Excelで売上や経費を集計していると、「特定の支店だけ」「特定の担当者だけ」「この区分だけ」といった条件付きの合計が必要になる場面が必ず出てきます。ところが、SUMIFを使ってみたものの、思った数字にならない、0のまま動かない、#VALUE!が出て先に進めない――そんな経験は少なくありません。原因の多くは、範囲と合計範囲のズレ、条件式の書き方、データが数値ではなく文字列になっているなど、いくつかの“典型パターン”に集約されます。
本記事では、SUMIFの基本構文と3つの引数の考え方を押さえたうえで、文字列一致・数値比較・部分一致・除外・空白・日付などの条件指定をテンプレート形式で整理します。さらに、数字が合わないときに最短で原因を特定できるチェック手順も用意しました。読み終えた頃には、SUMIFを「何となく使う」状態から、「自分の表で確実に合計できる」状態へ引き上げられるはずです。
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SUMIFでできることと向いている集計
SUMと何が違うか
Excelで「合計」を出すとき、まず思い浮かぶのがSUM関数です。SUMは指定した範囲に入っている数値を、すべて足し算してくれます。たとえば売上の列がC2:C100に並んでいるなら、=SUM(C2:C100)で総売上が出せます。ここまでは直感的で分かりやすい一方、「支店が東京の分だけ」「担当者が佐藤の分だけ」「区分が交通費の分だけ」といった“条件付きの合計”になると、SUMだけでは対応できません。
この「条件付きの合計」を担当するのがSUMIF関数です。SUMIFは、ある列(または範囲)を条件でチェックし、その条件に合う行だけを合計します。つまり、表の中から「合計したい対象の行」を選び出してから足し算する仕組みです。フィルターで絞り込んで見えている行だけを目視で合計する…という作業を、関数で自動化したイメージが近いでしょう。
もう少し具体的に、典型的な表を想定します。
A列:支店名(例:東京、大阪、名古屋)
B列:商品カテゴリ(例:食品、雑貨)
C列:売上金額(数値)
このとき「東京支店の売上合計」を出したいなら、SUMIFで次のように書きます。=SUMIF(A2:A100,"東京",C2:C100)
ここでやっていることはシンプルです。
A2:A100の支店名を上から順に見て
“東京”と一致した行だけを選び
その行のC列(売上)を足し算する
SUMとSUMIFの違いは、「全件を足す」か「条件に合う行だけ足す」か、ここに尽きます。とはいえ、実務でつまずくのは“仕組み”よりも、“自分の表に当てはめたときに数字が合わない”ことが多いはずです。そこで次の小見出しから、どんな場面でSUMIFが強いのか、逆に別の方法が良いのはどんなケースかを整理していきます。
SUMIFが強い場面と弱い場面
SUMIFが最も力を発揮するのは、次のような状況です。
条件が1つである(支店が東京、担当者が佐藤、区分が交通費、など)
条件判定する列がはっきりしている(支店名の列、担当者の列、区分の列)
合計したい列が数値で整っている(売上、数量、金額、時間など)
表が縦に整然と並んでいる(同じ行に情報が揃っている)
たとえば、次のような集計がSUMIF向きです。
「区分が“交通費”の経費合計」
「商品カテゴリが“食品”の売上合計」
「評価が“良”の件数に対応する金額合計」
「顧客名が特定の会社の合計請求額」
特に、帳票の中で「このセルに、この条件の合計を表示したい」という用途では、SUMIFは非常に扱いやすい関数です。集計結果を“セルに埋め込める”ので、請求書の明細や月次資料など、定型レポートにも向きます。
一方で、SUMIFが苦手な(あるいは無理をすると複雑になりやすい)ケースもあります。
条件が2つ以上になる
例:支店が東京“かつ”商品カテゴリが食品、担当者が佐藤“かつ”月が1月OR条件が増える
例:AまたはBまたはCの合計日付の範囲など、条件の組み合わせが必要
例:2025年1月1日以上かつ2025年2月1日未満集計軸が多く、切り口を変えながら分析したい
例:支店別・担当者別・商品別を行ったり来たりする
こうした場合は、後半で扱うSUMIFS(複数条件)や、ピボットテーブルの方が作業が早く、ミスも減りやすいです。SUMIFは万能ではなく、「条件が1つの集計」を軽快にこなすエース、という位置づけで捉えると判断がしやすくなります。
複数条件ならSUMIFSに切り替える目安
