メモリ増設やSSD換装、CPU交換、BIOS更新をしようと思ったとき、最初に必要になるのが「マザボ(マザーボード)の型番確認」です。ところが実際は、msinfo32・PowerShell・CPU-Z・BIOSなど方法が多く、どれを使えば確実なのか迷いやすい上に、「表示が空欄」「To be filled by O.E.M. みたいに出て型番が分からない」といったつまずきも起こりがちです。
本記事では、Windows標準機能で最短確認する手順から、うまく表示されない場合の切り分け、Windowsが起動しないときのBIOS/UEFIでの確認、最後の手段としての基板印字の見方まで、迷わない順番で整理しました。さらに、型番が分かった後にメーカー公式の仕様ページで必ず確認すべきポイント(メモリ規格、M.2の種類、対応CPU、BIOS要件)をチェックリスト化し、購入ミスや相性トラブルを防ぐところまでカバーします。
「まず型番を確実に知りたい」「増設前に失敗したくない」という方は、この記事の手順どおりに進めれば、必要な情報を短時間で揃えられます。
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マザボ確認でまず押さえるべきポイント
マザボ確認で分かる情報と、分からない情報
マザボ確認は「PCの心臓部の型番を特定する」作業ですが、手段によって取得できる情報の粒度が変わります。先に“分かること・分からないこと”を整理しておくと、途中で混乱しにくくなります。
マザボ確認で分かること(手段による)
マザーボードのメーカー名(ASUS、GIGABYTE、MSI、ASRock など)
製品名・型番(例:B550M PRO4、Z790 AORUS ELITE など)
BIOS/UEFIのベンダー、バージョン、日付(msinfo32やCPU-Z、BIOS画面で確認しやすい)
チップセット名(CPU-Zなどのツールが得意)
マザボ確認だけでは分からない/確定しづらいこと
相性問題の“可能性”のすべて(同規格でも不具合が起きることはあります)
物理的な増設枠の余裕(ケース形状、干渉、配線の取り回し)
マザボの細かな派生や改造履歴(中古PCでパーツが入れ替わっている等)
リビジョン(Rev.)や基板版数(目視が必要なことがあります)
例えば、メモリ増設では「DDRの世代」が最重要です。DDR4マザーにDDR5は刺さりませんし、逆も同様です。M.2 SSDも、同じM.2でもNVMe(PCIe)とSATAがあり、マザボ側がどちらに対応しているかで選ぶべきSSDが変わります。型番を確認したら、必ず公式仕様ページで“対応条件”を詰めるところまで進みましょう。
表示名がズレるケース
Windows上の表示と、一般に流通しているマザボ型番が一致しないケースがあります。原因として多いのは次のパターンです。
BTO/メーカー製PCの独自設計:一般流通品ではなく、メーカー内製やOEMの基板が使われている
システム情報の書き込み不足:ベースボード情報が空欄だったり、汎用的な文字列になっている
表示が略称・コード名寄り:型番らしきものが出ても、販売名と微妙に違う
古い手順が通らない:環境差でコマンドが動かない、取得できる項目が欠ける
この“ズレ”を前提にすると、最初から完璧な表示を求めて粘るより、複数手段で突き合わせた方が早く確実です。Windows標準→PowerShell→ツール→BIOS→目視という順に、軽い手段から切り替えていくのがおすすめです。
Windowsでマザボ確認する最短ルート
msinfo32でベースボード情報を見る手順
まず試したいのは、Windows標準の「システム情報(msinfo32)」です。追加インストールが不要で、操作も分かりやすく、失敗しにくいのが利点です。
手順
キーボードの Windowsキー + R を押します(「ファイル名を指定して実行」が開きます)。
msinfo32と入力し、Enterを押します。「システム情報」画面が開いたら、右側の項目から以下を探します。
ベースボード製造元(メーカー名)
ベースボード製品(型番やモデル名)
併せて BIOS バージョン/日付 も見えることがあります。
ここでのポイント
「ベースボード製品」にそれらしい型番が出れば、まずはそれが第一候補です。
表示が短い・怪しいと感じたら、次のPowerShellで同じ情報が取れるか突き合わせます。
画面の内容はメモしておくか、スマホで写真を撮っておくと型番の打ち間違いを防げます。
よくあるつまずき
ベースボード関連が空欄、または「To be filled by O.E.M.」のような汎用的な表示になる
→ この場合、msinfo32だけで粘るよりPowerShellへ進む方が早いです。
PowerShellでマザボ確認する手順
