Steam MachineにWindowsを入れるべきかどうか――購入を検討している方、あるいは予約済みの方であれば、一度は頭をよぎった疑問ではないでしょうか。
標準のSteamOSだけで本当に困らないのか、それとも最初からWindows化して「なんでもできる1台」にしてしまうべきなのか。
判断を誤ると、「せっかくの新ハードが、思っていた使い方と違った」という残念な結果にもつながりかねません。
本記事では、Steam MachineにWindowsを導入するメリット・デメリットを、ゲーム用途と仕事・日常用途の両面から整理し、「入れるべき人/入れなくてよい人」を具体的なケース別に解説いたします。
さらに、デュアルブートや外付けSSDなど複数の導入パターンと、そのリスク・難易度もあわせてご紹介します。読み終えるころには、「自分はどの選択肢を選ぶべきか」が自然と見えてくるはずです。
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ゲーム専用機として使うなら
→ まずはSteamOSのまま利用開始し、どうしても遊べないゲームが出てきたときに初めてWindowsを検討する、という順番をおすすめいたします。仕事+ゲームを1台で済ませたいなら
→ Windows導入のメリットが大きいため、外付けストレージ方式やデュアルブート方式から検討する価値があります。ヘビーなオンライン対戦ゲームを中心に遊ぶなら
→ アンチチート環境の都合上、Windows環境の方が安心できる場面が多くなります。
Steam MachineとSteamOSの前提を整理する
Steam Machineとは何か?ハードウェアと位置づけ
Steam Machineは、Valveが2026年の発売を予定している小型ゲーミングPCです。リビングのテレビにつないで使うことを前提に設計されたキューブ型の筐体で、従来のゲーム機とPCの中間のような立ち位置にあります。
中身はあくまで「PC」です。CPUやGPU、メモリ、ストレージを搭載し、スペックとしてはエントリー〜ミドルクラスのゲーミングPCに近い性能を持つとされています。
標準OS「SteamOS 3」の特徴と強み
Steam MachineにはWindowsではなく、Linuxベースの「SteamOS 3」が標準でインストールされます。SteamOSは、同じValve製のポータブル機「Steam Deck」で実績を積んだゲーム特化OSで、次のような特徴があります。
起動するとすぐにSteamのゲームライブラリ画面が立ち上がる
コントローラー前提のUIで、ソファに座って操作しやすい
不要な常駐アプリが少なく、ゲームにリソースを集中しやすい
また、SteamOSは「Proton」という互換レイヤーを使うことで、多くのWindows向けゲームをそのまま遊べるようにする仕組みを備えています。
Steam MachineでWindowsは技術的に動くのか
結論から言うと、「技術的には動くが、ユーザーの自己責任で行う作業」になります。
Steamの公式FAQでも、Steam Machineで別OS(WindowsやmacOS)を実行できるかという質問が用意されており、ハードとしてはPCであることが明示されています。
また、Steam Machineは「ゲーム用に最適化されているがPCであり、好きなアプリや別のOSをインストール可能」と、Valve関連の情報でも繰り返し説明されています。
つまり、原則としてSteamOSで使うことを想定しつつも、「どう使うかはユーザー次第」というスタンスです。
Steam MachineにWindowsを入れると何が変わるのか
ゲーム用途:遊べるタイトル・遊べないタイトルの違い
SteamOS+Proton環境でも、多くのWindows用ゲームはそのまま(または若干の調整で)動作します。しかし、以下のような例外があります。
独自の強力なアンチチートシステムを使う一部オンラインゲーム
専用ランチャーやサービス(Riot Gamesクライアント、Battle.netなど)に強く依存するタイトル
動作報告が少なく、Proton側の最適化が進んでいない新作・マイナー作品
こうしたタイトルを確実にプレイしたい場合、Windows環境の方が有利です。一方で、シングルプレイ中心のSteamゲームや、すでにSteam Deckで「Verified」や「Playable」となっているタイトルは、SteamOSでも十分快適に遊べるケースが多いと考えられます。