「条件が2つ以上」になった瞬間に、基本方針はSUMIFSに切り替えるのが安全です。SUMIFでも工夫して複数条件っぽいことができる場合はありますが、無理に粘るほど式が読みにくくなり、後から自分も他人もメンテナンスできなくなりがちです。
切り替えの目安は次の通りです。
条件が2つ以上ある → 原則SUMIFS
(例:支店×月、担当者×カテゴリ、など)「月次」など期間条件が絡む → SUMIFSが安定
(開始日以上・翌月開始日未満、のように2条件が自然に必要になる)条件セルが複数並ぶ帳票 → SUMIFSの方が整理しやすい
(条件セルごとに条件範囲を増やしていけば良い)
一方で、「条件は1つだけど、部分一致や除外など条件式がややこしい」という場合は、まずSUMIFで条件式の型を固めるのが良いです。条件式が固まってからSUMIFSに移植すると、移行もスムーズになります。
SUMIFの書き方と3つの引数の考え方
SUMIFの基本構文
SUMIFの構文は次のとおりです。
=SUMIF(範囲, 検索条件, [合計範囲])
この3つの引数(入力する要素)が、SUMIFを理解するための核心です。よくある混乱は「範囲と合計範囲って何が違うの?」という点ですが、ここを一度きれいに整理すると、応用もトラブル対応も一気に楽になります。
範囲:条件を調べる場所(条件判定の列)
例:支店名の列、担当者名の列、カテゴリの列、日付の列検索条件:どんな条件で選ぶか
例:”東京”、”>=80″、”株式会社“、”<>”&E2、など合計範囲:実際に足す数値の場所(合計対象の列)
例:売上金額、数量、経費、工数、など
たとえば「支店が東京の売上合計」を出す場合は、支店名を見て条件判定し、売上金額を足すので次の関係になります。
範囲:支店名の列
検索条件:”東京”
合計範囲:売上金額の列
このように、“どこを見て判断するか”と“どこを足すか”を分けて考えるのがポイントです。
範囲と合計範囲の関係を図解イメージで押さえる
SUMIFが正しく動くためには、範囲と合計範囲が「同じ行どうしで対応している」必要があります。SUMIFは行をまたいで賢く探してくれるわけではなく、あくまで“同じ行のペア”で条件判定と合計を行います。
イメージとしては、次のように同じ行でセットになっている状態です。
A2(支店) ↔ C2(売上)
A3(支店) ↔ C3(売上)
A4(支店) ↔ C4(売上)
……
つまり、A列で「東京」を見つけた行のC列だけを足す、という動きになります。
この“同じ行で対応”という性質が、数字が合わないときの最大の原因にもなります。たとえば、次のようなミスは非常に多いです。
範囲がA2:A100なのに、合計範囲がC3:C101になっている(開始行ズレ)
範囲がA2:A50なのに、合計範囲がC2:C100になっている(行数違い)
片方が列全体(A:A)で、もう片方が一部(C2:C100)になっている(サイズの不一致)
これらは、見た目では気づきにくいのですが、結果は大きく狂います。SUMIFを使うときは、範囲と合計範囲は“同じ高さ・同じ大きさ”を最優先で守ってください。ここさえ押さえれば、SUMIFの成功率は劇的に上がります。
合計範囲を省略できる条件
SUMIFの第3引数(合計範囲)は省略可能です。省略すると、範囲そのものを合計します。たとえば次の式は、
=SUMIF(A2:A100,">=80")
「A2:A100の中から80以上の数値だけを合計する」という意味になります。
ただし現実の表では、条件判定する列(例:支店名)と、合計する列(例:売上金額)が同じ列であることはそれほど多くありません。さらに、条件判定が文字列の列の場合、合計範囲を省略すると合計できません(文字列は合計できないため)。“省略できる”という仕様は知っておきつつ、基本は第3引数まで書く、という運用が安全です。
SUMIFの検索条件テンプレ集
ここからは「実際に使う」ためのテンプレ集です。SUMIFは構文を理解しても、条件の書き方でつまずきやすい関数です。文字列と数値、比較演算子、ワイルドカード、セル参照の組み合わせなど、パターンを押さえるだけで一気に楽になります。
なお、以下では例として、
範囲:A2:A100
合計範囲:C2:C100
を使います。実際には自分の表に合わせて置き換えてください。
文字列が一致する合計
最も基本となるのが「文字列が一致する」パターンです。
固定文字列で一致(“東京”の合計)=SUMIF(A2:A100,"東京",C2:C100)
文字列条件はダブルクォーテーションで囲むのが基本です。
