ビジネスメールやチャットでは、後から補足が出たり、添付漏れに気づいたりして、連絡が複数回に分かれてしまうことがございます。その際に「五月雨式に申し訳ございません」と添えると、相手の受信負担や読み直しの手間に対する配慮を、短い一文で示せます。
一方で、この表現は便利である反面、使い方を誤ると「段取りが悪い」「情報が散らかっている」と受け取られるリスクもあります。相手は謝罪そのものよりも、「どの情報が最新で、何をすればよいか」を知りたいからです。つまり、言葉選びと同じくらい、文章の構成や差分の伝え方が重要になります。
本記事では、「五月雨式に申し訳ございません」の意味とニュアンス、適切な使用場面、用途別の例文テンプレート、言い換えの判断軸、送信前に確認すべきポイントまで、体系的に整理いたします。メールだけでなく、Slack・Teamsなどのチャットにも転用できるよう、短文化の型も併記いたします。
※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。
五月雨式に申し訳ございませんの意味とニュアンス
五月雨式の読み方と辞書的な意味
「五月雨式」は「さみだれしき」と読みます。日常会話で頻繁に出る言葉ではないため、読み方を含めて不安になる方も少なくありません。
意味としては、「物事が一度で終わらず、断続的に行われること」「時間をおいて何度かに分かれて進むこと」を表します。ビジネスでは、次のような状態を指して使われます。
追加の連絡が続き、メールやチャットが連投になる
資料の送付が複数回に分かれる
納品が一括ではなく分割になる
訂正や補足が後追いで発生し、情報が更新され続ける
ここで大切なのは、「五月雨式」は“状態の説明”であって、“謝罪の言葉そのもの”ではないという点です。したがって、相手への配慮を完成させるには、次の節で述べるとおり謝罪表現を添える必要がございます。
謝罪語ではないため添える言葉が必要
「五月雨式」は、それ単体では相手への敬意やお詫びを表しません。あくまで「断続的になっている」という状況説明です。そのため、相手に負担をかけている認識を示すには、謝罪・配慮の言葉を組み合わせます。
よく使われる組み合わせは、次のとおりです。
五月雨式に申し訳ございません
相手の手間を増やしたことを、明確に詫びる言い方です。添付漏れ、訂正、重要な追送など、こちら側の不備が関係する場面に適します。
五月雨式に失礼いたします
連投という“行為”に対する非礼を和らげます。謝罪の強さは「申し訳ございません」より軽く、チャットでも使いやすい表現です。
五月雨式に恐れ入ります
相手に確認や対応をお願いする場面に向きます。詫びと依頼の中間のような柔らかい印象になりやすいです。
使い分けの基準は単純で、次のように考えると迷いにくくなります。
こちらのミスや準備不足が絡む → 「申し訳ございません」
連絡が続くこと自体が主題で、ミスとは限らない → 「失礼いたします」
連絡が続いた上で、相手に確認や判断をお願いしたい → 「恐れ入ります」
なお、謝罪を強めれば丁寧になるとは限りません。状況に比べて過剰に重い謝罪を重ねると、相手に気を遣わせることもあります。適切な強度で、短く整えることが重要です。
相手が受け取りやすいニュアンスと誤解ポイント
「五月雨式」は、梅雨の雨が降ったり止んだりしながら続く様子を連想させます。その比喩ゆえに、便利である一方、次のような誤解も生みやすい表現です。
だらだら連絡している印象になる
まとめて送るべき情報を、準備不足のまま小出しにしているように見える
どのメールが最終版なのか分かりにくい、という不満を誘発する
この誤解は「言葉の問題」というより「情報の整理の不足」から発生します。したがって、表現を入れるだけで安心せず、次の工夫を必ずセットで行うことが望ましいです。
追送の目的を一文で言い切る
何が変わったかを箇条書きで示す
相手に求める次の行動を明確にする
可能なら、最後に「本件の最新版は本メールです」と明記する
さらに、相手の業務負担が大きい場面では、「五月雨式」を使うよりも、より直接的で誤解の少ない言い換えにした方が適切な場合もあります。言い換えについては後述いたします。
五月雨式に申し訳ございませんを使う場面と使わない場面
追送・補足・訂正で連絡が続く場面
最も典型的で、実際に使用頻度が高いのは、送信後に追加情報が出て追送になるケースです。具体的には次のとおりです。
添付漏れに気づき、資料を再送する
数字、日付、金額などの訂正が発生する
条件や背景の補足が必要になる
先方からの質問に答える中で、追加資料を送る
