は市町村等を中心に体制整備が進められています。


父親が怒りっぽくなる主な原因を整理する

認知症の周辺症状としての易怒性(BPSD)

認知症では、記憶障害などの“中核症状”だけでなく、心理面・行動面の変化が現れることがあります。これらはBPSD(行動・心理症状)として整理され、本人の生活の質を下げるだけでなく、介護者の負担も大きくし得ます。

怒りっぽさが出る背景には、次のような要因が重なることがあります。

  • 状況が理解できず不安が強い

  • うまく言葉で説明できず、苛立ちだけが残る

  • 失敗を指摘されて自尊心が傷つく

  • 予定変更や複数の指示で混乱する

  • 「急かされる」「否定される」と感じる

重要なのは、家族が「本人はわざと困らせている」と解釈しないことです。背景の不安・混乱を前提にすると、対応の選択肢が増えます。


せん妄(急性)と見分けのポイント

せん妄は、急性の意識・注意・認知の変化を含み得る状態で、症状が揺れ動く(波がある)点が重要です。せん妄の評価や診断に関する記載では、急性発症や日内変動といったポイントが強調されます。
また、せん妄は多因子で起こりやすいことが整理されています。

家族が「見分ける」より「伝える」ための観察ポイント

  • いつから急に変わったか(開始日が言えるか)

  • どの時間帯に悪化しやすいか

  • 眠れているか、食べられているか、水分は取れているか

  • 痛み・便秘・発熱・咳・排尿の変化はないか

  • 薬の変更(開始・増量・飲み合わせ)はないか

  • 環境変化(入院・引っ越し・模様替え・来客増など)はないか

せん妄かどうかを家庭で確定する必要はありません。観察情報を医療者へ渡すことが、最短の助けになります。


うつ・睡眠障害・痛み・聴力低下・生活ストレス

「認知症でもせん妄でもない」場合でも、怒りっぽさは起こり得ます。高齢者は不調を言語化しづらく、“イライラ”や“怒り”として表出することがあります。

よくある背景要因

  • 睡眠:眠れない、夜間の中途覚醒、昼夜逆転

  • 痛み:膝・腰・頭痛・歯の痛み・帯状疱疹後痛など

  • 感覚:聴力低下で「聞こえない→叱られる→怒る」の連鎖

  • ストレス:役割喪失(退職)、孤立、家の中での居場所の減少

  • 不安:失敗を恐れる、急かされる、先の見通しが立たない

家族としては、「怒りを止める」より、怒りの燃料(睡眠・痛み・不安)を減らす視点が有効です。


薬・アルコール・環境変化

怒りっぽさや混乱の背景に、薬の影響が関係するケースもあります。家庭で判断はできないため、薬が変わった時期と症状の変化を紐づけて記録し、医師・薬剤師に共有できる状態にしておくことが大切です。

また、環境変化(入院・引っ越し・来客・生活リズムの変化)も、症状を強める引き金になり得ます。変化の前後関係をメモできるだけで、受診時の会話が前に進みます。


怒りの場面を減らす接し方と声かけのコツ

最初の一言で決まる(共感→選択肢→短い提案)

怒りが出ているとき、本人は「不安」「混乱」「恥ずかしさ」「思い通りにならない焦り」を抱えていることが多いものです。ここで家族が正論や説明に入ると、本人は“攻撃された”と感じてさらに反発します。

使いやすい基本の型

  1. 共感:「嫌だったね」「不安になるよね」「びっくりしたね」

  2. 選択肢:「今は休む? それともお茶にする?」

  3. 短い提案:「5分だけ一緒に確認しよう」「ここに座って呼吸しよう」

ポイントは、言葉を短くすることです。説明は落ち着いてからで十分です。


避けたいNG対応(正論・否定・急かし・人前での指摘)

次の対応は、怒りの増幅につながりやすい典型です。

  • 「だから言ったでしょ」「また同じこと」など、正論で詰める

  • 「怒らないで」「落ち着いて」だけで終える(本人は落ち着けない)

  • 人前での物忘れ指摘、子ども扱い、命令口調

  • 勝ち負けで終わらせる(その場で収まっても後が悪化する)

家族側のストレスが限界に近いほど、言い方が強くなります。だからこそ、後述の「退避」と「役割分担」が効いてきます。


場面別テンプレ(物忘れ指摘、運転中止、受診提案)

ここは「そのまま使える言い回し」を多めに用意します。家庭の状況に合わせて短くしてください。

物忘れ・探し物で怒っているとき

  • まず:「焦るよね。いま一緒に探すよ」

  • 続けて:「最後に使ったの、いつ頃だった?」(責めない質問)

  • NG回避:「どこに置いたの!」は言わない

家族に怒鳴り始めたとき(クールダウン誘導)

  • 「いまは話すと余計つらくなりそう。5分だけ別の部屋でお茶にしよう」

  • 「ここで呼吸しよう。私は近くにいるよ」

  • “議論の停止”を宣言し、戦わない

運転を止めたいとき(衝突を避ける)

  • 「今日は疲れが出てそうで心配。私が運転するね」

  • 「車の話は“安全の確認”として先生にも相談しよう」

  • 目的を「取り上げ」ではなく「確認」に変える

受診を提案するとき(プライドを守る言い換え)

  • 「検査」ではなく「相談」「体調チェック」にする

  • 例:「最近、眠りが浅そうで心配なんだ。薬の影響も確認したいから、血圧や睡眠の相談として一度だけ先生に会わない?“検査”じゃなく“相談”でいいよ」

  • 例:「怒りっぽさが増えてつらそう。原因が体のことなら楽になるかもしれないから、先生に聞いてみよう」

“認知症の検査”を真正面から出すと拒否されやすい家庭は多いので、「本人が受け入れやすい目的」に翻訳するのが実務的です。


受診につなげる手順と準備

家庭で取るべき記録(頻度・誘因・時間帯・同時症状)

