足をひねって「足関節捻挫(以下「捻挫」)」をしたあと、通常であれば数日〜数週間で腫れや痛みが改善することが多いですが、中には「くるぶしまわりの腫れがなかなかひかない」「歩くとまだ痛い」といった状態が長引くケースがあります。
本記事では、なかなか腫れが引かない原因から、正しい応急処置、セルフケア、受診の判断基準、リハビリや再発予防まで、段階的に詳しく解説いたします。
足首をよく使うスポーツをしている方、日常生活で歩く・立つ時間が多い方、あるいは以前に捻挫をしたことがあり「また同じようになるのでは…」と不安を抱える方にとって、参考になる情報を網羅しています。
※本コンテンツは「記事制作ポリシー」に基づき、正確かつ信頼性の高い情報提供を心がけております。万が一、内容に誤りや誤解を招く表現がございましたら、お手数ですが「お問い合わせ」よりご一報ください。速やかに確認・修正いたします。
捻挫直後は RICE/PRICE 処置(安静・冷却・圧迫・挙上)が基本であり、これを怠ると腫れや痛みが長引くリスクがあります。
腫れや痛みが数週間以上続く場合、靭帯損傷の重症化、足根骨のゆがみ、靭帯以外の組織の損傷などが原因の可能性があるため、医療機関での検査(エコー・MRI など)を検討すべきです。
回復期にはリハビリ、足指運動、ストレッチ、筋力トレーニングを段階的に取り入れ、再発防止や足首の安定性を取り戻すことが重要です。
靴選び、歩き方、日常生活での足のケアなど、再発防止のための習慣を見直すことが、将来的な足首の健康につながります。
捻挫後に腫れが長引くのは「ただの時間の問題」ではなく、場合によっては靭帯損傷の重症化や足根骨の異常などが隠れている可能性があります。本記事を参考に、適切なケアや受診の判断を行っていただければ幸いです。
足首の構造と靭帯損傷の基本
足首の構造と主要な靭帯
足首(足関節)は、複数の骨と靭帯によって構成されています。特に、外くるぶし側の「外側靭帯」は、地面に足をついたときの衝撃や横ぶれを抑える重要な役割を担っています。捻挫の多くはこの靭帯の損傷によって起こります。
また、足の甲側や内側には別の靭帯や足根骨という小さな骨群があり、足の安定性や体重負荷の分散に関与しています。
捻挫の種類と損傷の程度(軽度〜重度)
捻挫は、靭帯が伸びる「軽度」、靭帯が部分断裂する「中等度」、靭帯が完全断裂または骨の付着部が剥がれる「剥離骨折を伴う重度」まで、損傷の程度に幅があります。軽度であれば安静とアイシングで回復しますが、靭帯断裂や剥離骨折などがあると、腫れや痛みが長引き、歩行に支障をきたすことがあります。
なぜ「腫れがひかない」のか ― 考えられる原因
靭帯損傷が重い/靭帯断裂・部分断裂
捻挫直後に強くひねった場合、靭帯が伸びるだけでなく、断裂や完全断裂に至っている可能性があります。こうした損傷があると、通常の回復より時間がかかり、腫れや痛みが長期間残ることがあります。
「二分靭帯」や足根骨のゆがみ、靭帯以外の損傷
一般の靭帯損傷に加え、受傷時の衝撃によって足の骨(足根骨)が歪んだり、足の甲側や足底の靭帯、腱などが損傷している場合もあります。特に「二分靭帯」など、あまり知られていない靭帯の損傷は、通常の捻挫治療では見落とされる可能性があります。
こうした靭帯や骨の損傷があると、炎症が続いたり、関節の安定性が損なわれたりして、腫れや痛みが長引きやすいです。
靭帯損傷後のむくみ・血流不良、筋膜の癒着
捻挫後、足を使わず動かさない時間が続くと、筋肉のポンプ作用が働かず血液や水分が足先にたまり、むくみとして腫れが長引くことがあります。これは単なる靭帯損傷だけではない、二次的な原因です。
また、損傷した靭帯や周囲の組織が癒着したり固くなったりすることで、回復が遅れるケースも報告されています。
