店頭モニターや展示会ブース、受付の案内ディスプレイなどで、PowerPointを「放置しても勝手に進むスライドショー」にしたい場面は多いはずです。ところが実際には、「自動再生にしたのに途中で止まる」「最後まで行ったら終わってしまう」「動画や音声だけクリック待ちになる」といった“現場で困るトラブル”が起こりがちです。原因の多くは、タイミング設定とスライドショーの種類(キオスクなど)、さらにループやメディア再生の設定が別々の場所にあり、手順が分断されていることにあります。
本記事では、PowerPointのスライドショーを自動で進め、最後まで行ったら先頭に戻してループさせる方法を、最短手順から丁寧に解説します。加えて、タイミングの作り方(全スライド一括・スライド別・リハーサル活用)、動画とBGMを止めずに再生する設定、そして「進まない・戻らない・ブラウザ再生で崩れる」ときの切り分けまで網羅します。読み終えたころには、無人運用でも止まらない状態を再現でき、事前テストとチェックポイントまで含めて自信を持って設営できるはずです。
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パワーポイントのスライドショー自動再生でできること
自動再生とループ再生の違い
PowerPointで「自動再生」と言うと、よく混同されるのが「自動で次へ進むこと」と「最後まで行ったら繰り返すこと」です。実際には役割が異なり、目的に応じて両方を整える必要があります。
自動再生:各スライドに表示時間(例:5秒、10秒など)を設定し、その時間が経過したら自動で次のスライドへ進む仕組みです。
ループ再生:最後のスライドまで到達したら、先頭に戻って再びスライドショーを続ける仕組みです。
たとえば、店頭で販促スライドを流したい場合、スライドが自動で進むだけでは不十分です。最後で止まってしまえば、放置運用が成立しません。逆に、ループだけを意識しても、表示時間が未設定だとクリック待ちになり、結局止まります。
つまり、無人で「流し続ける」ためには、原則として 自動再生(タイミング)+ループ(繰り返し) の両輪が必要です。
もう一つ重要なのは、アニメーションや動画が入っている場合です。スライドそのものの自動切り替えが設定されていても、動画が「クリックで再生」になっているとそこで止まったように見えたり、アニメーションの開始条件が「クリック」になっていると意図したテンポにならなかったりします。自動再生を“スライドの話”だけで終わらせず、スライド内の要素も含めて理解することが安定運用の近道です。
キオスクと発表者モードの違い
PowerPointのスライドショーには「どのように見せるか」を決める種類(モード)があります。自動再生・ループの成否は、このモード選びの影響を強く受けます。特に無人運用では、目的に合わないモードを選ぶと、思ったとおりに進まない、勝手に止まる、操作されてしまうといった問題が出やすくなります。
代表的な考え方は次の3つです。
発表者が発表
一般的なプレゼン向けです。発表者が話しながらクリックして進める想定で、手動操作に寄った挙動になりやすい傾向があります。自動タイミングを使うこともできますが、現場での運用は「人が前にいる」前提になりがちです。個々のユーザーが参照
閲覧者が自分で操作する用途を想定します。ウィンドウ表示で、ほかの作業と並行しやすい場合があります。無人でループさせたい用途とはズレることが多いです。キオスクで参照(全画面表示)
いわゆるサイネージ運用に近い想定です。無人で回す、誤操作をさせない、一定条件で繰り返す、といった目的に合いやすいモードです。
店頭・展示会・受付のように「触られたくない」「止めたくない」「ずっと回したい」場合は、基本方針としてキオスクを軸に考えると迷いが減ります。一方、研修やセミナーのように「自動で進めたいが、途中で止めたい」「質疑応答で戻りたい」など、人が介入する余地を残したい場合は、発表者モードでタイミングを活用する方が運用に合うこともあります。
重要なのは、見せたい環境(無人か有人か、触らせるか触らせないか)を最初に決め、その目的に沿ってモードと設定を組み合わせることです。
パワーポイントのスライドショー自動再生を最短で設定する手順
画面切り替えでタイミングを設定する
まず最初に行うべきことは、スライドが自動で進むための「タイミング」を作ることです。PowerPointでは、スライドが次に切り替わる条件として「クリック」または「一定時間経過」を持たせられます。自動再生したいなら「一定時間経過」を有効にします。
