※購入先、ダウンロードへのリンクにはアフィリエイトタグが含まれており、それらの購入や会員の成約、ダウンロードなどからの収益化を行う場合があります。

社会保険の20時間を超えたり超えなかったりする時の加入判定と対策

「今週は22時間、来週は19時間」。シフト制の職場では、週20時間を境に勤務時間が上下することが珍しくありません。すると労務・給与担当としては、「社会保険に入れるべきか」「残業や繁忙期の増加も20時間に含むのか」「2か月続いたらいつから手続きが必要か」といった不安が一気に押し寄せます。
しかも判断を誤ると、加入漏れによる手続きのやり直しや、従業員への説明トラブルにつながりかねません。

本記事では、社会保険の“週20時間”をどう見ればよいのかを、原則の所定労働時間から、週で定まらない場合の換算、契約が20時間未満でも実態が続くときの例外(2か月連続→3か月目の扱い)まで、判断の順番に沿って整理します。さらに、勤怠の集計ルール、契約書面の整備ポイント、従業員に揉めずに伝える説明テンプレまで、社内でそのまま使える形でまとめました。

※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。

目次

社会保険の20時間は誰にでも関係するわけではない

対象事業所かどうかで話が分かれる

「週20時間」は、すべての会社・すべてのパートに無条件で適用される話ではありません。短時間労働者の社会保険加入が問題になるのは、まず適用拡大の対象となる事業所(特定適用事業所等)である場合です。2024年10月からは従業員数(厚生年金の被保険者数)51~100人の企業等にも拡大されました。

また、規模要件を満たさない企業でも、労使合意等により「任意特定適用事業所」として、同じ加入要件を採用することもあります。

ここを曖昧にしたまま「週20時間だから加入だ」と話を進めると、社内で誤案内が起きやすくなります。最初の一歩として、次を確認してください。

  • 自社が「特定適用事業所(適用拡大の対象)」に該当しているか

  • あるいは「任意特定適用事業所」として申し出をしているか

まず見る順番早見表

以下の順番で見れば、判断が崩れにくくなります。

手順 何を確認するか 具体的に見るもの 次のアクション
1 対象事業所か 規模要件・任意特定適用の有無 対象なら手順2へ
2 短時間労働者要件 週20時間、8.8万円、雇用見込み、学生除外 手順3へ
3 所定労働時間の確定 契約書面、週換算(52/12等) 手順4へ
4 例外(実態)監視 実労働が2か月連続で週20時間以上か 該当なら手順5へ
5 手続きと説明 資格取得の準備、従業員説明 監査耐性を作る

※2~4が今回の「20時間が揺れる」論点の核心です。


社会保険の週20時間は実労働ではなく所定労働時間で見る

所定労働時間とは何か 雇用契約書と労働条件通知書

日本年金機構は、短時間労働者の要件として「週の所定労働時間が20時間以上」であることを示し、所定労働時間を「就業規則、雇用契約書等により、通常の週に勤務すべき時間」と整理しています。

実務でいう「通常の週に勤務すべき時間」とは、たとえば次のように“契約書面で固定された勤務の姿”です。

  • 週5日×1日4時間=週20時間

  • 週4日×1日5時間=週20時間

  • 週3日×1日6時間=週18時間(20未満)

ここで重要なのは、シフト表そのものではなく、雇用契約書・労働条件通知書・就業規則などの「労働条件を定める書面」が判断の根拠になるという点です。シフトが変動しても、契約が固定なら“所定”は基本的に動きません。

残業や一時的な超過が原則カウントされない考え方

適用拡大の案内では、「週の所定労働時間」は契約上の所定労働時間であり、「臨時に生じた残業時間は含まない」旨が示されています。

つまり、次のような“単発の上振れ”だけで毎週のように加入・未加入が入れ替わるのが制度の想定ではありません。

  • たまたま欠員で1週だけ残業が増えた

  • 棚卸しで一時的に勤務が伸びた

  • イレギュラー対応で当日延長が続いた(ただし短期)

ただし、残業が「臨時」ではなく常態化し、実態として毎週の勤務が20時間を超え続けるなら、次に説明する「例外運用(実態が継続する場合)」が問題になります。

短時間労働者の加入要件 20時間以外も必ずセットで確認

短時間労働者として社会保険の加入対象となる要件は、週20時間だけではありません。日本年金機構は、少なくとも次を“すべて満たすこと”として整理しています(対象事業所である前提)。

