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SUMIFSの使い方を完全整理!複数条件の合計とOR条件、エラー対策まで

売上や経費の一覧表を前に、「この取引先だけ」「この月だけ」「この条件に当てはまる分だけ」を合計したいのに、思った数字にならず手が止まってしまう——。ExcelのSUMIFSは、そんな集計の悩みを一気に解決できる一方で、日付条件や比較演算子、部分一致、OR条件が絡むと、途端にミスが起きやすい関数でもあります。
本記事では、SUMIFSの基本構文から“条件指定の型”、つまずきやすい#VALUE!や0になる原因の切り分け、現場でそのまま使える集計表テンプレまでを、手順と例で体系的に整理します。読み終えた頃には、複数条件の合計が「なんとなく」ではなく「確信を持って」組めるようになり、毎月の集計がぐっと楽になります。

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SUMIFSとは何か

SUMIFSは「複数の条件に合うデータだけを合計する」ための関数です。Excelの実務では、合計したい対象(売上金額、工数、数量など)に対して、取引先・部門・担当・地域・商品カテゴリ・日付範囲などの条件を組み合わせることがほとんどです。
そうした“条件付き合計”を、関数だけで再現性高く作れるのがSUMIFSの強みです。

SUMIFSのメリットは、次の3点に集約されます。

  • 条件を追加するだけで、同じ集計をいくらでも細かくできる(AND条件の拡張が得意)

  • 集計表の見出しセルを参照させれば、行・列にコピーするだけで表が完成する

  • ピボットほどの準備なしに、軽量な集計を素早く作れる

一方で弱点もあります。

  • 条件の書き方が“文字列ルール”に依存するため、比較演算子・日付・ワイルドカードが混ざるとミスが起きやすい

  • 条件範囲や合計範囲のサイズが揃っていないとエラーになる

  • OR条件(AまたはB)が苦手で、作り方を知らないと遠回りになる

この弱点を「よくある型」と「チェックポイント」で潰していけば、SUMIFSはかなり安定して使えるようになります。

SUMIFとの違いと、SUMIFSが向く場面

SUMIFは“条件が1つだけ”のときの関数です。例えば「取引先がA社の売上合計」のような単純条件ならSUMIFで十分です。
ところが、実務の集計はだいたい次のように複数条件になります。

  • 取引先がA社 かつ 対象月が12月

  • 部門が営業 かつ 担当が田中 かつ 金額が0より大きい

  • 地域が関東 かつ 商品が食品 かつ 日付が今週

こうなるとSUMIFだけでは足りません。SUMIFSなら「条件範囲+条件」をセットで追加していくだけで、絞り込みを増やせます。
また、SUMIFは「条件範囲→条件→合計範囲(省略可)」の並びですが、SUMIFSは「合計範囲→条件範囲1→条件1→条件範囲2→条件2…」の並びです。ここを混同して“引数がズレた式”になるのが初期のつまずきポイントです。

SUMIFSが向く場面は、ざっくり次のとおりです。

  • 毎月同じ形式で、月次・週次の集計を繰り返す

  • 条件の切り口が増える可能性が高い(取引先別、部門別、商品別など)

  • 集計表として、縦横にコピーして数字を埋めたい

  • “この条件ならこの数字”を、他の人が見ても追える形で残したい

逆に、集計項目が多すぎる(数十種類以上)・ドリルダウンしたい・集計軸が頻繁に変わる場合は、ピボットテーブルの方が向くこともあります。ただし、SUMIFSは小回りが利くので、ピボットの前段階としても非常に便利です。

SUMIFSの基本構文と引数の意味

SUMIFSの構文は、以下の形です。

  • SUMIFS(合計対象範囲, 条件範囲1, 条件1, 条件範囲2, 条件2, ...)

