Windows 11をお使いの方がPowerShellを起動した際、「最新のPowerShellをインストールしてください」といった案内を目にすることがあります。これは、Windowsに標準搭載されているWindows PowerShell 5.1とは別系統として、クロスプラットフォーム対応のPowerShell 7が提供されており、用途に応じて使い分けることが前提になっているためです。
しかし実際には、「どの方法で入れるのが安全か」「管理者権限が必要なのか」「入れたはずなのに5.1が起動してしまうのはなぜか」など、導入段階でつまずきやすいポイントが複数あります。さらに、組織PCのようにMicrosoft Storeが無効化されていたり、ネットワーク制限があったりすると、一般的な手順だけでは解決できないこともあります。
本記事では、Windowsを中心にPowerShell 7のインストール手段を網羅し、導入後の確認と既定化(主にWindows Terminal)、更新・アンインストール、そしてよくあるトラブルの対処までを一連の流れとして丁寧に解説いたします。読後には、少なくとも以下ができる状態を目指します。
PowerShell 7を迷わずインストールできる
「確かに7が起動している」と自分で確認できる
必要に応じてWindows Terminalの既定をPowerShell 7に切り替えられる
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PowerShell 7を入れる前に確認すること
PowerShell 7の導入そのものは難しくありませんが、事前の整理をしておくと失敗の確率が下がります。特に「今どのPowerShellを使っているか」「5.1を消す必要があるか」「自分の端末は何のアーキテクチャか」は、最初に押さえておくべき要点です。
PowerShellの現在バージョンを確認する
まずは、現在起動しているPowerShellのバージョンを確認します。確認はPowerShell上で次のコマンドを実行するだけで問題ありません。
表示される情報のうち、特に見るべきは以下です。
PSVersion:PowerShellのバージョンPSEdition:Desktop / Core の区分(環境により表示)
一般に、Windowsに標準搭載のWindows PowerShellは 5.1 が多く、PowerShell 7は 7.x です。導入後に「本当に7になったのか」を確認する際も、このコマンドが最も確実な基準になります。
また、バージョン確認を行うときは「どの起動方法で開いたPowerShellなのか」も重要です。後述しますが、同じ端末でも powershell と pwsh で起動する対象が異なることがあるため、確認コマンドの結果は必ずセットで覚えておくとよいです。
PowerShell 5.1とPowerShell 7は共存できる
ここが最も誤解されやすい点ですが、PowerShell 7はWindows PowerShell 5.1を置き換えるものではなく、基本的に共存します。したがって、導入の段階で「5.1を削除しなければならないのではないか」と心配する必要はありません。
むしろ、多くの現場では次のような使い分けが自然です。
既存資産(古いスクリプトやツール)が5.1前提 → 5.1も残す
新規の自動化や学習、クロスプラットフォーム運用 → 7を使う
モジュール要件として7が指定されている作業 → 7を使う
この「共存」という前提を理解しておくと、導入後に混乱しやすい「5.1が起動してしまう」問題への耐性が上がります。実際には「共存しているのに、起動方法を間違えている」ケースが多いためです。
x64とx86とARM64の選び方
PowerShell 7の配布物(MSIやZIPなど)には、アーキテクチャ(CPU種別)ごとのパッケージが用意されています。選択を誤るとインストールに失敗したり、起動できなかったりする可能性があるため、ここで整理しておきます。
x64:一般的なIntel/AMDの64bit PC(最も多い)
x86:32bit向け(現在は少数。特殊事情がない限り選ばない)
ARM64:ARM搭載Windows向け(対応端末のみ)
迷った場合は、Windowsの「設定」→「システム」→「詳細情報」などで「システムの種類」を確認するのが確実です。多くのWindows 11端末は x64 です。
WindowsでPowerShell 7をインストールする
Windowsでのインストール方法は複数あります。結論としては、環境に応じて次のように選ぶと迷いにくくなります。
もっとも簡単にコマンドで入れたい → winget
GUIで入れて更新も自動寄りにしたい → Microsoft Store
配布・統制・確実性を重視したい → MSI
制限環境やオフライン、持ち運び用途 → ZIP
以下に比較表を示します(導入後の運用も含めた観点です)。
