「利己的だよね」と言われて、心に引っかかったことはありませんか。
あるいは、身近な誰かの行動に「それって利己的では…?」と感じつつ、どう扱えばいいかわからず疲れているかもしれません。
利己的という言葉は強く、使い方を誤ると人間関係に大きな溝をつくります。一方で、自分の都合を優先することすべてが利己的なわけではありません。その線引きが曖昧なままでは、必要以上に我慢したり、逆に誤解されたりしがちです。
本記事では、「利己的とは何か」という辞書的な意味を土台に、自己中心的・わがままとの違い、利他的との境界線を整理します。さらに、利己的と思われやすい行動パターンのチェックや、角を立てずに断る方法、利己的な相手に振り回されないための具体的な対処ルールまで解説します。
言葉の意味を知るだけで終わらせず、人間関係を楽にする判断基準と使える行動指針を持ち帰れる内容です。
「自分はどう振る舞えばいいのか」「どう対応すれば消耗しないのか」を整理したい方は、ぜひ最後まで読み進めてください。
※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。
利己的とは何かを短く押さえる
辞書でわかる利己的の中心的な意味
利己的とは、簡単に言えば「自分の利益を中心に考え、他人の立場などを考えないで行動するさま」です。
ここで大事なのは、「自分を優先する」こと自体ではなく、他人の立場・負担・不利益への想像が抜け落ちやすい点です。
たとえば、次の2つは似て見えて、周囲の受け取り方が変わります。
-
A:今週は体調が悪いので、仕事量を調整してほしい(説明と調整がある)
-
B:忙しいから無理。あとはよろしく(調整も代替案もなく投げる)
Aは自己防衛や現実的な調整として受け取られやすい一方、Bは「しわ寄せ」を生みやすく、利己的と見なされやすいのです。
利己的が問題になりやすい場面の共通点
利己的という評価が出やすいのは、単独行動よりも「共同作業」「役割分担」「利害調整」がある場面です。具体的には次のような状況が典型です。
-
チームで成果を出す必要があり、誰かの遅れが全体に響く
-
家事・育児・介護のように、作業が終わらない限り誰かが背負う
-
ルールや順番があり、破ると他人の負担が増える
-
上下関係や性格的な要因で、断りづらい人がいる
つまり、利己的かどうかは性格診断ではなく、状況の中で負担がどう配分されているかで見えることが多いのです。
自分優先がすべて利己的になるわけではない
「自分の都合を優先したら利己的なのでは」と不安になる人ほど、普段から周囲に配慮している可能性があります。
ここは安心して大丈夫です。自分を守ることは必要です。
自分優先でも、利己的と受け取られにくい行動には共通点があります。
-
事前に伝える(突然の押し付けにしない)
-
理由を短く説明する(言い訳ではなく状況共有)
-
代替案を出す(ゼロ回答で終わらせない)
-
次の機会で埋め合わせる(関係のバランスを取る)
逆に、利己的と見なされやすいのは、次の3点が揃ったときです。
-
他人の負担が増える
-
負担が同じ人に固定化する
-
説明・調整・代替案がない
この3つは、以降の記事全体を通じた「線引きの軸」になります。
利己的と自己中心的やわがままの違い
利益が中心か視点が中心かで分ける
「利己的」と近い言葉として「自己中心的」があります。日常会話では混ざって使われがちですが、違いを“中心にあるもの”で整理すると迷いが減ります。
-
利己的:損得や自己利益の確保が中心になりやすい
-
自己中心的:自分の視点・価値観が中心になりやすい(利益とは限らない)
たとえば、会議で「私はこう思う」を譲らずに他人の意見を聞かない人は自己中心的と言われやすい一方、仕事の面倒な部分を避けて成果だけ取りにいく人は利己的と言われやすい、という具合です。
ここで重要なのは、相手を言い当てることではなく、対処が変わることです。
自己中心的には「視点を増やす問いかけ(相手の事情に触れる)」が効きやすく、利己的には「負担の偏りを仕組みで止める(ルール化・可視化)」が効きやすい傾向があります。
わがままとの違いは感情か損得か
「わがまま」は、欲求や感情が前に出るときに使われやすい言葉です。
-
わがまま:今の気分・欲求を優先する(感情寄り)
-
利己的:損を避け、得を取りにいく(損得寄り)
たとえば「今日は気分が乗らないから全部やめる、でもあなたはやって」は、わがまま寄りに見られやすく、「面倒な仕事は避けるが評価につながる仕事だけは確保する」は利己的寄りに見られやすいです。
