※購入先、ダウンロードへのリンクにはアフィリエイトタグが含まれており、それらの購入や会員の成約、ダウンロードなどからの収益化を行う場合があります。

せん妄は死期が近いサイン?見分け方と今夜できる対応、連絡の目安

家族が突然、話がかみ合わなくなったり、見えていないものが見えると言ったり、落ち着かず動き回ったり――あるいは逆に、ぼんやりして反応が薄くなったりすると、「せん妄かもしれない」「もしかして死期が近いのでは」と胸がざわつくものです。夜間であればなおさら、どうすればよいのか分からず、不安が一気に膨らみます。

ただ、せん妄は終末期に起こりやすい一方で、脱水や感染、便秘、薬の影響などが重なって起きることもあり、手当てで軽くなるケースもあります。大切なのは、せん妄を“死期の断定材料”にしてしまわず、状況に応じて「いま最優先すべきこと」を選べるようにすることです。

この記事では、せん妄を「可逆的な原因が疑える場合」「終末期せん妄として苦痛の軽減を優先する場合」「別の緊急疾患を疑い急いで連絡すべき場合」の3つに整理し、見分けのポイント、今夜からできる安全確保と声かけ、環境調整、連絡の目安、医療者への伝え方までをチェックリストで具体的に解説します。読後には、いま何をすべきかがはっきりし、少し落ち着いて見守れる状態を目指せます。

※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。

目次

せん妄の症状を正しく捉える

せん妄は「気持ちの問題」や「性格の変化」と誤解されやすいのですが、中心にあるのは注意力の低下状態の変動です。
特徴は「急に起こり」「一日の中で良い時間と悪い時間が揺れやすい」こと。昨日まで普通に話せていたのに、今日急に違う――この“急”が重要な手がかりになります。

せん妄でよく見られるサイン

  • ぼんやりして、呼びかけへの反応が遅い

  • 話が飛ぶ、同じ質問を繰り返す、会話がかみ合わない

  • ここがどこか分からない、時間の感覚がずれる

  • 見えていないものが見える、誰かがいると言う

  • 不安や恐怖が強く、落ち着きがなくなる

  • 眠れない、昼夜逆転、夕方から悪化する

  • 逆に眠ってばかりで、動きが極端に少ない

せん妄は“興奮して暴れる”だけではありません。むしろ、静かに反応が薄くなるタイプは見逃されやすく、家族が「弱っただけ」と受け止めてしまいがちです。

過活動型せん妄と低活動型せん妄を見分ける

せん妄は大きく分けて2つのタイプがあります。どちらも同じくらい重要です。

タイプ 見た目の特徴 起きやすい困りごと 家族の基本方針
過活動型 興奮、怒り、徘徊、点滴や管を抜こうとする 転倒、事故、周囲の疲弊 安全確保が最優先。刺激を減らし、早めに相談
低活動型 ぼんやり、無気力、眠い、反応が鈍い 見逃し、脱水や感染の進行 「静かだから安心」と決めつけず、急変としてメモし相談

低活動型は、家族にとって一見ラクに見える分、支援が遅れやすいのが落とし穴です。「いつから急に変わったか」「薬を変えた直後か」「熱や尿、便、飲水はどうか」を確認して、相談につなげることが後悔を減らします。

認知症・うつ・薬の副作用との違いを一枚で把握する

せん妄は認知症と混同されやすい一方で、判断材料が違います。以下の表は“家族の見立て”のための目安です(最終判断は医療者が行います)。

観点 せん妄 認知症 うつ
始まり方 数時間〜数日で急に 数か月〜年でゆっくり 数週〜で進むことが多い
日内変動 波が大きい(夕方悪化など) 比較的一定 気分の落ち込みが中心
注意力 低下が目立つ 初期は保たれることも 集中困難は起こり得る
背景 身体要因・薬剤・環境変化 神経変性など 心理・身体の複合
次にすること 原因手がかりを集め相談 生活支援と受診 相談・治療で改善し得る

この表の目的は、家族が診断することではなく、「今の変化は急か、波があるか、注意力が落ちているか」を押さえて医療者に伝えることです。


せん妄の原因を家族が追いかけるときの考え方

せん妄の原因はひとつとは限りません。特に終末期では、体力低下の中で複数の要因が同時に起こりやすく、原因が重なります。だからこそ家族にできる最適解は、「原因を当てる」ではなく、原因の手がかりを“漏れなく”集めることです。

