「セルではきれいに見えているのに、文字とつなげた瞬間に¥やカンマが消える」「日付に曜日を付けたいのに、思った形にならない」「社員番号の0埋めが勝手に崩れてしまう」――Excelやスプレッドシートで帳票や報告資料を作っていると、こうした“表示崩れ”に時間を奪われがちです。
そこで役立つのが、テキスト関数のTEXT関数です。TEXT関数は、数値や日付を指定した書式で文字列として確定できるため、文章との結合や提出用の出力でも見た目が崩れにくくなります。一方で、便利だからこそ「文字列化したせいで計算や並び替えがうまくいかない」といった落とし穴もあります。
本記事では、TEXT関数の基本構文から、書式コードを最短で見つける手順、日付・金額・0埋めの“そのまま使える”早見表、帳票で失敗しない注意点、Excelとスプレッドシートの違いまでを、例文付きで丁寧に解説します。読み終えたときには、表示崩れに悩まず、狙った見た目を迷いなく作れるようになります。
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テキスト関数TEXTでできることと向いている場面
ExcelやGoogleスプレッドシートで作業していると、「セルに表示されている見た目は理想どおりなのに、文字列とつなげた瞬間に崩れる」「日付を“2025年12月28日(日)”のように整えたいのにうまくいかない」といった場面に頻繁に出会います。こうした“見た目の整形”と“文字列としての出力”を両立したいときに、中心となるのがテキスト関数のTEXT関数です。
TEXT関数は、数値・日付・時刻のような「内部的には数値として扱われるデータ」を、指定した表示形式(書式コード)で“文字列”に変換して返します。ポイントは「見た目を整える」だけではなく、「整えた見た目を文字列として固定し、結合や出力で崩れないようにする」ことにあります。帳票、見積書、月次報告、メール貼り付け用の文章、CSV出力用の文字列など、業務の最後の仕上げ工程で効果が出やすい関数です。
一方で、TEXT関数の出力は文字列です。つまり、計算にそのまま回したり、日付としてフィルターしたり、数値として並び替えたりする用途には向かない場合があります。TEXT関数は「計算のための関数」というより、「表示・出力のための関数」と捉えると、使いどころの判断がしやすくなります。
TEXTは数値や日付を指定書式の文字列にする関数
TEXT関数の役割は、値に表示形式を適用し、その結果を文字列として返すことです。Excelでは、同じ数値でもセルの表示形式によって見た目が変わります。たとえば「1234」という数値に対して、表示形式を通貨にすると「¥1,234」のように見えます。しかし、この「¥」や「,」は“表示上の飾り”であり、セルの中身が文字列に変わったわけではありません。
ここでよく起きるのが、文字列結合(&)です。表示上は「¥1,234」と見えているのに、="合計:"&A1 のようにつなげると「合計:1234」と出てしまい、通貨記号やカンマが消えます。これは結合が「中身の値」を参照するからです。TEXT関数を使うと、通貨表示の見た目を「文字列として確定」できるため、結合後も「合計:¥1,234」のように崩れません。
日付も同様です。たとえばセルA1に日付が入っていて「2025/12/28」と表示されていても、曜日を付けたい、年だけ取りたい、年月だけ取りたい、という要求が出ます。TEXT関数なら =TEXT(A1,"yyyy年m月d日")、=TEXT(A1,"aaaa") といった形で、狙った見た目をそのまま文字列として出力できます。
この性質から、TEXT関数は次のような用途と相性が良いです。
金額を文章に埋め込みたい(円記号、カンマ、小数桁を揃える)
日付の一部(年月、月日、曜日など)だけを取り出して表示したい
時刻表示を整えたい(00:00形式、午前午後、経過時間など)
IDや番号を0埋めで固定桁にしたい
最終成果物としての“見た目”を確定して提出したい
セルの表示形式で足りるケースとTEXTが必要なケース
