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所定外労働時間とは?時間外労働との違いと残業代の線引き完全ガイド

勤怠締めや給与計算のタイミングで、「所定外」「時間外」「法定内残業」「残業」という言葉が入り混じり、社内で説明がぶれてしまうことは少なくありません。とくに「所定外なのに割増が付かないのは問題では?」「月45時間の上限は所定外の話?」「36協定の管理対象はどれ?」といった疑問は、判断を誤ると未払い残業や集計ミスにつながりやすい領域です。

本記事では、所定労働時間と法定労働時間の違いを起点に、所定外労働時間の正しい位置づけを整理し、割増賃金が必ず必要になる境目、36協定・上限規制で管理すべき時間の考え方を、具体例と比較表で分かりやすく解説します。読み終えた時点で、「自社の勤怠項目と給与計算の定義をどう揃えるべきか」「社内からの問い合わせにどう説明すべきか」が迷いなく判断できる状態を目指します。

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目次

所定外労働時間とは何か

「所定外労働時間」と聞くと、残業のことだと直感的に思うかもしれません。
ところが、勤怠管理や給与計算では「どの基準を超えたか」で扱いが変わります。
ここを曖昧にしたまま運用すると、割増賃金の未払いや、36協定・上限規制の集計ミスにつながりやすくなります。

まず押さえたいのは、労働時間には大きく次の2種類の“ものさし”があることです。

  • 所定労働時間:会社が就業規則や雇用契約で定める労働時間(会社ごとに違う)

  • 法定労働時間:法律が定める上限(原則1日8時間・週40時間)

所定外労働時間の理解は、この2つの関係を押さえるところから始まります。

所定労働時間と法定労働時間の違い

所定労働時間は、会社が独自に決められます。例えば「実働7時間(9:00〜17:00、休憩1時間)」の会社もあれば、「実働8時間」の会社もあります。

一方、法定労働時間は法律上の上限です。原則として、休憩時間を除き1日8時間・週40時間が基準になります。

この違いが重要なのは、次のような“境目”を生むからです。

  • 所定労働時間を超える → 所定外(社内の区分)

  • 法定労働時間を超える → 時間外労働(法律上の区分)

つまり、「所定外=ただちに法律上の時間外」ではありません。所定外の中には、法定内に収まる時間が混ざることがあります。

所定外労働時間の意味がズレる場面に注意する

実務で「所定外労働時間」は、一般に「所定労働時間を超えて働いた時間」を指して使われます。

ただし、統計(毎月勤労統計)の用語としては、「所定外労働時間数」に早出・残業・臨時の呼出に加えて休日出勤なども含む形で説明されることがあります。

このズレが起きると、例えば次のような混乱が生まれます。

  • 社内では「所定外=所定超過(平日残業)」のつもりだったが、資料では休日出勤も“所定外”に含めて集計してしまう

  • 勤怠システムの項目名が「所定外」だが、実際は「法定外(時間外)」を指す設定になっている

したがって、この記事では次の方針で整理します。

  • 所定外(社内区分):所定労働時間を超えた時間

  • 時間外(法律区分):法定労働時間を超えた時間(=法定時間外労働)

  • 休日労働・深夜労働は別軸で重なり得る(割増や集計で重要)


所定外労働時間と時間外労働の違いを一発で判定する

ここが最も混乱が多いポイントです。用語が似ているうえ、「残業」という言葉が両方をまとめて指すことがあるからです。

まずは、境目を“判定の手順”として固定しておくと迷いが減ります。

判定の順番は「所定→法定→休日→深夜」

勤怠・給与の実務で迷わないための判定は、次の順番で考えるのが安全です。

  1. 所定労働時間を超えたか(超えていれば所定外)

  2. 法定労働時間を超えたか(超えていれば法律上の時間外労働)

  3. 休日労働か(法定休日なら割増や36協定の管理に影響)

  4. 深夜(22〜5時)か(深夜割増が重なる可能性)

この「何を超えたか」を先に確定させると、割増賃金が必要な部分、36協定の管理対象が見えやすくなります。

法定内残業と法定外残業を混ぜない

残業は大きく2つに分かれます。

  • 法定内残業:所定労働時間は超えるが、法定労働時間(1日8時間・週40時間)以内

  • 法定外残業:法定労働時間を超える(=時間外労働)