不十分な応急処置や固定不足、早期の負荷
捻挫直後に適切な応急処置(安静、冷却、圧迫、挙上=RICE/PRICE)を行わなかったり、固定を怠ったり、患部に負荷をかけ過ぎたりすると、回復が遅れたり、再損傷のリスクが高まります。
特に、冷やす/圧迫する/挙上することを怠ると、腫れや血液の滞留が改善しにくくなります。
自宅でできる応急処置とセルフケア(初期〜回復期)
RICE/PRICE処置の基本
捻挫直後に重要なのは次の4ステップ、いわゆる「RICE(または PRICE)」処置です:
Rest(安静):患部を動かさず、体重をかけない。可能であれば足を心臓より高く上げる。
Ice(冷却):氷や冷たいタオルなどで患部を冷やし、炎症や内出血、腫れを抑える。冷やしすぎず、皮膚の感覚が戻ったら中断。
Compression(圧迫):テープや包帯、サポーターで軽く圧迫し、腫れの拡大を防ぐ。ただし締めすぎないよう注意。
Elevation(挙上):足を心臓より上にして血液や水分がたまりにくくする。クッションや枕などを活用。
これらを受傷後できるだけ早く、適切に行うことで回復が早まり、腫れや痛みの慢性化を防ぎやすくなります。
むくみ対策や血流改善(挙上、足指の運動など)
むくみや血流不良が原因で腫れが続く場合、以下のようなケアが有効です。
足を挙げて休む(寝るとき、椅子に座るときなども心臓より高く)
足の指や足首を無理のない範囲で動かす。たとえば足指でタオルをつかむ「タオルギャザー」運動などが紹介されている。これにより血液の循環を促し、むくみを改善。
長時間座ったり立ったりする場合は、こまめに休憩し、足を休ませる
固定・サポーター使用、無理しないことの重要性
捻挫後すぐに無理に歩いたり、固定を怠ってしまうと、治癒が遅れるばかりか、靭帯や骨への負担が増えて合併症や慢性化のリスクが高まります。
固定は一定期間続け、足首が安定してきたら、テーピングやサポーターへの切り替えを検討します。圧迫はあくまで軽めに、血流を妨げないよう注意が必要です。
腫れ・痛みが長引くとき ― 受診を検討すべきサインと検査
「いつ受診すべきか」のチェックリスト
以下のようなサインがある場合は、医療機関での受診を強くおすすめします:
捻挫から 2〜3週間以上たっても腫れや痛みが改善しない。特に、歩行時に痛みがあり、体重をかけるのが困難な場合。
くるぶしを押すと痛い、圧痛が残る。
レントゲンでは異常がなかったが、痛みや腫れが残っている — 靭帯損傷や骨の微細な異常の可能性。
足の甲や外側、他の部分に痛みや違和感が広がっている — 靭帯以外の靭帯や骨・腱の損傷の可能性。
足がぐらついたり、不安定さを感じたりする — 関節の不安定や靭帯の不完全治癒の可能性。
医療機関で受けるべき主な検査(レントゲン/エコー/MRI/CT)
レントゲン検査:まず骨折(特に剥離骨折)がないか確認。だたし、靭帯損傷や足根骨の歪みなどは写らない場合あり。
超音波(エコー)検査:靭帯や腱、軟部組織の損傷、炎症の有無を確認。靭帯断裂や部分断裂、腱の損傷などがあれば映る可能性あり。
MRI/CT検査:靭帯や足根骨、骨の微細な損傷、複雑な構造の異常を詳しく調べるのに有効。エコーやレントゲンで異常が見つからないが痛みが続く場合に検討される。
診断されやすい合併症:靭帯損傷、剥離骨折、足根骨のゆがみなど
捻挫後に長引く腫れや痛みの背景として考えられるのは以下です:
靭帯の部分断裂や完全断裂
骨の付着部が剥がれる「剥離骨折」
足根骨のわずかな歪みや骨の位置のズレ → 靴の違和感、歩行時の不安定、慢性的な腫れ・痛みの原因となりうる
靭帯以外(腱・筋膜・軟部組織)の損傷や癒着、むくみなどの二次的な問題
回復期〜再発防止 ― リハビリ、靴・歩き方、筋力・柔軟性ケア
適切なリハビリと関節可動域の回復