TEXT関数で迷うときは、「それはセルの表示形式で済むのか」「文字列として確定する必要があるのか」を分けると整理できます。ここを曖昧にしたままTEXT関数を多用すると、あとで計算や集計が必要になったときに戻せず、二度手間になりがちです。
セルの表示形式で足りる代表例は、次のとおりです。
表の見た目を整えたい(見やすくするだけ)
通貨記号や小数点桁を揃えたいが、値は数値のまま保持したい
日付を「yyyy/mm/dd」で統一表示したいが、日付として計算・集計もしたい
並び替えやフィルター、ピボットのために数値・日付として扱いたい
この場合、TEXT関数で文字列化するのは得策ではありません。表示形式で整えておけば、値は数値・日付のまま残り、集計や計算に強い状態を維持できます。
一方、TEXT関数が必要になりやすいのは、次のケースです。
文字列と数値・日付を結合して“文章”や“ラベル”を作りたい
例:「2025年12月の売上:¥1,234,567」CSV出力や外部システム連携で、見た目を固定した文字列が必要
例:IDを必ず6桁0埋めで出す、日付を必ず「yyyymmdd」で出す表の中に「説明文付きの値」を並べたい
例:「期限:2025/12/28(日)」をセル内で完結させたい
要するに、最終的に「文字列として扱われる成果物」を作る場面ではTEXT関数が向きます。逆に、表計算としての強み(集計・計算・比較・並び替え)を維持したいなら、表示形式を優先すると失敗しにくいです。
文字列化すると計算に影響する理由
TEXT関数で作った結果は文字列です。文字列は、見た目は整っていても「数値としての性質」を失います。これが、後工程でのトラブルの原因になります。
たとえば、金額を =TEXT(B2,"¥#,##0") として「¥1,250」の文字列にした場合、見た目は完璧でも、そのセルを合計しても数値としては扱えません。人間の目には金額に見えても、Excelにとっては「¥」「,」を含む文字の並びです。
日付も同様で、=TEXT(A1,"yyyy/mm/dd") の結果は「2025/12/28」という文字列です。これを日付としてフィルターしたり、月末計算したり、日付差を取ったりするのは困難になります。特に怖いのは、「文字列の日付」が見た目では気づきにくいことです。ある日突然、ピボットのグループ化ができない、並び替えが日付順にならない、といった形で問題が露見します。
さらに、並び替えも文字列順になります。数値の「2」「10」「100」は数値順なら2→10→100ですが、文字列順だと「10」が「2」より前になるなど、意図しない順序になります。見た目を整えるためにTEXT関数を使ったのに、一覧の順序が崩れるのはよくある失敗です。
このため、基本方針としては「計算・集計のための元データは数値・日付のまま保持し、表示・出力のためにTEXT関数で別セルに文字列を作る」と覚えておくと安全です。
テキスト関数TEXTの基本構文と最短で書式コードを見つける手順
TEXT関数の使い方自体はシンプルです。難しいのは、第2引数の書式コード(表示形式)です。ここを理解し、さらに「暗記しないで探す」方法を身につけると、実務でのスピードが一気に上がります。
基本構文と入力のコツ
TEXT関数の基本構文は次のとおりです。
=TEXT(値, "表示形式")
第1引数の「値」には、数値・日付・時刻、またはそれらが入っているセル参照を指定します。第2引数の「表示形式」はダブルクォーテーションで囲んだ文字列として指定します。ここが重要で、ダブルクォーテーションを付け忘れるとエラーになったり、意図した書式にならなかったりします。
入力のコツは次の3点です。
まずセル参照で書く(後でコピーしやすい)
例:=TEXT(A2,"yyyy/mm/dd")書式コードは最小限から始める(複雑にしすぎない)
例:まずはyyyy/mmで確認し、必要なら「年」「月」表記へ拡張期待する出力例を先に決める
例:「2025年12月」「12/28(日)」「¥1,234」など、最終形をイメージしてから書く
また、数値と文字列を結合する場合は、結合の中にTEXTを組み込みます。
