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手首を骨折したら本当に手術が必要?手術をしない治療の条件とリスクを専門情報から解説

転んで手をついたあと、手首が大きく腫れて「骨折です。手術になるかもしれません」と言われた――。
突然の診断にショックを受け、「できることなら手術はしたくない」と不安の中で「手首 骨折 手術 しない」と検索された方も多いのではないでしょうか。
本記事では、手首の骨折(橈骨遠位端骨折)に対して手術をしない治療(保存療法)が選ばれるケースと、手術をしないと後悔しやすいケースを、公的ガイドラインや専門医の知見をもとに分かりやすく整理します。
保存療法と手術療法のメリット・デメリット、治療期間や費用、後遺症リスクの違いを比較しながら、主治医に確認したいポイントや質問リストもご紹介いたします。
「本当に今、手術をしなくてよいのか」を、ご自身とご家族が納得して判断するための材料としてご活用ください。

※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。

目次

手首の骨折で「手術しない」という選択肢はあるのか

手首の骨折の多くは「橈骨遠位端骨折」

転んだときに手をついてしまい、その拍子に手首が大きく腫れたり、強い痛みが出て救急病院を受診する──こうした場面で診断されることが多いのが「橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)」です。

橈骨は前腕の親指側の骨で、その手首寄りの端(遠位端)が折れるため、このような名前が付いています。高齢の方、特に骨粗しょう症を伴う女性に多く見られる骨折ですが、若い方でも自転車やスポーツ中の転倒で起こることがあります。

症状としては、

  • 手首周囲の強い痛み

  • 腫れ・内出血

  • 手首の変形(「フォーク様変形」と呼ばれることもあります)

  • 手を動かそうとすると強い痛みが出る

などが一般的です。レントゲン撮影によって骨折の有無や、骨のずれの程度が確認されます。

治療法は大きく「保存療法」と「手術療法」の2種類

手首の骨折の治療は、大きく次の2種類に分けられます。

  • 保存療法(手術をしない治療)

    • 折れた骨を手で元の位置に戻す「整復」を行い、その後ギプスやシーネ(添え木)で固定して、骨がくっつくのを待つ方法です。

    • 多くの場合、外来通院で行い、4〜8週間程度の固定が一般的な目安とされています。

  • 手術療法

    • 小さな切開を加えて骨折部にプレートやスクリューを入れ、骨を内側から固定する方法(プレート固定)が代表的です。

    • 関節内骨折や大きくずれてしまった骨折、粉砕が強い骨折などでは、より正確に骨を整復しやすいという利点があります。

どちらの方法も「骨を元の位置に戻して安定させる」ことが目的ですが、そのアプローチやリスク、回復の仕方には違いがあります。

まず押さえたい「手術しない治療」が選ばれる代表的なケース

「手術は怖い」「できれば手術をしたくない」というお気持ちは自然なものです。実際、すべての手首の骨折が手術になるわけではなく、次のような場合には保存療法が選択されることが多いです。

  • 骨のずれ(転位)がほとんどない場合
    → 骨が元の位置に近く保たれている場合は、ギプス固定のみで十分に治ることがあります。

  • 整復後に骨の位置が安定している場合
    → 手で骨を戻した後のレントゲンで、良い位置が保たれていると判断されれば、保存療法が優先されることがあります。

  • 年齢や全身状態から手術リスクが高い場合
    → 心臓や肺の病気などで全身麻酔が大きな負担になる場合、保存療法を選択することがあります。

  • 多少の変形を許容しても日常生活に大きな支障が見込まれない場合
    → 高齢の方などで、「見た目が多少曲がっても日常生活に支障が少なければ良い」と判断されるケースでは、保存療法が選択されることがあります。

