ゲーム中に「なんだか重い」「急にカクつく」「GPUが熱くてファンがうるさい」――そんな違和感が出たとき、原因を勘だけで探すのは難しいものです。MSIアフターバーナー(MSI Afterburner)は、FPSや温度、使用率などをゲーム画面上に表示して状況を見える化し、そのまま電力制限やファンカーブ、低電圧化(アンダーボルト)で発熱と騒音を抑えられる定番ツールです。
ただし、最初につまずきやすいのも事実です。「RTSSって何?」「OSDが出ない」「Power Limitが動かない」「設定を触るのが怖い」――こうした不安を放置したまま触ると、うまくいかないだけでなく調整が“当てずっぽう”になってしまいます。
本記事では、導入からRTSS連携のOSD表示、静音化に効く電力制限とファンカーブ、さらに低電圧化までを、失敗しにくい順番で丁寧に解説します。加えて、設定が反映されない・クラッシュする・OSDが出ないといったトラブルの切り分けと戻し方も網羅します。読み終えたころには、数字で状態を判断しながら、安心して自分のPCに合う快適設定を作れるようになります。
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MSIアフターバーナーでできることと注意点
オーバークロックだけでなく監視と静音化にも使える
「MSIアフターバーナー=オーバークロック用」というイメージを持つ方は多いですが、実際に使って満足度が高いのは、まず“監視”と“快適性の改善”です。具体的には次のような用途で役立ちます。
リアルタイム監視(モニタリング)
GPU温度、GPU使用率、コアクロック、メモリクロック、ファン回転数、電圧(表示できる場合)、消費電力(表示できる場合)などを追えます。
これができると、ゲームが重い原因が「GPUが限界なのか」「CPU側が詰まっているのか」「温度でクロックが落ちているのか」を推測できるようになります。ゲーム画面上に表示(OSD)
いわゆる「ゲーム中にFPSや温度が左上に出る」状態です。体感のカクつきが出た瞬間に、温度や使用率がどう動いたかを同時に見られるので、原因特定が一気に楽になります。静音化(発熱と騒音の改善)
ここがAfterburnerの強いところです。性能を無理に追わなくても、電力制限(Power Limit)やファンカーブで「うるささ」「熱さ」を大幅に抑えられることがあります。特に、電力制限は効果が分かりやすく、手順も比較的安全に進められます。低電圧化(アンダーボルト)
同じような性能を、より低い電圧で動かして消費電力と熱を下げるアプローチです。うまくハマると、温度と騒音が下がり、場合によっては安定性も上がります。反面、個体差が大きく、やり方を誤るとクラッシュしやすいので、手順と戻し方が重要です。軽い性能アップ(OC Scanner、手動調整)
自動スキャンで安定しやすい範囲を探す機能や、コア/メモリの微調整ができます。ただし、静音化や安定化が目的の場合、ここは最後で十分です。
まずは「OSDで現状把握 → 電力制限で熱と騒音を下げる → ファンカーブで体感を整える」という順番が、効果と安全性のバランスが良いおすすめルートです。
設定変更のリスクと「元に戻せる」前提づくり
Afterburnerで扱う設定は基本的にソフト上の制御で、永続的にGPUを書き換える種類のものではありません。ただし、設定が攻めすぎると次のようなトラブルは起こり得ます。
ゲームが落ちる(クラッシュする)
画面が乱れる、黒画面になる
ドライバがリセットされる
ベンチは通るのに、特定ゲームで不安定になる
だからこそ、最初に整えるべきは「元に戻せる状態」です。これができていれば、怖さは大きく減ります。
変更前の準備チェックリスト
Afterburnerの“リセット”ボタンの位置を確認した
プロファイル保存(1〜5など)の仕組みを確認した(保存・読み込み)
変更前の基準値(GPU温度、FPS、ファン回転、GPU使用率)をメモした
テストに使うゲーム/ベンチを決めた(同じ条件で比較するため)
変更は1回につき1項目を少しだけにする、と決めた
この準備ができたら、いよいよ導入と設定に進みます。
MSIアフターバーナーのダウンロードとインストール手順
公式から入手する理由と同梱物の確認
Afterburnerは有名ソフトゆえに、配布元が複数見つかることがあります。しかし、インストーラを扱う以上、基本は公式情報を起点にするのが安全です。とくに初めての場合は、検索結果で出てきた“まとめサイトのリンク”から直接落とすより、公式の案内に沿って入手するほうが安心です。