="納期:"&TEXT(A2,"yyyy/mm/dd")="合計:"&TEXT(SUM(B2:B10),"¥#,##0")&"(税込)"
「計算→TEXTで整形→結合」という順序を意識すると、式が破綻しにくくなります。
セルの書式設定から書式コードをコピーする方法
書式コードを全部覚えるのは現実的ではありません。しかも、業務で必要な表示形式は案件や会社のルールによって微妙に異なります。そこで有効なのが「セルの書式設定から書式コードを拾って、TEXT関数へ移植する」やり方です。
手順の考え方は次のとおりです。
まず、セルの表示形式で“理想に近い見た目”を作る
通貨、日付、時刻など、標準のカテゴリやユーザー定義を使って整えます。表示形式の設定画面で、使われているコード(ユーザー定義の形式)を確認する
会社のテンプレートに近い形式があれば、そのコードをそのまま使うのが最短です。そのコードをTEXT関数の第2引数に貼り付ける
例:コードが¥#,##0なら=TEXT(B2,"¥#,##0")
この方法の強みは、次の2点です。
“見た目を作る”ことに集中でき、コードの暗記が不要になる
実際にセルで確認済みの見た目を移植するため、試行錯誤が減る
もし複雑な表示(たとえば、正の数・負の数・ゼロで表示を変える形式)を扱う場合でも、表示形式で一度作ってからTEXTへ移す流れにすると、ミスが減ります。
文字列結合で崩れる表示を直す定番パターン
TEXT関数が最も威力を発揮するのは、文字列結合で表示が崩れる場面です。定番の直し方をパターンとして押さえると、毎回悩まずに済みます。
パターン1:通貨やカンマが消える
崩れやすい式:
="支払額:"&B2&"円"直す式:
="支払額:"&TEXT(B2,"¥#,##0")
「円」と別に付けるか、通貨記号を含めるかは、社内表記ルールに合わせます。いずれにしても、TEXTで整形してから結合するのがコツです。
パターン2:日付の表示が期待と違う
崩れやすい式:
="納期:"&A2直す式:
="納期:"&TEXT(A2,"yyyy年m月d日")
日付は環境差で「2025/12/28」や「2025-12-28」など、表示が揺れることがあります。提出物では表示を固定したいので、TEXTで明示的に整えるのが安全です。
パターン3:0埋めが維持できない
崩れやすい式:
="注文番号:"&C2(C2=123)直す式:
="注文番号:"&TEXT(C2,"000000")
番号は人間にとっては“文字”ですが、入力が数値扱いになっていると先頭0が落ちます。TEXTで固定桁を指定すれば、0埋めを維持した文字列として出せます。
テキスト関数TEXTの書式コード早見表
書式コードは「目的に対して最短で書けるもの」をいくつか押さえておくと便利です。ここでは、日付・時刻・数値・0埋めの頻出パターンをまとめます。最初はこの範囲だけで十分に回せることが多いです。
日付と曜日の書式コード
日付系は、「年」「月」「日」と「曜日」が軸です。よく使うのは次の組み合わせです。
yyyy:年を4桁で表示m/mm:月(1桁 or 2桁)d/dd:日(1桁 or 2桁)aaa:曜日を短く(例:月、火)aaaa:曜日を長く(例:月曜日、火曜日)
具体的には次のように使います。
年月を作る:
=TEXT(A1,"yyyy/mm")、=TEXT(A1,"yyyy年m月")月日だけ:
=TEXT(A1,"m/d")、=TEXT(A1,"mm/dd")曜日付き:
=TEXT(A1,"m/d(aaa)")のように、括弧を文字として含める
曜日付きは、スケジュールや期限管理で便利です。たとえば「12/28(日)」の形にしたいなら、=TEXT(A1,"m/d(aaa)") で近い結果が得られます。見た目が揃わない場合は、月日を2桁にする、年を付けるなど、社内フォーマットに合わせて調整します。
注意点として、m と mm、d と dd は「ゼロ埋めの有無」が変わります。資料で見栄えを揃えたいなら mm や dd を優先し、入力の簡便さを優先するなら m や d を選ぶとよいです。
時刻と経過時間の書式コード