可逆的原因として特に多いもの

以下は、せん妄の背景としてよく関係する要因です。すべてを完璧に確認する必要はありません。できる範囲で“いつもと違う”を拾うのがコツです。

  • 脱水:飲めない、発汗、下痢、利尿薬、口が渇く、尿量が減る

  • 感染:発熱、咳や痰、尿のにおいが強い、頻尿、息苦しさ

  • 便秘・尿が出ない:便が出ていない、腹が張る、尿が少ない

  • 低酸素:息が浅い、苦しそう、唇が紫っぽい

  • 低血糖:冷汗、震え、意識がぼんやり(糖尿病治療中は特に注意)

  • 電解質異常:強いだるさ、筋力低下、吐き気など(検査が必要)

  • 痛み・呼吸苦:苦痛で眠れず、夜に悪化しやすい

  • 環境変化:入退院、部屋移動、面会制限、見慣れない人の増加

  • 薬剤の影響:新規開始、増量、飲み忘れ後の再開、貼付薬の変更

この一覧は「当てはめる」ためではなく、「相談材料を作る」ためにあります。

薬が関係しているかもしれないときの注意点

終末期では、痛み、吐き気、不安、不眠などを和らげるために薬が追加・増量されることがあります。薬が引き金になっている場合もありますが、だからといって自己判断で中止・増減するのは危険です。
家族がすべきことは「薬を止める」ではなく、「薬と症状の時間関係をメモして相談する」ことです。

  • いつ薬が追加・増量・変更されたか

  • せん妄が強くなったのは何時ごろか(夕方・夜・明け方)

  • 眠気が強すぎないか、ふらつきが増えていないか

  • 転倒・つまずきが増えていないか

  • 飲水・食事が減っていないか(薬で眠りがちになり減ることもあります)

このメモがあると、医療者は調整の判断をしやすくなります。

家族がメモする観察ポイントチェックリスト

次のチェックリストは、電話相談や受診時にそのまま読み上げられるように作っています。できる範囲で構いません。

  • 発症:いつから急に変わったか(日時)

  • 変動:一日の中で波があるか(夕方・夜に悪化など)

  • 意識:呼びかけへの反応は普段より遅いか、眠り込みが強いか

  • 体温:発熱はあるか

  • 呼吸:息苦しさ、ゼーゼー、唇の色(紫っぽさ)

  • 水分:今日の飲水量はどれくらいか(コップ何杯など)

  • 食事:食べられているか、むせが増えていないか

  • 尿:回数・量・色・におい、尿が出にくい感じ

  • 便:最後に出た日、便秘が続いていないか

  • 痛み:表情がつらそう、うなり、身の置き所がない様子

  • 薬:最近の変更(追加・増量・中止・貼付薬の交換)

  • 事故:転倒、頭を打った、けいれんの有無

  • もともと:普段の会話力、物忘れの程度


せん妄が起きたとき今夜からできる対応

今夜の対応は、完璧を目指すほど苦しくなります。優先順位は明確です。
①安全確保 → ②刺激を減らす → ③安心を返す声かけ → ④原因の手がかりをメモ → ⑤連絡判断
この順で動くと、家族の負担が減り、本人の怖さも減りやすくなります。

まず安全確保でやること

せん妄のときは転倒や事故が最も起こりやすく、家族がパニックになりやすい場面です。まずは環境で事故確率を下げます。

  1. 床の障害物をどける(コード、段差、散乱物)

  2. 夜間は足元灯をつける(暗闇は恐怖と転倒を増やします)

  3. 危険物を遠ざける(刃物、火元、薬の袋、紐)

  4. できれば一人にしない(短時間でも交代制)

  5. “抑え込む”より“危険を減らす”(無理な拘束は双方のけがにつながります)

安全確保ができるだけで、せん妄が落ち着くこともあります。

落ち着かせる声かけの基本は否定しないこと

せん妄の相手は、「見えている」「聞こえている」「狙われている」などを本人は現実として感じています。そこで否定や訂正をすると、恐怖が強まり、対立や興奮が増えることがあります。
声かけの目的は、正しい説明をすることではなく、安心を返して安全に過ごすことです。