この場面でのポイントは、「何を、なぜ、いま送っているか」を短く明確にすることです。「五月雨式に申し訳ございません」だけでは情報量が不足し、相手は“何が来たのか”を把握するためにメールを読み込む必要が生じます。
おすすめの型は、次の順序です。
配慮の一文
追送の目的
要点の箇条書き
相手に求める行動
例としては、次のような構成が安定します。
五月雨式に申し訳ございません。先ほどの件、添付漏れがございましたため再送いたします。
添付:〇〇資料
ご確認のほどよろしくお願い申し上げます。
これだけでも、相手の負担は大きく下がります。
分割送付・分割納品で回数が増える場面
次に多いのが、事情により一括で送れず、分割で送付・納品するケースです。ここでは「五月雨式に申し訳ございません」を添えること自体は有効ですが、注意点が増えます。
分割送付・分割納品は、相手側の受領、確認、社内展開、検収などの段取りに影響するため、単なる謝罪ではなく、相手が判断できる情報を同時に提示する必要があります。
最低限、次の要素を含めると丁寧です。
分割になる理由
分割の回数と範囲
送付・納品の予定日
先方に問題ないかの確認
一括対応の代替案がある場合は選択肢として提示
これらを入れずに「五月雨式に申し訳ございません」とだけ述べると、「いつ終わるのか」「何回来るのか」が不明瞭で、かえって相手のストレスが増える恐れがあります。
口頭・会議中などで避けたい場面
「五月雨式に申し訳ございません」は、文章では整って見える一方、口頭では硬く聞こえる場合がございます。会議や電話で多用すると、表現だけが目立ち、会話が不自然になりがちです。
口頭では、次のような言い換えが無難です。
度々申し訳ございません
重ね重ね申し訳ございません
立て続けに失礼いたします
口頭は相手の反応を見ながら言葉を選べるため、難しい慣用表現を使うより、自然な謝意を短く伝える方が結果として丁寧になります。
ビジネスメール例文テンプレ集
ここからは、状況別にそのまま使えるテンプレートを提示いたします。文面のポイントは共通しており、「謝意 → 要件 → 差分 → 次アクション」を守るだけで、読み手の負担が大きく減ります。
追送の冒頭一文テンプレ
追送は“速さ”が重要な場面が多い一方、相手が混乱しない整理も必要です。用途に応じて次の型をご利用ください。
短文版
五月雨式に申し訳ございません。先ほどの件、補足がございます。
標準版
五月雨式に申し訳ございません。先ほどのご連絡に補足があり、追ってご案内いたします。
丁寧版
五月雨式に申し訳ございません。先ほどのご連絡内容につきまして、補足事項がございますため追ってお送りいたします。
追送が複数回に及ぶときは、最後に「本件の補足は以上です」や「現時点の最新版は本メールです」と添えると、相手の不安を減らせます。
添付漏れ・訂正のテンプレ
添付漏れや訂正は、相手が“どの情報が正しいか”を再確認する必要があるため、差分の見せ方が最重要です。
添付漏れ
件名:資料送付の件(添付追送)
〇〇様
お世話になっております。△△株式会社の□□です。
五月雨式に申し訳ございません。先ほどのメールにて、添付が漏れておりました。
下記資料を添付のうえ、改めてお送りいたします。
添付:〇〇資料(PDF)
お手数をおかけいたしますが、ご確認のほどよろしくお願い申し上げます。
訂正
件名:【訂正】〇〇のご案内(数値修正)
〇〇様
お世話になっております。△△株式会社の□□です。
五月雨式に申し訳ございません。先ほどご案内した内容に一部誤りがございましたため、下記のとおり訂正いたします。
誤:〇〇円
正:〇〇円
混乱を招き申し訳ございません。ご不明点がございましたらお知らせください。
訂正の場面では、理由の長い説明よりも、誤りと正しい値を簡潔に並べる方が親切です。相手が社内共有している可能性もあるため、必要に応じて「社内共有済みの場合は、本メールをご共有ください」と添えるのも有効です。
分割送付のテンプレ
分割送付は、相手が“いつ何が来るか”を把握できれば負担は減ります。逆に、予定が曖昧だと不満が増えます。
容量制限で分割
件名:〇〇資料送付(第1便)
〇〇様
お世話になっております。△△株式会社の□□です。
五月雨式に申し訳ございません。添付容量の都合により、資料を複数回に分けてお送りいたします。
本メールでは下記を送付いたします。
第1便:〇〇資料(PDF)
続きは本日中に同件名にてお送りします。
お手数をおかけいたしますが、よろしくお願い申し上げます。
段階共有で分割
件名:〇〇資料共有(確定分から順次送付)
〇〇様