ここで大事なのは、合計対象範囲が最初であることです。SUMIFに慣れていると、条件範囲を先に書きたくなりますが、SUMIFSは順序が違います。
条件は「条件範囲」と「条件」をセットで増やしていきます。条件を増やすほど、対象となる行は絞られます(AND条件で積み重なっていくイメージです)。

条件範囲に関して、実務上の鉄則があります。

  • 合計対象範囲と、各条件範囲は同じサイズ(行数・列数)であること

  • 多くの場合「同じ行に並んだ列」を指定する(例:D2:D1000、A2:A1000、B2:B1000 など)

この“サイズ一致”が崩れると、後述する#VALUE!などの原因になりやすいので、まず最初に覚えておくと安定します。


SUMIFSの基本的な使い方

ここでは、SUMIFSを「まず動かす」段階を固めます。コツは、難しい条件をいきなり盛らずに、順番に組み立てることです。
おすすめの手順は次のとおりです。

  1. 合計対象範囲だけを決める(どの列を足すか)

  2. 条件を1つ入れて動作確認する

  3. 条件をもう1つ入れる

  4. 条件が増えるたびに、想定どおり絞れているかを確認する

2条件で合計する基本例

例として、次のような売上明細を想定します。

  • A列:地域

  • B列:取引先

  • C列:商品

  • D列:売上金額

「地域がSouthで、商品がMeatの売上合計」を出したい場合、SUMIFSは次の形になります。

  • =SUMIFS(D2:D11, A2:A11, "South", C2:C11, "Meat")

この式の読み方は「D列(売上金額)を合計。ただしA列(地域)がSouth、かつC列(商品)がMeatの行だけ」です。
この例で覚えるべきことは2つです。

  • 合計したい列が最初

  • 条件は 条件範囲→条件 のペアで増える

さらに実務でよくある“安全な確認”があります。
結果が合っているか不安なときは、フィルター機能で「地域=South」「商品=Meat」をかけ、そのとき見えている金額の合計と一致するかを確認すると、ミスを早期に潰せます。

条件をセル参照にして集計表にするコツ

実務では、条件を式の中に直書きすると、後で条件を変えたいときに式を編集する手間が増えます。
そこで、条件はセルに置いて、SUMIFSはそのセルを参照するのが王道です。

例えば、次のような集計表を作るイメージです。

  • F2以降:取引先名(集計したい一覧)

  • G1:対象月(例:2025/12/1 のような日付)

  • G2以降:取引先ごとの売上合計(SUMIFSで算出)

このとき、式の設計で重要なのは「コピーしても崩れない参照」です。
基本ルールは次のとおりです。

  • データ側の範囲(列やデータ範囲)は 絶対参照($) で固定する

  • 集計表側の条件セル(F2など)は、コピー方向に合わせて 相対参照 を残す

たとえば取引先の条件がF2にあるなら、下にコピーしたときF3、F4…と自動でずれる必要があります。だからF2は相対参照のままが便利です。
一方で、データ範囲がずれると集計対象が変わって壊れるので、$B:$B$D:$Dなど固定します。

この“参照の固定”ができるだけで、SUMIFSは「その場しのぎの式」から「集計表を自動で埋める式」に格上げされます。


SUMIFSの条件指定を自在にする型

SUMIFSのつまずきの多くは「条件の書き方が毎回あやふや」なことに起因します。
そこで、ここでは条件指定を“型”として整理します。型で覚えると、条件の種類が変わっても書き方がブレなくなります。

まず、条件指定の全体像を早見表にします。

条件指定の型 早見表

目的条件の例書き方の型よくある落とし穴
1000より大きい">1000"演算子を文字列にする>1000と書いてしまう
セルH1以上">="&H1演算子+セル参照は連結">=H1"のように文字列化する
「東京」だけ"東京"文字列はそのまま前後にスペースがあると一致しない
「青」を含む"*青*"ワイルドカード部分一致が不要な場面で使いすぎる
12月分">="&DATE(2025,12,1)"<"&DATE(2026,1,1)月初以上&翌月月初未満日付が文字列のままで比較される
空白だけ""空文字見かけ空白(スペース)を空白と勘違い
空白以外"<>"&""非空白"<>"だけでは意図が曖昧になる

ここから先は、この早見表を「なぜそう書くのか」まで掘り下げます。

数値条件と比較演算子の型

数値条件は、SUMIFSで最も頻出です。
ポイントは、比較演算子(>, >=, <, <=, <>)を“文字列”として条件に含めることです。

  • 固定値で比較する

    • ">1000"

    • "<=500"

    • "<>0"(0以外)

  • セルの値で比較する

    • ">="&H1

    • "<"&I1

    • "<> "&J1(※わざとスペースを入れる必要は通常ありません。ここは注意例です)