基本手順は次のとおりです。
PowerPointで対象のファイルを開きます。
上部のタブから「画面切り替え」を開きます。
「タイミング」付近の設定で、「自動的に切り替え」にチェックを入れ、秒数を入力します。
全スライドを同じ秒数にしたい場合は「すべてに適用」を使います。
ここでのポイントは、「まず動く状態を作る」ことです。最初から完璧な秒数を決める必要はありません。最短で形にしたいなら、いったん全スライドを10秒などにして回し、全体の流れが成立することを確認してから、必要なスライドだけ調整する方が確実です。最初から細部にこだわると、途中で設定漏れが起きても気づきにくく、トラブルの原因になります。
また、スライド内にアニメーションがある場合、アニメーションの開始条件がクリック依存だとテンポが崩れることがあります。自動再生の用途では、アニメーションも「自動」で動くように整えるか、そもそもアニメーションを最小限にする方が安定します。
“止まらない”を優先するなら、見栄えより運用の確実性を先に取り、必要な演出は通し再生で問題がない範囲に絞るのが安全です。
スライドショーの設定で自動プレゼンとループを有効にする
タイミングが入ったら、次は「スライドショーの種類」と「繰り返し」を設定します。ここが無人ループ運用の中核です。
手順の考え方は次のとおりです。
「スライドショー」タブを開きます。
「スライドショーの設定」(または「スライドショーのセットアップ」などの名称)を開きます。
種類(表示方法)で「キオスクで参照(全画面表示)」を選びます。
繰り返しに関する項目がある場合は、最後まで行ったら先頭に戻る設定(Escで終了するまで繰り返す)を有効にします。
OKで閉じ、スライドショーを実行して挙動を確認します。
ここでよくあるつまずきは、「タイミングの設定」と「ループ設定」を別の場所で行う点です。タイミングは主に「画面切り替え」側、ループやモードは「スライドショーの設定」側にあります。どちらか片方だけ整えても、無人運用としては完成しません。
自動再生がうまくいかないときは、まず「タイミングが入っているか」、次に「キオスクになっているか」、最後に「繰り返しが有効か」という順で確認すると、原因が見つけやすくなります。
目的別のおすすめ設定早見表
用途によって「どこまで自動化するか」「触らせるか」「ループを必須にするか」が変わります。目的に合わない組み合わせはトラブルの原因になりやすいため、次の表を目安にしてください。
| 用途 | スライドの進み方 | 推奨モード | ループ | 補足 |
|---|---|---|---|---|
| 店頭・展示会で無人ループ | 全自動 | キオスク | する | PCのスリープ・通知対策が重要。動画があるならメディア設定も必須 |
| セミナーで時間どおりに進めたい | 半自動〜自動 | 発表者が発表 | 場合により | 質疑応答で止めたいなら手動操作を残す。タイミングは“目安”として使う |
| 端末で閲覧させたい | 閲覧者操作 | 個々のユーザーが参照 | 不要が多い | 無人ループ目的には不向き。閲覧のしやすさ(戻る・進む)を優先 |
無人ループを最優先するなら「キオスク+タイミング+ループ」が基本セットです。有人運用なら、あえてキオスクを避け、発表者モードで自動タイミングを補助的に使う選択が適します。
また、会場や店舗では「触られたくない」だけでなく「誤操作されると困る」こともあります。その場合、キオスクで全画面表示にし、キーボードやマウスを触られにくい配置にするなど、物理面の対策も含めて設計すると安心です。
パワーポイントのスライドショー自動再生を安定させるタイミング作成
全スライド同一時間にする方法
最も安定しやすいのは、全スライドを同一時間で回す方法です。理由は単純で、設定漏れやバラつきが起きにくく、動作検証もしやすいからです。店頭の販促や展示会のイメージ訴求など、内容が短く、スライドごとに文章量の差が大きくない場合は、この方式が向きます。
設定の流れは次のとおりです。
「画面切り替え」で「自動的に切り替え」を有効化
秒数を入力(例:7秒、10秒など)
「すべてに適用」で全スライドに反映
スライドショーを実行し、テンポが速すぎないか、遅すぎないかを確認