お世話になっております。△△株式会社の□□です。
五月雨式に恐れ入ります。確定した範囲から順次共有いたします。
本メールでは下記範囲をご確認いただけますでしょうか。
共有範囲:〇〇の概要、見積条件、スケジュール案
残りは〇月〇日までにお送りします。ご都合の悪い点がございましたらお知らせください。
段階共有では、「相手がいま判断できること」と「後で届くこと」を分けて書くと、相手は安心して読み進められます。
分割納品のテンプレ
分割納品は、相手の受領・検収フローに影響しやすいため、「相談」または「確認」を必ず入れるのが望ましいです。相手に主導権がある形にすることで、関係性が安定します。
可否確認つき
件名:〇〇の納品について(分割納品のご相談)
〇〇様
お世話になっております。△△株式会社の□□です。
五月雨式に申し訳ございません。手配の都合により、〇〇を一括ではなく分割にて納品させていただきたく存じます。
差し支えなければ、下記日程での納品はいかがでしょうか。
第1回:〇月〇日 〇〇
第2回:〇月〇日 〇〇
一括での納品をご希望の場合は、最短で〇月〇日の一括納品も可能です。
ご都合のよい方法をご教示いただけますと幸いです。
分割納品は「謝罪」で終わらせず、「選択肢」を添えることで、相手が社内調整しやすくなります。とくに納期が関わる案件では、相手が社内で説明する際の材料になります。
言い換えと使い分け早見表
言い換え候補一覧
「五月雨式」は便利ですが、相手や状況によっては、より明確な表現に置き換えた方が伝わりやすい場合もあります。代表的な言い換えは次のとおりです。
度々申し訳ございません
回数が増えた事実を素直に詫びる表現です。口頭でも自然です。
重ね重ね申し訳ございません
丁寧ですが、謝罪の重さが増します。重大な訂正や迷惑が大きい場面で有効です。
立て続けに失礼いたします
連投の非礼を和らげます。チャットにも適します。
小出しになり申し訳ございません
状況が一瞬で伝わりますが、やや口語寄りのため、社外の堅い相手には注意が必要です。
断続的なご連絡となり申し訳ございません
意味が明確で誤解が少ない一方、文が長くなりやすい傾向があります。
「五月雨式」に抵抗がある相手や、読み手が多いメールでは、「断続的なご連絡」などの説明的な表現の方が無難な場合がございます。
相手・媒体・原因別の選び方
使い分けで迷うときは、次の4軸で判断すると整理できます。
相手との関係
社外・初回取引:丁寧で誤解の少ない表現を優先します。「申し訳ございません」「恐れ入ります」が無難です。
社内・近い関係:簡潔さを優先できます。「失礼いたします」や短い言い換えが適します。
媒体
メール:読み返されるため、言葉の整いと差分の明示が重要です。
チャット:通知が負担になりやすいため、短文化と要点の先出しが重要です。
原因
こちらのミス:謝罪を明確にし、差分を明示します。
事情による分割:謝罪より、理由と予定、可否確認が重要です。
回数
2通目:軽めの配慮で十分な場合が多いです。
3通以上:最後に要約を置き、相手の混乱を止める工夫が必要です。
これらを踏まえたうえで、次の比較表をご活用ください。
言い換え比較表
| 表現 | 丁寧度 | 向く場面 | 向く媒体 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 五月雨式に申し訳ございません | 高 | 追送、訂正、添付漏れ、分割連絡 | メール、チャット | 使いすぎると段取り悪く見える可能性 |
| 立て続けに失礼いたします | 中〜高 | 連投の非礼を和らげたい | チャット、メール | 謝罪の強さは控えめ |
| 度々申し訳ございません | 中〜高 | 口頭でも自然、回数への謝罪 | 口頭、メール | 何が度々かの要点を別途示す |
| 小出しになり申し訳ございません | 中 | 状況を直感的に伝えたい | チャット | 社外の堅い相手にはラフに見える場合 |
| 断続的なご連絡となり申し訳ございません | 高 | 誤解なく意味を伝えたい | メール | 長文化しやすいので要点を先に置く |
失礼を避けるためのチェックリストと運用のコツ
送信前チェックリスト
「五月雨式」になってしまう最大の理由は、送信前に情報が整理されていないことです。言葉を整える前に、まず“相手の負担を増やさない”観点でチェックいたします。
要点が冒頭にまとまっている
追送・訂正・分割の理由が一文で分かる
何が変わったかが明確である
誤・正、旧・新が並列で示されている
添付ファイル名と形式が本文に記載されている
相手が次に取る行動が明記されている