  • 週の所定労働時間が20時間以上

  • 所定内賃金が月額8.8万円以上

  • 2か月を超える雇用の見込みがある

  • 学生ではない

このうち現場で混乱しやすいのが「所定内賃金8.8万円」の中身です。適用拡大の案内では、残業代・賞与・臨時的賃金等は含めない整理が示されています。


20時間を超えたり超えなかったりするケース別の判定フロー

ケース別判定早見表

まず全体像を表で押さえます(他要件を満たす前提で「20時間」の論点を整理)。

契約上の所定(週換算) 週で定まるか 実労働の状況 加入判断の目安 まずやること
20時間以上 定まる 週によって19~22などブレ 原則加入(契約基準) 契約書面の根拠固定、説明準備
20時間未満 定まる 単発で超える週がある 原則未加入(臨時超過は除外) 残業を所定と混同しない
20時間未満 定まる 2か月連続で週20以上+継続見込み 3か月目から加入扱い 週次集計・契約見直し検討
月/年/周期で決定 定まらない 月ごとに長短がある 週換算で所定を確定して判断 52/12等で計算、例外月除外

根拠となる考え方(週換算・例外運用)は一次情報で示されています。

契約が週20時間以上なら 基本は加入として運用を安定させる

契約書面(雇用契約書、労働条件通知書等)で週20時間以上が定まっている場合、実績がたまたま19時間台になった週が混ざっても、運用としては「加入前提」で安定させるほうが実務的です。理由は単純で、加入・未加入を週ごとに頻繁に切り替える運用は、手続き・給与控除・説明・証跡管理のいずれも破綻しやすいからです。

ブレが出る代表例は、祝日・店休日・欠勤・短縮営業など「一時的に実績が落ちる」パターンです。これを理由に毎月の扱いを変えると、現場の説明が追いつかず、むしろトラブルの火種になります。

契約が20時間未満でも実労働が続くと加入になる 2か月連続→3か月目

ここが今回の検索キーワードの核心です。厚生労働省の適用拡大ページでは、次の扱いが明確に示されています。

  • 契約上20時間に満たない場合でも、実労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、

  • なお引き続くと見込まれる場合には、

  • 3か月目から保険加入とする

このルールが重要なのは、「契約が未整備のまま実態だけが先に変わる」現場で加入漏れが起きやすいからです。シフト増が“たまたま”なのか“定着”なのかを、勤怠で客観的に把握しない限り、担当者の主観でブレます。

2か月連続を“漏れなく検知”するための勤怠ルール

運用のコツは、次の2点を先に固定することです。

  1. 週の起算日を固定する(例:月曜~日曜)

  2. 週次集計を標準化する(全員同じロジックで集計)

そのうえで、たとえば次のようなアラート条件を設定します。

  • 「週20時間以上が8週連続(概ね2か月)」でアラート

  • 「直近4週平均が20時間以上」も補助指標(契約見直しの検討材料)

一次情報は「2か月連続」「継続見込み」「3か月目加入」を示しているため、現場側は“検知の仕組み”を用意するのが実装として妥当です。

具体例で理解する(判断の境界)

  • 例1:単発の上振れ(加入判断は変えにくい)

    • 1週だけ22時間、その後は18~19時間に戻る
      → 「臨時」扱いとして、まずは契約・所定を基準に整理

  • 例2:繁忙期が2か月続き、終了時期が見えない(例外運用の射程)

    • 5月:毎週21~23時間

    • 6月:毎週20~22時間

    • 7月:同様のシフトが予定されている
      → 2か月連続+継続見込みがあるため、3か月目から加入の扱いを検討し、契約整備へ

  • 例3:2か月連続だが、3か月目は明確に落ちる予定(継続見込みが鍵)

    • 5~6月:繁忙期で増える

    • 7月:繁忙期が終わり週16時間に戻ることが確定
      → 継続見込みが乏しいため、例外運用に該当しにくい(ただし個別事情で確認)

