妊娠後期に入ってから、吐き気やムカムカが戻ってきたように感じたり、体がだるくて思うように動けなかったりすると、「つわりは終わったはずなのに…」「これって大丈夫?」と不安になりますよね。しかも、休んでも回復しづらく、家事や仕事、上の子のお世話があると、気持ちまで追い込まれてしまいがちです。
妊娠後期の「気持ち悪い」「だるい」は、胃の圧迫や逆流、睡眠の質の低下、貧血など“よくある体の変化”で起こることが少なくありません。一方で、強い頭痛や見えにくさ、ふだんと違うみぞおちの痛み、強い腹痛や出血など、早めの連絡が必要なサインが紛れている場合もあります。
この記事では、まず「今すぐ連絡が必要な危険サイン」を最初に確認し、そのうえで原因を仕分けるチェックと比較表、今日からできる食事・水分・寝方・休み方の具体策まで、順番に整理しました。読んだあとに「私は今、何を優先すればいいか」がはっきり分かるように構成しています。
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妊娠後期に気持ち悪い・だるいと感じたら最初に確認したいこと
まずは今すぐ連絡が必要な危険サインをチェックする
次の症状がある場合は、すぐに産婦人科へ連絡してください。日本産科婦人科学会(JSOG)は、妊娠高血圧症候群に特徴的な症状はないものの、むくみ、頭痛、めまい、見えにくさ等に注意し、特に「これまでにない頭痛」「ろれつが回りにくい」「手足が動かしにくい」「ふだんと違う胃の痛みや吐き気」を自覚した場合は連絡するよう示しています。
また、妊娠後期の腹痛や出血は、常位胎盤早期剥離など緊急性の高い状態が含まれるため、迷う場合は早めに相談が安全です。
今すぐ連絡の目安(チェックリスト)
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これまでにない強い頭痛がある
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目が見えにくい/チカチカするなど視覚の異常がある
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ろれつが回りにくい/手足が動かしにくい感じがある
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**ふだんと違う胃の痛み(みぞおち付近)**や、強い吐き気がある
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強い腹痛が続く、出血がある、子宮が張りっぱなしの感じがある
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胎動が急に弱く感じる、いつもと明らかに違う不安がある
当てはまる場合は、本記事のセルフケアよりも連絡を優先してください(夜間でも遠慮は不要です)。
受診時に伝えるとスムーズな項目
「電話で何を言えばいいか分からない」と焦る方は多いです。次の項目をメモにして伝えると、医療者が状況判断しやすくなります。
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妊娠週数(例:32週)
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症状(吐き気/だるさ/頭痛/見えにくさ/腹痛など)と開始時刻
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嘔吐回数、水分が取れているか
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尿の量(極端に少ない、色が濃い等)
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出血の有無
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胎動の変化(いつから、どの程度)
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血圧が測れる場合は数値
妊娠後期に気持ち悪い・だるい症状が起きやすい理由
危険サインに当てはまらない場合、多くは妊娠後期特有の体の変化が影響しています。妊娠後期は、赤ちゃんの成長で子宮が大きくなり、内臓が圧迫され、呼吸や循環、睡眠にも負担がかかりやすい時期です。
ここでは「気持ち悪い」と「だるい」が同時に起きやすい代表的な理由を、納得しやすい形で整理します。
胃の圧迫で食後にムカムカしやすくなる
妊娠後期は、胃が物理的に押し上げられ、食べたものを受け止める余裕が小さくなりがちです。そのため、食後に胃もたれや胸やけ、吐き気が起こりやすくなります。「つわりが終わったはずなのに戻ったように感じる」理由の一つです。
特に、次のようなパターンが多いです。
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食後にムカムカする
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げっぷが増える
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横になると胸やけが強くなる
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少し食べただけでお腹が張る
胃酸の逆流で胸やけ・吐き気が出やすくなる
妊娠中は消化管の動きがゆっくりになる影響もあり、胃酸が逆流しやすくなることがあります。胸やけが強いと吐き気につながることもあります。
体位の工夫(上半身を起こす、左側を下にする等)で楽になる人が多い一方、全員に当てはまるわけではありません。試して楽になる方法を採用し、つらくなる姿勢は避けるのが基本です。
睡眠の質の低下がだるさを増幅する
妊娠後期は、寝返りが打ちにくい、頻尿、足がつる、息苦しいなどで睡眠が分断されやすい時期です。眠りが浅いと、倦怠感が強くなり、吐き気も「強く感じやすい」状態になります。
寝方については「左向きが良い」と言われることが多いですが、医療機関でも「右向きや仰向けでも大丈夫、後期に入ったら左向きを意識する」など、個別の負担と相談しながら調整する説明があります。
貧血・鉄不足で動けないだるさや吐き気が出ることがある
妊娠中は血液量が増えますが、鉄が不足すると貧血になりやすく、だるさ、眠気、息切れ、動悸、めまい、吐き気などが出ることがあります。