  • 低い声で、短い文で

  • 同時に話しかける人数を減らす

  • 目線を合わせ、ゆっくり名乗る(「私は○○だよ」)

  • 理屈で説得しない

  • 選択肢は2つまで(「水にする? お茶にする?」)

言い換えの例:

  • 「そんな人いない」→「怖かったね。ここは安全だよ」

  • 「落ち着いて」→「大丈夫。そばにいるよ」

  • 「何回言えば分かる」→「一緒に確認しようね」

  • 「病院なんだから」→「今はここで休もう。安心していいよ」

環境調整チェックリスト:刺激を減らして見当識を助ける

せん妄の背景には、疲労・睡眠不足・見慣れない環境が重なっていることがよくあります。環境は薬より早く効くこともあります。

  • 明るさ:昼は自然光、夜は暗くしすぎない(足元灯)

  • 見当識:時計・カレンダーを見える位置に

  • 感覚補助:眼鏡・補聴器を使える状態に(見えない/聞こえないは混乱を増やします)

  • 音:テレビの音量を下げ、同時に複数の音を鳴らさない

  • 人の出入り:介助者を頻繁に変えない(可能なら固定)

  • 慣れ:いつもの毛布、写真、枕など“馴染み”を置く

  • 会話:一度に話す内容を増やさない(短く、ゆっくり)

夜間に悪化しやすいときの運用を先に決める

夜のせん妄で最もつらいのは、家族が「今夜だけ乗り切れば」と徹夜を重ねてしまうことです。疲労がたまるほど判断が鈍り、転倒や事故のリスクが上がります。夜間運用は“気合”ではなく“仕組み”で支えます。

  • 連絡先を紙に書く(主治医・訪問看護・病棟・救急の順番)

  • 夜間の連絡基準を家族内で共有(次の「信号機」表を印刷推奨)

  • 交代の時間を先に決める(2時間でもよい)

  • どうしても危険が高い夜は、レスパイトや入院の相談を「前もって」しておく


医療者へ連絡する目安を迷わず決める

せん妄対応で最も重要なUXは、「連絡すべきか迷う時間」を短くすることです。ここでは信号機(赤・黄・緑)で整理します。地域や療養形態で連絡先は異なりますが、判断軸は共通です。

連絡の目安信号機:赤黄緑で判断する

状況 具体例 推奨行動
今すぐ連絡・救急も含め検討 片麻痺・ろれつが回らない、けいれん、強い呼吸苦やチアノーゼ、頭部外傷後の急変、意識が極端に低下、強い脱水でほとんど飲めない、自傷他害の恐れ ためらわず連絡。状況次第で救急要請も
当日中に相談したい 発熱、尿の異常(におい・出ない)、便秘3日以上、薬変更後に急悪化、不眠で不穏が続く、転倒リスクが高い徘徊 主治医・訪問看護・病棟へ連絡し指示を仰ぐ
今夜は見守り+翌日相談でよいことが多い 環境調整で落ち着く、短時間の混乱で回復傾向、危険サインがない 観察メモを残し、翌日相談。悪化したら黄/赤へ

この表の狙いは、「今夜の不安」を「今夜の行動」に変えることです。迷うほど不安が増えるため、家族内で表現を揃えておくと楽になります。

在宅・入院・施設で相談先が違うときの整理

  • 在宅:訪問看護の緊急連絡、訪問診療(主治医)、必要時に救急

  • 入院:病棟ナースステーション、当直医

  • 施設:夜勤者→施設の連絡手順→嘱託医/協力医療機関

「どこに連絡するか」を紙で見える化しておくと、夜間の判断が一段ラクになります。

医療者への伝え方テンプレ:短く正確に伝える

電話は緊張します。次の順に話すと通じやすいです。メモを見ながらそのまま読んで構いません。

項目
状況 「○時から急に会話がかみ合わず、落ち着きがありません(または反応が鈍いです)」
背景 「終末期で在宅療養中です。普段は○○程度の会話ができます」
観察 「熱は○度、尿は○回、便は○日出ていません。水分はコップ○杯です」
「○日に薬が追加/増量され、その後から悪化しています」
依頼 「今夜の対応指示をください。受診/往診の必要はありますか」