ポイントは、法定内残業が“所定外”として発生していても、法律上の「時間外労働」ではないことです。
そして、36協定・上限規制の枠組みは、基本的に「時間外労働(法定超)」を中心に理解します。


所定外労働時間の用語比較表で迷いを止める

ここでは、用語を一枚の表で固定します。社内マニュアルや給与計算の説明資料に、そのまま転記できる形を意識しています。

用語・基準の比較表

用語 基準(何を超えるか) 代表例 割増賃金の必須性 36協定・上限規制の主な管理対象
所定労働時間 会社が定める 実働7時間、8時間など
法定労働時間 法律が定める上限(原則1日8時間・週40時間) 8時間/40時間基準
所定外労働時間(社内用語) 所定労働時間を超える 17:00以降の勤務など 規程次第(法定内なら必須ではない場合) 社内管理として対象にすることは多い
法定内残業 所定超だが法定内 所定7時間の会社で7〜8時間目 規程次第 原則は上限規制の「時間外」ではない
時間外労働(法定時間外) 法定労働時間を超える 8時間超、週40時間超 原則必須 主対象
休日労働 法定休日に労働 週1日の法定休日出勤 原則必須 時間外と合算して管理する場面あり
深夜労働 22:00〜5:00 夜間の勤務 原則必須 別軸で重なる

注:統計上の「所定外」は休日出勤等を含む説明もあるため、社内運用では上表の定義を“自社基準”として固定するのが安全です。


具体例で理解する所定外と時間外の線引き

ここからは、典型例を複数出します。社内説明で最も使われるのは、実はこの「ケース表」です。

ケース別の区分表(所定7時間の会社で9時間働いた)

前提:所定労働時間=7時間、休憩は別

実労働の内訳 区分 法律上の時間外か 割増賃金 36協定の主対象か
7時間まで 所定内 いいえ なし いいえ
7時間超〜8時間まで(1時間) 所定外(法定内残業) いいえ 規程次第 原則いいえ
8時間超(1時間) 時間外労働(法定外) はい 原則必要 はい

この表で伝えるべき核心は、「同じ残業でも“割増が必ず必要な部分”と“会社の規程で決まる部分”が混在する」点です。

ケース別の区分表(所定8時間の会社で9時間働いた)

前提:所定=法定と一致(実務で多い)

実労働の内訳 区分 法律上の時間外か
8時間まで 所定内 いいえ
8時間超(1時間) 時間外労働 はい

この場合、所定外が発生した時点で法定外(時間外)になり、区分はシンプルです。

週40時間超で「週単位の時間外」が出る例に注意する

日ごとに8時間を超えていなくても、週の合計が40時間を超えると、週単位で時間外労働が発生することがあります(制度・勤務形態によって判断が必要です)。法定労働時間は「1日」と「週」の両方の上限を持つため、日次だけ見ていると集計ミスが起きます。

社内でよくある事故は次のとおりです。

  • 日次で8時間を超えないため、割増が不要だと処理した

  • 週合計40時間超が出ていたのに、時間外として集計していなかった

  • 36協定の実績管理と給与計算の実績が一致しない

週単位の判断が絡む働き方(シフト・変形・繁閑差が大きい職場など)では、勤怠システムの集計条件を必ず点検してください。


所定外労働時間に残業代は付くのかを誤解なく整理する

ここは、問い合わせが最も多い論点です。「所定外なのに割増が付いていない。違法では?」という疑問が代表例です。

結論から言うと、所定外労働時間のすべてに、法律上の割増賃金が必ず付くわけではありません。割増の要否は、主に次の3つの条件で決まります。

  1. 法定労働時間を超えたか(時間外)

  2. 法定休日の労働か(休日労働)

  3. 深夜帯か(深夜労働)

割増賃金が「必ず必要」になる典型パターン

  • 法定労働時間超の時間外労働:割増賃金が必要(一般に25%以上)

  • 法定休日の労働:割増賃金が必要(一般に35%以上)

  • 深夜(22時〜5時)の労働:割増賃金が必要(一般に25%以上)

割増率の細部は、就業形態や重複計算の設計によって差が出るため、必ず自社の賃金規程・勤怠設定で確認してください。

割増が「規程次第」になりやすいパターン(法定内残業)