もちろん、現実は混ざります。ただ、軸を持つと「今の困りごとは何型か」を整理でき、打つ手が明確になります。
混同しやすい言葉の早見表
以下は、よく混同される言葉を「判断軸」と「誤解ポイント」「安全な言い換え」まで含めて整理した表です。
| 言葉 | 中心にあるもの | 周囲から見える印象 | 典型例 | 誤解が起きるポイント | 安全な言い換え |
|---|---|---|---|---|---|
| 利己的 | 損得・自己利益 | 不公平、しわ寄せ | 面倒な作業を避け、成果だけ取る | 自分優先=利己的と短絡しやすい | 「配慮が薄い」「負担が偏っている」 |
| 自己中心的 | 自分の視点・価値観 | 話が通じにくい | 相手事情を無視して自分のやり方 | 利益追求と混同されやすい | 「視点が一つに偏る」 |
| わがまま | 欲求・気分 | 振り回される | 気分で要求が変わる | 利己的と一括りにされやすい | 「感情が先に立つ」 |
| 打算的 | 条件・計算 | 冷たい、条件次第 | 得がないと動かない | 合理性と混同されやすい | 「条件の整理が強い」 |
「利己的」と言い切ると対立が起きそうな場面では、まず「負担が偏っている」「配慮が足りない」といった表現に置き換えるだけで、摩擦が減ることが多いです。
利己的と利他的の違いと境界線
利他は善で利己は悪と決めつけない
利己的という言葉は、悪口として使われがちです。しかし、人間関係を整理する目的なら、善悪の判定を急がないほうが得です。
なぜなら、人は誰でも状況によって利己にも利他にも振れ、さらに「自分を守る」ことは必要だからです。
ここで役に立つのが、次の考え方です。
-
利己:自分の利益を守る行動(必要なこともある)
-
利己的(問題化する利己):他者への配慮が欠け、負担を固定化させる行動
-
利他:他者の利益に配慮する行動(自分を犠牲にしすぎる必要はない)
要するに、「利己」そのものを否定する必要はありません。
問題は、共同体の中で“負担の配分”が壊れていくことです。
両立する行動がある(長期の信頼・互恵)
一見利他的に見える行動が、長期的には自分の利益にもなることがあります。
たとえば、チームで誠実に情報共有をして信頼を得れば、いざ自分が困ったときに助けてもらえる可能性が高まります。これは「互恵(お互いさま)」が働くからです。
逆に短期の得だけを取りにいくと、信用が落ち、長期では損をすることが多い。
この視点を持つと、「今の振る舞いは長期で得か損か」という現実的な判断ができるようになります。
研究で語られる利己性と利他性の見方
行動経済学や心理学では、利他的行動・利己的行動を実験で観察し、人は必ずしも「完全に利己的」でも「完全に利他的」でもないことが示されてきました。
たとえば、独裁者ゲーム(ディクテーターゲーム)という実験枠組みでは、理屈上は全額を自分が取るのが合理的でも、実際には一定割合を相手に分ける傾向が報告されています。こうした知見は、利他・利己を「性格の断罪」ではなく「状況と意思決定の傾向」として扱う手がかりになります。
ここから実務的(※言葉としては使いませんが)に言えるのは、次のことです。
-
“性格を直す”より、“状況を整える”ほうが成功率が高い
-
ルール、可視化、合意条件で、利己的行動のコストを上げられる
-
感情でぶつかるより、仕組みで摩擦を減らせる
利己的と思われやすい行動パターンとチェックリスト
職場で起きやすい利己的サイン
職場で利己的と言われやすいのは、成果・評価・分担が絡むからです。典型は次の通りです。
-
面倒な作業(調整、雑務、クレーム、引き継ぎ)を避ける
-
期限を守らず、尻拭いを周囲に回す
-
情報共有を渋り、自分だけが優位になる
-
会議では声が大きいが、実行は他人に任せる
-
ミスは他人のせい、成果は自分のもの
ただ、ここで注意したいのは「本人に悪意がない場合」もあることです。
能力不足、過負荷、優先順位付けの弱さ、マネジメント不在などで、結果的に利己的に見えるケースがあります。
だからこそ、対処は「性格批判」よりも次の順番が安全です。
-
事実を整理する(何が、どれくらい偏っているか)
-
条件を合意する(期限・範囲・完成条件)
-
仕組みに落とす(タスク管理、当番制、承認フロー)
家庭・友人関係で起きやすい利己的サイン
家庭や友人関係では、ルールが曖昧で「やってくれる人がやる」になりやすいです。ここに利己的な構造が生まれます。
-
家事育児の見えない負担を当然扱いする
-
自分の予定を優先し、相手の調整を当たり前にする
