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社員旅行の経費はどこまでOK?福利厚生費の条件と否認されない準備

社員旅行の費用は「経費で落ちる」と思われがちですが、設計を誤ると給与課税(現物給与)や交際費扱いになり、後から大きな手戻りが発生することがあります。
特に迷いやすいのが、4泊5日・参加割合・少額不追求・家族同伴や取引先混在といった“グレーになりやすい条件”です。
本記事では、国税庁の一次情報を軸に、福利厚生費として処理できる判断ポイントを判定フローで整理し、混在ケースの分離・按分、税務調査で否認されないための証憑パッケージまで、実務担当者がそのまま使える形で解説します。

※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。

目次

経費化判定フロー

社員旅行の経費化は、次の流れで判断すると迷いが減ります。

  1. 日数:原則として4泊5日以内か(海外は現地滞在日数)

  2. 募集:全従業員を対象に募集しているか(特定者だけの褒賞旅行になっていないか)

  3. 参加割合:原則50%以上か。ただし50%未満でも課税しない例が示されているため、条件のセットで判断する

  4. 内容の一般性:社会通念上一般的なレクリエーション旅行と言えるか

  5. 費用の水準:少額不追求の趣旨を逸脱していないか(高額化・家族混在は要注意)

  6. 混在の有無:取引先・家族・研修・延泊など、目的が混ざっていないか(混ざるなら分離・按分)

このうち、①②④⑤⑥を押さえた上で③(参加割合)を扱うと、判断が安定します。
参加割合は数字だけで決め切るより、「募集の公平性」「規程の存在」「内容・費用の妥当性」とセットで語れるかが重要です。


社員旅行が福利厚生費になるための基本ルール

税務上の大枠は、「使用者が負担するレクリエーション行事の費用が、社会通念上一般的に行われる範囲であれば、従業員が受ける経済的利益として強いて課税しない」という考え方です。これは所得税基本通達でも示されており、社員旅行はその代表例です。

ただし、社員旅行は“旅行”という性質上、私的要素が混ざりやすく、金額も大きくなりがちです。そのため国税庁は、社員旅行(従業員レクリエーション旅行)について具体的な判断要素や目安、具体例を示しています。

国税庁が示す目安と、誤解しやすいポイント

国税庁No.2603では、社員旅行に関して次の目安が示されています。

  • 旅行期間:4泊5日以内(海外旅行は目的地での滞在日数)

  • 参加割合:50%以上(工場・支店等単位の場合はその単位で50%以上)

ここで誤解しやすいのは、「50%未満は必ず課税」「金額が高いと必ずアウト」といった単純化です。実際には、社員旅行かどうかの判定は旅行内容を総合的に勘案して行う、と明記されています。さらにQ&Aでは、福利厚生規程に基づき全従業員に募集した上で、参加割合が38%のケースでも課税しない事例が示されています。

つまり、目安は重要ですが、最終的に問われるのは「会社が公平に募集し、一般的な行事として実施し、受ける利益が少額不追求の範囲である」という説明が成り立つかです。


経費化判定チェック表で自社プランを確認する

以下の表は、企画段階で“赤信号”を早期に見つけるためのチェック表です。社内稟議・経理確認・旅行会社との見積調整に、そのまま転用できる形にしております。

表B:社員旅行を福利厚生費にしやすい判定チェック表

チェック項目 判断基準の目安 OK例 要注意・NG例
日数 4泊5日以内(海外は現地滞在日数) 国内2泊3日、海外現地3泊 5泊6日以上、延泊が実質メイン
募集の公平性 原則として全従業員を対象に募集 全社メール+掲示+申込締切 役員・一部部署のみ、成績上位者のみ
参加割合 原則50%以上。ただし事情と条件により50%未満でも課税しない例あり 55%参加、または38%でも規程・募集・一般性が揃う 実質任意ではなく“特定者旅行”になっている
内容の一般性 観光・懇親中心で一般的 観光+懇親会 高級リゾートの特別待遇、私的娯楽が中心
費用の水準 少額不追求の趣旨を逸脱しない 会社負担額を抑え、説明可能 高額化+家族分混在(否認リスク上昇)
混在の有無 取引先・家族・研修・延泊が混ざる場合は分離・按分 家族分を別請求、取引先分を交際費 まとめ請求で内訳不明、費用の線引きなし
証憑の準備 規程・案内・名簿・行程・見積・精算内訳が揃う タイミング別に保存 クレカ明細だけ、参加率の母数不明