msinfo32で取り切れないときに強いのがPowerShellです。Windowsは内部的にWMI/CIM(管理情報の仕組み)を持っており、そこからマザボ情報を引き出せます。手順は短く、コピペで進められます。
手順(コピペでOK)
スタートメニューで「PowerShell」と検索して開きます(Windows Terminalでも構いません)。
次を貼り付けてEnterを押します。
Get-CimInstance Win32_BaseBoard | Select-Object Manufacturer, Product
さらに可能なら、シリアルも含めて確認します(一致確認に役立ちます)。
Get-CimInstance Win32_BaseBoard | Select-Object Manufacturer, Product, SerialNumber
結果の見方
Manufacturer:メーカー名(例:ASUSTeK COMPUTER INC.)Product:製品名・型番(例:TUF GAMING B550-PLUS)SerialNumber:個体識別情報(空欄になることもあります)
ここでのポイント
msinfo32とPowerShellで表示が一致すれば、型番の信頼度はかなり高いです。
表示が違う場合は、どちらが正しいかを決め打ちせず、CPU-ZやBIOS、目視で裏取りします。
BTO/メーカー製で独自表記が出る場合は「メーカー名+Product文字列+PCの型番」をセットで検索すると、情報に辿り着きやすくなります。
WMICを使う場合の注意点
検索でよく見かけるのが次のようなWMICコマンドです。
wmic baseboard get Manufacturer,Product,SerialNumber
ただし、WMICは環境によって使えないことがあり、同じ手順でも通る人と通らない人が出ます。Windowsの更新状況や構成によって「wmicが認識されない」「コマンドが存在しない」となることもあります。したがって、WMICは“動けば補助的に使う”程度にとどめ、基本ルートはPowerShell(Get-CimInstance)に寄せると行き止まりが減ります。
WMICを試すときのコツ
目的は「型番の裏取り」です。WMICが動かなければ、深追いせずPowerShellへ戻るのが得策です。
出力が簡略的なこともあるため、msinfo32やCPU-Zと突き合わせて判断します。
ツールでマザボ確認を深掘りする
CPU-Zで確認できる項目と安全な入手先
Windows標準機能で型番が出ない、またはBIOSやチップセット情報までまとめて把握したい場合は、専用ツールが便利です。代表的なのがCPU-Zです。
CPU-Zで分かること(主にMainboardタブ)
マザーボードメーカーとモデル(型番)
チップセット情報
BIOS/UEFIのバージョン、日付
一部環境では、細かなサブ情報(ベンダー表記など)
使い方の目安
CPU-Zを起動します。
「Mainboard」タブを開きます。
Manufacturer / Model / Chipset / BIOS の情報を確認します。
安全面の注意
ツールを使う場合は、入手先が重要です。似た名前のページや広告経由で不明なインストーラを入れると、不要ソフトが混入する可能性があります。基本は提供元の公式ページを起点に入手し、インストール時に余計な同梱がないか確認してください。インストール不要版(ZIP版)が用意されていることもあるため、慎重派の方はそちらを選ぶのも一案です。
どの場面でツールが有効か
CPU-Zが特に役立つのは次の場面です。
型番は出たが、BIOSのバージョンも一緒に確認したい
CPU交換やメモリの安定性の相談では、BIOS情報が重要になることが多いです。msinfo32/PowerShellの表示が分かりにくい
項目が散らばるより、まとまって見たいときに向きます。チップセット名を把握したい
公式仕様ページや対応表を読むとき、チップセットが分かると理解が進みます。
逆に、型番だけが目的で、Windows標準で問題なく表示されるなら、ツール導入は不要です。まずは標準手段で確定し、必要になったらツールで深掘りするのが安全です。
Windowsが使えない時のマザボ確認
BIOS/UEFIで型番を確認する手順と注意点
Windowsが起動しない、フリーズが頻発する、ストレージ換装直後でOSが不安定など、OS上の確認が難しい場合はBIOS/UEFIで確認します。BIOS/UEFIはPC起動の最初に立ち上がる画面のため、Windowsが不調でも確認できる可能性があります。
基本手順
PCを再起動します。
電源投入直後から、Del または F2 を数回押します(メーカーや機種によってF10、F12、Escなどの場合もあります)。