ただし、骨のずれが大きい場合や、関節面が壊れている場合など、「手術をしないと後遺症が残りやすい」パターンもあるため、次の章で詳しく整理いたします。


手術をしない治療(保存療法)の基礎知識

保存療法とは?ギプス・シーネ固定の流れ

保存療法は、次のような流れで行われるのが一般的です。

  1. 徒手整復
    折れた骨がずれている場合、麻酔を用いて痛みを抑えながら、医師が手で骨を引っ張る・押すなどして元の位置に近づけます。

  2. ギプス・シーネ固定
    整復後、レントゲンで骨の位置を確認し、問題がなければギプスやシーネで固定します。

    • 前腕から手までの固定

    • 場合によっては肘の近くまで固定することもあります。

  3. 定期的なレントゲンチェック
    骨折直後〜2週間ほどは、骨がずれやすい時期です。

    • 1〜2週間ごとにレントゲン撮影を行い、骨の位置が保たれているかを確認します。

    • ずれが進んでしまった場合、改めて整復したり、手術を検討することもあります。

どれくらいの期間ギプスをするのか(固定期間と骨癒合の目安)

ギプス固定の期間は、骨折の状態や年齢によって変わりますが、一般的には 4〜8週間程度 が目安とされています。

  • 高齢者
    → 骨がくっつくまでにやや時間がかかる傾向があり、固定期間が長めになることがあります。

  • 若年者・小児
    → 骨癒合が早く、比較的短い期間で固定を外せることもあります。

ギプス中でも、

  • 指・肘・肩はできるだけ動かす

  • 手を高く挙げて腫れを抑える

ことが推奨されます。関節が固まってしまう「拘縮」を予防するためにも、動かしてよい部位は積極的に動かすことが大切です。

保存療法のメリット:手術を避けられること以外の利点

保存療法のメリットは、「手術をしないで済む」という点だけではありません。

  • 全身麻酔・手術に伴うリスクを避けられる
    → 心臓・肺・脳などに持病がある方にとって、全身麻酔は負担となることがあります。

  • 入院期間が短い、または通院のみで済むことが多い
    → 高齢者で介護が必要な場合や、ご家族の付き添いが難しい場合には大きな利点になります。

  • 傷跡(手術痕)が残らない
    → 手の甲や手首の手術痕が気になる、という方にとっては見た目の面でのメリットがあります。

保存療法のデメリット:変形治癒や可動域制限などのリスク

一方で、保存療法には次のようなデメリット・リスクもあります。

  • 骨が固定中に再びずれてしまう(再転位)のリスク
    → 特に粉砕が強い骨折や、骨質が弱い場合には起こりやすくなります。

  • 変形した状態で骨がくっついてしまう(変形治癒)リスク
    → 手首の見た目が曲がってしまうほか、力が入りにくくなる、物を持ち上げにくいなどの影響が生じることがあります。

  • 手首の可動域が狭くなる可能性
    → 固定期間が長いほど、動きが硬くなる傾向があります。リハビリが不十分だと、曲げ伸ばし・ひねり動作に制限が残ることがあります。

  • 長期的な合併症リスク
    → 変形治癒により、手根管症候群や腱の炎症・断裂などが将来的に起こる可能性が報告されています。

こうしたリスクを十分理解したうえで、「それでも手術を避けたいのか」「手術のリスクとどちらを重く見るか」を考えることが大切です。


手術が必要になりやすいケースと判断のポイント

ガイドラインで示される「不安定型骨折」とは

日本整形外科学会などが作成した「橈骨遠位端骨折診療ガイドライン」では、保存療法では整復位を保ちにくい骨折を「不安定型骨折」と呼び、こうした骨折では手術が選択されることが多いとされています。

不安定型骨折の目安としては、専門的には背屈転位(手の甲側への傾き)が大きい場合や、粉砕が強い場合などが挙げられますが、患者さん視点では、

  • レントゲン上で骨が大きくずれている

  • 関節の面が「段差」になってしまっている

  • 折れ方がバラバラで、ギプスだけでは安定しにくい

といった状態をイメージしていただくとよいでしょう。

関節内骨折・大きなずれがある場合は手術を検討

関節の中まで骨折線が入っている「関節内骨折」の場合、関節の面をできるだけなめらかに整えることが重要です。関節面に段差が残ると、将来の痛みや変形性関節症のリスクが高まるからです。