テンポ調整のコツとしては、最初は少し長めで回し、現場の視認性を確かめてから短くする方が失敗しにくいです。特に会場では、歩きながら見る、離れて見る、人が前を横切る、といった要因で「思ったより読めない」ことがあります。社内のPC前で見たときの最適秒数が、現場では短すぎることも珍しくありません。
無人ループの目的が「読ませる」より「印象を残す」寄りなら、文字を減らし、余裕ある秒数で見せる設計も効果的です。
スライドごとに時間を変える方法
スライドごとに文章量や情報密度が違う場合は、スライド単位で秒数を変える必要があります。たとえば、商品一覧は短め、価格や仕様の説明は長め、地図や案内はじっくり、というように変えることで、見せたい内容をきちんと読めるテンポに近づきます。
設定の流れは次のとおりです。
スライド一覧から対象スライドを選びます。
「画面切り替え」を開き、「自動的に切り替え」の秒数をそのスライド向けに調整します。
同様にほかのスライドも調整します(この場合、「すべてに適用」は押しません)。
この方法で注意したいのは、“設定漏れが起きやすい” ことです。枚数が多いほど、どこまで調整したか分からなくなりやすく、1枚だけ秒数が未設定のままクリック待ちになって止まる、といったトラブルにつながります。
対策としては、次のような進め方が有効です。
いったん全スライドを同一時間で「すべてに適用」し、最低限回る状態を作る
そこから「長くしたいスライド」「短くしたいスライド」だけ調整する
通し再生で引っかかる箇所がないか確認する(できれば2周)
この順番なら、少なくとも「設定漏れで止まる」リスクを大きく下げられます。
リハーサルで実測タイミングを保存する方法
手入力で秒数を決めるのが難しい場合や、ナレーション・解説のテンポに合わせたい場合は、リハーサル機能が便利です。リハーサルでは実際にスライドショーを進めたタイミングを記録し、その時間をスライドのタイミングとして保存できます。
特に「読む量に応じて自然な時間を付けたい」「説明の呼吸を再現したい」ときに有効です。
進め方のイメージは次のとおりです。
「スライドショー」タブから「リハーサル」関連の機能を開始します。
実際の運用を想定して、次へ進めたいタイミングでスライドを送ります。
最後まで進めたら、タイミングを保存します。
通し再生して、想定どおりのテンポになっているか確認します。
リハーサルのメリットは「感覚が反映される」ことですが、デメリットもあります。たとえば、リハーサル中に慌てて進めると、全体が速くなってしまいます。また、会場での視認性や歩行者の速度など、現場要因はリハーサルで再現しきれないこともあります。
そのため、リハーサルで作ったタイミングは、あくまで“ベース”として使い、現場想定で少し余裕を持たせる調整を入れると安定します。
パワーポイントのスライドショー自動再生で動画と音声を自動にする
動画を自動再生にする
スライドショーを自動再生にしても、動画がクリック待ちのままだと、スライド内で「止まった」ように見えたり、伝えたい内容が再生されなかったりします。無人運用で動画を使うなら、動画の再生開始を「自動」にする設定は必須です。
手順の考え方は次のとおりです。
対象スライドで動画をクリックして選択します。
動画に関する設定タブ(名称は環境により異なりますが「再生」など)を開きます。
「開始」を「自動」に変更します。
音量、全画面再生の有無、必要ならフェードなど、見せ方も併せて確認します。
スライドショーで実際に再生し、クリックなしで始まることを確認します。
ここで注意したいのは、編集画面での再生と、スライドショーでの再生は体感が違うことがある点です。編集画面で問題なくても、スライドショーで再生したときに音量が意図と違う、表示が切れる、開始が遅れるといったことが起きる場合があります。必ずスライドショー状態で通し確認を行ってください。
また、動画が重い(高解像度・長尺・高ビットレート)場合、PC性能やストレージ速度の影響で再生が不安定になることがあります。無人運用で「止まらない」を最優先するなら、動画は適度に圧縮し、長尺は避け、必要なら動画化した別運用(後述)も検討すると安全です。
動画をループさせる
短い動画(ロゴのアニメーション、短い商品ループ映像など)を同一スライドで繰り返し見せたい場合、スライドショー全体のループとは別に、動画そのものをループ再生にする必要があります。
この設定がないと、動画が終わった後に静止画状態で時間だけが過ぎ、見栄えが悪くなることがあります。
考え方としては次の2パターンです。