この表で「要注意・NG例」に寄る項目が2つ以上ある場合、経費化を“狙う”より先に、設計(内容・募集・内訳)を修正する方が結果的に安全です。


旅行日数の考え方を間違えると一気に危険になる

日数は、最も客観的で、税務上も判断しやすい要素です。国税庁No.2603では、4泊5日以内が目安であり、5泊6日以上は社会通念上一般に行われている旅行とは認められないとして課税される、と示されています。

国内旅行は「宿泊数」でなく「泊日」で把握する

社内では「2泊3日」「3泊4日」といった表現を使いますが、税務上は「4泊5日以内」という形で示されています。企画書・行程表は、出発日と帰着日が一目で分かる形式にしておくと、後から説明がぶれません。

海外旅行は「現地滞在日数」が鍵になる

海外旅行の場合は、フライト時間や乗継の都合で移動日が長くなることがあります。国税庁の目安は「目的地での滞在日数」であるため、行程表上で「現地の宿泊数」「現地での活動日」を明確にしておくことが重要です。

延泊・個人旅行の付け足しがある場合の扱い

社員旅行に私的延泊を付けるケースは現場で起こりがちです。この場合、最低限次の線引きが必要です。

  • 会社負担は「会社行事としての部分」だけ

  • 延泊分は個人負担(会社の請求と分離)

  • 航空券等が一体で分離困難なら、合理的な按分根拠を準備

「会社負担の範囲が曖昧」になるほど、福利厚生としての説明は弱くなります。


参加割合は数字よりも「募集の設計」が効く

参加割合50%以上は重要な目安ですが、実務では「育休・休職・現場稼働」などで50%を割ることもあります。ここで重要なのは、単に参加者を増やすのではなく、「全従業員を対象に募集していること」「福利厚生としての設計が整っていること」を証拠で示せるかです。国税庁のQ&Aでは、福利厚生規程に基づき全従業員を対象に募集し、参加割合38%でも課税しない例が示されています。

参加割合の「母数」を曖昧にすると説明が崩れる

税務調査で問われやすいのは「参加率は何%か」そのものより、「母数は誰か」「なぜその母数なのか」です。例えば、次のような論点が出ます。

  • パート・アルバイトは対象か

  • 支店単位の開催なら、その単位の在籍者が母数か

  • 休職者・派遣社員はどう扱うか

最も安全なのは、「社内規程で対象者の定義を置く」「募集案内に対象者を明記する」「在籍者一覧(母数根拠)を保存する」の3点セットです。

50%未満になりそうな場合の現実的な調整策

無理に参加者を増やすより、次の調整が有効です。

  • 開催単位を見直す(全社→拠点単位、あるいは拠点単位→合同)

  • 日帰り・1泊へ短縮し、参加障壁を下げる

  • 開催時期を分散(繁忙期回避)

  • 参加費(従業員負担)の設計を見直す(高すぎると参加が落ちる)

「参加率が低い=即NG」と思い込み、証拠づくりを怠る方がリスクです。募集の公平性と規程の整備が、結果的に不安を減らします。


少額不追求と社会通念を「見積の形」に落とし込む

「少額不追求」「社会通念」は抽象的で、担当者が最も困るところです。ここは“見積の見える化”で前に進めます。

国税庁の具体例から分かる「分解の仕方」

国税庁No.2603には、旅行費用15万円(会社負担7万円)や旅行費用25万円(会社負担10万円)の例が示され、条件を満たす限り原則課税しなくてよいとされています。
したがって、見積段階で必ず次の3つを出してください。

  1. 1人当たり旅行費用(総額)

  2. 会社負担額

  3. 従業員負担額

この“分解”ができていないと、後から「家族分が混ざっていた」「オプションが会社負担になっていた」といった事故が起こります。

高額化が危険な理由を裁決事例で理解する

公表裁決事例では、慰安旅行の費用が高額で、家族分を含む点などが争点となっています(例:1人当たり約19万円、約45万円、約26万円など)。
ここから読み取れる実務上の教訓は次の通りです。