| 方法 | 向いている場面 | 管理者権限 | 更新のしやすさ | オフライン適性 | 特色 |
|---|---|---|---|---|---|
| winget | 端末にパッケージ管理が使える/最短で導入したい | 必要になりやすい | 高い | 低い | コマンドで統一できる |
| Microsoft Store | 画面操作で導入したい/更新負荷を下げたい | 低め | 高い | 低い | 組織ポリシーで無効な場合あり |
| MSI | 情報システム部門の配布/手順を固定したい | 必要 | 中 | 中〜高 | オフライン配布にも対応しやすい |
| ZIP | 権限やインストール制限がある/展開して使いたい | 条件次第 | 低〜中 | 高い | PATHや更新は手動になりやすい |
事前確認チェックリスト(該当するものだけ確認してください):
Microsoft Storeが利用できる
wingetが利用できる(社内ポリシーで禁止されていない)
管理者権限がある(MSIやwingetで必要になる場合があります)
ネットワーク制限(プロキシ、TLS制限、外部ダウンロード制限)がない
オフライン導入が必要かどうか
wingetでPowerShell 7をインストールする手順
wingetはWindows環境でパッケージを導入できる仕組みで、インストールから更新までをコマンドで一貫して扱いやすい点が利点です。利用できる環境であれば、最短手順として有力です。
手順(基本)
Windows TerminalまたはPowerShellを「管理者として実行」で起動します。
次のコマンドを実行します。
ポイント
-eは完全一致を意図する指定です。検索結果の揺れを避けるために付けるのが安全です。--id Microsoft.PowerShellがPowerShell 7系の導入対象になります。
完了後の確認(必須)
インストールが完了したら、必ず次を実行します。
ここで PSVersion が7系になっていれば成功です。もし pwsh が見つからない場合は、PATH反映が遅れている、またはインストール自体が途中で失敗している可能性があります。トラブル章の「wingetが使えない、見つからない」も併せて確認してください。
Microsoft StoreでPowerShell 7をインストールする手順
Microsoft Storeが有効な端末であれば、GUI操作で導入でき、更新も比較的負担が小さくなります。特に「コマンド操作に慣れていない」「導入後の更新を自動寄りにしたい」場合に向いています。
手順(基本)
Microsoft Storeを開きます。
検索欄で「PowerShell」を検索します。
アプリとしての「PowerShell」を選び、インストールします。
スタートメニューからPowerShellを起動します。
次のコマンドで確認します。
注意点
組織PCではStore自体が無効化されている場合があります。その場合はMSIまたはZIPに切り替えてください。
Store版は更新が容易な反面、組織のアプリ配布方針に依存します。個人利用・小規模運用ではメリットが大きい一方、統制が必要な環境ではMSIが選ばれることが多いです。
MSIでPowerShell 7をインストールする手順
MSIは「配布・統制」や「手順固定」に向いています。情シスが標準展開したい場合や、Storeやwingetが使えない環境でも導入しやすいことがあります。また、インストールログやアンインストール方法が明確な点も利点です。
手順(基本)
公式の配布元(Microsoftの案内ページやGitHub Releasesなど)から、対象アーキテクチャのMSIを入手します。
MSIをダブルクリックし、インストーラーに従って進めます。
インストール完了後、次を実行します。
管理者権限について
MSIは通常、インストール先や環境変数の設定などで管理者権限が必要になることがあります。権限が不足している場合は、情シスへ依頼するか、ZIP方式を検討してください。
運用観点(更新)
MSIは「新しいMSIで入れ替える」という運用になりやすいです。定期的に更新が必要な場合は、更新手順も含めて運用設計しておくと、古い版のまま固定されるリスクを下げられます。
ZIPでPowerShell 7をインストールする手順
ZIP方式は「インストールできない環境でも動かせる」可能性がある点で強力です。たとえば、以下のような事情がある場合に候補になります。
管理者権限がなくMSIが入れられない
外部インストーラーの実行が制限されている
ネットワーク制限が強く、配布物を別経路で持ち込む必要がある
USBなどで持ち運び、特定フォルダで使いたい
手順(基本)
信頼できる配布元からWindows向けZIPを入手します。
任意のフォルダにZIPを展開します(例:
C:\Tools\PowerShell7\)。展開先の