このテンプレを使うだけで、医療者側も原因探索と対応を立てやすくなります。


終末期せん妄で後悔を減らすための方針の立て方

終末期のせん妄では、原因を取り除ける場合もあれば、身体の状態から改善が難しい場合もあります。ここで重要なのは、家族が「何を目標にするか」をはっきりさせることです。目標が定まると、選択に納得感が出ます。

改善を目指す場面と苦痛軽減を優先する場面

  • 改善を目指しやすい場面

    • 薬変更直後の悪化

    • 明らかな脱水や便秘、尿の異常、発熱がある

    • 環境調整で落ち着く時間が出る

    • “急に悪くなった”がはっきりしている
      この場合は、原因の手がかりをメモして相談し、対応で軽くなる可能性があります。

  • 苦痛軽減を優先しやすい場面

    • 全身状態が大きく低下し、食事・水分がほとんど取れない

    • 原因が複合し、改善が難しいと医療者から説明されている

    • せん妄による恐怖・興奮で本人が強く苦しんでいる
      この場合は「穏やかさ」「安全」「怖さの軽減」を中心に組み立てます。

どちらの場面でも共通なのは、家族が一人で抱え込まないことです。支援を使うことは、本人のためでもあります。

鎮静や薬の話題が出たときの考え方を整える

終末期のケアでは、「眠らせるのは寿命を縮めるのでは」と不安になることがあります。ここで大切なのは、薬や鎮静は“目的”ではなく、“苦痛がどうしても取りきれないときの手段”として検討されるという点です。
疑問があるときは、遠慮せずに次を確認してください。

  • 何の苦痛を和らげる目的か(恐怖、不安、呼吸苦、興奮など)

  • まず試す非薬物対応は何か(環境、疼痛コントロールなど)

  • 家族は何を見守ればよいか(呼吸、反応、苦痛サイン)

  • 連絡すべき変化は何か

この確認ができると、家族の納得感が上がり、後悔が減りやすくなります。

介護者が休むことはケアの一部

せん妄の対応は、家族の睡眠と判断力を奪います。介護者が限界を超えると事故が増え、本人の不安も高まります。
「休む」は逃げではなく、ケアの継続条件です。できることからで構いません。

  • 交代できる人を1人だけでも確保する

  • 夜間の連絡基準を共有し、判断の迷いを減らす

  • 訪問看護や病棟に「夜が一番つらい」と具体的に伝える

  • どうしても厳しいときの選択肢(レスパイト・入院)を早めに相談する


よくある質問

せん妄が出たらもう元に戻らないのでしょうか

元に戻る可能性があるケースもあります。特に脱水・感染・便秘・薬の影響など、背景が手当てできる場合は軽くなることがあります。一方で、終末期で全身状態が大きく落ちていると改善が難しい場合もあります。大切なのは「戻る/戻らない」の二択で悩むのではなく、危険サインを見逃さず、今できる最善(安全確保・安心の声かけ・原因の手がかり収集・相談)を積み重ねることです。

眠ってばかりで反応が薄いのもせん妄ですか

低活動型せん妄では、ぼんやり・無気力・反応低下が目立つことがあります。「眠れているから良い」と決めつけず、急にそうなったのか、薬変更後か、熱や飲水がどうかをメモして相談につなげてください。

本人の言い分を訂正した方がよいですか

基本は訂正より安心を優先します。否定は恐怖を増やしやすいので、「怖かったね」「ここは安全だよ」「そばにいるよ」と感情に寄り添う声かけが落ち着きやすいことがあります。どうしても危険行動につながる場合は、言い争いより環境調整(危険物を遠ざける、刺激を減らす)を先に行ってください。

せん妄で暴れるとき家族だけで抑えるべきですか

無理に抑え込むと、本人も家族もけがをする危険があります。まず安全確保(危険物をどける、転倒防止、見守りの交代)を行い、連絡の目安が黄や赤に当たるなら早めに相談してください。家族だけで抱え込まないことが重要です。

在宅で夜が不安なとき何を準備すればよいですか

「連絡先の見える化」「信号機の連絡基準」「交代の仕組み」「環境調整」が柱です。特に連絡基準が曖昧だと夜間の不安が増えるため、この記事の表を印刷し、家族で共有してください。必要があれば、訪問看護に「夜が一番危険で不安」と率直に伝えると、体制の相談が進みやすくなります。


参考情報