  • 高額それ自体が直ちに違法というより、「一般的な福利厚生行事」との距離が開く

  • 家族分が混ざると私的性格が強まり、説明が難しくなる

  • 特定者偏重(役員中心・一部のみ)と高額が重なると、さらに厳しく見られやすい

よって、「高額になりそう」と分かった段階で、会社負担の範囲を線引きし、内訳を分離する設計に切り替えるのが現実的です。


取引先・家族・研修が混ざるときの正しい処理

社員旅行の経費処理が難しくなる典型が「混在」です。ここを避けることは難しいため、最初から“混ざる前提で分ける”のが最も安全です。

取引先が混ざる場合は交際費の可能性が高い

取引先を招待したり、接待要素が強い行程(ゴルフ・会食中心など)が入ると、福利厚生というより交際費(接待交際費)の性格が強まります。実務的には、取引先分を請求段階で分けることが重要です。

  • 取引先分:交際費

  • 従業員分:社員旅行(福利厚生費)として成立するかを別途判定

“まとめて一括請求”にすると、後で分けられず詰みます。旅行会社に、最初から内訳を分けてもらうのが最もコストが低い対策です。

家族同伴は「家族分を会社負担しない」が基本線

家族分は従業員の私的性格が強く、会社負担にすると給与課税リスクが上がります。現実的な設計は次の通りです。

  • 従業員分:会社負担(福利厚生費を目指す)

  • 家族分:個人負担(別請求、または個人精算)

どうしても会社が一部負担するなら、その合理性(全員一律の上限、子どもだけ一部補助など)と、社内規程・運用実態が必要になります。曖昧な「なんとなく負担」は避けてください。

研修が中心なら研修費、慰安が中心なら福利厚生費

研修要素がある社員旅行は多いですが、「研修が形式だけ」だと逆に不利です。研修費で整理したいなら、研修実態が証拠で示せる必要があります。

  • 研修の目的

  • タイムテーブル(研修時間が明確)

  • 配布資料、議事録、成果物(レポート等)

  • 会場費、講師費など研修に直接紐づく支出

観光・懇親が中心であれば福利厚生費の枠組みで設計し、研修は“添え物”にしない方が安全です。混在するなら、研修部分を合理的に按分し、根拠資料を整えます。


条件を満たさない場合に起こることと、会社がやるべき対応

条件を外れた場合、従業員が受ける利益は給与課税(現物給与)となる可能性があります。ここで重要なのは、「経費で落ちない」だけでなく、源泉徴収・年末調整など会社側の実務が発生し得る点です。

給与課税(現物給与)になり得る典型パターン

  • 旅行期間が長い(5泊6日以上)

  • 参加者が特定者に偏る(役員のみ、褒賞旅行など)

  • 私的要素が強い(家族中心、自由行動中心、高級オプションの会社負担)

  • 会社負担が高額で、一般的な範囲を逸脱していると説明しにくい(裁決でも争点になり得る)

  • 不参加者に現金等を配る(給与性が強い)

現物給与になった場合の社内手順(最低限)

  1. 会社負担額を個人別に確定(誰がいくらの利益を受けたか)

  2. 給与として扱う対象月を決め、源泉所得税の計算・徴収を検討

  3. 年末調整や給与台帳へ反映(処理時期によって対応が変わる)

  4. 社会保険への影響が出る可能性があるため、必要に応じて社労士と連携

ここは会社によって運用が分かれるため、顧問税理士・社労士がいる場合は、事前に方針だけでも共有しておくと安全です。重要なのは「給与課税の可能性がある設計を避ける」こと、そして避けられないなら「最初から分離・按分して、課税範囲を最小化する」ことです。


ケース別の勘定科目と仕訳の考え方

仕訳は会社の会計方針やシステムにより差が出ますが、判断の軸は共通です。最初に「誰のための費用か」「目的は何か」「私的要素が混ざっていないか」を整理してください。

表A:ケース別の処理早見表(勘定科目・源泉・注意点)

ケース 主な勘定科目の方向性 源泉徴収 注意点
条件を満たす一般的な社員旅行 福利厚生費 原則不要 規程・募集・参加率母数・内訳を残す
日数超過、特定者偏重、高額で説明困難 給与(現物給与) 要検討 個人別利益の算定、社内説明が必要
取引先を招待・接待要素が強い 交際費(取引先分)+(従業員分は別判定) 不要(交際費部分) 請求内訳の分離が必須
研修が中心で実態が明確 研修費(研修部分)+福利厚生費等(その他) 原則不要 研修資料・成果物など証拠を作る
家族同伴 家族分は個人負担(分離) 原則不要 家族分を会社負担にしない設計が安全
不参加者へ現金支給 給与 原則必要 現金支給は給与性が強くリスクが高い