一方で、条件をセルに持たせると、シートの再利用性が上がります。
条件をセル参照(E2に“東京”が入っている)=SUMIF(A2:A100,E2,C2:C100)
セル参照の場合はダブルクォーテーションは不要です。ここは混乱しやすい点ですが、「文字を直書きするときだけ“”で囲む」「セル参照なら囲まない」と覚えるとよいでしょう。
さらに実務では、前後に余計なスペースが入っていて一致しないケースもよくあります。たとえば「東京␣」のように末尾に半角スペースが混ざると、見た目は同じでも一致しません。こうしたときは、データ側をTRIM関数で整える(前後スペースを削除する)など、データの正規化を検討してください。
数値の比較(以上・以下・範囲)
数値の比較は、比較演算子(>、>=、<、<=)を使います。比較演算子を含む条件は、文字列として扱うためダブルクォーテーションが必要です。
80以上を合計=SUMIF(A2:A100,">=80",C2:C100)
10より大きい(>10)=SUMIF(A2:A100,">10",C2:C100)
100以下(<=100)=SUMIF(A2:A100,"<=100",C2:C100)
ここで実務的に重要なのが「セル参照と比較演算子の組み合わせ」です。たとえば、E2に基準値が入っているとして、「E2以上」を条件にしたい場合、次のように演算子とセルを結合します。
=SUMIF(A2:A100,">="&E2,C2:C100)
比較演算子の部分は文字列、E2はセル参照なので、&で連結する、という考え方です。
この連結を忘れると、エラーになったり、意図しない条件になったりします。
また「範囲」(例:100以上200以下)のように上下限が必要な条件は、SUMIFでは1条件しか指定できないため、SUMIFSへ切り替えるのが定石です。
100以上200以下(SUMIFSで実現)=SUMIFS(C2:C100,A2:A100,">=100",A2:A100,"<=200")
ここは「無理にSUMIFでやらない」ポイントの代表例です。
部分一致とワイルドカード(*、?、~)
部分一致は、ワイルドカードを使うと一気に簡単になります。よく使うのは * と ? です。
*:任意の文字列(0文字以上)?:任意の1文字~:ワイルドカードを“文字として”扱うためのエスケープ
(たとえば「*」そのものを検索したいときなど)
“株式会社”を含む(前後に何があっても良い)=SUMIF(A2:A100,"*株式会社*",C2:C100)
先頭一致:東京で始まる=SUMIF(A2:A100,"東京*",C2:C100)
末尾一致:支店で終わる=SUMIF(A2:A100,"*支店",C2:C100)
条件文字列をセル参照(E2の文字列を含む)=SUMIF(A2:A100,"*"&E2&"*",C2:C100)
ここでのポイントは、ワイルドカード付きの条件は文字列として組み立てる必要がある、ということです。"*"とE2を&でつないで、条件文字列を作っています。
また、?は「1文字だけ」を表すので、型番やコードのように桁数が揃っているデータで役立ちます。たとえば「Aで始まり、最後が1の3桁コード」などの条件が必要な場合に使えます。
含まない条件と除外(<>)
除外条件(等しくない)は <> を使います。
東京以外を合計=SUMIF(A2:A100,"<>東京",C2:C100)
部分一致の除外は、ワイルドカードと組み合わせます。
“株式会社”を含まない=SUMIF(A2:A100,"<>*株式会社*",C2:C100)
ただし除外条件は、空白や表記ゆれが混ざると想定外の行が残りやすいので注意が必要です。たとえば「(株)」と「株式会社」が混在していると、「株式会社を含まない」条件でも(株)の行は除外されません。表記を統一するか、複数条件で除外するか、あるいは事前に正規化(置換)した列を作ると安定します。
空白・空文字・0の扱い
空白まわりは、SUMIFでよく“合わない”を生むポイントです。理由は、見た目が空白でも中身が違うケースがあるからです。
本当に空白:セルに何も入っていない
空文字:数式が
""を返している(見た目は空白)スペース:半角/全角スペースが入っている(見た目では気づきにくい)
0:数値のゼロ(空白ではない)
代表的な条件は次の通りです。
空白(空のセル)を条件にする=SUMIF(A2:A100,"",C2:C100)
空白以外を合計する=SUMIF(A2:A100,"<>",C2:C100)