-
感謝や労いがなく、無償の提供が固定化する
-
お金・時間・労力の負担が片側に寄る
-
断ると不機嫌になる、罪悪感を与える
この領域では、問題の本質が「愛情の不足」ではなく、負担の設計不良であることが多いです。
愛情の話にすると揉めますが、負担の話にすると合意が取りやすい。ここは大きな違いです。
セルフチェック10項目(利己的に見られやすい癖)
以下は「自分が利己的に見られやすい癖」を点検するためのチェックです。自分を責めるためではなく、修正しやすいポイントを見つけるために使ってください。
-
依頼するとき、相手の状況確認を省きがち
-
断られると「冷たい」と感じやすい
-
自分の希望を先に言い、相手の希望を後回しにしがち
-
面倒な部分を引き受ける人を“便利”だと思ってしまう
-
ルールより「自分は特別」を優先することがある
-
成果は欲しいが、負担は引き受けたくない
-
説明よりも「とにかくやって」を選びがち
-
他人のミスに厳しく、自分のミスに甘くなりがち
-
感謝を言う回数が少ない
-
長期の信頼より短期の得を取りにいきがち
3つ以上当てはまるなら、「相手への配慮」より先に「運用の工夫」で改善できます。たとえば、依頼の型を作る、断り方をテンプレ化する、当番を明確にする、などです。
利己的と言われない伝え方と境界線の作り方
先に相手の事情を言語化してから要望を言う
同じ要望でも、相手の事情に触れてから話すだけで、受け取られ方は大きく変わります。ここでの狙いは、相手に迎合することではなく、「あなたの状況を見ています」と示すことです。
-
悪い例:
「今日中にお願い。私無理だから」 -
良い例:
「今日かなり立て込んでいるよね。その上で相談なんだけど、ここだけ手伝ってもらえる?」
さらに効果を高めるなら、次の順番が安定します。
-
共感(状況の言語化)
-
依頼(お願いしたいこと)
-
条件(期限・範囲・完成条件)
-
選択肢(難しい場合の代替案)
この順番にするだけで、利己的に見えにくくなります。
交換条件ではなく合意条件で話す
利己的に見られやすい会話は、「損得の交換」だけで進むことがあります。
-
「私がやったんだから、次はあなたがやって」
-
「得にならないからやらない」
もちろん公平感は大切ですが、損得だけで話すと関係が荒れやすいです。
そこでおすすめなのが「合意条件」で話すことです。
-
何を(成果物)
-
いつまでに(期限)
-
どの品質で(完成条件)
-
どこまでが範囲か(守備範囲)
-
できない場合はどうするか(例外条件)
合意条件に落とすと、人格の話ではなく、作業の話として扱えます。これが揉めにくさにつながります。
断り方テンプレ3パターン(すぐ使える)
断ること自体は利己的ではありません。むしろ断れないと、負担が偏り、相手の利己的行動が固定化します。断る技術は、関係を守る技術です。
-
短文型(角を立てにくい)
-
「今は手が回らないので難しいです。」
-
説明型(誠実さを出す)
-
「本日中は締切対応があり、追加対応ができません。明日なら30分だけなら可能です。」
-
代替案型(協力姿勢を残す)
-
「そのやり方だと私は難しいので、A案なら手伝えます。どちらにしますか?」
加えて、「相手が押してくる」タイプには、同じ文を繰り返す“壊れたレコード”も有効です。
-
「今は難しいです。A案なら可能です。」
-
「今は難しいです。A案なら可能です。」
感情を乗せず、条件だけを返すと消耗が減ります。
利己的な相手への対処法とトラブル回避
巻き取らないルールを決める(ルール化テンプレ)
利己的な相手に疲れる最大要因は、こちらが「巻き取ってしまう」ことです。
巻き取りが続くと、相手は学習します。「押せばやってくれる」と。結果、偏りが固定化します。
ここで必要なのは、怒りではなく“設計”です。以下をテンプレとして使ってください。
巻き取り防止ルール(職場向けテンプレ)
-
依頼は口頭では受けず、チャットで「期限・範囲・完成条件」を確認する
-
期限超過は代行せず、リスケ依頼を出して“戻す”
-
当番外の作業は担当者へ戻す(戻す先が不明なら上長へエスカレーション)
-
例外は条件付き(「今週だけ」「この範囲だけ」)にして、常態化させない
-
共有物(資料・ファイル)は「更新者・日時」を残す
巻き取り防止ルール(家庭向けテンプレ)
-
作業を可視化して分担(家事リスト化)
-
「お願い」ではなく「役割」として決める(当番化)
-
できなかった場合の代替案を先に決める(外注、簡略化、翌日に回す)
-