インストールでは、途中で追加コンポーネントとして「RivaTuner Statistics Server(RTSS)」が選べることが多い点が重要です。OSDを使う予定があるなら、同時に入れる前提で進めるとスムーズです。
インストール時に意識するポイント
まずは標準設定で入れて問題ありません(後から変更できます)
RTSSを入れるかどうかの選択が出たら、OSDを使いたい人はチェックを外さない
インストール後、AfterburnerとRTSSが起動できるか確認する(エラーがないか)
RTSSとは何か、入れるべきケース
RTSS(RivaTuner Statistics Server)は、OSDの“表示エンジン”の役割を担います。Afterburner側で「どの項目を表示するか」を選び、RTSS側が「どのアプリに、どう重ねて表示するか」を実行するイメージです。
つまり、OSDを使う場合は“セットで動く”と理解すると迷いません。
RTSSを入れるべきケース
ゲーム中にFPS、温度、使用率を表示したい
調整の前後で数値を見ながら判断したい
ベンチマーク中に状態を見たい
RTSSが不要になりやすいケース
OSDは不要で、Afterburnerの画面で監視できれば十分
競合が疑わしいタイトルで、OSDは一旦諦めたい(後で戻せます)
OSDは原因切り分けに非常に強いので、基本はRTSSも入れておき、必要に応じてゲームごとに無効化する運用が現実的です。
初回起動後にやるべき基本設定
初回起動で一気に“攻めた設定”をしないのが、長く快適に使うコツです。まずは「使い方の土台」を整えましょう。
最初に確認すること
歯車アイコン(設定)を開けるか
適用(Apply)とリセット(Reset)がどこにあるか
プロファイル(数字ボタン)の保存と読み込みができるか
起動時に自動起動が必要か(常駐させるか)
表示言語やスキンが変えられること(見づらい場合は調整)
この段階では、クロックや電圧は触らず、次のOSD設定へ進むのが安全です。
MSIアフターバーナーでFPSや温度を表示する方法
OSD表示に必要な条件(AfterburnerとRTSSの同時実行)
OSDが出ない原因で最も多いのは、「RTSSが起動していない」「AfterburnerでOSD表示対象にしていない」の2つです。OSDは“設定を作る側(Afterburner)”と“表示する側(RTSS)”が両方動いて初めて成立します。
OSDが出るための最低条件
Afterburnerが起動している
RTSSが起動している(多くはシステムトレイにアイコンが出ます)
Afterburner側で、表示したい項目がOSD対象になっている
RTSS側で、OSD表示が有効になっている
ここまで揃っているのに出ない場合は、ゲーム側の制限やオーバーレイ競合、RTSSのアプリ検出設定が絡むことがあります(後半のトラブルシューティングで詳しく扱います)。
表示項目のおすすめセット(FPS・温度・使用率・電力)
OSDは出せる項目が多いほど便利に見えますが、最初から盛りすぎると画面が読めなくなります。まずは「判断に必要な最小構成」で始め、慣れたら増やすのがおすすめです。
表:OSDおすすめ表示項目と読み方
| 目的 | 最初に出すと良い項目 | 読み方のコツ |
|---|---|---|
| カクつきの原因を知りたい | FPS(可能ならフレームタイム) | 体感の引っ掛かりが出た瞬間、FPS低下やフレームタイムの跳ねがないか見る |
| 発熱が気になる | GPU温度、GPUクロック | 温度が上がるとクロックが下がる場合がある。温度とクロックはセットで確認 |
| GPUが限界か知りたい | GPU使用率、GPUクロック | 使用率が張り付いていればGPU側がボトルネック候補。クロック低下があれば温度/電力制限を疑う |
| CPU側が詰まっているか | CPU使用率(全体/コア) | GPU使用率が低いのにFPSが伸びないならCPU・設定・ゲーム側要因が候補 |
| 電力制限の効果を見たい | GPU温度、GPUクロック、(可能なら消費電力) | Power Limitを下げた後、温度が下がりクロックが安定するか、FPSがどれくらい変わるかを見る |
「GPU使用率が低い=GPUが余っている」と即断しないのが重要です。例えば、CPUが詰まっていたり、フレームレート制限(V-Syncや上限設定)が効いていたりすると、GPU使用率は下がります。OSDは“数字の意味をセットで読む”と精度が上がります。
ゲーム別にOSDが出ないときの確認ポイント
OSDが出ない時は、順番に潰すと早く解決します。
切り分け手順(上から順に確認)
RTSSが起動しているか(まずここ)
Afterburnerの設定で、表示したい項目がOSD表示対象になっているか