受診を成功させる鍵は「医師に渡せる情報」です。長文でなくて構いません。むしろ、箇条書きが強いです。

記録テンプレ(コピペ用)

  • 変化の開始:○月○日頃から(急/じわじわ)

  • 怒りの頻度:週○回、1回○分程度

  • 時間帯:朝/昼/夕方/夜(特に夜に悪化など)

  • きっかけ:予定変更、聞き返し、探し物、空腹、疲労、入浴、服薬など

  • 同時症状:不眠、食欲低下、発熱、便秘、痛み、ふらつき、転倒、息苦しさ

  • 生活の困り:服薬管理、金銭管理、運転、近所トラブル、失火リスク等

  • 直近の変化:薬変更、環境変化(来客・引っ越し・入院・模様替え)

  • 安全面:暴力/物損/自傷他害の恐れ(具体例)

このメモがあるだけで、医療者が状況を把握しやすくなります。


本人が拒否するときの進め方(かかりつけ医→地域包括→必要な支援)

受診拒否は珍しくありません。一直線に専門外来へ連れていこうとすると対立が深まるため、段階設計が有効です。

受診拒否でも前に進む手順

  1. 家族だけで、かかりつけ医に相談(電話で可否を確認)

  2. 記録を渡し、「急性変化の可能性」「生活上の危険」を共有

  3. 医師から本人へ「体調チェック」の形で声をかけてもらう

  4. 並行して、地域包括支援センターに相談し、支援導入の段取りを作る

  5. 必要に応じて、専門外来や介護保険申請へ

地域包括支援センターは、市町村が設置主体で、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員等がチームで、総合相談支援、権利擁護、継続的ケア支援などを担う窓口として整理されています。
「どこから手をつければいいか」を一緒に並べ替えてくれる場所だと捉えると、相談の心理的ハードルが下がります。


何科に相談するか(迷ったら入口は小さく)

  • 最初の入口:かかりつけ医(内科等)

  • 必要に応じて:物忘れ外来、神経内科、精神科・心療内科など(地域差あり)

本人が専門科を嫌がる場合は、「血圧」「睡眠」「薬の確認」など、受け入れやすい名目で入口を小さくするのが進め方として現実的です。


家族が疲れ切る前に決めておきたい「役割分担」

怒りの対応は、最も近い家族に負担が集中しがちです。先に役割を分けるだけで長期戦が楽になります。

  • 記録係(メモを残す)

  • 連絡係(医療機関・地域包括への連絡)

  • 同席係(受診同行、説明を聞く)

  • 休ませ係(介護者を休ませる日を作る)

「誰が何をするか」を決めないと、最も真面目な人が潰れます。


家族だけで抱えないための相談先と支援の使い方

地域包括支援センターに相談すると進みやすい

介護保険を使う前でも、「怒りっぽさ」「受診拒否」「家庭内の衝突」の段階で相談できます。地域包括支援センターは、制度横断的に支援をつなぐ役割を持つと整理されています。

相談時に伝えると進みやすい情報

  • 怒りっぽさの開始時期(急性かどうか)

  • 家庭の安全リスク(運転、物損、暴力の有無)

  • 家族の疲労度(眠れていない、仕事に支障など)

  • 受診拒否の程度(拒否の言葉・理由)

  • すでに困っている生活課題(服薬、金銭、近隣)


介護の相談窓口(ケアマネ・自治体窓口)

  • 介護保険申請後:ケアマネジャーがサービス調整の中心になります。

  • 申請前:地域包括が相談窓口として使いやすいです。

  • 自治体窓口:虐待や権利擁護の観点が必要な場合に重要です。

地域包括が「総合窓口」、ケアマネが「サービス運用の中心」と覚えると整理しやすくなります。


家庭内の安全が脅かされる場合の相談(虐待・DVを含む)

暴力や脅しがあると、家族は「外に言うのは大げさでは」と迷いがちです。しかし危険があるときは、家庭内で解決しようとしない方が安全です。高齢者虐待への対応と養護者支援は、国の資料として整備され、自治体等が通報・相談を受ける仕組みが明示されています。

相談時の言い方(抵抗がある場合)

  • 「虐待かどうか分からないが、家の安全が不安」

  • 「暴力・物損があり、こちらが怖い」

  • 「受診や支援につながらず、家族が限界」

“判断してもらうために相談する”で構いません。


よくある質問

昔から短気だった場合でも受診した方がよい?

昔から短気でも、「最近になって頻度や強さが増えた」「混乱が混ざる」「日内で波がある」「身体症状がある」なら、急性要因(せん妄や体調不良など)も含めて確認した方が安心です。せん妄は急性発症・日内変動などがポイントとして整理され、原因への対応が重要になります。


受診して「認知症ではない」と言われたら?

「認知症ではない」ことは良いニュースですが、怒りっぽさの背景が消えるとは限りません。睡眠、痛み、うつ、聴力、薬、生活ストレスなどを再評価し、必要なら再相談します。生活上の困りが続く場合は、地域包括へ相談し、生活支援や介護保険の検討を含めて“暮らしの設計”として整える方が前に進みます。


怒りが自分(家族)に向くのがつらいときは?

つらさを我慢し続けるほど、家族の声かけが強くなり、悪循環に入ります。

  • まず安全確保(距離・退避・危険物)

  • 記録を残し、医療・地域包括へ相談

  • 家族も休む仕組み(役割分担・外部支援)を作る

「家族が壊れない」ことが、結果的に本人の安定にもつながります。


参考情報源