「.psdのファイルが届いたけれど開けない」「PNGやJPGと何が違うのか分からない」――そんな場面で検索している方は多いはずです。PSDは、画像の見た目だけを保存する形式ではなく、レイヤーや文字などの編集情報を残したまま管理できる“Photoshopの制作データ”です。そのため、修正や引き継ぎには便利な一方で、共有や納品では開けない・重い・フォントが崩れる・非表示レイヤーが見られるといったトラブルにつながることもあります。
本記事では、PSDの基本(何が保存されるのか)から、Photoshopがない環境での確認方法、PNG・JPG・PDFへの変換手順、そして受け渡しで失敗しないためのチェックポイントまで、迷わない順番で整理して解説します。読み終えるころには、「この場合はPSDのまま」「この場合は変換して渡す」という判断ができ、相手とのやり取りもスムーズになります。
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PSDとは何かを最短で理解する
PSDファイルが手元に届いたとき、「これって画像なのに開けない」「PNGやJPGと何が違うのだろう」と戸惑うのは自然なことです。PSDは、いわゆる“配布用の完成画像”というより、編集を前提にした制作データとして使われることが多い形式です。つまり、画像の見た目だけでなく、作業中に必要な情報を一緒に抱えたまま保存できるのが強みになります。
PSDの意味と拡張子
PSDは、Adobe Photoshopで作成・編集するための代表的なファイル形式で、拡張子は「.psd」です。Wordで言えば「.docx」、Excelで言えば「.xlsx」のように、Photoshopの作業状態を保つことを目的にした“標準の保存形式”と考えると理解しやすいでしょう。
メールやチャット、共有フォルダで「〇〇.psd」というファイル名を見かけたら、基本的にはPhotoshopで開いて編集することを想定したデータだと判断できます。ただし、後述するように、Photoshopがない環境でも閲覧や変換ができる場合はあります。まずは「PSD=編集用の元データになりやすい」という前提を持つだけで、対応の方向性が決まります。
PSDに保存される情報
PSDの最大の特徴は、画像の見た目(ピクセル)だけではなく、編集に必要な情報を多く保持できる点にあります。具体的には、次のような情報が含まれやすいです。
レイヤー構造:要素を重ねる仕組み。背景、人物、文字、装飾、影などを別々に管理できます。
テキスト情報:文字を「画像」ではなく「文字」として保持し、あとから文言やフォント、サイズを変更できます。
マスクや効果:切り抜きの境界を保持するマスク、影やぼかしなどの効果が残ります。
配置や編集状態:素材の位置、変形、透明度など、作業中の状態が残ることがあります。
カラープロファイル等の付随情報:環境差の影響を受ける要素も含まれ得ます。
この「編集情報が残る」という特性により、PSDは修正が必要な制作フローで強力です。逆に言えば、共有・納品の場面では「相手が見ようと思えばレイヤーまで見えてしまう可能性がある」「環境差で表示が変わる可能性がある」ことも同時に理解しておく必要があります。
PSDのメリットとデメリット
PSDを扱うときは、メリットとデメリットをセットで理解すると判断が早くなります。
メリット
修正が前提の制作に強い:文字の差し替え、色変更、素材の差し替えなどが後から行いやすいです。
工程管理がしやすい:要素がレイヤーで分かれているため、担当者間で作業分担しやすく、戻し作業も簡単です。
品質を保ちやすい:PNG/JPGのように一度“完成画像”にしてしまうと後からの修正で劣化や手間が出ますが、PSDは作業状態を保てます。
デメリット
ファイル容量が大きくなりやすい:高解像度+多レイヤーになるほど重くなり、送受信に時間がかかります。
開けない環境がある:Photoshopがない場合、閲覧できても編集互換に制限があることが多いです。
意図しない情報漏れが起こり得る:非表示レイヤー、没案、メモ、仮テキストなどが残っていると、相手に見えてしまう可能性があります。
ここまでが「PSDとは何か」の核です。次は、実務で迷いやすい「PSDが必要な場面」と「他形式へ変換すべき場面」を整理します。
PSDが必要になる場面と使い分け
PSDは万能ではありません。むしろ、目的に合わない場面でPSDを使うとトラブルが増えます。ここでは「どんな時にPSDが必要なのか」「どんな時にPNG/JPGなどにした方が良いのか」を、受け取り側の困りごとから逆算して整理します。