旅行会社一括請求と立替精算の使い分け

  • 一括請求(推奨):内訳が取りやすく、証憑が揃い、分離・按分もしやすい

  • 個人立替(注意):明細が散らばり、内訳不明・私的混在が起こりやすい

どうしても立替になる場合は、精算書に「何の費用か」「誰の分か」「会社負担か個人負担か」を記載し、領収書と紐づけて保管してください。


税務調査で否認されないための証憑パッケージ

否認を防ぐ最大のポイントは、「税務署に説明できるか」ではなく、「第三者が見ても社員旅行として整合するか」です。社員旅行は、規程・募集・参加率母数・費用内訳が揃うと一気に強くなります。

表C:タイミング別・証憑パッケージ(そのままチェックリスト化)

タイミング 必須 推奨 目的
企画前 福利厚生規程(または社内ルール)、稟議・決裁書 目的・方針メモ(会社負担範囲) 「会社行事」である根拠を作る
募集時 募集案内(対象者=全従業員が分かる)、申込フォーム/申込者一覧 不参加理由の収集(任意) 募集の公平性・母数の説明
実施前 行程表、見積書(内訳明細)、旅行会社との契約/請求設計 混在分の分離方針(家族・取引先・延泊) 日数・内容・費用妥当性を固める
実施後 参加者名簿(確定)、精算書、請求書・領収書・明細、会社負担/個人負担の集計表 写真(集合写真程度)、研修資料/成果物(研修ありの場合) 参加割合・費用の説明を完成させる

よくある否認トラブルと回避策

  • 参加率だけを見て判断し、募集の証拠がない
    → 案内文・対象者定義・母数根拠をセットで保存する。

  • 家族分が混ざって内訳が分けられない
    → 請求段階で分ける(最重要)。

  • 高額オプションが会社負担になっている
    → 会社負担の上限・範囲を規程または稟議で線引きする。

  • 研修費と言いながら研修の証拠がない
    → 研修資料・タイムテーブル・成果物を必ず残す。


よくある質問で最後の不安を潰す

参加割合が50%未満でも福利厚生費にできることはありますか

あります。国税庁のQ&Aでは、福利厚生規程に基づき全従業員を対象に募集しているなどの条件のもと、参加割合38%でも課税しない事例が示されています。重要なのは「数字」単独ではなく、募集の公平性・内容の一般性・少額不追求の範囲を含めた総合判断です。

1人当たりいくらまでなら安全ですか

国税庁が一律の上限金額を示しているわけではありません。ただしNo.2603には、旅行費用15万円(会社負担7万円)や25万円(会社負担10万円)の具体例が示されています。自社の見積を「総額/会社負担/個人負担」に分解し、同様に説明できる形に整えることが重要です。
一方で公表裁決事例では、高額な旅行費用や家族分混在が争点となっているため、高額化・混在が重なる設計は避けるのが安全です。

役員だけの旅行は社員旅行として扱えますか

役員のみだと福利厚生(従業員全体のための行事)という説明が弱くなりやすく、給与課税リスクが高まります。少なくとも、従業員を対象に募集し、実態として従業員のレクリエーション行事であることが説明できる設計が必要です。

不参加者に現金で補填するのはなぜ危険ですか

現金支給は給与性が強く、課税対象と見なされやすくなります。不参加者への配慮をするなら、次回行事の選択肢を増やす、参加しやすい日程にするなど、制度設計で解決する方が安全です。

海外旅行の4泊5日は移動日を含みますか

国税庁の目安では「海外旅行は目的地での滞在日数」とされています。行程表で現地滞在の起算・終了が明確に分かるように作ると、説明がぶれません。


まとめ

社員旅行を福利厚生費として安全に処理するポイントは、「条件を満たすこと」だけではありません。

  • 日数(4泊5日以内)と募集の公平性を最優先で整える

  • 参加割合は目安として捉えつつ、規程・募集・一般性・少額不追求をセットで説明する

  • 取引先・家族・研修・延泊など混在があるなら、最初から分離・按分の設計にする

  • 税務調査に強いのは「タイミング別の証憑パッケージ」を揃えている会社

この4点を押さえると、「経理が怖いからやめる」ではなく、「安心して実施し、社内にも説明できる」企画に変わります。特に見積段階での分解(総額/会社負担/個人負担)と、請求内訳の分離は、後から取り返しがつかない論点です。準備の順番だけは、ぜひ今日決めてください。


参考情報源