鉄の目安量について、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」が基礎にあり、妊娠中期・後期は鉄が不足しやすいことが知られています。
妊娠後期の気持ち悪い・だるいを原因別に見分ける
ここからは「私はどれ?」を短時間で見極めるためのパートです。完全に1つに決める必要はありません。重なっていることが多いため、「いちばん当てはまりそうなもの」から対策していくと改善しやすいです。
最短で判断するための原因仕分けフロー
ステップ1:食後や横になると悪化しますか
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はい → 胃の圧迫/胃酸逆流が主因の可能性が高い
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いいえ → ステップ2へ
ステップ2:息切れ・動悸・めまい・立ちくらみがありますか
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はい → 貧血(鉄不足)や血圧変動、脱水の可能性。健診結果も確認
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いいえ → ステップ3へ
ステップ3:発熱・下痢・強い腹痛など急な体調変化がありますか
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はい → 胃腸炎など妊娠以外の要因も。脱水に注意し、早めに相談
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いいえ → ステップ4へ
ステップ4:睡眠不足・疲労・ストレスが強いですか
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はい → 休息設計が主軸。生活負荷を減らすことが回復への近道
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いいえ → 症状が続く場合は健診前でも相談(複合要因の可能性)
原因別比較表(症状→対策→相談目安が一目で分かる)
| 原因の可能性 | ありがちな特徴 | 悪化しやすいタイミング | まず試す対策 | 相談の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 胃の圧迫/逆流 | 食後ムカムカ、胸やけ、げっぷ、胃もたれ | 食後・横になる時 | 少量頻回、就寝前の食事を控える、上半身を起こす、左側を下にして楽なら採用 | 食事・水分が入らない/嘔吐が続く |
| 貧血/鉄不足 | だるい、眠い、息切れ、動悸、めまい、吐き気 | 動いた後・夕方 | 健診結果確認、鉄を意識、無理せず休む | 息切れ・動悸が強い/ふらつきが増える |
| 睡眠不足・疲労 | 休んでもだるい、集中できない、気持ち悪さが増す | 夜間覚醒後・夕方 | 休息の固定枠、家事の削減、短い昼寝 | 日常生活が回らないほどつらい |
| 胃腸炎等(妊娠以外) | 発熱、下痢、急な嘔吐、腹痛 | 急に発症 | 水分最優先、無理に食べない | 脱水、発熱、強い腹痛がある |
| 要注意(妊娠高血圧症候群など) | 強い頭痛、見えにくい、ろれつ、手足の動かしにくさ、ふだんと違う胃痛・吐き気 | いつでも | セルフケアより連絡優先 | 今すぐ産婦人科へ連絡 |
妊娠後期の気持ち悪い・だるいを楽にするセルフケア
ここは「全部やる」必要はありません。“一番つらい場面”を1つ選んで、そこに効く対策だけを試してください。たとえば「食後がつらい」「朝が無理」「夜が眠れない」など、しんどさの山を小さくすると回復が早いです。
食事は少量頻回にして胃の負担を減らす
妊娠後期のムカムカは「量」と「タイミング」に強く影響されます。基本は次の4点です。
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1回量を減らし、回数で栄養を確保する
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脂っこい物・香辛料・酸味が強すぎる物は、つらい日は避ける
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空腹で気持ち悪くなる人は、“小さな補給”を先に
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就寝直前の食事は避け、どうしても必要なら少量にする(眠っている間のムカムカ対策として軽食が有用な場合がある)
食べられる度合い別:最小構成メニュー表(無理しない版)
| 食べられる度合い | 目的 | 具体例(家) | 具体例(買えるもの) |
|---|---|---|---|
| ほぼ無理(0%) | 脱水回避 | ひと口ずつ水、麦茶 | 経口補水液、スポーツドリンク等を少量ずつ(合うものを選ぶ) |
| 少しなら可(10〜30%) | 胃に負担をかけずエネルギー | おかゆ、うどん少量、スープ | 具だくさんスープ、小さめおにぎり、ヨーグルト |
| 半分以上可(50%以上) | 栄養を整える | 主食+たんぱく質+野菜 | おにぎり+サラダチキン+スープ等 |
※吐き気が強い時は「理想の栄養」より「続けられる現実」を優先し、回復してから整えていく方が安全です。
水分は一口ずつ頻回にする(吐き気のときほど重要)
吐き気があると「飲むこと」自体が苦行になります。しかし、脱水はだるさを強め、さらに吐き気を悪化させることがあります。水分は一度に大量ではなく、一口ずつ頻回が基本です。
脱水のサイン(当日相談の目安)
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尿が極端に少ない、色が濃い
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口が乾く、立ちくらみが増える
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水分を取ろうとしてもすぐ吐いてしまう
この場合は、健診日を待たずに相談が安全です。
胸やけ・ムカムカを減らす姿勢と寝方
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食後すぐに横にならない(可能なら上半身を起こして過ごす)
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寝る時は、上半身を少し高くする(クッションや抱き枕で調整)