受け取り側が困る典型パターン
受け取り側が困る状況は、大きく分けて次の3つです。
そもそも開けない
Photoshop契約がない、会社PCにインストールできない
スマホで受け取ってしまい閲覧アプリがない
クラウド上でプレビューできず中身が確認できない
開けても見た目が作成者と一致しない
フォントが置き換わる(同じフォントが端末にない)
文字の折り返しや行間が微妙にズレる
効果や合成モードが完全再現されない(別ソフトで開いた場合)
目的に対して“データが過剰”
確認だけなのに、レイヤー数が多くどこを見ればいいか分からない
容量が大きすぎて共有の手間が増える
共有のたびに「JPGもください」「PDFもください」と往復が発生する
こうした“受け取り側の詰まり”を減らすには、最初から形式を使い分け、必要なら「確認用データ」を同梱するのが効果的です。
PSDのまま渡すべきケース
次の条件に当てはまるなら、PSDのまま渡す価値があります。
相手が編集する必要がある(文言差し替え、色変更、素材差し替えなどが発生する)
制作の引き継ぎが目的(途中工程を別担当へ渡す、継続運用のために原本を共有する)
要素別での納品が求められている(レイヤー分割された状態で欲しいと言われている)
将来の修正が高確率(キャンペーンの差し替え、季節ごとの更新など)
この場合でも、相手の環境確認は重要です。「Photoshopで開けるか」「代替ツールで十分か」「フォントは揃うか」を事前に合わせると事故が減ります。
PNGやJPGに変換すべきケース
逆に、次のような目的なら、PSDよりもPNG/JPGなどの“完成形データ”にする方が合理的です。
相手は内容確認だけでよい(見た目が確認できればOK)
Web掲載やSNS投稿が目的(運用担当がそのままアップできる形が望ましい)
容量制限がある(メール添付、社内ツールで上限がある)
見せたくない情報がある(没案、仮テキスト、非表示素材など)
形式選びを迷うときは、「相手は編集するのか?」「受け取り側の環境は何か?」の2点で判断すると早いです。確認だけなら、PSDを送るよりも、PNG/JPG/PDFのほうが一発で意思疎通できます。
PSDファイルの開き方
次に、実際にPSDを受け取ったときの「開き方」です。ここは状況が分かれるので、Photoshopがある場合とない場合に分けて考えます。
Photoshopで開く基本
Photoshopを使える場合、基本はシンプルです。
PSDをダブルクリック、またはPhotoshopから「開く」で読み込み
レイヤーパネルで要素の構成を確認
テキストレイヤーがある場合は、フォント警告や置換の有無を確認
必要に応じて編集し、保存または別形式で書き出し
作成者から受け取ったPSDを編集する場合、最初にやっておくと安心なのは次の2点です。
最初に複製を作る:元データを壊さないため、編集前にコピーしておきます。
書き出し用途を先に決める:最終的にPNG/JPG/PDFが必要なら、仕上がり確認の工程を逆算できます。
Photoshopなしで中身を確認する方法
Photoshopがない場合でも、「閲覧(プレビュー)」と「編集」は別物です。まずは自分の目的がどちらかを切り分けてください。
1) 閲覧だけでよい(中身を見たい、確認したい)
クラウドストレージや一部のビューアは、PSDを画像としてプレビューできる場合があります。
ただし、プレビューは“見た目の確認”に限られ、レイヤー編集まではできないことが多いです。
重要な確認(文字の正確さ、細部のにじみ等)が必要なら、プレビューだけで確定しないほうが安全です。
2) 編集が必要(文言を直したい、要素を消したい)
PSD対応をうたうアプリやソフトでも、レイヤー・効果・文字の互換は完全ではないケースが多いです。
受け取り側が非デザイナーの場合、無理に編集しようとせず、作成者へ「修正依頼」として戻した方が速く確実なことがよくあります。
どうしても自分で直す必要があるなら、編集後に必ず“完成形”をPNG/JPG/PDFで出力し、見た目を固定して共有するのが安全です。
開けないときに疑うポイント
「開けない」「表示がおかしい」ときは、原因の切り分けが重要です。代表的なチェックポイントをまとめます。
拡張子が本当に.psdか:似た形式(例:.psb)や、ファイル名だけ.psdに変わっているケースもあります。
転送中に破損していないか:メール添付、チャット転送、圧縮解凍のミスで破損することがあります。
フォントやリンク素材の不足:PSD内部に埋め込まれない要素があると、環境差が出ます。
別ソフトで開いている:閲覧はできても一部効果が再現されず「崩れて見える」ことがあります。