0を条件にする=SUMIF(A2:A100,0,C2:C100)
ここで重要なのは、「空白」と「0」は完全に別物だということです。
また、空白判定がうまくいかないときは、対象のセルが本当に空白なのか(または空文字なのか)を疑ってください。空文字が混ざっていると、条件がズレることがあります。必要なら補助列で =LEN(A2) を確認し、文字数が0なのか、スペースが入っているのかを見分けると原因が特定しやすいです。
日付条件でつまずかない書き方
日付条件は「見た目は日付なのに動かない」事故が起きがちです。原因として多いのは次の2つです。
日付が“文字列”として入っている(CSV取り込みやコピペで起きやすい)
比較条件の指定方法が不適切(演算子と日付の連結ができていない)
日付条件は、DATE関数で日付を作り、比較演算子と連結するのが安全です。
2025/01/01以上を条件にする=SUMIF(A2:A100,">="&DATE(2025,1,1),C2:C100)
月次集計は、開始日以上・翌月開始日未満の2条件が安定します。SUMIFでは1条件しか持てないため、月次はSUMIFSにするのが定石です。
2025年1月の合計(1/1以上かつ2/1未満)=SUMIFS(C2:C100,A2:A100,">="&DATE(2025,1,1),A2:A100,"<"&DATE(2025,2,1))
この形にしておくと、月末日が30日か31日か、うるう年か、といった揺れに強く、トラブルが起きにくいです。
「月末日まで」とすると、月末日を求める関数が必要になったり、日付の入力ミスが起きたりしますが、「翌月開始日未満」ならシンプルに管理できます。
SUMIFで数字が合わないときの原因チェック
SUMIFは“書けているのに数字が合わない”ことが多い関数です。ここでは、よくある原因を「最短で直せる順」に並べて確認します。迷ったら、上から順に潰してください。原因が混ざっているケースもありますが、最初の数項目をチェックするだけで解決することも少なくありません。
範囲ズレ(行数・列数・開始位置)を最優先で確認
まず真っ先に疑うべきは「範囲と合計範囲のズレ」です。SUMIFは同じ行同士を対応させて合計するため、ズレると別の行を足してしまいます。
以下をチェックしてください。
範囲(条件判定の範囲)と合計範囲の開始行は同じか
例:A2:A100 と C2:C100 になっているか
A2:A100 と C3:C101 のようになっていないか範囲と合計範囲の行数は同じか
例:A2:A100(99行)とC2:C100(99行)になっているか範囲と合計範囲が同じ向きか
片方が横(行)で、片方が縦(列)になっていないかコピーしている場合、参照が意図せず動いていないか
条件範囲・合計範囲は固定したいのに相対参照のまま、というミスが多いです
必要に応じて$A$2:$A$100のように絶対参照にします
範囲ズレは「関数の理解」と関係なく起きる単純ミスですが、結果への影響が最大です。数字が合わないと感じたら、まずここを機械的に確認するのが最短ルートです。
条件が文字列扱いになっている問題
次に多いのが、条件の指定方法が原因で、意図した条件になっていないケースです。代表例は「比較演算子を使っているのに文字列として組めていない」パターンです。
たとえばE2以上を条件にしたいとき、誤って次のように書くとエラーになったり、期待通りに動かなかったりします。
誤:
=SUMIF(A2:A100,>=E2,C2:C100)正:
=SUMIF(A2:A100,">="&E2,C2:C100)
比較演算子の部分は文字列として "">=" の形で持ち、セル参照と&で連結する必要があります。
また、文字列条件を直書きするときにダブルクォーテーションが抜けているケースもあります。
誤:
=SUMIF(A2:A100,東京,C2:C100)正:
=SUMIF(A2:A100,"東京",C2:C100)
セル参照のときは不要ですが、直書きのときは必要。この区別が曖昧だと、エラーや不一致につながります。
さらに、入力が全角記号になっている(全角の>、全角の=など)と、見た目は同じでも条件として認識されず、結果が合わない原因になります。関数が動いているのに結果が変、というときは、演算子や記号が全角になっていないかも確認してみてください。
合計範囲が数値ではない問題
SUMIFは合計範囲の値を足し算しますが、合計範囲が“数値に見える文字列”だと、足し算が正しくできないことがあります。たとえば、CSVから取り込んだ売上が「12345」のように見えても、内部では文字列になっていると合計されにくい(または意図しない結果になる)ケースがあります。