また、関節外であっても、

  • 骨のずれが大きい

  • 手首全体の傾きが強い

  • 粉砕が高度で、ギプスだけでは安定しにくい

といった場合には、手術による内固定が検討されることが多くなります。

特に、

  • 若い方

  • 利き手側の骨折

  • 力仕事や精密な手の作業を行う職業の方

では、できるだけ元の形に近づけることの重要性が高く、手術を勧められるケースが増えます。

年齢・生活スタイルによって変わる「手術する・しない」の考え方

同じレントゲン所見でも、年齢や生活スタイルによって「最適な選択」は変わり得ます。

  • 高齢の方の場合

    • 全身麻酔や入院の負担が大きい

    • 多少の変形があっても、日常生活に大きな支障がないことも多い
      → 保存療法を選びやすい傾向があります。

  • 現役世代・手をよく使う仕事の場合

    • 長期的に手を酷使する

    • 力が入らない、細かい作業がしにくいと困る
      → 手術でできるだけ元の形に近づけるメリットが大きい場合があります。

  • スポーツを続けたい方の場合

    • 手首の可動域や力の入り方が重要
      → 少しでも機能を温存するために、手術を選択することが検討されます。

このように、「年齢」「利き手かどうか」「仕事・趣味」「全身状態」などを総合して判断する必要があります。

手術を勧められたときに確認したいポイントと質問例

医師から手術を勧められたとき、次のような質問をしてみると、ご自身の状況を整理しやすくなります。

主治医に確認したいチェックリスト

  • 私の骨折は、

    • 関節内骨折ですか?関節外骨折ですか?

    • 骨のずれの程度は大きいですか?小さいですか?

  • 保存療法を選んだ場合、

    • どのくらいの確率で変形が残る可能性がありますか?

    • 日常生活や将来の痛み・動きに、どの程度影響しそうですか?

  • 手術を選んだ場合、

    • どのような手術方法を行いますか?(プレート固定など)

    • 入院期間とリハビリの期間はどのくらいですか?

    • 主な合併症リスクは何ですか?

  • 私の年齢・仕事・生活スタイルを踏まえて、先生はどちらを勧めますか?その理由は?

これらをメモにして持参し、診察室で一つずつ確認していくと、後から振り返る際にも役立ちます。


手術をしない場合の治療の流れと生活上の注意点

受傷〜ギプス固定中:痛み・腫れが強い時期の過ごし方

受傷直後から数日〜1週間ほどは、痛みと腫れが強い時期です。この時期に意識したいポイントは次の通りです。

  • 手を心臓より高く挙げる
    → 腫れを抑えるため、クッションや枕を使って手を高く保つようにします。

  • 指・肘・肩はできるだけ動かす
    → ギプスで固定されていない関節は、積極的に動かすことが大切です。むくみや拘縮を防ぐ効果があります。

  • ギプスのきつさを確認する
    → 「しびれが強い」「指先が冷たい・青黒い」「激しい痛みが続く」などの場合は、ギプスがきつすぎる可能性があるため、早めに受診しましょう。

  • 痛み止めの内服は医師の指示どおりに
    → 我慢しすぎると睡眠不足になり、回復にも良くありません。処方された鎮痛薬を適切に使用しましょう。

ギプス除去後〜3ヶ月:リハビリで意識したいこと

ギプスが外れた直後は、手首が硬く、思うように動かせなくて驚かれる方も多いです。しかし、ここからのリハビリが回復の鍵になります。

  • 痛みの範囲内で少しずつ動かす
    → 「全く痛くない範囲」だけだと動きが戻りにくく、「我慢できないほどの痛み」は逆効果です。理学療法士や医師と相談しながら「適度な負荷」を見つけていきます。