期限や希望日がある場合は明確である
件名が目的別に識別できる
宛先と共有範囲が適切である
最後に読み手視点で読み直している
チェックリストは、テンプレートとして運用すると効果が高まります。特に添付漏れは、送信前確認で大幅に減らせます。
件名の付け方と情報のまとめ方
件名は「相手が受信箱で瞬時に判断するためのラベル」です。追送が続くほど、件名の設計が効いてきます。
おすすめの件名例は次のとおりです。
資料送付の件(添付追送)
【訂正】〇〇のご案内(数値修正)
〇〇資料送付(第1便)
〇〇の納品について(分割納品のご相談)
本文のまとめ方は、次の順番が最も安定します。
配慮の一文
要件の要約
要点を箇条書き
次アクションと期限
必要に応じて補足
この順序にすると、相手は冒頭数行で必要十分な情報を把握でき、忙しいときでも判断が容易になります。
チャット連投を減らす工夫
チャットは便利ですが、通知の連続が負担になりやすい媒体です。とくに相手が会議中や移動中の可能性がある場合、連投は印象を悪化させることもあります。次の工夫で、連投の頻度と負担を減らせます。
先に「これから追送がある」ことを一言で予告する
スレッド機能を使い、同一トピックを同じ場所に集約する
変更点だけを短く送る
3通以上になったら、最後に要約を一通入れる
急ぎでない追送は、一定時間まとめてから送る
チャット向け短文テンプレートは次のとおりです。
五月雨式に失礼いたします。先ほどの件、添付漏れがあり再送いたします。
五月雨式に恐れ入ります。差分のみ共有いたします。
立て続けに失礼いたします。数字の修正があり、下記が最新版です。
チャットは“短く、目的を先に”が基本です。丁寧さは、冗長さではなく、相手が理解しやすい情報整理で表現されます。
よくある質問
目上に使ってよいですか
使用して差し支えありません。ただし、目上の方ほど多忙である可能性が高いため、「五月雨式に申し訳ございません」と添えるだけでなく、差分や要点を明確にして、読み直しの負担を最小化することが重要です。丁寧な表現ほど、情報整理が伴って初めて好印象になります。
何回目から使うべきですか
明確な回数の基準はありません。判断基準は「相手の手間が増えるかどうか」です。例えば、添付漏れや訂正は2通目でも相手の負担が増えるため、早い段階で配慮を示す価値があります。一方で、軽微な補足を一度送る程度であれば、過度に重い謝罪は不要な場合もあります。
英語ではどう書けばよいですか
英語では慣用表現を直訳せず、「一度にまとめて送れず申し訳ない」「複数のメールになってしまった」という意味になるよう、平易に表現するのが一般的です。フォーマル度に応じて次のように使い分けられます。
丁寧:I apologize for not being able to send all the details at once.
標準:My apologies for sending multiple messages.
くだけた場:Sorry for the back-to-back messages.
相手の国や文化によって謝罪の重さの受け取り方が異なるため、謝罪を強めすぎず、代わりに「どれが最新版か」「次に何が必要か」を明確にする方がトラブルを避けやすいです。
五月雨と五月雨式の違いは何ですか
「五月雨」は本来、梅雨どきの長雨を指します。「五月雨式」はその比喩として、「断続的に続くやり方」「一度で終わらない進行」を表す言い方です。ビジネスで問題になるのは後者であり、「連絡が分割になる状態」を端的に示すために用いられます。
まとめ
「五月雨式に申し訳ございません」は、追送や訂正、分割送付・分割納品などで連絡が断続的になった際に、相手の負担増への配慮を示す表現です。ただし、表現そのもの以上に、相手が迷わない情報整理が重要です。
「五月雨式」は状態説明であり、謝罪語ではないため、謝意の言葉を添える
追送や訂正は、差分を明確にし、相手の読み直しコストを下げる
分割送付・分割納品は、理由・予定・可否確認・選択肢までセットで提示する
チャットは連投が負担になりやすいため、予告・スレッド・要約で集約する
送信前チェックリストと件名設計を整えると、「五月雨式」自体を減らせる
今後、追送が必要になった際は、本記事のテンプレートを用途別に使い分けていただき、最後に要点の要約や最新版の明記を加えると、相手の負担を最小化しながら丁寧なコミュニケーションを維持できます。なお、メール運用ルールや添付制限、社内フローは変更されることもあるため、分割送付・分割納品の際は、その都度相手の都合確認も併せて行ってください。