なぜ連結(&)が必要かというと、条件は「文字列」として解釈されるためです。
">=H1"と書くと“文字列のH1”になってしまい、H1の値を参照できません。
正しくは ">="&H1 として、>=とH1の中身をつないで1つの条件文字列にします。

実務でありがちな例を挙げます。

  • 「金額が0より大きい(返品・相殺を除く)」

    • 条件:">0"

  • 「単価が基準単価(H1)以上の明細だけ」

    • 条件:">="&H1

  • 「件数が上限(I1)未満のものだけ」

    • 条件:"<"&I1

この型を覚えておくと、数値条件はほぼ迷いません。

文字列条件と部分一致の型

文字列条件には、完全一致と部分一致があります。
完全一致はシンプルで、条件に文字列をそのまま書きます。

  • "A社"

  • "東京"

  • "未払い"

ただし、文字列条件で一番多い落とし穴は「表記ゆれ」です。

  • 全角/半角(A社とA社)

  • 末尾のスペース(見た目は同じでも一致しない)

  • 表記の揺れ(「株式会社〇〇」と「(株)〇〇」)

この場合、まずは条件に使う文字列を、データ表からコピーして貼り付けるのが最短です。
人間が打ち込むと、意図せず違う文字になっているケースが多いからです。

部分一致は、ワイルドカードを使います。

  • *:任意の文字列

  • ?:任意の1文字

代表パターンは次のとおりです。

  • 前方一致(~で始まる):"A社*"

  • 後方一致(~で終わる):"*支店"

  • 部分一致(~を含む):"*青*"

  • 1文字だけ違いを吸収:"製品?A"(例:製品1A、製品2Aなど)

部分一致は便利ですが、集計が“広く”なりやすいので注意が必要です。
例えば「青森」を探したいのに *青* にすると、「青」さえ入れば何でも拾ってしまいます。
部分一致を使う前に「完全一致で足りないか」を必ず確認すると、集計の誤差が減ります。

日付条件で月次集計する型

日付条件は、SUMIFSで一番事故が多い領域です。
理由は2つあります。

  1. 日付が“見た目”と“中身(シリアル値)”で別物になっていることがある

  2. 「12月分」のような期間指定は、1条件では表現しづらい

月次集計の鉄板は、次の2条件です。

  • 月初以上(>=)

  • 翌月月初未満(<)

例えば「2025年12月分」は、次の期間になります。

  • 下限:2025/12/01 00:00:00 以上

  • 上限:2026/01/01 00:00:00 未満

つまり条件はこうなります。

  • ">="&DATE(2025,12,1)

  • "<"&DATE(2026,1,1)

これを同じ日付列に対して2つ入れます。

この形が強い理由は、日付に時刻が混ざっていても安全なことです。
もし明細の日付が「2025/12/31 15:30」のように時刻込みでも、< 2026/01/01 なら12月分として正しく含まれます。
逆に「<=2025/12/31」にしてしまうと、時刻が付いているデータが漏れる可能性があります(表示形式では日付だけに見えても、内部には時刻が入っているケースがあるためです)。

対象月をセルに置くなら、次の考え方が便利です。

  • G1に対象月の日付(例:2025/12/1)を入れる

  • 下限:">="&DATE(YEAR($G$1),MONTH($G$1),1)

  • 上限:"<"&DATE(YEAR($G$1),MONTH($G$1)+1,1)

これなら、G1を変えるだけで集計月を切り替えられます。
月次集計が頻出の職場では、この型をテンプレとして固定するとミスが激減します。

空白と空白以外、除外条件の型

空白判定は“見た目が空白”と“本当に空白”が違うことがあるため、書き方を型で押さえると安定します。

  • 空白だけを条件にする:""

  • 空白以外を条件にする:"<>"&""

「空白以外」は "<>" と書きたくなりますが、"<>" だけだとExcelの解釈が曖昧になることがあり、意図が伝わりづらくなります。"<>"&"" で「空文字ではない」と明確にすると安全です。

除外条件(~以外)も同じ発想です。

  • "<>交通費"(交通費以外)

  • "<>0"(0以外)

  • "<>取消"(取消以外)

ただし、除外条件は“うっかり対象を広げすぎる”ことがあります。
例えば「交通費以外」を合計しているつもりが、実は「交通費」表記が「交通費(精算)」など複数パターンあり、除外しきれていない、というケースです。
除外条件を使うときは、データにどんな表記のバリエーションがあるかを、フィルターで一度確認すると安心です。