※“継続見込み”は会社側のシフト計画・業務見通し・本人希望など客観材料とセットで整理してください。

週で定まらない場合の換算 月単位 年単位 周期変動

「週◯時間」と契約していない場合、所定労働時間を週に換算して判断します。日本年金機構は、週単位で定まっていない場合の算定方法を明示しています。

  • 1か月単位で定められている場合
    1か月の所定労働時間 ÷(52/12)で算定(= 12分の52で割る)

  • 1年単位で定められている場合
    1年の所定労働時間 ÷ 52で算定

  • 短期的かつ周期的に変動する場合
    周期における1週間の所定労働時間の平均で算定

  • 特定月だけ例外的に長短がある場合
    その特定月を除いて算定する考え方がFAQに示されています。

計算例(これだけで社内が動きやすくなる)

  • 月の所定労働時間が「90時間」の場合

    • 90 ÷(52/12)= 90 ÷ 4.333… = 約20.8時間/週
      → 週20時間以上として整理

  • 年の所定労働時間が「1000時間」の場合

    • 1000 ÷ 52 = 約19.2時間/週
      → 週20時間未満として整理

ここまで計算できると、「シフトがブレる」のではなく「所定(契約の設計)がどうなっているか」に議論を戻せます。


会社側の手続きと運用 いつ何を直すと安全か

雇用契約の見直しポイント 記載例と変更タイミング

20時間ラインが揺れる職場で最も事故が起きるのは、「実態が変わったのに契約書面が古い」ケースです。例外運用(2か月連続)に該当しそうな兆候が出たら、契約整備の検討に入るのが安全です。

見直しの起点(実務で使えるトリガー)

  • 週20時間以上が2か月連続し、今後も続く見込みが立った

  • 本人の希望で勤務が固定的に増える(週4→週5など)

  • 業務量・営業時間の変更で、恒常的な人手不足が見込まれる

  • 残業が“臨時”ではなく常態化している

記載の考え方(ひな形ではなく「押さえるべき要点」)

  • 週で固定するなら:
    「週◯日、1日◯時間(週◯時間)」を明記

  • 月で固定するなら:
    「1か月の所定労働時間◯時間。週換算は12分の52で算定」

  • 周期変動なら:
    「◯週を1周期とし、周期平均で週所定を算定」

重要なのは、週換算の方法を社内で固定し、説明可能な形で残すことです。監査や問い合わせがあっても、「制度根拠(一次情報)→社内ルール→個別計算」の順で説明できます。

シフト設計のルール化 20時間前後の運用方法

現場が混乱しないためには、「20時間未満で運用する人」と「20時間以上で運用する人」を、最初から設計で分けるのが効果的です。ここでいう設計とは、本人の働き方希望だけでなく、店舗の人員計画と制度運用を両立させるルールです。

ルール例(シフト作成者に渡せる粒度)

  • 「20時間未満枠」の人

    • 週の上限目安:19.0~19.5時間

    • 例外的に増やす場合:翌週以降で必ず調整、単発の棚卸し等に限定

  • 「20時間以上枠」の人

    • 週20~25時間程度のレンジで固定し、欠勤等が出ても運用は変えない

  • アラート発火時(週20以上が8週連続など)

    • 労務へ自動通知 → 契約見直し要否の協議へ

この設計により、「現場が善意でシフトを増やした結果、後で制度面の説明がつかない」という事故を避けられます。

加入手続きの流れ 社内チェックと相談先

政府広報オンラインは、適用拡大に備える社内準備として、対象者把握・説明・相談窓口活用などを示しています。
実務では、次のような“証跡が残るチェックリスト”に落とし込むと強いです。

社内運用チェックリスト(証跡つき)

  • 対象事業所の確認(規模・任意特定適用の有無)

  • 対象者の抽出

    • 週20時間(週換算含む)

    • 所定内賃金8.8万円(含まない賃金の除外)

    • 2か月超の雇用見込み

    • 学生該当性

  • 例外運用監視

    • 実労働が2か月連続で週20時間以上+継続見込み

  • 契約書面の更新(変更が必要な場合)

  • 従業員説明(書面配布+質疑応答の記録)

  • 手続きの段取り(提出先・期限・給与控除開始日の整合)

“やったかどうか”だけでなく、“何を根拠に判断したか”が残る形にしておくと、後から担当が変わっても運用が崩れません。

従業員への説明テンプレ 伝える順番と誤解の潰し方

説明で揉める典型は、「手取りが減る話」だけが先に出てしまうことです。順番を固定して、誤解が起きやすい点を先回りして伝えます。

説明テンプレ(配布文の構成例)