同一スライド内で動画をループ
動画の再生設定でループを有効にし、スライドの表示時間を長めに取る(もしくはスライドを切り替えない設計にする)方法です。ロゴアニメなどに向きます。動画をループさせず、スライド切り替えで次へ
動画が終わる頃にスライドが切り替わるよう、スライドのタイミングを動画の長さに合わせる方法です。商品紹介の“次の話題へ送る”構成に向きます。
いずれにしても、動画の長さとスライドの表示秒数がズレると違和感が出ます。動画が途中で切れて次のスライドへ行く、動画が終わった後に長い無音時間が出る、といった状態は現場で目立ちます。
通し再生では「1周目だけ良く見える」状態になっていないか(2周目以降に音が出ない、再生が遅れる等)も必ず確認してください。
BGMを切れさせない基本方針
BGM(音楽)を使った自動再生は、見栄えを上げる反面、トラブルも増えやすい領域です。音声が絡むと、PCの出力先・音量・ミュート状態、さらには会場の音響機器やHDMI接続の相性といった要因も乗ってきます。無人運用で安定させるなら、BGMの設計は「シンプルにする」ほど強くなります。
基本方針は次のとおりです。
音源を分散させない
スライドごとに別々の音を置くと、切り替え時の途切れや音量差が出やすくなります。可能ならBGMは一つにまとめ、複数スライドにまたがって再生する考え方を検討します。ループ時の戻り方を確認する
スライドショー全体が先頭に戻ったとき、BGMが自然に戻るか、途切れ方が不自然でないかを確認します。ループは“境目”が必ず来るため、境目で違和感が出ないように設計することが大切です。音量は控えめから
会場での音量は環境によって大きく変わります。最初は控えめに設定し、現場で少しずつ上げる方が安全です。突然の大音量はクレームや事故につながりかねません。出力先を固定してテストする
内蔵スピーカー、HDMI先、外部スピーカーなど、出力先が変わると挙動が変わることがあります。必ず本番と同じ接続でテストします。
BGMを含めた無人再生は、設定そのものより「現場で同じ状態を再現できるか」が勝負です。事前に接続図や音量の目安を控えておくと、当日の復旧が早くなります。
パワーポイントのスライドショー自動再生が止まるときの対処
自動で進まないときの確認順
「自動再生にしたのにクリックしないと進まない」「途中で止まる」という症状は、原因が複数あり得ます。やみくもに触ると設定が崩れやすいので、確認順を固定して切り分けるのがおすすめです。次の順番で見ていくと、原因に到達しやすくなります。
画面切り替えのタイミングが有効か
「自動的に切り替え」にチェックが入っているか、秒数が入っているかを確認します。特定スライドだけ未設定になっていることもあるため、止まるスライド周辺は重点的に確認します。一部だけ「クリックで進む」設定が残っていないか
全体を同一時間で適用したつもりでも、後から追加したスライドにタイミングが入っていないことがあります。スライドを追加・差し替えした場合は特に要注意です。スライドショーの種類が目的に合っているか
無人運用なのに発表者モードのままだと、思った挙動にならないことがあります。無人ループならキオスクを軸に確認します。動画やアニメーションが「クリックで開始」になっていないか
スライド自体が進んでいても、見た目として「止まった」ように見える場合があります。動画の開始設定、アニメーションの開始条件(クリック/直前の動作と同時/直前の動作の後)などを確認します。外部要因で処理が止まっていないか
ネットワーク参照が必要な素材、リンク、埋め込み要素があると、読み込み待ちで遅延が起きる場合があります。無人運用では、できるだけローカルで完結する構成(ファイル内に埋め込む、リンク依存を減らす)に寄せると安定します。
切り分けを早くするコツは、問題のファイルをいきなり疑うのではなく、「簡易ファイルで検証する」ことです。新規で数枚のスライドを作り、全スライド5秒、キオスク、ループで回してみて、問題が出るか確認します。簡易ファイルで問題が出るなら環境(PC側)の要因、出ないなら元ファイル(タイミング漏れ、メディア設定、素材の重さ)側の要因が濃くなります。
ループで先頭に戻らないときの確認順
「最後のスライドで止まる」「先頭に戻らない」という場合は、ループ条件が満たされていない可能性が高いです。次の順番で確認してください。
スライドショーの種類がキオスクになっているか
無人ループ運用の基本です。まずここを確認します。繰り返し設定が有効か