時刻は、日付以上に「表示したい粒度」が分かれます。時だけ、時分、時分秒、または経過時間なのかで、書式が変わります。
h/hh:時(1桁 or 2桁)m/mm:分s/ss:秒
時刻表示でよく使うのは次です。
hh:mm:09:05のように2桁表示h:mm:9:05のように時だけ1桁hh:mm:ss:09:05:07のように秒まで
一方で、勤務時間や作業時間の集計で重要なのが「24時間を超える経過時間」です。通常の時刻表示は“時計”なので、24時間を超えると繰り上がってしまいます。経過時間として表示したい場合は、角括弧を使った形式が役立ちます。
[h]:mm:27:15のように累積時間を表示[h]:mm:ss:累積時間+秒まで表示
これにより、たとえば複数日の作業時間合計を「合計27時間15分」のように崩さず扱えます。
また、午前午後を入れたい場合は AM/PM を使います。
h AM/PM:9 AM のような形式hh:mm AM/PM:09:05 AM のような形式
提出先や相手の文化圏によっては24時間表記が望ましい場合もあるので、用途に応じて選びます。
数値と通貨とパーセントの書式コード
数値系は「桁」「小数」「区切り」「記号」がポイントです。
0:必ず数字を表示(桁が足りない場合は0で埋める意味も持つ)#:必要なときだけ数字を表示,:3桁区切り.:小数点¥などの記号:文字として扱われる
よく使うのは次のとおりです。
#,##0:カンマ区切りの整数表示#,##0.00:カンマ区切り+小数2桁¥#,##0:円記号付き整数表示0.00:小数2桁固定(カンマなし)
「小数点を揃えたい」場合は 0.00 のようにゼロを使って固定桁にします。逆に「小数があるときだけ出したい」場合は #.## のようにシャープを使うと表示が省略されますが、提出物では桁が揃わず見づらいこともあるため、固定桁の方が好まれるケースが多いです。
パーセントは注意点があり、0% の形式を使うと、値が「1=100%」として扱われます。つまり、0.25なら25%ですが、25と入力していると2500%になります。パーセントの元データが「割合(0〜1)」なのか「百分率(0〜100)」なのかを確認してから書式を決めると、誤表示を防げます。
0%:整数パーセント0.00%:小数付きパーセント
0埋めと固定桁の書式コード
0埋めは、業務で非常に登場頻度が高いです。注文番号、社員番号、顧客ID、伝票番号など、一定桁で管理される番号は多く、先頭0が落ちると照合や検索ができなくなることがあります。
0埋めの基本は「必要桁数だけ0を並べる」です。
6桁なら
0000008桁なら
00000000
例として、C2が123なら、=TEXT(C2,"000000") で「000123」になります。
注意点として、元の値が桁数を超える場合は、0埋めでは切り捨てられず、そのまま表示されます。たとえば2桁指定で 00 としても、値が123なら「123」と出ます。桁超過をエラー扱いにしたい場合は別のチェック(LEN関数など)を組み合わせる必要があります。
また、0埋めは「表示」のためか「データとして固定」のためかで運用が変わります。提出用に見せるだけならTEXTで十分ですが、データ照合やVLOOKUPで使うなら、検索キーが文字列か数値かを揃える必要があります。ここは後半の注意点でもう一段詳しく扱います。
テキスト関数TEXTのよくある活用例
TEXT関数は、単体で使うより「文章に埋め込む」「テンプレート出力を作る」「帳票の最終整形をする」といった文脈で活きます。ここでは、現場で遭遇しやすい典型例を、考え方と一緒に整理します。
請求書やレポートで金額を見やすくする
請求書やレポートで重要なのは「読み間違いが起きない表示」です。金額はカンマがあるだけで桁の把握が楽になり、通貨記号があるだけで単位の取り違えが減ります。さらに、税込・税抜の表記など、文章と一体になっていると確認が速くなります。
たとえば、B2が金額(数値)のとき、次のような出力が作れます。
="ご請求金額:"&TEXT(B2,"¥#,##0")="お支払い合計は"&TEXT(B2,"#,##0")&"円です。"