BIOS/UEFIのトップ画面、または「System Information」「Information」「Main」などの情報ページを探します。
そこにマザボのモデル名、BIOSバージョンが表示されることがあります。
重要な注意点(トラブル回避のため必須)
目的は“確認”です。設定を変更する必要はありません。
分からない項目は触らないでください。ブート関連、セキュアブート、TPM、RAID設定、OC設定などは、変えると起動しなくなる原因になります。
画面に表示された型番は、スマホで写真を撮っておくと打ち間違い防止になります。
もし誤って設定画面に入ってしまっても、焦って保存(Save)せず、終了(Exit)で抜ければ問題になりにくいです。
ケースを開けて基板印字を確認する手順
最終的にいちばん確実なのは、マザーボード上の印字を目で確認する方法です。OS上の情報が不完全でも、基板の印字は直接的で、型番の確定に強いです。自作PCや一部のBTOでは、ここで初めて正確な販売名が分かることもあります。
安全手順(チェックリスト)
PCをシャットダウンする
電源ケーブルを抜く(電源ユニット背面のスイッチがある場合はOFF)
電源ボタンを数秒押して放電する
静電気対策をする(作業前に金属へ触れる、乾燥した時期は特に注意)
サイドパネルを開ける(無理な力をかけない)
明るい場所で、基板上の大きな文字を探す
探し方のコツ
PCIeスロットの近く、メモリスロット付近、CPUソケット周辺、基板中央の空白スペースに型番が印字されていることが多いです。
似た文字列が複数ある場合は、いちばん大きく目立つ製品名らしい表記を優先します。
「Rev. 1.0」などのリビジョン表記が同時に書かれていることがあるため、見つけたら一緒にメモしておくと、後で公式情報と照合しやすくなります。
注意点
作業中にケーブルを引っ張らない(コネクタ破損の原因)
ヒートシンクやファンの羽に触れない
可能なら、作業前に内部写真を撮っておく(元に戻すとき安心です)
マザボ確認のあとにやるべき互換性チェック
公式仕様ページで見るチェックリスト
型番が分かったら「増設できる」と即断せず、メーカー公式の仕様ページや対応表で条件を詰めます。ここを丁寧にやるだけで、パーツ購入ミスや取り付け後のトラブルが大幅に減ります。特に重要な確認項目をチェックリスト形式でまとめます。
メモリ(RAM)
DDR世代(DDR4かDDR5か)
スロット数(2本か4本か)
最大容量(合計で何GBまでか)
対応速度(定格とOC表記の区別)
可能ならQVL(動作確認済みメモリ一覧)の有無
ストレージ(M.2 SSD / SATA)
M.2スロットの本数
対応規格:NVMe(PCIe)かSATAか(両対応のスロットもあります)
PCIe世代(Gen3/Gen4/Gen5)
対応サイズ(2230/2242/2260/2280/22110など)
SATAポートとの排他仕様(M.2を使うと一部SATAが無効になる等の注意書き)
CPU
ソケットの種類(例:LGA1700、AM4、AM5など)
チップセット名
対応CPU一覧(CPU Support List)
「特定のBIOS以上が必要」という注記の有無
BIOS/UEFI
現在のBIOSバージョン(msinfo32、CPU-Z、BIOS画面で確認)
更新履歴(新CPU対応、安定性改善、メモリ互換改善など)
更新手順(メーカーの案内に従う)
特にCPU交換では「物理的に刺さる」だけでは足りず、BIOSの条件で起動しないことがあります。対応CPU一覧とBIOS条件はセットで確認してください。
増設・交換前の最終確認リスト
最後に、購入と作業の直前にチェックしておくと安心なポイントです。ここで引っかかりやすいのは「似た型番」「末尾違い」「排他仕様」です。
型番のスペル・記号・ハイフンの位置まで正確か(検索時の誤爆を防ぐ)
似た型番の別製品を見ていないか(例:同シリーズのATX版とMicroATX版など)
末尾違い(WiFi版、II/III、PLUS/PROなど)を見落としていないか
リビジョン(Rev.)違いがないか(可能なら確認)
メモリはDDR世代が一致しているか
予定しているメモリ構成(2枚/4枚)がマザボのスロット数に合うか
M.2 SSDの規格(NVMe/SATA)とマザボ側対応が一致しているか
M.2装着で無効になるSATAポートがないか(既存HDD/SSDに影響が出ないか)
CPUはソケットと対応表が一致しているか
CPU交換が絡む場合、先にBIOS更新が必要ではないか
グラボ増設・交換なら、電源容量と補助電源コネクタの条件を満たすか
ケース内の物理スペース(グラボ長、CPUクーラー高さ)が足りるか
ここまで確認できれば、増設・交換の成功率は大きく上がります。「型番確認→公式仕様の照合→最終チェック」の3段階をセットにして進めるのが失敗しないコツです。
よくある質問
ノートPCでも同じ?