OSDのホットキーで表示OFFになっていないか(設定している場合)
RTSS側でShow On-Screen DisplayがONか
他オーバーレイ(Steam、配信/録画ツール、Discord、GPUメーカー別ツールなど)を一旦切って試す
ゲームをウィンドウ/ボーダーレスに変えて出るか試す(タイトルによって挙動が変わることがあります)
RTSSのアプリケーション検出レベルを調整する(ゲーム個別に設定する発想)
「特定のゲームだけ出ない」場合、RTSSでそのゲームのプロファイルを作り、検出レベルや表示方法を調整すると解決することがあります。逆に「どのゲームでも出ない」なら、RTSS未起動やAfterburner側のモニタリング設定が原因の可能性が高いです。
MSIアフターバーナーで発熱と騒音を下げる設定
ここは本記事の中心です。静音化・低温化は、次の順番で進めると“効きやすく、戻しやすい”です。
電力制限(Power Limit):効果が分かりやすい、危険度が低め
ファンカーブ:体感に直結、やりすぎると温度が上がるのでバランス
低電圧化(アンダーボルト):効果が大きいが個体差が大きく、慎重さが必要
電力制限のやり方と効果の考え方
Power Limitは、GPUに許可する最大消費電力を抑える設定です。熱と騒音は消費電力に強く引っ張られるため、ここを少し下げるだけで温度が下がり、ファン回転が落ち、結果として静かになることがよくあります。
どう効くのか(イメージ)
Power Limitを下げる
→ GPUが消費できる電力が減る
→ 発熱が減る
→ ファンが高回転になりにくい
→ 静かになりやすい
→ ただし、上限に当たりやすい場面ではFPSが少し落ちる可能性がある
ポイントは「性能を捨てる」ことではなく、「熱と騒音に見合わない“上積み電力”を削る」ことです。特に高負荷時に“ほんの少しの性能のために電力が大きく増える”構図になっている場合、電力制限の満足度は非常に高くなります。
手順:電力制限を安全に試す
OSDでFPS、GPU温度、GPU使用率(可能ならGPUクロック)を表示できる状態にする
変更前の状態で、よく遊ぶゲームの同じ場面を5〜10分プレイして数値をメモする
Power Limitを5%〜10%だけ下げて「適用」
同じ条件でもう一度計測し、温度・騒音・FPSを比較する
問題がなければ、さらに少しだけ下げる(同じ手順で繰り返す)
電力制限の“やりすぎ”サイン
FPSが目に見えて落ちる(体感が悪化する)
GPUクロックが不自然に上下して安定しない
ゲームによってはカクつきが増える(上限に当たって揺れる)
その場合は、1段戻すのが基本です。静音化が目的なら、性能を大きく削ってまで下げる必要はありません。「温度と騒音が十分下がったところ」が落としどころです。
ファンカーブの作り方と静音重視のコツ
ファンカーブは「温度に応じて、ファンを何%で回すか」を曲線で決める設定です。静音化の体感に直結しますが、静かにしすぎると温度が上がり、結局高回転に跳ね上がって“急にうるさくなる”こともあります。大切なのは、急な変化を避け、温度の上がりすぎを防ぐことです。
手順:ファンカーブ調整の基本
Afterburnerのファン設定で、ユーザー定義の自動制御(カスタムファンカーブ)を有効化
低温域(アイドル〜軽負荷)は控えめに回しつつ、温度が上がるにつれてなだらかに増える曲線にする
高温域(例:70℃台後半など)では、温度上昇を止めるためにしっかり回すポイントを作る
適用してゲームを動かし、温度の推移と騒音の体感を確認
「静かだけど温度が上がりすぎる」「冷えるけど常にうるさい」どちらかに偏ったら、曲線を調整する
静音重視で失敗しにくいコツ
いきなりゼロ回転にこだわらない
停止→起動を頻繁に繰り返すより、低回転で一定に回したほうが体感が安定することがあります。電力制限とセットで考える
電力制限で発熱の根本を下げると、ファンカーブを無理に攻めなくても静かになります。“急に回り始める点”をなだらかにする
ある温度を境にファンが急上昇すると、うるささが強調されます。曲線を滑らかにすると体感が改善しやすいです。ケース内の風の流れも確認する
GPUだけ頑張っても、ケース排気が弱いと熱がこもります。吸気・排気ファンの向きやホコリ詰まりも見直すと効果が出やすいです。
低電圧化の基本手順(カーブエディタ)と失敗回避
低電圧化(アンダーボルト)は、同じクロック(または近い性能)をより低い電圧で維持して、消費電力と発熱を下げる方法です。うまくいけば、温度が下がりファン回転も下がるため、静音化の“仕上げ”として非常に強力です。
ただし、低電圧化は個体差が大きく、やり方次第で不安定になりやすい領域です。安全に進めるコツは次の2点です。