円記号を付けるかどうかは社内ルールによりますが、いずれも「TEXTで金額表示を確定→結合」が基本です。小数が出る可能性があるなら ¥#,##0.00 のように小数桁を固定しておくと、資料内の表記が統一されます。
また、合計値を作る場合は、TEXTの前にSUMなどで計算し、最後に整形します。
="合計:"&TEXT(SUM(B2:B10),"¥#,##0")
この順番を逆にしてしまうと、文字列になって合計できなくなるため、「計算は数値で、表示はTEXTで」という原則が役立ちます。
年月や曜日だけを取り出して一覧化する
日付データを扱うと、必ず「年月だけ」「月日だけ」「曜日だけ」の需要が出ます。たとえば、月次の一覧、曜日別の傾向、締め日管理などです。
年月だけ:
=TEXT(A2,"yyyy年m月")
月次レポートのタイトルや、グルーピング用の見出しに便利です。月日だけ:
=TEXT(A2,"m/d")
年が不要な短期の一覧(今月の予定)などで読みやすいです。曜日だけ:
=TEXT(A2,"aaa")
シフト表や稼働表の横に置くと、曜日確認が一瞬でできます。曜日付き日付:
=TEXT(A2,"m/d(aaa)")
“日付と曜日をセットで確認したい”場面に強いです。
ただし、ここでも注意は「TEXTの結果は文字列」だという点です。曜日別集計をしたいなら、TEXTで曜日文字列を作るより、WEEKDAY関数などで数値化し、表示だけを整える方が集計に強い場合があります。目的が「一覧として見せる」ならTEXTが最短、目的が「集計する」なら別の設計、という判断が大切です。
社員番号や伝票番号を0埋めで統一する
0埋めは、入力の段階で既に問題が起きやすい領域です。Excelは数字を数字として扱うため、先頭0は自動的に消えることがあります。これを避けるには、方針が2つあります。
データとして番号を“文字列”で持つ(最初から文字列入力)
数値で持ち、表示や出力でTEXTで0埋めする(見せ方で整える)
既存データが数値で管理されていることも多いため、現場では後者のTEXT運用がよく使われます。
例:C2が123、6桁にしたい
=TEXT(C2,"000000")→ 「000123」
このとき、照合(検索)に使う場合は注意が必要です。片方が数値123、もう片方が文字列”000123″だと一致しません。照合キーとして使うなら、両方を同じ型(数値か文字列か)に揃える設計が必要です。提出用・表示用の列ではTEXTで整え、照合用の列では元の型を揃える、という分離が実務的には安全です。
集計結果を文言と一緒に表示する
レポートでは、数値だけの表に加えて「要点を文章でまとめたセル」を作りたい場面があります。上司や関係者に共有する際、文章セルがあると読み手が迷いません。
たとえば、売上合計と前年差を文章にしたい場合、次のように組みます。
合計:
="売上合計:"&TEXT(SUM(B2:B31),"¥#,##0")前年差:
="前年差:"&TEXT(B33,"¥#,##0")
さらに、複数の値を一つの文章にするなら、TEXTを挟んで結合します。
="今月の売上は"&TEXT(B40,"¥#,##0")&"で、前年差は"&TEXT(B41,"¥#,##0")&"です。"
文章セルは「読みやすさ」が目的なので、数値は最終的にTEXTで整形してから出力します。ここでも、計算は元の数値セルで行い、文章セルでは“完成形”を作る、という役割分担が肝心です。
テキスト関数TEXTで失敗しない注意点
TEXT関数は便利ですが、便利だからこそ“何でもTEXTで整形してしまう”癖がつくと、あとでデータとして扱えなくなります。ここでは、よくある失敗と、その避け方を具体的に整理します。
文字列になった値は計算や並び替えで事故が起きる
最も多い失敗は、TEXTで作った結果を、そのまま数値として扱ってしまうことです。代表的な事故は次のとおりです。
合計できない
TEXTの結果は文字列なので、SUMの対象にしても期待どおりに合計できません。場合によっては0扱いになる、またはエラーになることがあります。比較がズレる