感情の議論にしない(疲れたからではなく、負担が偏っている事実を扱う)
記録・可視化で消耗を減らす(相手を変えずに効く)
利己的な人ほど、場の空気で押し切ることがあります。ここで対抗して口論すると、損をするのはたいてい「真面目な人」です。
有効なのは、争いではなく可視化です。
-
タスク管理(担当・期限・進捗)を共有
-
決定事項は議事メモに残す
-
依頼内容はチャットで確認し、言った言わないを防ぐ
-
変更があったら「変更理由」と「影響範囲」を書く
可視化は、相手を追い詰めるためではなく、自分の消耗を減らすための安全装置です。
改善が見込めないときの距離の取り方(最終手段)
話し合いが機能せず、同じパターンが続く場合は、距離を取る設計に切り替える必要があります。これは冷たいことではなく、自分を守るための判断です。
-
共同作業の領域を減らす(関わりの接点を絞る)
-
受ける条件を明確にする(時間・範囲・回数)
-
第三者を挟む(上司、共通の調整役、相談窓口)
-
プライベートなら会う頻度・時間を短くする
-
依存や暴言があるなら、安全を最優先する(距離を強める)
「相手を変える」より、「自分の被害が増えない仕組み」を作るほうが、現実的で効果が出やすいです。
よくある質問
利己的と自己中心的は同じですか?
似て使われますが、ニュアンスは分けられます。利己的は損得・利益が中心になりやすく、自己中心的は自分の視点・価値観が中心になりやすい(利益とは限らない)と整理すると理解しやすくなります。
自分の都合を優先するのは利己的ですか?
自分の都合を優先すること自体は利己的とは限りません。相手への影響を踏まえて説明し、調整し、代替案を示す。これができていれば、健全な境界線として受け止められやすいです。
逆に「説明も調整もなく、負担を固定化させる」場合は利己的に見られやすくなります。
利己的と言われたとき、どう返すのがよいですか?
反射的に否定すると揉めやすいので、まずは具体例を確認するのが安全です。
-
「どの場面でそう感じたか教えてもらえますか?」
-
「次からどうすると良いと思いますか?」
そのうえで、意図と結果を分けます。「悪気はなかった」だけでは弱いので、次の行動まで言うのがポイントです。
-
「配慮が足りなかった。次は期限と範囲を先に確認するね」
-
「負担が偏っていたなら調整したい。役割を決め直そう」
利己的な人は変わりますか?
変わる可能性はありますが、本人の動機と環境が必要です。期待で抱え込むより、ルール化・可視化・距離の調整で自分の消耗を抑えるほうが安定します。
利己主義と利己的はどう違いますか?
利己的は日常の態度・行動の形容に使われやすい一方、利己主義は思想・立場(考え方)として語られることが多い言葉です。エゴイズムは一般用法として利己主義の意味で使われるほか、哲学用語として別の意味で語られることもあります。
まとめ
利己的とは、自分の利益を中心に考え、他者の立場や負担への配慮が抜け落ちやすい状態を指します。ただし、自分を守るための線引きまで利己的と決めつける必要はありません。
迷ったときは、①他人の負担が増えていないか、②負担が同じ人に固定化していないか、③説明・調整・代替案があるか、の3点で整理すると判断が安定します。
また、利己的な相手に悩むときは、人格批判ではなく「巻き取りを止めるルール」「可視化」「例外条件の管理」で摩擦を減らすのが効果的です。言葉の理解を、人間関係の摩擦を減らす道具として使っていきましょう。
参考情報
-
コトバンク「利己的」:https://kotobank.jp/word/%E5%88%A9%E5%B7%B1%E7%9A%84-657565
-
ニッセイ基礎研究所「利他的行動と利己的行動(ディクテーターゲーム等)」:https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id%3D39501?site=nli
-
玉川大学脳科学研究所「利己的/利他的と熟慮の関係(研究成果)」:https://www.tamagawa.jp/research/brain/news/detail_21506.html
-
IMIDAS「利己主義/利他主義(心理学的利己主義・倫理学的利己主義など)」:https://imidas.jp/genre/detail/L-101-0133.html
-
コトバンク「エゴイズム」:https://kotobank.jp/word/%E3%81%88%E3%81%94%E3%81%84%E3%81%9A%E3%82%80-3144847