見分け方の例は次の通りです。
セルの左上に緑のエラーインジケータが出ていないか(“数値が文字列として保存されています”など)
=ISNUMBER(C2)をどこかに入れてTRUE/FALSEを確認する
TRUEなら数値、FALSEなら数値以外(文字列など)数値として揃えたい列で、右揃えと左揃えが混在していないか(表示設定にもよるため絶対ではありませんが、ヒントになります)
もし文字列になっている場合は、次のような方法で数値に揃えます。
文字列を数値に変換(エラー表示から“数値に変換”)
=VALUE(セル)で数値化した列を作る“区切り位置”機能で一度変換する(データタブの機能)
取り込み時の設定を見直す(CSV取り込みの型指定など)
合計対象が数値として整うだけで、SUMIFの安定度は大きく上がります。
#VALUE! が出るときの代表原因と直し方
#VALUE! が出る場合は、入力の形がSUMIFの期待から外れていることが多いです。よくある原因は次の通りです。
範囲と合計範囲のサイズが一致していない
例:A2:A100 と C2:C200 のように行数が違う列全体(A:A)と部分範囲(C2:C100)を混在させている
サイズが揃っていないとエラーになりやすいです条件の組み立てで、文字列連結が崩れている
例:">="&DATE(...)を">="DATE(...)のようにしてしまう関数に入れた参照が、範囲ではなく単一セルや無効な参照になっている
想定外のデータ型(エラー値が混ざっているなど)が合計範囲に含まれる
直し方としては、まず「範囲と合計範囲を同じ大きさに揃える」ことを最優先にし、その上で条件式を最小の形に戻して動作確認するのが効果的です。たとえば一度、検索条件を固定文字列(”東京”など)にして動くか確認し、動いたらセル参照や比較演算子を追加していく、という手順にすると原因の切り分けが早くなります。
SUMIFSとの使い分けと置き換え例
SUMIFSの基本構文と引数順
SUMIFSは「複数条件で合計する」関数です。SUMIFが1条件なのに対し、SUMIFSは条件をいくつでも増やせます。
構文は次のとおりです。
=SUMIFS(合計範囲, 条件範囲1, 条件1, [条件範囲2, 条件2]...)
ここで最も重要なのは、SUMIFと引数の順番が違うことです。
SUMIFは「範囲、条件、合計範囲」でしたが、SUMIFSは「合計範囲が最初」です。慣れていないと、ここで混乱して式が崩れやすいので注意してください。
SUMIF:どこを見て条件判定するか(範囲)を先に書く
SUMIFS:どこを足すか(合計範囲)を先に書く
とはいえ、考え方自体は同じで、「条件範囲で条件をチェックし、合計範囲を足す」という構造です。条件が増える分、条件範囲 と 条件 のペアを後ろに追加していくだけ、と捉えると理解しやすくなります。
2条件の例(担当者×月など)
実務で多いのが「担当者×月」のような2条件以上の集計です。例として次の表を想定します。
A列:日付
B列:担当者
C列:売上
「担当者が佐藤で、2025年1月の売上合計」を出す場合、月次は開始日以上・翌月開始日未満で切るのが安定です。
=SUMIFS(C2:C100, B2:B100, "佐藤", A2:A100, ">="&DATE(2025,1,1), A2:A100, "<"&DATE(2025,2,1))
この式を読むときは、次の順に追うと分かりやすいです。
合計するのはC列(売上)
条件1:B列(担当者)が”佐藤”
条件2:A列(日付)が2025/1/1以上
条件3:A列(日付)が2025/2/1未満
→ これらすべてを満たす行のC列だけを合計する
「条件が増えるほど難しく感じる」かもしれませんが、実際は“ペアの追加”です。条件範囲と条件を1セットずつ積み上げる感覚で組み立てると、迷いにくくなります。
SUMIFからSUMIFSへ移行するときの注意点
SUMIFからSUMIFSに移行する際の注意点は、主に3つです。
引数の順番が違う
SUMIFに慣れているほど、合計範囲の位置で手が止まります。移行するときは、まず合計範囲を先頭に置き、次に条件範囲と条件をペアで追加してください。すべての条件範囲は、合計範囲と同じサイズに揃える
SUMIF以上に、SUMIFSはサイズ不一致で結果が狂ったりエラーになったりしやすいです。条件範囲が増えるほどズレの可能性も増えるため、範囲は「同じ行数・同じ開始行」で統一するのが鉄則です。条件セルを使うと保守が楽になる