ループに関する設定が無効になっていると、最後で止まります。環境によっては、キオスク選択と繰り返しがセットで効く場合もありますが、念のため繰り返し項目がある場合は必ず確認します。分岐やリンクで想定外の終点に行っていないか
ハイパーリンクで別スライドへ飛ぶ設計になっていると、最後に到達しない、あるいは別の終点で止まるなど、思ったループにならないことがあります。無人運用では分岐を減らした方が安全です。メディア再生が原因で“終わったように見える”状態になっていないか
最後のスライドに動画があり、動画が終わった後に静止状態が続いて「止まった」ように見えることがあります。ループそのものではなく、見え方として止まったように感じるケースもあるため、最後のスライドの要素も確認します。
ループは「最後→先頭」の境目で不具合が見つかりやすい領域です。1周できたら安心、ではなく、必ず2周目に入ることを確認し、できれば3周目まで回して挙動が安定しているか見ると、現場トラブルを減らせます。
ブラウザ再生で期待どおりにならないときの代替案
PowerPointをブラウザで再生する場合(オンライン上の閲覧機能など)は、デスクトップ版PowerPointと同じ挙動が常に保証されるとは限りません。自動再生やループ、メディアの扱いは特に影響を受けやすく、「デスクトップでは動いたのに、ブラウザだと止まる」「ループしない」といった状況が起こり得ます。
この場合、現実的な代替案は次の方向性になります。
再生端末にデスクトップ版PowerPointを用意する
無人運用の安定性を最優先するなら、再生環境を固定し、デスクトップ版で検証したとおりに動かす方が確実です。最終手段として“動画化”してループする
どうしても環境差が吸収できない場合、スライドショー自体を動画に書き出し、動画プレイヤーやサイネージ機器でループ再生する方法があります。PowerPointの機能差に左右されにくくなるのが利点です。
ただし、動画化すると「途中で差し替える」「一部だけ修正する」などの柔軟性は落ちるため、運用の優先順位に合わせて選びます。運用環境を先に決め、同じ環境で通し検証する
“誰のPCでも同じ”を目指すほど難易度が上がります。無人運用は、環境を固定し、同じ条件で確実に動く状態を作るのが基本です。
無人運用で最も避けたいのは「本番で初めてその環境で回す」ことです。再生する端末、接続するディスプレイ、音の出力先を決めたら、必ずその構成で通し再生してください。
パワーポイントのスライドショー自動再生を無人運用するチェックリスト
事前テストのやり方
無人運用は「設定したから大丈夫」ではなく、「同じ条件で回し続けられることを確認したから大丈夫」です。事前テストは必須で、最低でも次の手順は行ってください。
本番で使うPCを用意する(できれば同一機体、難しければ同等スペック)
本番と同じ接続にする(同じディスプレイ、同じHDMI/変換アダプタ、同じスピーカー)
スライドショーを最初から最後まで通す
先頭に戻って2周目に入ることを確認する
動画・音声が2周目でも同じように再生されるか確認する
終了方法(Escなど)と、再開手順を確認する
ここで「2周目」が重要です。1周目はキャッシュや読み込みがたまたまうまくいくことがあり、2周目以降で音が出ない、動画が遅れる、タイミングが崩れるなどの問題が出ることがあります。無人運用で失敗したくないなら、1周目で安心せず、2周目に入ることを必須条件にしてください。
また、当日の運用を想定し、開始前に必要な操作を最小化するのも大切です。誰が見ても「これを押せば始まる」状態を作るほど、事故は減ります。運用が属人化すると、担当者不在時に復旧できなくなります。
端末側の設定チェック
スライド側の設定が完璧でも、PC側の設定が原因で止まることは非常に多いです。無人運用の敵は、PowerPointではなくPCの省電力や通知、更新です。最低限、次の点はチェックしてください。
スリープしない設定になっている
画面が自動でオフにならない設定になっている
電源供給が安定している(AC接続、タップの固定、抜け防止)
通知が出ないようにする(メッセージ、会議アプリ、ウイルス対策のポップアップなど)
自動更新や再起動が本番時間に被らないよう配慮する
キーボードやマウスの誤操作を減らす配置にする(触られやすい場所に置かない)