SUMIFSでOR条件を実現する方法

SUMIFSは基本的にAND条件(AかつB)で対象を絞り込みます。
しかし実務では「AまたはB」「この担当者群のどれか」のようなOR条件が必ず出てきます。

SUMIFSでOR条件を扱うときは、まず“素直な方法”で確実に作るのが近道です。
慣れてきたら、条件が増えたときの管理方法へ拡張します。

足し算で作るシンプルなOR条件

最も理解しやすく、検算もしやすい方法が「SUMIFSを足す」方法です。

例:商品が「りんご」または「バナナ」の売上合計

  • =SUMIFS(金額範囲, 商品範囲, "りんご") + SUMIFS(金額範囲, 商品範囲, "バナナ")

この方法のメリットは大きいです。

  • 各SUMIFSが単純なので、どちらが効いているか分かりやすい

  • 片方だけ0になっても原因を切り分けやすい

  • OR条件が少ない間は、作成も保守も最速

注意点として、OR対象が重複しないことが前提です。
通常「商品=りんご」と「商品=バナナ」は同時に成立しないので問題ありません。
一方で「条件A」と「条件B」が重複する可能性がある場合(例:タグが複数付く、分類が重なる)では、足し算すると二重計上になるリスクがあります。その場合は別の設計が必要になります。

条件が多いORを扱う考え方

OR条件が増えると、足し算の式が長くなり、変更も面倒になります。
例えば「担当がA,B,C,D,E…」のようなケースです。

このときの考え方は2つあります。

  1. OR条件を一覧として別セル範囲に置き、管理可能にする

  • 例:K2:K10 に担当者名リストを置く

  • 「追加・削除」はK列を編集するだけ、という運用に寄せる

  1. “集計の入口”を変えて、ORをANDに寄せる(補助列で統一キーを作る)

  • 例:部署コードや担当グループなど、OR対象を1つの分類にまとめ、条件を単純化する

SUMIFSだけで完結させるか、補助列を作るかは、次で決めるのが現実的です。

  • ORの条件が固定(ほぼ変わらない)→ 足し算で十分

  • ORの条件が頻繁に変わる(メンバー入れ替えがある)→ 一覧管理にする価値が高い

  • 条件の概念自体が曖昧(表記ゆれが多い)→ 補助列で正規化した方がミスが減る

OR条件は「式の巧さ」よりも「運用で壊れない設計」の方が重要です。特に月次集計などで引き継がれる資料は、一覧管理や補助列の方が、後任が理解しやすくなります。


SUMIFSでつまずく原因と直し方

SUMIFSが怖いのは、「式が長いのに、間違っていてもそれっぽい数字が出る」ことです。
だからこそ、トラブルが起きたときの切り分け手順を持っておくと安心です。

ここでは“よくある症状”を2つに分けて対処します。

  • #VALUE!(計算自体ができない)

  • 0になる(条件に合う行がない扱いになっている)

#VALUE!が出るときの確認チェックリスト

#VALUE!は、SUMIFSが「範囲の整合」や「データの前提」を満たせず、計算を実行できないときに出やすいエラーです。
多くの場合、次のチェックで解決します。

  • 合計対象範囲と条件範囲のサイズ(行数・列数)が一致している

    • 例:D2:D1000 に対して A2:A999 のように1行ズレていないか

    • 例:列全体(D:D)と範囲指定(A2:A1000)を混在させていないか(混在自体は動くこともありますが、ズレの温床です)

  • 条件範囲が“列”として指定されているか(行と列が混ざっていないか)

    • 横持ちの表で、行方向・列方向を誤っていることがあります

  • 比較演算子+セル参照の条件で、連結(&)を忘れていないか

    • ">="&H1">=H1" になっていないか

  • 日付条件が文字列になっていないか

    • DATE(年,月,日) を使うと安定します

    • “見た目は日付”でも、実体が文字列のことがあります(取り込みデータで多い)

  • 条件範囲や合計範囲に、異常値(エラー値)が混ざっていないか

    • データ自体に#VALUE!等が含まれていると、連鎖する場合があります

現場でのおすすめは、範囲をすべて同じ行の開始・終了に揃えることです。
例えば、A2:A1000 B2:B1000 D2:D1000 のように、すべて2行目から1000行目に統一します。列全体参照(A:A)を使う場合も、すべて列全体に統一します。混在させると、見えないズレが起きやすくなります。