帳票で条件が変わる場合、条件を直書きにすると修正が大変です。担当者名や期間の開始日などはセルに置き、"佐藤"のような直書きをE2参照に置き換えると再利用しやすくなります。
例:B2:B100, E2のように、条件だけセル参照にする形です。
よくある質問
検索条件にセルを使うとき、ダブルクォーテーションは要るか
基本的に、検索条件をセル参照にする場合はダブルクォーテーションは要りません。
直書き:
=SUMIF(A2:A100,"東京",C2:C100)セル参照:
=SUMIF(A2:A100,E2,C2:C100)
ただし、比較演算子を使う場合は、演算子を文字列として用意し、セル参照と連結します。
=SUMIF(A2:A100,">="&E2,C2:C100)
ここだけは例外的に「演算子側は文字列」という意識を持つとミスが減ります。
列全体を範囲指定してもよいか
列全体指定(例:A:A、C:C)は可能です。データが増減する表では、範囲の伸びを気にせず使えるため便利です。ただし、次の注意点があります。
計算対象が増えるため、シートが重いと計算が遅くなることがある
特に大量行(数万〜数十万)で列全体指定を多用すると、処理が重くなりがちです。余計な行に値が入っていると、意図しない合計になることがある
例えば過去データが下の方に残っている、別の集計用に数値が入っている、など。列全体指定と部分範囲指定を混ぜると、サイズ不一致でエラーや不正確な結果になりやすい
使うなら「条件範囲も合計範囲も列全体」のように、統一する方が安全です。
実務では、テーブル化(Ctrl+T)して構造化参照を使うと、データが増えても範囲が自動追従し、列全体指定のデメリットを減らせます。関数の練習段階では通常範囲で十分ですが、運用を考えるならテーブル化も検討すると良いでしょう。
ピボットテーブルとどちらが良いか
用途によります。目安としては次の通りです。
定型の帳票に数値を埋めたい:SUMIF / SUMIFSが向いています
例:請求書や月次報告書の所定セルに「東京支店の合計」を出す、など。切り口を変えながら分析したい:ピボットテーブルが向いています
例:支店別→担当者別→商品カテゴリ別、と視点を変えながら確認したい。
ピボットは集計の切り替えが速く、ミスも少ない反面、「このセルにこの条件の数値を出す」という帳票埋め込みには向きません。逆に関数は帳票向きですが、分析の切り替えは手作業になります。
「定型帳票は関数」「分析はピボット」と役割を分けると、どちらの強みも活かせます。
SUMIFで「AまたはB」を合計したい場合はどうするか(代替案の提示)
SUMIFは条件が1つのため、OR条件(AまたはB)の扱いは工夫が必要です。代表的なやり方は次の通りです。
SUMIFを足し算する
=SUMIF(A2:A100,"A",C2:C100) + SUMIF(A2:A100,"B",C2:C100)
これが最も簡単で分かりやすい方法です。条件が2〜3個程度なら、この方法でも十分運用できます。
条件が増えるなら、補助列でまとめる
たとえばA/B/C/D…と条件が増えてくると、SUMIFの足し算が長くなり、管理しにくくなります。その場合、補助列で「対象/対象外」などに分類し、分類列でSUMIF(またはSUMIFS)する方が見通しがよくなります。分析用途ならピボットを使う
OR条件が頻繁に変わる、切り替えて確認したい、という用途では、ピボットの方が早いことが多いです。
まとめ
SUMIFは「条件に合う行だけを合計する」ための基本関数で、特に条件が1つの集計に強い道具です。うまく使えるようになる鍵は、次の3点に集約されます。
条件を判定する範囲(範囲)と、合計する範囲(合計範囲)を混同せず、同じ行で対応させる
条件式の書き方(直書き・セル参照・比較演算子・ワイルドカード)をテンプレで持ち、機械的に当てはめる
条件が2つ以上になったら、無理にSUMIFで粘らずSUMIFSへ切り替える
「数字が合わない」ときは、まず範囲ズレを疑い、次に条件式、次に合計範囲の数値化、最後にエラーの原因切り分け、という順番で確認すると最短で解決しやすくなります。
SUMIFは一度“型”が身につくと、売上・経費・工数・件数など、あらゆる集計に応用できます。今回のテンプレとチェック手順をそのまま使い、手元の表で再現できるところまで落とし込んでみてください。数字がピタッと合う瞬間に、関数への苦手意識が一気に薄れるはずです。