pwsh.exeを直接起動します。起動後、次のコマンドで確認します。
注意点(運用の癖)
ZIP方式では、
pwshが標準でPATHに登録されない場合があります。その場合は「展開先のpwsh.exeを起動する」運用が確実です。更新は「新しいZIPを展開し直す」方式になり、手作業の比率が上がります。
Windows Terminalのプロファイル登録も自動ではない場合があるため、必要なら設定で追加します。
PowerShell 7インストール後の確認と既定化
PowerShell 7の導入でつまずく最大の原因は「導入後に5.1を起動してしまい、入ったのか分からなくなる」ことです。ここでは、確認方法と、日常利用で迷わないための既定化の考え方を整理いたします。
pwshで起動してバージョンを確認する
PowerShell 7を起動する基本コマンドは pwsh です。一方、Windows標準の powershell はWindows PowerShell 5.1を起動することが多いです。両者の違いを明確に意識してください。
確認手順(推奨)
既に開いているPowerShellがある場合、一旦閉じます(混乱を避けるためです)。
新たにPowerShell(またはWindows Terminal)を開き、次を実行します。
続けて、バージョン確認を実行します。
判断基準
PSVersionが 7.x → PowerShell 7の起動に成功PSVersionが 5.1 → 5.1を起動している(起動コマンドや既定設定を見直す)
補足(混乱しやすい例)
「スタートメニューからPowerShellを開いたが、5.1だった」という場合でも、PowerShell 7が入っていないとは限りません。単にショートカットが5.1を指していることがあります。そのため、必ず pwsh と $PSVersionTable を組み合わせて判断してください。
Windows Terminalの既定プロファイルをPowerShell 7にする
Windows Terminalを使っている場合、既定プロファイル(起動時に最初に開くシェル)をPowerShell 7に寄せると、日常の迷いが大きく減ります。ここでの目的は、「起動したら原則PowerShell 7が開く」状態にすることです。
基本の流れ
Windows Terminalを開きます。
設定(歯車アイコンなど)を開きます。
「スタートアップ」または「既定のプロファイル」に関する項目を探します。
既定プロファイルを「PowerShell(7)」に変更します。
保存し、Terminalを再起動します。
起動直後に次を実行し、7系であることを確認します。
プロファイルが見当たらない場合
ZIP方式の場合など、PowerShell 7が自動登録されないケースがあります。その際は、Windows Terminal側で「新しいプロファイル」を作成し、コマンドラインとして pwsh あるいは pwsh.exe のフルパスを指定することで対応できます。
更新とアンインストールの基本
PowerShell 7は導入して終わりではなく、継続運用として「更新」と「不要になった際の削除」も整理しておくことが重要です。方法ごとの特徴は次のとおりです。
winget導入:更新もコマンドで管理しやすい
Store導入:Store側の更新フローに乗りやすい
MSI導入:新しいMSIで更新、必要に応じてアンインストール手順も明確
ZIP導入:新ZIPへ差し替え。古いフォルダを整理する運用が必要
アンインストールの考え方(Windows)
MSIやStoreで入れた場合:Windowsの「アプリ」からアンインストールできることが多いです。
ZIPで展開した場合:基本的には展開フォルダを削除します(ただし、Terminalのプロファイルなど設定も併せて整理してください)。
更新に関する注意
特定のモジュールやスクリプトが特定バージョン前提の場合、更新前に検証が必要なことがあります。
反対に、古い版を放置するとセキュリティ面や互換性面で不利になる場合もあるため、更新方針は「放置しない」方向で設計するのが安全です。
macOSとLinuxでPowerShell 7をインストールする
PowerShell 7はWindows専用ではなく、macOSやLinuxでも利用できます。複数OSで同じシェル環境を使えることは、学習や開発、運用の統一という観点で大きな利点です。ここでは、細部の手順というより「導入の代表ルート」と「確認」を中心に押さえます。
macOSでPowerShell 7をインストールと更新を行う
macOSでは、Homebrewで導入するのが一般的です。導入後はWindows同様に pwsh で起動します。
インストール
起動
更新
ポイント
pwshが起動コマンドである点はWindowsと同じです。Homebrew管理に乗せると更新が簡単になります。
LinuxでPowerShell 7をインストールする代表的な方法