仕事・日常用途:Windows導入で広がること
Windowsを導入すると、Steam Machineはほぼ「一般的な小型デスクトップPC」としても使えるようになります。
Microsoft Office、Zoom、Teamsなどのビジネスアプリ
Adobe系ソフトや各種クリエイティブツール
企業環境で必須になりやすい専用VPNクライアントや業務アプリ
これらはLinux環境では動かない、または代替アプリで妥協する必要がありますが、Windowsならそのまま利用できるケースがほとんどです。
在宅ワークとゲームを1台で両立させたい方にとっては、Windows導入は大きなメリットになり得ます。
パフォーマンス・静音性・使い勝手への影響
一般論として、同じハードウェア上では「ゲーム専用に絞ったOS」の方が、Windowsよりも軽快に動く傾向があります。SteamOSはまさにそのタイプです。
SteamOS:
長所:起動が速い、バックグラウンドが軽い、ゲーム専用機に近い操作感
短所:対応ゲームに制約、ビジネス・クリエイティブ用途に弱い
Windows:
長所:対応アプリが圧倒的に多い、ゲームや周辺機器の対応情報も豊富
短所:バックグラウンドプロセスが多く、チューニングをしないとリソースを圧迫しやすい
静音性についても、WindowsではアップデートやスキャンなどでCPU負荷が一時的に上がり、ファンが回りやすくなるタイミングが増える可能性があります。
Windows導入が向いている人・向いていない人
SteamOSのままで十分なケース
次のような方は、無理にWindowsを入れなくても問題ない可能性が高いです。
遊びたいゲームが主にSteamのメジャータイトル(シングルプレイ中心)である
Steam Deckの対応状況(Verified / Playable)を確認しながら遊ぶつもりである
PCのOSインストールやパーティション操作に不安がある
主な用途が「ゲームだけ」で、仕事や専門アプリは別PCに任せられる
この場合は、まずはSteamOSで使いながら、どうしても遊べないゲーム・困る場面が出てきたときにWindows導入を検討する流れでも遅くありません。
Windows導入を強く検討すべきケース
一方、次のようなニーズがある場合は、Windows導入が現実的な選択肢になります。
APEXのようなアンチチート依存のFPSを遊びたい
Riot Gamesのタイトルや、Windows専用ランチャーに依存するゲームをプレイしたい
Steam Machineを仕事用PCとしても活用し、OfficeやZoom等を日常的に使いたい
すでにWindows PCの運用経験があり、OS再インストールやトラブル対応にある程度慣れている
迷っている人向けの簡易チェックリスト
以下に1つでも「はい」が多ければ多いほど、Windows導入のメリットが大きくなります。
SteamOSでは動作しない(または不安な)ゲームがメインタイトルに含まれる
Steam Machineを日常の仕事にも使いたい
OSのインストール経験がある、または調べながら作業する自信がある
多少のトラブルシューティングも自分で対応できる
「いいえ」が多い場合は、まずSteamOSのみで運用を開始し、必要に応じて検討するのが安全です。
導入パターン別:Windowsを入れる3つの選択肢
パターン1:SteamOSを消してWindowsのみで使う
もっともシンプルな構成は、「SteamOSを削除してWindowsだけをインストールする」方式です。
メリット
起動時にOS選択画面が出ないため、操作がわかりやすい
ストレージ容量をフルにWindows用として使える
Windows向けのゲームやアプリの動作が素直
デメリット
SteamOSの利便性(ゲーム機的なUI)が完全に失われる
元に戻したくなった場合、SteamOSの再インストール作業が必要
ゲームだけでなく、仕事や日常用途も含めて「完全にWindows PCとして使い倒したい」方向けの選択肢です。
パターン2:SteamOSとWindowsのデュアルブート構成
次に、SteamOSとWindowsを同じストレージに共存させる「デュアルブート構成」があります。
メリット
電源投入時に用途に応じてOSを選べる
SteamOSのゲーム機的な体験も、Windowsの汎用性も両立可能
デメリット
パーティションの分割やブートローダー設定など、作業難度がやや高め
それぞれのOSに割り当てる容量のバランスを考える必要がある