結果が0になるときの典型パターン

0が返るときは、SUMIFSの計算は成立しているが、「条件に一致する行が0件」という扱いになっています。
この原因は、だいたい次のどれかです。

  1. 条件の文字列が一致していない(表記ゆれ)

  • 全角半角、余計なスペース、機種依存文字

  • 解決:条件文字列は表からコピー、TRIMで前後空白を除去(必要なら補助列)

  1. 日付条件の期間がずれている

  • 「12月分」のつもりが「12/1以上」だけで、1月も入ってしまう/逆に漏れる

  • 解決:「月初以上&翌月月初未満」の2条件にする

  1. 部分一致が必要なのに完全一致している(またはその逆)

  • 例:データが「青森支店」なのに条件が「青森」になっている(完全一致でヒットしない)

  • 解決:"*青森*" のように意図を合わせる(ただし拾いすぎに注意)

  1. 範囲のズレ(1行ズレ)があるが、#VALUE!にならず0になるケース

  • データ量や指定の仕方で、エラーにならず結果だけズレることがあります

  • 解決:範囲開始行・終了行を統一し、同じ行数に揃える

切り分け手順としては、次が最短です。

  • 条件を1つずつ外していき、どの条件を入れた瞬間に0になるか確認する

  • 0になる条件が特定できたら、その列にフィルターをかけて、条件文字列と一致する実データが存在するかを見る

  • 日付は特に、表示形式を一度「標準」にして中身が日付(シリアル)か文字列かを疑う

この手順を知っているだけで、SUMIFSのトラブル対応が“勘”から“作業手順”になります。


SUMIFSを集計業務に落とし込むテンプレ

SUMIFSを本当に強くするのは、関数知識よりも「集計表として運用できる形」に落とし込むことです。
ここでは、よくある2種類のテンプレを提示します。

  • 取引先別売上(縦方向にコピーして増やす)

  • 商品×地域(縦横にコピーしてクロス集計する)

この2つが作れれば、SUMIFSは実務の大半をカバーできます。

取引先別売上集計のテンプレ

前提(売上明細)

  • A列:売上日

  • B列:取引先

  • C列:部門

  • D列:売上金額

作りたい集計表

  • F列:取引先一覧(F2以降)

  • G1:対象月(例:2025/12/1)

  • G列:取引先別の売上合計(G2以降)

式の型(G2)
考え方は「取引先で絞る」+「日付で月を絞る」です。

  • =SUMIFS($D:$D, $B:$B, F2, $A:$A, ">="&DATE(YEAR($G$1),MONTH($G$1),1), $A:$A, "<"&DATE(YEAR($G$1),MONTH($G$1)+1,1))

この式が“テンプレとして強い”理由は次のとおりです。

  • 対象月はG1を変えるだけで切り替えられる

  • 取引先はF列に一覧を置けば、下にコピーするだけで埋まる

  • 日付が時刻込みでも、翌月月初未満で安定して月次を切れる

さらに、実務の完成度を上げるなら、次の工夫も有効です。

  • 取引先一覧(F列)を、別シートで管理して参照する(入力ミスを減らす)

  • “部門別”も必要なら、H1に部門名、条件ペアを1つ追加する

    • , $C:$C, $H$1 のように増やせばOKです

  • データ量が多いなら列全体参照をやめ、実データ範囲に絞る(計算速度の安定)

テンプレは「一度作ったら、翌月も同じ動作をする」ことが最重要です。参照固定と対象月セルの設計だけは、丁寧に作る価値があります。

商品×地域のクロス集計テンプレ

クロス集計は、SUMIFSの得意技です。
行と列の見出しを条件セルにして、表全体をコピーで埋める設計にします。

前提(明細)

  • A列:地域

  • B列:商品

  • C列:売上金額

作りたい表

  • D2以降:地域(縦見出し)

  • E1以降:商品(横見出し)

  • E2以降:交点セルに合計

式の型(E2)

  • =SUMIFS($C:$C, $A:$A, $D2, $B:$B, E$1)

ここでの参照固定がポイントです。

  • $D2:列Dは固定、行は下にコピーで変わる(地域の縦見出し)