原因が特定できない場合は、作成者へ「確認用にPNG(またはPDF)もください」と依頼すると、コミュニケーションコストが一気に下がります。
PSDの変換と書き出し手順
PSDは編集用の原本になりやすい一方で、共有や確認の場面では「完成形」を渡した方がスムーズです。そこで必要になるのが、PNG/JPG/PDFなどへの変換・書き出しです。ここでは、事故を防ぐために“順番”を重視して解説します。
変換前に必ず確認するチェックリスト
書き出しの前に、次のチェックを一度行ってください。これだけで、納品事故や差し戻しが大幅に減ります。
不要なレイヤー(没案、メモ、ラフ、差分)が残っていない
非表示レイヤーに見せたくない情報が含まれていない
文字の内容が最新で、誤字脱字がない
フォント問題が起きても成立する渡し方になっている(確認用のPNG/PDFがある等)
画像サイズが目的に合っている(Webならpx、印刷なら解像度の考慮)
余白やトリミングが意図通り(切れて困る要素がない)
背景透過が必要かどうかが明確
共有先が欲しい形式と用途が明確(確認用/入稿用/掲載用)
特に重要なのは、「PSDを渡す=編集情報を渡す」という前提です。完成形だけを渡したい場合は、PNG/JPG/PDFで見た目を固定して渡すほうが安全です。
PNGに書き出す手順
PNGは、文字や図形がくっきりした画像、または背景透過が必要な素材に向いています。ロゴ、アイコン、UIパーツ、バナーの透過版などでよく使われます。
まずPSDを「共有してよい状態」に整理する(不要レイヤーの削除・統合方針の決定)
背景透過が必要なら、背景が透明になっているか(背景レイヤーが不要に塗りつぶされていないか)を確認
書き出し(エクスポート)系の機能でPNGを選択
書き出したPNGを、Photoshop以外(プレビュー、ブラウザ等)でも開き、表示崩れがないか確認
共有先の用途(Web掲載、資料貼り付けなど)に合うサイズになっているか最終確認
PNGは劣化が少ない反面、写真のような画像では容量が大きくなりやすいので、目的が「写真」ならJPGの方が扱いやすい場合があります。
JPGに書き出す手順
JPGは、写真やグラデーションが多い画像、または容量を抑えたい共有に向いています。SNS投稿用、Web掲載用の写真などでよく使われます。
共有してよい状態に整理する(特に不要レイヤー・非表示レイヤーの確認)
書き出しでJPGを選択
品質設定(圧縮率)を調整する
出力したJPGを拡大し、文字のにじみや輪郭の荒れがないか確認
必要なら品質を上げて再出力し、容量とのバランスを取る
JPGは圧縮の影響で、細い文字や細線がにじむことがあります。文字主体のデザインはPNGの方が結果が良いことが多いので、用途に応じて切り替えるのがコツです。
PDFに書き出す手順
PDFは、相手の環境差を減らして見た目を共有したいときに便利です。社内確認、クライアント確認、印刷用途の資料などで採用されることがあります。
共有してよい状態に整理する
PDFとして保存・書き出しする(用途に応じて品質や圧縮の設定を選ぶ)
PCとスマホなど複数環境で開いて、表示が崩れていないか確認
文字の読める大きさ、画像の粗さ、ページサイズなどが意図通りかチェックする
「とにかく相手に見た目を崩さず確認してほしい」場合、PNG/JPGよりPDFの方がトラブルが少ないケースもあります。状況に応じて使い分けてください。
納品や共有で失敗しない注意点
PSDで一番こわいのは、「相手の環境で開けない」よりも、意図しない情報が渡ってしまうことです。ここでは納品・共有で失敗しやすいポイントを、実務目線でまとめます。
見せたくないレイヤーが残るリスク
PSDはレイヤーを保持できるため便利ですが、納品・共有では“漏れ”の原因になります。次のようなレイヤーが残りがちです。
没案(別パターンのコピー)
仮テキスト(「ダミー」「仮」など)
社内メモ(注釈、赤字、確認用メモ)
切り抜き前の元画像(マスクで隠してあるだけ)
非表示にした素材(見えないが残っている)
「非表示にしているから大丈夫」と思いがちですが、PSDを開ける相手なら表示を切り替えられる可能性があります。安全策は明確で、次のいずれかです。
完成形だけ渡すなら:PNG/JPG/PDFに書き出して渡す
編集前提でPSDを渡すなら:見せてよいレイヤーだけに整理してから渡す(不要レイヤーは削除、統合、命名整理)
特に外部へ渡す場合は、「見せたくないものは“消す”」が原則です。非表示にするだけで済ませないほうが安心です。
フォントと文字の崩れ対策