会場では、「たまたま出た通知」や「勝手に画面が暗くなった」が最も目立ち、最も不信感を招きます。無人運用をするなら、PowerPointの設定より先に、PCが“看板として振る舞える”状態かを整えることが大切です。
本番での安全策
どれだけ準備しても、現場は想定外が起きます。大切なのは「止まらない」だけでなく、「止まったときにすぐ戻せる」ことです。復旧手順まで含めて設計すると、運用が格段に強くなります。
おすすめの安全策は次のとおりです。
ファイルのバックアップを複数持つ
例:PC内、USBメモリ、別ストレージ。ネット経由でしか開けない状態は避けます。予備の再生手段を用意する
例:動画化したファイル、別PC、あるいは最低限の静止画版。万が一のときに“何も映らない”を回避できます。復旧手順を紙で残す
「どのファイルを開き、どこを押して開始するか」「終了と再開の方法」などを、誰が見ても分かる形で置いておくと、担当者不在でも回復しやすくなります。ケーブル固定と設置安定
物理的な抜けや接触不良は、現場トラブルの常連です。ケーブルにテンションがかからないようにし、変換アダプタを含めて固定します。
無人運用は、設定と運用の両方がそろって初めて成立します。「当日は忙しいから」「大丈夫だと思うから」と省略した部分が、最も目立つ形で露出します。最小の準備で最大の安定を得るなら、チェックリストを作り、淡々と潰していくのが最も確実です。
よくある質問
一部のスライドだけ自動再生にできますか
可能です。スライドごとにタイミングを変える設定を利用し、特定スライドだけ秒数を入れる、あるいは特定スライドだけ自動切り替えを無効にすることで実現できます。
ただし、無人運用で「一部だけ手動」を混ぜると、そこで止まってしまうリスクが高くなります。目的が明確な場合(例:注意喚起スライドだけ長く見せたい、静止画を長時間掲示したいなど)に限定し、通し再生で止まらないことを必ず確認してください。
また、「一部だけ長く見せる」程度なら、手動にせず“そのスライドの秒数を長くする”方が安定します。無人運用の観点では、手動操作の余地を減らすほど強くなります。
自動再生中に手動操作へ戻せますか
運用の考え方次第です。発表者モードでタイミングを使っている場合は、状況に応じて手動で進めたり止めたりしやすいです。一方、キオスク運用は「無人で回す」ことに寄せた設計のため、手動介入を前提にすると運用が中途半端になりやすい傾向があります。
「基本は自動、必要なら止めたい」というケースでは、次のように設計すると現場で困りにくくなります。
触る担当者が確実にいる:発表者モード+タイミング(補助)で運用
触る担当者がいない/触らせたくない:キオスク+ループで運用し、止める操作は限定(Escなど)し、復旧手順を整える
どちらが正解というより、現場の体制(誰が触るのか、どこに設置するのか)で決めるのが現実的です。
途中で止めたいときはどうしますか
多くの環境では、スライドショーはEscで終了できます。無人運用の場合、「止め方」だけでなく「止めた後にどう戻すか」も重要です。具体的には、次の点を決めておくと安心です。
終了するキー操作(Escなど)
再開する手順(どのファイルを開き、どの操作で開始するか)
それを誰が行うか(スタッフ全員ができるか)
会場では、担当者が一時的に不在になることもあります。誰が見ても迷わない復旧手順を用意しておくと、想定外の停止が起きても短時間で戻せます。
まとめ
PowerPointでスライドショーを自動再生し、最後まで行ったら先頭に戻してループさせるには、設定を二段で考えるのがコツです。まず「画面切り替え」でスライドのタイミング(自動で進む秒数)を整え、次に「スライドショーの設定」で目的に合う種類(無人ならキオスク)とループ条件を有効にします。自動再生がうまくいかないときは、タイミング→モード→ループの順に確認すると、原因を切り分けやすくなります。
さらに、動画や音声を含む場合は、メディアの開始がクリック待ちになっていないか、ループ時に破綻しないか、2周目でも安定して再生できるかを必ず検証してください。無人運用では、PCのスリープや通知、更新といった端末側要因が最大の落とし穴になります。チェックリストを用意し、事前に本番同等の環境で通し再生(最低2周)を行うことで、現場で止まらない運用に近づきます。
最後に、PowerPointや再生環境はアップデートや環境差で挙動が変わることがあります。だからこそ、毎回「本番環境で通す」検証をルーチン化し、バックアップと復旧手順まで含めて準備しておくことが、最も確実な安全策になります。