捻挫後、靭帯や軟部組織の治癒がある程度進んだら、関節可動域(足首を曲げる/伸ばす、回す動きなど)の回復を目指すリハビリを開始します。ギプスなどで長期間固定していた場合は、関節が固まり、筋力低下が起こるため、早めのリハビリが重要です。
筋力トレーニングとストレッチ、足指運動
足首やふくらはぎの筋肉を鍛えることで、足首の安定性・バランス力を回復
足指の運動、タオルギャザーなどで、血流改善やむくみ防止、足底の柔軟性維持
足首まわりのストレッチ、ふくらはぎのストレッチなどで関節可動域の維持・改善
これらにより、再受傷の防止や足首の安定性を取り戻すことが期待されます。
靴選び、歩き方・姿勢の見直し、日常での注意
捻挫が癒えても、日常の靴選び、歩き方、姿勢に問題があると再発しやすくなります。特に、
足に合った靴(サイズ、幅、底の柔らかさ・安定性)を選ぶ
足首が不安定にならないよう、歩き方や姿勢を見直す
長時間立ち仕事や歩行がある場合は、適宜休憩・足のケアを行う
などを通して、足首への負担を減らすことが重要です。
後遺症・慢性化 ― 放置するとどうなるか
足首の不安定性、ぐらつき、変形性関節症のリスク
靭帯損傷を放置したり、固定を怠ったりすると、靭帯が緩んだままになり、足首が不安定になります。その結果、関節や軟骨に過度な負担がかかり、将来的に変形性足関節症など慢性的な関節疾患につながるリスクがあります。
靭帯の緩み・関節の不安定による再受傷の可能性
足首がぐらつくことで、歩行時やスポーツ時に再び捻挫しやすくなります。これを繰り返すと、慢性的な痛み、靭帯の変性、関節の異常などが進行しやすくなります。
靴擦れ・足底の痛み・膝や腰への連鎖
足首の不安定性や歪みによって、歩行時の足のつき方・体重のかかり方が変わると、足底や膝、腰に負担が集中し、別の痛みや不調を引き起こす可能性があります。特に、足根骨のゆがみがある場合は、足だけでなく全身のバランスに影響が出ることがあります。
FAQ(よくある質問と回答)
Q. 捻挫後どのくらいで腫れ・痛みは引くものですか?
A. 軽度の捻挫であれば数日〜1週間ほどで腫れや痛みが軽減することが多いですが、靭帯損傷が強い場合や靭帯以外の損傷がある場合は、数週間〜数か月かかることがあります。
Q. ひねった直後に冷やせなかった/固定を怠った。まだ大丈夫?
A. 冷却や固定を怠った場合、血流不良やむくみ、腫れの悪化、靭帯の不安定化のリスクがあります。症状が長引くようであれば、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
Q. レントゲンで異常がなかったが、腫れ・痛みが続く。なぜ?
A. 靭帯損傷や足根骨の歪み、腱・靭帯の損傷などは、レントゲンでは写らない場合があります。そういった場合は、エコー検査や MRI/CT 検査を受けることで異常が明らかになることがあります。
Q. サポーターはいつまで使うべきですか?
A. 急性期の腫れや痛みが引いた後も、靭帯や足首の安定性が回復するまで、サポーターやテーピングでのサポートは有効です。ただし、必要以上に長期間にわたって強く締めすぎると血流障害などが起こる可能性があります。適度な締め具合で、医師や理学療法士の指導のもと使うことを推奨します。
Q. リハビリやストレッチは痛みが消える前に始めてもいいですか?
A. 痛みや腫れがあるうちは無理をせず応急処置と安静が最優先です。炎症が落ち着き、医師や理学療法士の許可があれば、慎重にストレッチや可動域回復、足指運動、筋力トレーニングを始めるのが望ましいです。
Q. 再発しないために普段からできることは?
A. 足に合った靴を履く、足首まわりの柔軟性と筋力を日常的に維持する、足指やふくらはぎのストレッチ、適切な歩き方や姿勢を意識するなどが有効です。