PSDに文字レイヤーが含まれる場合、受け取り側に同じフォントが入っていないと置き換わりが起き、レイアウトが崩れることがあります。これをゼロにするのは難しいため、現実的な対策を取ります。
確認用にPNGまたはPDFを同梱する:相手が「正しい見た目」を必ず確認できるようにする
使用フォントを明記する:フォント名、ウエイト、利用可否(商用ライセンス等)を共有する
編集不要なら文字を画像として固定する:最終配布用は文字を含めて完成画像にしておく
社内運用ならフォントを標準化する:同じフォント環境を揃えるだけで崩れが激減します
「相手が編集するかどうか」で必要な対策が変わるので、最初に目的を揃えるのが重要です。
容量と互換性の考え方
PSDが重すぎて送れない、受け取り側が開けない、という問題は頻出です。ここは仕組みで解決できます。
送れない(容量問題)
共有方法をクラウドストレージに切り替える
確認用だけ先にPNG/JPG/PDFで送る(急ぎのコミュニケーションを止めない)
開けない(環境問題)
相手がPhotoshopを持っていないなら、確認用の完成データを渡す
編集が必要なら、相手が編集できる形式に合わせる(作成者が作業して渡すのが早い場合が多い)
互換性が不安(表示崩れ)
「PSD+確認用PNG/PDF」のセットにする
重要案件は、最終確認を“完成形”で行う(PSD上の見た目だけで合意しない)
ここまでを押さえると、PSDのやり取りで詰まりやすいポイントはほぼ回避できます。
よくある質問
PSDは無料で編集できるのか
結論としては、「無料で開ける・閲覧できる」選択肢は存在し得ますが、Photoshopと同等の互換編集を無料で期待するのは難しいというのが現実的な整理です。特に、レイヤー効果、文字の扱い、合成モードなどは、ソフト間の差が出やすい領域です。
もし「少しだけ直したい」程度なら、代替ツールで対応できる場合もあります。しかし、クライアントワークや納品物のように、仕上がりがシビアな場面では、作成者へ修正依頼するか、Photoshop環境で作業する方が結果的に速く確実です。
PSDはスマホで開けるのか
スマホでも、アプリやサービスによっては閲覧できる場合があります。ただし、スマホは画面が小さく、細部確認に向きません。また、編集互換はPCよりさらに限定されることが多いです。
スマホで受け取ってしまった場合は、まず「確認だけでよいのか」「編集が必要なのか」を切り分け、確認だけならPDFやPNGをもらう、編集が必要ならPC環境で作業する、という判断が現実的です。
PSDとPSBの違いは何か
PSDと似た形式にPSBがあります。PSBは、PSDでは扱いづらいような非常に大きい画像サイズなどを想定した形式として使われることがあります。受け取ったファイルがPSBだと、対応していないアプリでは開けない可能性が高くなります。
「PSDのはずなのに開けない」というときは、まず拡張子を確認し、PSBなら作成者に「互換性のある形式(PSDやPNGなど)で再共有できますか」と依頼すると解決が早いです。
PSDを送ると非表示レイヤーも見えるのか
相手がPSDを開ける環境を持っている場合、非表示レイヤーを含むレイヤー構造にアクセスできる可能性があります。つまり、非表示にしているだけでは“渡していない”ことにはなりません。
外部共有で安全にしたいなら、次のいずれかが基本方針です。
完成形としてPNG/JPG/PDFで渡す(見た目を固定する)
PSDで渡す必要がある場合は、不要レイヤーを削除し、見せてよい情報だけ残す
「非表示にしてあるから大丈夫」という運用は事故につながりやすいので、渡す前に整理する習慣を作ると安心です。
まとめ:PSDは編集用の原本、共有は目的で最適化する
PSDは、Photoshopの制作データとして、レイヤーや文字などの編集情報を保持できる便利な形式です。修正や引き継ぎが発生する制作フローでは、PSDがあることで作業効率と品質が大きく向上します。
一方で、共有や納品の場面では、PSDの利点がそのままリスクになります。相手が開けない、環境差で崩れる、非表示レイヤーに残した情報が見えてしまう、容量が大きく送れない──こうした問題は、目的に合わせて形式を選ぶことでほとんど回避できます。
最後に、迷ったときの判断基準を短くまとめます。
相手が編集する → PSD(ただし整理して渡す、可能なら確認用PNG/PDFも同梱)
相手は確認だけ → PNG/JPG/PDF(見た目を固定して渡す)
事故を防ぎたい → 「不要レイヤー削除」「確認用データ同梱」「別環境での最終確認」を徹底する
この3点を押さえるだけで、PSDのやり取りは格段にスムーズになります。