  • 曲げ伸ばし・ひねり動作をバランスよく
    → 手首を上下に曲げる動きだけでなく、手のひらを上・下に向ける動き(回内・回外)も重要です。

  • 日常生活の中で少しずつ使用量を増やす
    → 軽い家事やタオル絞りなど、無理のない範囲から徐々に使い始めます。

日常生活・仕事・家事への復帰の目安

復帰時期は骨折の程度や職種によって異なりますが、一般的には次のようなイメージが参考になります。

  • 事務仕事など、手首に強い負担をかけない仕事
    → 痛みの程度にもよりますが、ギプス固定中でもキーボード操作などが可能な場合があります。主治医と相談のうえ、早期復帰も検討されます。

  • 力仕事・重い荷物を扱う仕事
    → 骨がしっかりくっつき、手首の動きと筋力が回復するまで時間が必要です。2〜3ヶ月以上を見込むことが多いです。

  • 家事・育児
    → 軽い家事はギプス固定中から工夫しながら行えることもありますが、重い荷物や長時間の作業は控える必要があります。

  • 車の運転
    → 突発的なハンドル操作が必要になるため、痛みや筋力不足があるうちは控えるべきです。再開のタイミングは必ず主治医に確認してください。

手術をしない場合に特に注意したいサイン(要受診の症状)

保存療法を選んだ場合、次のような症状が出たら、予定より早めに受診することをおすすめいたします。

  • 以前より痛みや腫れが強くなってきた

  • 手首や指にしびれ・ビリビリ感が出てきた

  • 指が動かしにくい、力が入らない

  • ギプスの中で、強い違和感・圧迫感・皮膚のかゆみや痛みが続く

骨が新たにずれてきている、神経や血管が圧迫されているなどの可能性もあるため、自己判断せず主治医に相談してください。


手術あり・なしの比較表|メリット・デメリット・費用感

保存療法 vs 手術療法の比較表(期間・痛み・後遺症リスクなど)

以下は、一般的な傾向をまとめた比較表です。実際には骨折の状態や病院によって異なりますので、「目安」としてご覧ください。

項目保存療法(手術しない)手術療法
初期治療徒手整復+ギプス・シーネ固定手術室で骨折部を整復しプレート等で固定
入院日帰り〜短期入院が多い数日程度の入院が一般的
固定期間ギプス固定4〜8週間前後術後はギプス不要〜短期間の固定で済むことも
傷跡なし手首付近に数cm程度の傷跡
変形リスク高め(骨折型による)適切に行われれば比較的低い
可動域制限リスク固定期間が長いほど高くなりやすい早期から動かせる場合もあり、低く抑えられる可能性
将来の合併症変形治癒による痛み・腱障害・手根管症候群などのリスクプレート周囲の違和感・腱障害、抜釘が必要になることも
費用手術に比べて少なめになる傾向手術・入院費用により総額は高くなりやすい(高額療養費制度の対象になることも)
仕事・スポーツ復帰骨癒合とリハビリの進み具合に依存早期に動かせる分、復帰が早まる場合もある

※実際の治療方針・予後は個々の症例によって大きく異なります。

費用や入院日数の目安と公的制度(高額療養費制度など)の概要

費用については、保険の種類や病院、個室利用の有無などによって大きく変わるため、具体的な金額は主治医・病院窓口でお確かめください。

一般的には、

  • 手術を伴わない保存療法:
    → 外来での処置・ギプス材料費・レントゲン・リハビリなどの費用が中心

  • 手術療法:
    → 手術費用・麻酔費用・入院費用・検査費用などが加わり、総額は高くなりやすい

ただし、日本では公的医療保険が利用でき、さらに自己負担が一定額を超えた場合に、高額療養費制度により超過分が払い戻される仕組みもあります。大きな手術費用が心配な場合は、事前に病院の医事課や健康保険組合に相談すると安心です。