「100」と「20」を文字列として比較すると、文字列順の比較になり、数値としての大小関係と一致しないことがあります。並び替えが不自然
「2」「10」「100」のような値が、文字列順で「10→100→2」になってしまうなど、一覧が崩れます。日付の扱いが壊れる
見た目は日付でも文字列のため、月末計算、日数差、グループ化などができなくなることがあります。
これらは「見た目が整っているから大丈夫」という思い込みで起きやすいです。特に日付は、セルの見た目だけでは文字列か日付か判別しづらく、トラブルが潜伏しやすい点に注意が必要です。
元の値は別セルに残して参照する
事故を防ぐ最も確実な方法は、元の値を保持し、表示用の列・セルを別に作ることです。考え方は次のように分けます。
入力・計算・集計用:数値・日付のまま(表示形式で整える程度に留める)
表示・出力・文章化用:TEXT関数で文字列化して仕上げる
たとえば、B列に金額(数値)を置き、C列に =TEXT(B2,"¥#,##0") で表示用文字列を作る、といった構成です。こうしておけば、C列は提出物の見た目に徹し、B列は計算の土台として残ります。後から税率変更や再集計が入っても、土台が生きているので修正が容易です。
また、日付も同じで、A列に日付(シリアル値)を入れ、B列に =TEXT(A2,"yyyy/mm/dd(aaa)") を作る、という分離が安全です。B列を見せれば読みやすく、A列を使えば集計も可能になります。
ロケールや環境差で表示が変わることがある
同じTEXT関数でも、ExcelとGoogleスプレッドシート、あるいは同じExcelでも設定や環境によって、表示が微妙に変わることがあります。特に影響が出やすいのは、次の領域です。
日付の区切り(/、-、年/月/日表記)
曜日の表記(短縮の仕方、言語設定)
通貨記号や桁区切り(カンマ、ピリオドの扱い)
午前午後表記(AM/PMの扱い)
こうした差分を吸収するためには、次の対応が有効です。
セルの表示形式で一度見た目を作り、書式コードを取得してTEXTに移植する
自分の環境で確認済みの形式を使うため、想定外が減ります。重要な提出物は、受け手側の環境での見え方を一度テストする
たとえば共有前にPDF化して確認する、別PCで表示確認するなど。装飾(円記号、単位、括弧など)はTEXTまたは結合で明示する
表示形式任せにすると差が出ることがあるため、最終成果物では明示的に書く方が安全です。
テキスト関数TEXTはExcelとスプレッドシートでどう違うか
TEXT関数はExcelにもGoogleスプレッドシートにも存在し、基本的な目的も「表示形式に従って文字列にする」で共通しています。そのため、概念理解は共通で進められます。一方で、実務では「同じ式を貼ったのに見え方が微妙に違う」「同じ書式コードがそのまま通らない」といった差分に悩むことがあります。ここでは、混在環境で迷わないための整理をします。
共通点と差分の比較表
| 観点 | Excel | Googleスプレッドシート |
|---|---|---|
| 目的 | 指定書式で数値・日付・時刻を文字列化 | 指定書式で数値・日付・時刻を文字列化 |
| 基本構文 | TEXT(値,"書式") | TEXT(値,"書式") |
| 得意な使い方 | 結合用の整形、帳票出力、テンプレ式 | 結合用の整形、共有用の表示統一 |
| つまずきやすい点 | 表示形式コードの解釈、地域設定 | 表示形式指定の解釈、地域設定 |
| 安全策 | 元データは数値のまま保持、表示用列でTEXT | 元データは数値のまま保持、表示用列でTEXT |
混在環境で最も重要なのは、「同じ結果に見せたいなら、元データの型(数値・日付)を守り、出力だけをTEXTで作る」という設計です。これにより、見え方の調整は出力側のセルだけで完結し、データの整合性は保たれます。
同じ見え方に揃えるための考え方
見え方を揃えるときのコツは、次の3段階で考えることです。
見せたい最終形を“文字列として”定義する