Steam Deckでも、パーティションを切ってWindowsを共存させる手順が紹介されており、同様の考え方をSteam Machineにも応用できますが、ブート構成の違いなど細かな点は別途確認が必要です。
パターン3:外付けSSD等にWindowsを入れて使う
より安全寄りの方法として、「外付けSSDやUSBドライブ側にWindowsをインストールする」パターンがあります。
メリット
本体の内蔵ストレージ構成を大きく変えずに試せる
うまくいかない場合は外付けストレージを外すだけで元に戻しやすい
デメリット
ストレージの速度や接続方式によっては内蔵よりパフォーマンスが落ちる
起動時にブートデバイスの選択が必要な場合がある
「まずは安全に試したい」「失敗してもすぐ戻せる形が良い」という方には、この方式が向いています。
Windows導入の手順と注意点
※ここでは一般的な流れのみを示し、詳細なボタン操作や画面構成は公式や検証記事を併用して確認することをおすすめします。
事前準備:バックアップ・ライセンス・周辺機器
重要データのバックアップ
ゲームのセーブデータはクラウド同期(Steamクラウド)だけに頼らず、必要に応じてローカルバックアップも検討してください。
Windowsライセンスの用意
正規のWindowsライセンスを用意し、インストールメディア(USBメモリ)を作成します。
USBキーボード・マウス
初期セットアップ時はコントローラーだけでは操作しにくい場面が多いため、USB接続のキーボードとマウスがあると安心です。
ネットワーク環境
ドライバのダウンロードが必要になるため、できれば有線LANか安定したWi-Fi環境を用意します。
インストール作業の流れ
Windowsインストールメディア(USB)をSteam Machineに挿す
起動時にブートメニューを表示し、USBから起動する
インストーラーの指示に従い、インストール先ストレージ・パーティションを選択する
ここでパーティションを誤って削除すると元のSteamOSが消えるため、構成を十分に確認してください。
インストール完了後、再起動してWindowsの初期設定(言語・アカウント・プライバシー設定など)を行う
Steam Deck向けの記事では、パーティションの切り方やWindowsドライバ導入の流れが紹介されており、考え方の参考になりますが、Steam Machine固有の仕様(UEFI設定やデバイス構成)については、今後の公式情報や検証記事を必ず確認してください。
ドライバ導入と初期設定で気をつけるポイント
チップセット・GPU・オーディオ・Wi-Fi/Bluetoothドライバ
Valveやメーカーが提供する専用ドライバパッケージが公開される場合は、必ずそれを利用してください。
電源設定とゲームモード
Windows側の電源プランを「高パフォーマンス」またはゲーム向けに調整しつつ、アイドル時の消費電力が過度に増えないようバランスを取る必要があります。
Windows Updateのタイミング
大型アップデート直後はドライバとの相性問題が出やすいため、様子を見てから適用する運用も一案です。
トラブル・リスクと安全に試すためのコツ
よくあるトラブル例とリカバリの考え方
OSが起動しなくなる(ブートローダー設定の失敗)
音が出ない、Wi-Fiがつながらない(ドライバ未導入・不適合)
ストレージ容量を使い切ってしまい、ゲームのインストール余地がなくなる
こうしたトラブルに備えるために、以下のような対策が考えられます。
事前にSteamOSのリカバリメディアを作成しておく
外付けストレージ方式から試し、問題なければ内蔵への本格導入に移行する
作業の途中段階ごとにメモやスクリーンショットを残しておき、やり直ししやすくする
初心者が避けたいNG行為
手順をよく理解しないまま、パーティションを削除・フォーマットしてしまう
非公式な怪しいドライバやツールに安易に手を出す
バックアップを一切取らずに作業を始める
これらは最悪の場合、Steam Machineが起動しなくなり、復旧に大きな手間がかかる原因となります。
将来のアップデートを見越した賢い付き合い方
ProtonやSteamOSは継続的にアップデートされており、「以前は動かなかったゲームが動くようになる」ケースも増えています。
そのため、
現時点でどうしても遊びたいタイトルがWindows必須でない限り、まずはSteamOSで様子を見る
定期的に対応状況を確認しつつ、本当に必要になったタイミングでWindows導入を検討する
という「段階的なアプローチ」も十分合理的です。