  1. 判断の基準:週20時間は原則、契約上の所定労働時間で見ます。

  2. 週換算の考え方:週で定まらない場合は、月/年/周期で計算して週の所定を決めます(52/12等)。

  3. 例外運用:契約が20時間未満でも、実労働が2か月連続で週20時間以上となり、今後も続く見込みがある場合は3か月目から加入扱いです。

  4. 加入条件は20時間だけではない:8.8万円、雇用見込み、学生区分なども確認します。

  5. 今後の運用:シフトや契約が変わったときは再確認します。相談窓口も案内します。

よくある誤解への一言(現場で効きます)

  • 「今週だけ20時間超えたら即加入?」
    → 原則は所定(契約)です。単発の超過だけで扱いを頻繁に変えるのではなく、継続性と見込みを見ます。

  • 「残業が多いから所定も20時間超え扱い?」
    → 臨時の残業は所定に含めない整理です。ただし常態化するなら契約設計の見直しが必要です。


雇用保険の20時間と混同しないための比較

雇用保険の加入要件は厚労省Q&Aで押さえる

「20時間」という数字が同じため、社会保険と雇用保険が混同されがちです。雇用保険について厚生労働省Q&Aは、加入要件を次のように整理しています。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上

  • 31日以上の雇用見込みがある

社会保険(健康保険・厚生年金)とは制度が別で、届出先も異なります。混同防止のため、比較表で整理します。

社会保険と雇用保険の要件比較表

項目 社会保険(短時間労働者の適用拡大) 雇用保険
20時間の基準 週の所定労働時間(週換算含む) 週の所定労働時間
継続性の考え方 実労働が2か月連続で週20時間以上+継続見込みなら3か月目加入 31日以上の雇用見込み
追加要件 所定内賃金8.8万円、学生除外等 上記2要件が中心(例外あり)
届出・相談先 社会保険の手続き(年金・健保等) ハローワーク
運用のコツ 契約書面と週換算の固定、2か月連続の検知 契約所定と雇用見込みの管理

よくある質問 20時間ラインで揉めないために

今週だけ超えたら加入ですか

原則は契約上の所定労働時間で判断します。臨時に生じた残業時間は含めない整理が示されています。
ただし、超過が継続して実態として変わっているなら、2か月連続の考え方を確認してください。

2か月連続の「月」はどう数えますか

一次情報は「実労働時間が2か月連続で週20時間以上」と整理しているため、実務では「週次集計」を前提にし、概ね8週連続を目安に管理すると漏れにくくなります。
最終的には、週の起算日と集計ロジックを社内で固定し、継続見込みの根拠(シフト計画等)も合わせて記録してください。

月単位でしか決めていない場合はどうしますか

月単位で所定が定められている場合、1か月の所定労働時間を「12分の52」で割って週換算します。
特定月だけ例外的に長短がある場合は、その月を除いて算定する考え方も示されています。

8.8万円には何が含まれますか

適用拡大の案内では、残業代や賞与、臨時的な賃金等は含めない整理が示されています。
給与項目が多い会社ほど判定ミスが起きるため、社内の賃金項目を「含む/含まない」に仕分けした表を一度作ると安定します。

雇用保険も同時に入りますか

雇用保険は別制度で、加入要件は「週20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込み」です。
社会保険の話と混ぜず、雇用見込み(31日)と届出先(ハローワーク)を分けて管理してください。


まとめ 社会保険の20時間が揺れるときは判断の順番を固定する

今日からできる要点整理

  • まず「対象事業所か」を確認し、その上で短時間労働者要件(週20時間など)を検討します。

  • 週20時間は原則「所定労働時間(契約)」で見ます。週で定まらない場合は、月/年/周期で週換算して確定させます。

  • 契約が20時間未満でも、実労働が2か月連続で週20時間以上となり継続見込みがあれば、3か月目から加入扱いです。

  • 現場で漏れないためには「週次集計(起算日固定)」「アラート設計」「契約整備」「説明テンプレ」の4点セットが効きます。

制度は改定があり得ます。社内ルール(週換算、アラート、説明文)は、少なくとも年1回は一次情報で更新確認してください。


参考情報源