  • E$1:行1は固定、列は右にコピーで変わる(商品の横見出し)

この固定が正しくできていれば、E2の式を右下にコピーするだけでクロス集計表が完成します。

クロス集計でよくあるミスは、見出しセルが“人の手入力”で表記ゆれを起こすことです。
商品の一覧や地域の一覧は、可能なら元データから重複排除して作る(またはデータ検証のリストにする)と、0が出る事故を防げます。

メンテしやすい表設計と参照固定

最後に、SUMIFSを“引き継げる資料”にするための設計チェックをまとめます。
ここができると、毎月の更新が楽になり、ミスも減ります。

表設計の基本

  • 明細は縦持ち(1行=1件)に統一する

  • 列名(見出し)を固定し、途中で列の意味が変わらないようにする

  • 可能ならExcelのテーブル機能を使い、範囲が増えても式が追従するようにする(運用に合う場合)

参照固定の基本

  • データ範囲は絶対参照($)で固定

  • 集計表の見出しセルは、コピー方向に合わせて固定の仕方を変える

    • 縦見出し:列固定($D2

    • 横見出し:行固定(E$1

    • 単独セル(対象月など):行列とも固定($G$1

条件追加の基本

  • 条件は「条件範囲+条件」をペアで追加する

  • 追加したら、必ず想定どおり対象が絞れているか(フィルター・検算)で確認する

SUMIFSは、式が正しいだけでは不十分で、“運用で壊れない設計”があって初めて強くなります。テンプレ化してしまえば、翌月以降は入力セルを変えるだけで集計が回るようになります。


SUMIFSのよくある質問

最後に、現場でよく出る質問をまとめます。SUMIFSが安定して動かないときは、ここに原因があることが多いです。

条件範囲の大きさが違うとどうなる

条件範囲と合計対象範囲のサイズ(行数・列数)が一致していないと、SUMIFSは正しく計算できません。典型的には#VALUE!になったり、意図しない結果になったりします。
特に起きやすいのが「合計範囲は2行目から、条件範囲は1行目から」のようなズレです。見出し行を含めないようにしたつもりが、片方だけ含めてしまうケースが多いです。

対策はシンプルで、すべて同じ開始行・終了行に揃えることです。
迷ったら次のどちらかに統一してください。

  • すべて実データ範囲(例:2行目〜最終行)で揃える

  • すべて列全体参照(A:Aなど)で揃える(データ量が多い場合は重くなることがあります)

混在はズレの温床になるので、どちらかに寄せると安定します。

複数列をまたいだ条件はできる

SUMIFSは「1つの条件は、1つの条件範囲(列や行)に対して指定する」設計です。
つまり「姓列と名列を合わせたフルネームで条件にしたい」「取引先コード+部門コードで条件にしたい」といった“複数列をまたぐ条件”は、そのままでは扱いづらいです。

この場合の王道は、補助列を1つ作ってキーを統一することです。

例:D列に補助キーを作る

  • D2:=B2&"-"&C2(取引先コードと部門コードを結合)

集計側も同じ形式のキーを作っておけば、SUMIFSは「補助キー列=キー」の1条件で済みます。
補助列を作るのは一手間ですが、結果として式が短くなり、運用も引き継ぎもしやすくなります。

ワイルドカードが効かないのはなぜ

ワイルドカード(*?)が効かないと感じるとき、原因はだいたい次のどれかです。

  • 条件が完全一致になっている("*青*"のつもりが"青"になっている)

  • 表記ゆれで一致しない(全角半角、余計なスペース、記号の違い)

  • ワイルドカードを“セル参照”に含める設計が崩れている

    • 例:セルに「青」と入れて、式側で * を付けるべきなのに、そのまま参照している

セル参照で部分一致にしたいなら、次のどちらかに統一すると安全です。

  • セルにワイルドカード込みで入れる(例:*青*)→ 条件はセル参照だけ

  • セルは文字だけ(例:)→ 条件で ="*"&セル&"*" と組み立てる

どちらでも動きますが、資料の引き継ぎを考えるなら「セルは文字だけ、式で組み立てる」方が意図が伝わりやすいことが多いです。
また、部分一致は拾いすぎのリスクもあるので、必要な場面に絞り、集計結果が妥当かをフィルターで必ず検算すると安心です。