いきなり低電圧化から始めない(まず電力制限とファンで土台を作る)
少しずつ下げて、必ずテストする(成功したら保存、失敗したら戻す)
低電圧化の前にやること
電力制限とファンカーブで、温度が暴れにくい状態にしておく
変更前の基準(温度・FPS・ファン回転)を記録しておく
不安定判定に使うゲーム(負荷が重いもの)を決めておく
手順:低電圧化の基本(カーブエディタ)
カーブエディタを開く(環境によってショートカットが用意されていることがあります)
よく使うゲームでのGPUクロックがどのあたりで推移しているかを、OSDで把握する
目標にするクロック帯を決め、そのクロックをより低い電圧で安定させる方向で調整する
適用したら、同じ条件でテストし、温度・騒音・FPS・クラッシュの有無を確認する
問題がなければ、さらに少しだけ電圧を下げる(テストを挟んで繰り返す)
「どの電圧が正解か」を断定するのは難しく、GPUの個体差、冷却、ゲーム負荷、ドライバなどで変わります。だからこそ、“少しずつ・検証しながら”が唯一の安全策です。
失敗回避のチェックリスト
変更は小さく(少し下げてテスト)
ベンチだけで判断しない(実ゲームの高負荷でも確認)
クラッシュや描画乱れが出たら、一段戻す
成功した状態をプロファイルに保存する
調整中は別のオーバーレイや録画設定を増やさない(切り分けが難しくなるため)
低電圧化は、安定点を見つけられると満足度が高い一方、深追いしすぎると逆に時間が溶けます。静音化が目的なら「温度と騒音が十分下がったところ」で止めるのが、結果的に賢い終わり方です。
MSIアフターバーナーで軽く性能を伸ばす方法
静音化・低温化が主目的なら、性能アップは最後で問題ありません。むしろ、先に熱と騒音を整えることで、結果的にクロックが安定し、実ゲームの体感が良くなることもあります。
OC Scannerの使いどころと注意
OC Scanner(自動スキャン)は、手動で細かく詰める前に「この個体なら、このあたりが安定しやすい」という目安を作る用途に向きます。手動調整の怖さが強い人ほど、“最初の足がかり”として便利です。
使いどころ
まず自動で安定しそうな範囲を掴みたい
手動で試行錯誤する時間を減らしたい
低電圧化や電力制限と併用しつつ、少しでも余裕を作りたい
注意点
スキャン結果が「すべてのゲームで安定」を保証するわけではない
ベンチは通るのに、特定タイトルで落ちることは普通にあり得ます。温度条件で結果が変わりやすい
ケース内温度や季節で挙動が変わることがあります。夏場に不安定になるなら、一段戻すのが安全です。
コア/メモリを触る場合の最小ステップ
手動で性能を少し伸ばしたい場合でも、やり方はシンプルにするほど失敗しません。
最小ステップ手順
コアかメモリ、どちらか一方だけを小さく変える
適用して、短時間のテスト(5〜10分)
問題がなければ、同じ量で少しだけ追加
不安定が出たら一段戻し、そこで止める
安定した設定をプロファイル保存する
“やりすぎ”のサイン
画面のチラつき、ノイズ、色の破綻
特定シーンで落ちる
しばらくしてから落ちる(長時間プレイで顕在化)
この場合も、基本は「戻す」です。静音化が目的なら、性能アップを深追いするメリットは相対的に小さいため、ほどほどで止める判断が結果的に快適につながります。
MSIアフターバーナーのトラブルシューティング
設定がうまくいかない時は、焦ってあれこれ触るほど泥沼になります。トラブルは「現象 → 原因候補 → 最短の切り分け」の順に整理すると解決が早いです。
OSDが出ない、ホットキーが効かない
OSD関連は原因が絞りやすいです。次の順番で確認してください。
まず確認すること(最重要)
RTSSが起動しているか
システムトレイにRTSSのアイコンがあるかを確認します。ないなら起動します。Afterburner側でOSD表示対象になっているか
「モニタリング」系の設定で項目を選び、「OSDに表示」になっているか確認します。RTSS側でShow On-Screen DisplayがONか
RTSSの画面でOSD表示が無効になっていると出ません。
次に疑うこと
ホットキー設定でOSDをOFFにしている
OSDの表示/非表示にホットキーを設定している場合、意図せずOFFのままになっていることがあります。他のオーバーレイと競合している
Steamオーバーレイ、Discord、録画ソフト、配信ソフト、GPUメーカー別ユーティリティなどを一時的に切って確認します。RTSSの検出レベルが合っていない
ゲームによっては検出方法を変える必要があります。特定ゲームだけ出ないなら、RTSSでゲームごとの設定を作って調整します。