「どちらが正解か」ではなく「自分に合う選択」をするために

「手術が絶対に正しい」「手術をしない方が賢い」といった単純な話ではありません。重要なのは、

  • 今後どのような生活を送りたいか

  • どの程度の痛みや不自由を許容できるか

  • 手術や入院への不安がどれくらいあるか

といった ご自身の価値観と状況 に合った選択をすることです。

自分の優先順位を整理するチェックリスト

  • 痛みをできるだけ早く減らしたい/多少なら我慢できる

  • 手首の見た目(曲がり具合)がどの程度気になるか

  • 仕事を休める期間はどのくらいか

  • スポーツや趣味で手首をどれくらい使うか

  • 手術や麻酔に対する不安はどのくらいか

これらを紙に書き出して整理しておくと、主治医との相談がスムーズになります。


手術をしない場合に起こりやすいトラブルと対処法

変形治癒による見た目の違和感・痛み

保存療法では、とくに不安定な骨折の場合、骨が完全に元の形には戻らず、多少曲がって治ることがあります。

  • 見た目の違和感だけで、日常生活にほとんど支障がない場合
    → 高齢の方などでは、そのまま経過観察とされることも少なくありません。

  • 変形が強く、痛みや力が入らないなど機能障害がある場合
    → 後から矯正手術が検討されることもあります。

見た目の問題と機能の問題は必ずしも一致しないため、「見た目は気になるが痛みは少ない」「見た目はあまり変わらないが、力が入らない」といったケースもあります。気になる症状があれば、遠慮なく主治医に相談してください。

手首の動きが悪い・固まってしまったとき

ギプス固定が長く続いたり、リハビリの開始が遅れたりすると、関節が固まってしまう「拘縮」が起こりやすくなります。

  • 手首の曲げ伸ばしの角度が戻らない

  • 手のひらを上・下に向ける動きがしにくい

  • 痛みは少ないが、とにかく動かしにくい

といった症状が続く場合は、リハビリの見直しが必要かもしれません。自己流で無理に動かしすぎると、かえって痛みを悪化させてしまうこともありますので、理学療法士や主治医に相談しながら進めましょう。

しびれ・だるさなど神経や腱のトラブルが疑われる症状

  • 親指・人差し指・中指を中心としたしびれ・痛み

  • 夜間や手を使った後にしびれが強くなる

  • 指を曲げ伸ばしすると、ひっかかり感や痛みが出る

などの症状がある場合、

  • 手根管症候群

  • 腱の炎症・腱断裂

などの合併症が隠れている可能性があります。

「骨はもうくっついているから」と自己判断で様子を見続けるのではなく、症状が続く場合は早めに専門医に相談することが大切です。

トラブルに気づいたときの受診・相談のポイント

受診時には、次のような情報を整理して伝えると、医師が状況を把握しやすくなります。

  • 症状が出始めた時期

  • 症状が出るきっかけ(動かしたとき・夜間など)

  • 症状の強さ・頻度の変化

  • これまでに受けた治療(ギプス期間・リハビリ内容など)

必要に応じて、手外科を専門とする医師や、大規模病院を紹介してもらえることもあります。


ケース別:こんな場合は早めに主治医に相談・セカンドオピニオンを

高齢の親が骨折し、家族として選択に迷っている場合

高齢のご家族が手首を骨折した場合、

  • 手術を受ける体力があるか

  • 認知機能・生活環境(独居か同居か)