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左側を下にして楽になる人が多いため試す(合わなければ中止)
「仰向けが楽で、そのまま眠ってしまう」方もいます。医療機関からは「右向きや仰向けでも大丈夫」としつつ、後期に入ったら左向きを意識する旨の情報もありますので、“眠れる姿勢”を基準に、無理なく調整してください。
だるさを軽くする休み方(罪悪感を減らす設計)
妊娠後期のだるさは、気合で突破しようとしても悪化しがちです。ここで重要なのは「休む」そのものではなく、休み方を“設計”することです。
休み方のコツ
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休憩を「空いたら」ではなく「時間で予約」する(例:午前と午後に各15分)
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立ち作業はまとめてやらず、座ってできる作業に置き換える
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家事は「やること」ではなく「やめること」を決める(掃除の頻度を落とす等)
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可能なら周囲に「体調の波がある」ことを宣言し、お願いを具体化する
家族・職場に伝える短いテンプレ
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「妊娠後期で胃が圧迫されて吐き気が出やすい時期みたい。今日は小分けに食べて、休みながら動きたい」
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「だるさが強くて無理すると悪化するので、ここだけ手伝ってほしい(例:食器洗いだけ)」
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「危険な症状がないかも見ながら過ごしている。変化があればすぐ連絡する」
妊娠後期の気持ち悪い・だるいで受診が必要なサイン
ここは繰り返しになりますが、最重要パートです。妊娠高血圧症候群は特徴的症状がないこともある一方、注意すべき症状が提示されています。該当する場合はセルフケアより連絡が優先です。
受診目安トリアージ表(今すぐ/今日中/様子見)
| 区分 | 症状の例 | 取るべき行動 |
|---|---|---|
| 今すぐ産婦人科へ連絡 | これまでにない強い頭痛、見えにくい、ろれつが回りにくい、手足が動かしにくい、ふだんと違う胃の痛みや吐き気 / 強い腹痛・出血・胎動の急な変化 | 夜間でも連絡。症状・開始時刻・妊娠週数を伝える |
| 今日中に相談 | 水分が入らない、嘔吐が続く、尿が少ない、強いめまい・動悸・息切れ、発熱や下痢が強い | 当日中に電話相談→指示に従う |
| 様子見(悪化で相談) | 食後中心のムカムカ、軽い胸やけ、軽い倦怠感で水分は取れる | 少量頻回・姿勢・休息を試す |
胎盤がはがれる病気(常位胎盤早期剥離)の注意点
常位胎盤早期剥離は、出産前に胎盤がはがれてしまう状態で、腹痛、出血などが見られることがあり、緊急対応が必要になる場合があります。国立成育医療研究センターの情報でも、腹痛が続く場合の受診や、出血・ショック症状への注意が示されています。
「いつもと違う強い腹痛」「出血」「胎動が弱い気がする」など、直感的に不安が強いときは、迷わず連絡してください。
妊娠後期の気持ち悪い・だるいでよくある質問
いつまで続きますか、臨月に入ると楽になりますか
胃の圧迫や逆流が主因の場合、赤ちゃんが下がって圧迫が軽くなると楽になることがあります。ただし個人差が大きく、波がありながら出産まで続く方もいます。「今日ずっと最悪」ではなく「楽な時間が少しでもあるか」で見ていくと気持ちが折れにくくなります。
食べられない日は赤ちゃんに影響しますか
短期間であれば、まず優先すべきは脱水回避です。水分が取れていれば慌てる必要がないケースも多い一方、水分も取れず嘔吐が続く場合は当日相談が安全です。
鉄分は食事だけで足りますか
妊娠中期・後期は鉄が必要になりやすいことが知られています。鉄の摂取目安は「日本人の食事摂取基準(2020年版)」が基礎にあります。
ただし吐き気が強い時期に「鉄のために無理をする」と、食事自体が続かなくなることがあります。健診結果を踏まえて、必要なら医師に相談してください。
仕事を休むほどではないけれど、動けない日はどうしたらいいですか
「休めない」と感じる方ほど、休息の入れ方が“場当たり”になりがちです。休む日は「休む」だけでなく、次の日が楽になるように「やらないこと」を決めるのがコツです。母性健康管理の考え方や健診受診の重要性は公的にも整理されています。
参考にした情報源
・日本産科婦人科学会(JSOG)「妊娠高血圧症候群」
https://www.jsog.or.jp/citizen/5709/
・厚生労働省 働く女性の健康応援サイト(母性健康管理サポート)
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/faq/index_w.html
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
・厚生労働省「女性労働者の母性健康管理のために」(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/seisaku05/pdf/seisaku05a.pdf
・国立成育医療研究センター「胎盤がはがれる、常位胎盤早期剥離について」
https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/column/taiban_hakuri.html
・国立成育医療研究センター「産科医療まるわかりガイド:常位胎盤早期剥離」(PDF)
https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/bunben/img/guide_15.pdf
・厚生労働省(食事摂取基準を引用した一般向け解説)明治「食べるプレママの栄養:鉄分」
https://www.meiji.co.jp/baby/club/category/eat/nutrition/ea_nutrition257.html
・医療機関情報(寝方に関するQ&A例)こすぎレディースクリニック
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