所定労働時間を超えていても、法定労働時間の範囲内(法定内残業)であれば、法律上の「時間外労働」ではありません。したがって、割増の要否は、賃金規程(所定外手当を設けるか、通常賃金で支払うか等)の設計に委ねられる部分が残ります。

ここで重要なのは、「割増が必須かどうか」だけでなく、社内説明に耐えるルールとして書面化されているかです。賃金規程に根拠がないまま運用でブレると、労務トラブルになりやすいからです。

休日労働と深夜労働が重なるときの考え方

休日や深夜が絡むと、勤怠項目が増えて混乱しがちですが、考え方はシンプルです。

  • 休日の要素(法定休日かどうか)

  • 深夜の要素(22〜5時かどうか)

  • 時間外の要素(法定超かどうか)

これらが“重なる”可能性があり、給与計算は会社の規程・システム設定(端数処理、重複計算の方法)に大きく依存します。特に、同じ時間帯を二重に計上してしまう誤設定、逆に深夜を落としてしまう設定はよくあるため、チェック項目を後述します。


月60時間超の時間外労働と割増率の注意点

「月60時間を超えると割増が変わる」という話は、現場にも浸透してきました。ただし、ここは更新点があるため、必ず押さえてください。

中小企業も2023年4月1日から月60時間超は50%以上

1か月に60時間を超える時間外労働(超えた部分)については、中小企業も2023年4月1日から割増率50%以上が必要です。

したがって、次の点検が重要です。

  • 自社が中小企業に該当するか(該当性の判断は制度により基準が異なるため、公的資料で確認)

  • 給与計算ソフト・勤怠システムで「月60超」の集計条件が正しいか

  • 60時間の対象が「時間外労働(法定超)」で集計されているか(所定外全体を足していないか)

「所定外」という言葉に引っ張られて集計範囲を誤ると、未払いの原因になります。


所定外労働時間と36協定・上限規制の関係を正しく理解する

所定外を説明しているのに、なぜ36協定や上限規制を扱うのか。理由は単純で、勤怠・給与で事故が起きるのは「線引きが曖昧で、管理対象を混ぜてしまう」時だからです。

36協定と上限規制は、原則として「法定労働時間を超える時間外労働」を中心に管理します。厚労省の整理では、時間外労働の上限規制として、原則と特別条項の枠が明確に示されています。

36協定が必要になるのはどの時間か

一般に、法定労働時間を超えて労働させる場合や、休日に労働させる場合は、36協定の締結・届出を前提に整理します(適用関係・例外は働き方や制度により差が出ます)。

社内で最も起きやすい誤解は、次の2つです。

  • 「所定外=全部36協定の対象」

  • 「月45時間は所定外の上限」

上限規制の原則(月45・年360)などは、主に時間外労働(法定超)として理解する必要があります。

上限規制の主要数値を“集計の言葉”に翻訳する

厚労省のページでは、上限規制の骨格が次のように示されています。

  • 原則:月45時間以内・年360時間以内

  • 特別条項(臨時的な特別の事情がある場合)でも、例えば

    • 時間外労働:年720時間以内

    • 時間外+休日労働:月100時間未満

    • 時間外+休日労働:複数月平均80時間以内

    • 月45時間超ができるのは年6か月まで

ここで実務上のポイントは、「時間外+休日」という合算管理が入り、所定外(社内の残業全体)と一致しないことがある点です。
勤怠システムの集計項目を次のように分けておくと、混乱が減ります。

  • A:所定外(社内管理用:所定超)

  • B:時間外(法定超:36協定・上限規制の中核)

  • C:休日労働(法定休日、所定休日の区別があるならさらに分ける)

  • D:深夜(割増要素)


変形労働時間制など「制度がある職場」の注意点

同じ「所定外」「時間外」の言葉でも、変形労働時間制などの制度がある場合は、判定の前提が変わることがあります。ここは無理に一般化せず、運用上の注意点を押さえるのが安全です。

日・週・期間平均で判断が変わることがある

法定労働時間の考え方は、制度設計によって「日」「週」「一定期間の平均」など判断軸が絡むことがあります。厚労省も労働時間制度の説明を提供しており、制度要件を満たしているかで、時間外の計算や管理の仕方が変わります。