  • 本人がどこまで治療に前向きか

など、多くの要素を考慮する必要があります。

ご家族としては、

  • 「どの程度の手術リスクがあるのか」

  • 「手術をしない場合、今後の生活にどのような影響が予想されるのか」

を主治医にしっかり確認し、本人の希望も聞きながら話し合うことが大切です。

仕事やスポーツで手を頻繁に使う場合

大工・美容師・調理師など、手を酷使する職種や、テニス・ゴルフなど手首を多く使うスポーツを続けたい方は、手首の機能をできるだけ温存することが重要になります。

そのため、

  • 関節内骨折や大きなずれがある場合には手術が推奨されやすい

  • 将来の競技復帰・仕事への影響を考えると、初回から手術を選択した方が有利な場合もある

といった点について、主治医とよく相談されると良いでしょう。

すでに保存療法を選んだが、経過に不安がある場合

すでに保存療法を選んでギプス固定やリハビリを行っている方の中には、

  • 「このまま曲がったまま治ってしまうのでは?」

  • 「痛みが思ったより引かない」

といった不安を感じる方も少なくありません。

そのような場合は、

  • 最新のレントゲン画像を見せてもらい、現時点での骨の位置を説明してもらう

  • 今後の見通し(痛みや動きがどこまで改善する可能性があるか)を聞く

ことが大切です。必要に応じて、画像データや紹介状を持って他院で意見を聞く「セカンドオピニオン」も選択肢になります。

セカンドオピニオンを受けるときに準備したいもの

セカンドオピニオンを希望される場合、次のようなものを準備するとスムーズです。

  • 主治医からの紹介状

  • レントゲンやCT画像(CD-Rなど)

  • これまでの治療経過が分かる資料

  • 自分の希望や不安を書き出したメモ

主治医との信頼関係を損なうのでは、と心配される方もいらっしゃいますが、「他の医師の意見も聞きたい」という希望は珍しいものではありません。遠慮せず、率直に相談されて問題ありません。


よくある質問(FAQ)

手術をしないと必ず変形してしまいますか?

必ず変形するわけではありませんが、骨のずれが大きい骨折や不安定な骨折では、ギプス固定中に再びずれが生じ、変形治癒になるリスクが高くなります。

ずれが少ない骨折や、整復後に安定している骨折では、保存療法でも大きな変形を残さずに治ることもあります。

少し曲がっていても、痛くなければ放置して大丈夫?

痛みが少なく、日常生活に支障がない場合でも、長期的には関節の変形や腱のトラブルにつながる可能性があります。

  • 痛みがないか

  • 力が入りにくくないか

  • 日常生活で不自由がないか

などを定期的に確認し、気になる場合は主治医の診察を受けることをおすすめいたします。

保存療法から後から手術に切り替えることはできますか?

ギプス固定中に骨が大きくずれてしまった場合や、変形が著しくなると予測された場合には、途中から手術を検討することがあります。

ただし、

  • 骨がくっつき始めてから時間が経つほど、手術の難易度が上がる

  • 完全に元の形に戻せない場合もある

といった点から、「迷いがあるなら早めに相談する」ことが大切です。

どの診療科・どんな専門医に相談するのがよいですか?

手首の骨折は基本的に 整形外科 の領域です。その中でも、手や手首を専門に扱う 手外科専門医 が在籍している医療機関では、より専門的な治療を受けられる可能性があります。

お住まいの地域の医師会サイトや学会の専門医検索ページなどで、「手外科」や「上肢」を専門とする医師を探すことも一つの方法です。


まとめ:後悔しない治療選択のためにできること

「手術しない」選択肢の限界を知ったうえで意思決定する

手首の骨折で「手術しない」ことは、決して珍しい選択ではありません。ずれが少ない骨折や高齢者の骨折では、保存療法が第一選択となることも多くあります。

一方で、関節内骨折や大きなずれを伴う骨折では、手術をしないことで将来的な痛みや変形、機能障害のリスクが高まることもあります。メリットだけでなく、保存療法の限界も理解したうえで選択することが重要です。

自分の優先順位(痛み・見た目・生活)を整理する

  • 痛みをどこまで許容できるか

  • 手首の見た目がどの程度気になるか

  • 仕事や家事・趣味にどのタイミングで復帰したいか

  • 手術や麻酔への不安の強さ

といった「自分にとって大事なこと」を事前に整理しておくと、診察室での話し合いが格段にスムーズになります。

最後は主治医と話しながら納得して選ぶことが重要

本記事の内容は、あくまで一般的な傾向やガイドラインに基づいた情報であり、個々の患者さんの診断・治療方針を直接決めるものではありません。

  • 現在の骨折の状態(レントゲン・CT所見)

  • これまでの経過

  • 全身状態や生活背景

は一人ひとり異なります。

不安や疑問は遠慮なく主治医に伝え、「自分はこういう点を大切にしたい」と率直に相談しながら、納得のいく治療方針を一緒に決めていただければと思います。必要に応じてセカンドオピニオンを活用することも、後悔の少ない選択につながります。