Linuxはディストリビューション(Ubuntu、Debian、RHEL系など)によって導入方法が異なります。代表的には、各種パッケージ管理やSnap、バイナリ展開などの選択肢があります。
ここで重要なのは、導入経路が何であっても、最終的に次で起動確認することです。
もしプレビュー版や別パッケージ名で導入した場合、起動コマンドが pwsh-preview になることもあります。導入方式によって差が出るため、起動コマンドが見つからない場合は「導入したパッケージ名」と「インストール先」を確認するのが安全です。
PowerShell 7のインストールでよくある問題と対処
最後に、導入で頻発するトラブルを「症状→原因→対処」の流れで整理します。ここを押さえておくと、環境差による失敗に強くなります。
インストールしたのに5.1が起動する
症状
PowerShell 7を入れたつもりなのに、$PSVersionTable を見ると5.1が表示される。
主な原因
powershellで起動している(5.1が起動する)スタートメニューやショートカットが5.1を指している
Windows Terminalの既定プロファイルが5.1のまま
対処(順番に実施)
まず
pwshで起動しているか確認します。起動後に
$PSVersionTableを実行します。Windows Terminal利用者は既定プロファイルをPowerShell 7に変更します。
ZIP方式の場合は
pwsh.exeのフルパスで起動し、確実に7を開きます。
トラブルの多くは「入っていない」のではなく「起動対象が違う」ことによって発生します。確認コマンドを基準に判断してください。
wingetが使えない、見つからない
症状
wingetを実行しても「コマンドが見つかりません」実行できるがインストールが失敗する
主な原因
端末にwingetが入っていない、または古い
組織ポリシーで利用が制限されている
ネットワーク制限でパッケージ取得に失敗している
対処
Storeが利用できる → Storeで導入する
Storeが不可だが管理者権限がある → MSIで導入する
どちらも難しい → ZIPで導入し、
pwsh.exeから起動する
wingetが使えないこと自体は珍しくありません。最短導入の手段として便利ですが、制限環境ではMSIまたはZIPへ切り替える判断が重要です。
権限不足やダウンロード制限で失敗する
症状
インストール途中で権限エラーが出る
ダウンロードが途中で止まる、失敗する
社内プロキシやセキュリティ製品により取得できない
主な原因
管理者権限が必要な領域へのインストールになっている
外部通信が制限されている
端末管理方針によりアプリ追加が制限されている
対処(現実的な優先順位)
情シスに依頼し、MSIでの配布または許可手順を確認します。
Storeが許可されているならStore版を利用します。
緊急回避としてZIP方式を検討します(ただし更新や設定は手作業になりやすいです)。
制限環境では、単に「入れる」だけでなく「更新をどうするか」「誰が管理するか」まで含めて設計することが重要です。
実行ポリシーでスクリプトが動かない
症状
PowerShell 7の導入自体はできたが、スクリプト実行時に制限される。
主な原因
実行ポリシー(Execution Policy)や組織のセキュリティ設定
ダウンロードしたスクリプトにブロック属性が付いている
署名が必要な環境で未署名スクリプトを実行しようとしている
対処の考え方
まずはエラーメッセージを読み、何がブロックされているかを特定します。
組織端末では、全体設定を変更するのではなく、ルールに従って最小限の対処(例:許可された場所から実行、署名付きスクリプト、管理者承認など)を検討してください。
「スクリプトが動かない」問題はインストール手段ではなくセキュリティ方針に起因することが多いため、端末管理の担当者と連携したほうが早い場合があります。
まとめ
PowerShell 7の導入は、Windows 11において「追加でインストールして共存させる」という理解が最重要です。導入の最短ルートはwingetですが、環境によってはStoreやMSI、あるいはZIP方式が現実的な解となります。導入後は、必ず pwsh で起動し、$PSVersionTable で7系であることを確認してください。ここを徹底するだけで「入れたのに5.1だった」という混乱を大幅に減らせます。
次に取るべき行動としては、以下を推奨いたします。
まず
pwshと$PSVersionTableで起動確認を実施するWindows Terminalを利用している場合は既定プロファイルをPowerShell 7へ切り替える
制限環境の場合は、導入方式だけでなく更新・管理方針まで含めて選ぶ
なお、配布形態や推奨手順は更新されることがあります。導入時点では必ず公式の案内や最新の配布物情報を参照し、環境に合う方法を選択して進めてください。