例:「2025/12/28(日)」「¥1,234,567」「000123」など、完成形を先に決めます。元データの型を崩さない
日付は日付、数値は数値として保持し、計算や集計の余地を残します。表示用にTEXTで整形し、必要な装飾は明示する
円記号、単位、括弧などは、TEXTの書式コードや結合で明示して揺れを減らします。
たとえば「月次のタイトル」を作るなら、元データは日付として持ち、表示用に =TEXT(A2,"yyyy年m月")&"売上レポート" のように組み立てると、提出物の見え方が安定します。相手がExcelで見てもスプレッドシートで見ても、タイトルは文字列として固定されるため、崩れにくくなります。
テキスト関数TEXTに関するよくある質問
TEXTで作った日付を日付に戻せますか
可能な場合もありますが、確実とは言い切れません。TEXTで作った日付は文字列なので、日付として再解釈させる必要があります。環境の設定や区切り文字の違いによって、同じ文字列でも日付として認識される場合とされない場合が出ます。
実務上のおすすめは「戻す前提にしない」ことです。つまり、元の日付(数値としての日付)を別セルに残し、表示専用にTEXTを使う構成にします。どうしても日付に戻す必要があるなら、日付として解釈しやすい形式(例:yyyy-mm-ddなど)にする、区切りを統一する、といった工夫が必要になります。ただし、運用としては、元の値を保持する設計の方が安全です。
表示形式コードはどこで一覧できますか
表示形式コードは、用途別に断片的に覚えるより、「セルの書式設定で作ってコードを拾う」方法が実用的です。社内テンプレートや既存ファイルの“正解の見た目”があるなら、それを表示形式として確認し、そのコードをTEXT関数へ移植すると、最短で目的に到達できます。
また、日付・時刻・数値・0埋めの基本パターンは、この記事の早見表の範囲を押さえておくと、日常業務の大半はカバーできます。そこから先は「必要になったときに表示形式から拾う」という運用が現実的です。
0埋めはTEXTと表示形式のどちらが良いですか
目的で決まります。
見た目だけ揃えたい:表示形式でも可能です。値は数値のままなので、集計や計算に向きます。
文字列として固定したい(結合、出力、照合のキーにしたい):TEXTが向きます。
ただし、照合キーとして使う場合は特に注意が必要です。片方が数値、片方が文字列だと一致しません。照合が必要なら、検索キーをどちらの型で統一するかを先に決め、同じ型に揃えた列を用意するのが確実です。表示用と照合用を分離すると、ミスを減らせます。
TEXTで通貨記号を付けると計算できなくなりますか
TEXTの結果は文字列なので、そのセル自体を計算に使うと支障が出ます。通貨記号が付いているかどうかに限らず、TEXTを通した時点で文字列になります。
最も安全な設計は、次の分離です。
金額の計算・集計:元の数値セル(表示形式で通貨表示にしても良い)
提出・文章化・出力:TEXTで通貨付き文字列を作るセル
この分離を守れば、「見た目は通貨、計算は数値」という両立ができます。
まとめ
TEXT関数は、数値・日付・時刻を指定した表示形式で文字列化し、結合や出力で表示が崩れないようにするための関数です。特に、通貨記号やカンマを含む金額表示、曜日付きの日付、0埋めの固定桁番号など、提出物や帳票で“見た目を確定したい”場面で効果を発揮します。
一方で、TEXT関数の結果は文字列です。計算や集計、日付としての処理、数値順の並び替えなどには向かないため、元データは数値・日付のまま保持し、表示・出力専用にTEXTを使う分離が安全です。迷ったら「表示形式で済むか」「文字列として確定が必要か」を先に判断すると、後工程のトラブルを大きく減らせます。
書式コードは暗記に頼るより、セルの書式設定で目的の見た目を作り、そのコードをTEXTに移植するのが最短です。環境差(Excelとスプレッドシート、地域設定など)で見え方が揺れる場合もあるため、重要な提出物はサンプルデータで出力結果を確認し、期待どおりの文字列になっているかを一度テストしてから運用すると安心です。