「全部のゲームで出ない」のか「特定ゲームだけ出ない」のかで、対処の方向性が変わります。前者は設定不足、後者は競合や検出設定が原因になりやすいです。
Power Limitが変更できない、設定が反映されない
Power Limitが触れない・反映されないときは、次の可能性があります。
可能性1:GPU側の仕様で制限されている
カードやBIOS、メーカー設計によって、AfterburnerからPower Limitを変更できない場合があります。この場合、ソフトの不具合ではなく「仕様」です。まずは“そのスライダーが動く設計かどうか”という前提を疑います。
可能性2:適用していない、保存していない
変更しただけで安心して、Apply(適用)を押していないケースは意外と多いです。また、起動のたびに戻るなら、起動時に設定が適用されるような項目(自動適用)や、プロファイル保存の運用が必要です。
可能性3:管理者権限や他ソフトの干渉
Windowsの権限や、他のGPU制御ソフトが同時に走っていて“奪い合い”になっているケースもあります。疑わしい場合は、他のGPU関連ユーティリティを終了し、Afterburner単体で動作確認します。
クラッシュや不安定になったときの戻し方
最重要は「元に戻す手順」を体に入れることです。これができれば怖さが消えます。
戻し方の基本手順
Afterburnerでリセットし、まずデフォルトへ戻す
直近で触った項目を思い出し、一つずつ戻して再現性を確認する
電力制限を触った → 戻す
ファンカーブを触った → 元に戻す
低電圧化を触った → 元のカーブに戻す
OCを触った → 追加分を戻す
RTSSや他オーバーレイが怪しいなら、RTSSを一旦終了して挙動を見る
安定する状態が見つかったら、その状態をプロファイル保存して“避難先”を作る
表:症状→原因→対処
| 症状 | よくある原因 | 対処の最短ルート |
|---|---|---|
| OSDが出ない | RTSS未起動、OSD対象未設定、競合 | RTSS起動 → AfterburnerでOSD対象設定 → 競合オーバーレイ停止 |
| 変更が反映されない | Apply忘れ、保存運用不足、他ソフト干渉 | Apply確認 → プロファイル保存/起動時適用 → 他ソフト停止 |
| ゲームが落ちる | 低電圧化/OCが攻めすぎ、競合 | 一段戻す → 実ゲームで再テスト → 競合切り分け |
| 温度が下がらない | 風量不足、電力が高いまま、カーブが弱い | 先に電力制限 → ファンカーブ見直し → ケース吸排気確認 |
| 急にうるさくなる | ファンカーブが急、温度が跳ねる | カーブを滑らかに → 電力制限併用 → 温度の天井を作る |
トラブル時に重要なのは「同時にいくつも直そうとしない」ことです。1つ戻して確認、ダメなら次、という順番が最短です。
MSIアフターバーナーのよくある質問
MSI以外のGPUでも使える?
多くの環境で利用可能です。ただし、利用できる範囲(Power Limitが動くか、電圧制御ができるかなど)はGPUやメーカー設計、ドライバ状況で変わります。「動作する」と「すべてのスライダーが自由に動く」は別物なので、そこは前提として押さえておくと納得しやすいです。
入れっぱなしで常駐しても大丈夫?
OSDを使う場合、AfterburnerとRTSSを常駐させる運用が基本になります。常駐そのものが悪いわけではありませんが、特定のゲームで競合が疑わしい場合は、そのタイトルだけRTSSを無効化する、あるいはオーバーレイを整理するのが現実的です。
また、常駐するなら「起動時に設定を適用する」「安定設定をプロファイルで固定する」という運用をセットにすると、毎回の手間が減ります。
安全な温度の目安は?
GPUの設計(世代・型番・冷却機構)で“安全域”は変わるため、一律の断定は避けるのが適切です。ただし、実用上は次の見方で判断できます。
高負荷時に温度が上がり続け、クロックが落ちる
ファンが高回転に張り付き、騒音がつらい
ケース内が熱でこもり、他のパーツにも影響が出る
このような状態なら、電力制限・ファンカーブ・低電圧化で改善余地がある可能性が高いです。まずOSDで温度・クロック・ファン回転をセットで見て、快適性と性能のバランスを探してください。
アンインストール方法は?
Windowsの「アプリと機能」(または「インストールされているアプリ」)から、AfterburnerとRTSSをそれぞれアンインストールします。
OSDが不要になっただけであれば、アンインストールではなく「起動時自動起動をOFF」「RTSSを終了してAfterburnerのみ使う」といった軽い運用変更でも十分です。