ノートPCでも「マザボの情報を確認する」という意味では似た方法が使える場合がありますが、デスクトップと同じ感覚で“マザーボード型番から拡張性を判断する”のは難しいことが多いです。ノートは内部構造がモデル依存で、マザボが一般流通品として交換される前提ではありません。増設対象も、対応していればメモリやストレージが中心で、CPUやGPUは固定(オンボード)になっている機種もあります。
ノートの場合は、まず「PCの型番(モデル名)」を正確に確認し、メーカー公式の仕様ページで増設可否を確認するのが近道です。マザボ情報が取れても、それが購入判断に直結しないケースがある点に注意してください。
表示が空欄/“To be filled by O.E.M.”のような表記の時は?
この現象は珍しくありません。システム情報が十分に書き込まれていない、あるいはメーカー製PCで汎用表記になっている可能性があります。対処は「別手段での裏取り」と「検索の仕方の工夫」です。
おすすめの切り分け順
PowerShellで取得する(Get-CimInstanceでManufacturer/Productが出るか)
CPU-ZでMainboard情報を確認する
BIOS/UEFIの情報画面でモデル名を探す
ケースを開けて基板印字を確認する
検索の工夫
取得できた文字列(Manufacturer/Product)に加え、PC本体のモデル名(例:メーカー名+型番)を一緒に検索する
BTOの場合は販売元(ショップ名・シリーズ名)も併記する
この組み合わせで、公式情報やユーザー報告に辿り着けることがあります。
型番が分かった後、どこを見ればメモリ互換が分かる?
まずはメーカー公式仕様ページの「Memory」欄で、DDR世代、最大容量、対応速度、スロット数を確認します。次に、用意されているならQVL(Qualified Vendors List:動作確認済みリスト)を確認すると、初回の増設で失敗しにくくなります。
ただし、QVLに載っていないメモリが必ず動かないわけではありません。逆に、載っていてもBIOSや構成(枚数・容量の組み合わせ)で挙動が変わることもあります。迷ったら、同じ世代・同じ容量の2枚組を基本にし、メーカーの注意書き(2DPC/1DPCなど)がある場合はそれに合わせると安定しやすいです。
BIOS画面で触ってはいけない項目は?
BIOS/UEFIは確認目的で入るなら安全ですが、設定変更は慎重に扱うべきです。意図がないなら、次の項目は触らない方がよいです。
起動関連(Boot Order、UEFI/CSM切替)
ストレージ関連(SATA ModeのAHCI/RAID切替)
セキュリティ関連(Secure Boot、TPM、鍵管理)
OC関連(電圧、倍率、細かなメモリタイミング設定)
未理解のプロファイル(XMP/EXPOなども、変更するなら目的と戻し方を理解してから)
型番確認が目的なら、情報表示の画面を“見るだけ”で十分です。うっかり設定画面に入っても、保存せず終了すれば問題になりにくいので、焦らず落ち着いて操作してください。