制度がある職場で起きやすいトラブルは以下です。

  • 変形の前提を満たしていないのに、変形扱いで時間外を減らしてしまう

  • 就業規則・労使協定・シフト表の整合が取れていない

  • 勤怠システムの集計ロジックが制度に追随していない

制度が絡む場合は、「制度要件→就業規則/協定→勤怠設定→給与計算」の順に点検してください。社内だけで判断が難しい場合は、専門家への確認も選択肢になります。


勤怠・給与で迷わないための実装チェックリスト

ここからが、現場の“事故”を減らすための実装パートです。用語理解だけで終わらせず、勤怠設定と賃金規程を揃えることが最大の防御になります。

勤怠項目の定義を社内で統一するチェックリスト

以下を、就業規則・賃金規程・勤怠システム(項目名と計算式)の3点セットで一致させます。

  • 所定労働時間(所定の1日・週、休憩の扱い)

  • 所定外(所定超)の範囲:日次での扱い/週次での扱い

  • 時間外(法定超)の範囲:日8時間超/週40時間超の集計条件

  • 法定内残業の賃金:割増の有無、手当名、計算根拠(規程条文)

  • 休日労働:法定休日と所定休日の区別、振替休日/代休の扱い

  • 深夜:22〜5時の判定、時間外・休日との重複計算ルール

  • 端数処理:分単位、15分単位、切上げ/切捨て、集計の単位

  • 月60時間超:対象範囲が「時間外(法定超)」で集計されているか

  • 36協定の実績管理:上限規制の指標(時間外/休日合算)が取れるか

申請・承認フローで起きやすいトラブルと対策

制度より運用で揉める典型例を挙げます。

  • 申請がない残業は計上しない:実態として働いていれば、労働時間として扱う必要が出る可能性があります。申請漏れの是正フロー(事後申請・上長確認・再発防止)を用意します。

  • チャット対応・持ち帰り対応:業務指示や黙示の期待がある場合、労働時間性が争点になり得るため、ルールを明文化します。

  • 管理職運用の例外:管理監督者の該当性は肩書きだけでは決まらず、要件判断が必要になります。安易に残業計算から外すとリスクが高まります(制度設計・法令整理が必要)。

  • 36協定の集計対象の混在:所定外(社内残業)と時間外(法定超)を混ぜて報告し、上限規制の数値が合わなくなる事故が起きます。集計項目を分離し、報告の“数字の意味”を固定します。


よくある質問

所定外労働時間は違法ですか

所定外労働時間そのものが直ちに違法というわけではありません。問題になるのは、法定労働時間を超える時間外労働や休日労働をさせる際の手続(36協定・上限規制の遵守)や、割増賃金の支払いなど、法律上の要件を満たしているかどうかです。

所定外労働時間は残業時間と同じですか

会話上は「所定外=残業」と言われることがありますが、実務では、所定外の中に法定内残業が含まれる場合があり、法律上の「時間外労働(法定超)」と一致しないことがあります。給与計算や36協定の管理では、どの基準を超えた時間なのかを分けて扱うのが安全です。

所定外の上限は月45時間ですか

「月45時間」は、上限規制の原則として示される数値で、主に時間外労働(法定超)の枠組みで理解します。所定外(所定超)をそのまま45時間と同一視すると、集計対象がズレる場合があります。まず自社の所定外・時間外の定義を固定し、上限規制の管理対象(時間外・休日合算など)で実績を見てください。

変形労働時間制の場合はどう考えますか

変形労働時間制では、日や週だけでなく一定期間の平均など、制度要件に沿った判断が必要になることがあります。就業規則・労使協定・シフト・勤怠設定が整合していないと、時間外の判定が崩れます。制度が絡む場合は、厚労省の説明や専門家の確認も含めて点検すると安全です。


まとめ

所定外労働時間は「所定労働時間を超えた時間」として使われるのが一般的ですが、割増賃金や36協定・上限規制の管理で中心になるのは「法定労働時間を超える時間外労働」です。
混乱を防ぐ鍵は、所定外(社内基準)と時間外(法定基準)を分離して集計し、賃金規程・勤怠設定・運用フローを同じ定義で揃えることです。特に月60時間超の割増(中小企業も2023年4月1日から50%以上)など、重要な更新点は給与設定に直結するため、早めの点検が有効です。


参考にした情報源