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モザイク破壊とは?本当に復元できるのか、違法性と被害時の対処まで整理

「モザイクをかけたから大丈夫」と思っていたのに、SNSで「モザイク破壊」という言葉を見て不安になった――そんな方は少なくありません。けれど、この言葉は刺激が強いぶん、「モザイクの下が完全に元どおり見える」「誰でも簡単に復元できる」といった誤解も広がりがちです。実際には、加工の種類や元データ、動画の性質、そして背景や音声など“モザイク以外の手がかり”によって、危険度は大きく変わります。

本記事では、違法行為を助長する具体的手順には触れず、モザイク破壊の意味と実態を「復元」と「推測」の違いから整理します。そのうえで、日本で問題になり得る法的リスク、もし被害に遭ったときの証拠保全・削除依頼・相談の進め方、そして投稿者側が再識別リスクを下げる匿名化と運用のポイントまで、迷わず行動できる形でまとめます。読み終えたときに「何が危険で、次に何をすればいいか」が分かり、落ち着いて対処できる状態になることを目指します。

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モザイク破壊とは何か

モザイク破壊が指すものと誤解されやすい点

「モザイク破壊」という言葉は、日常語としてはかなり曖昧です。人によって、次のように異なる現象をひとまとめに指している場合があります。

  • 隠した部分が“元に戻る”ように見える(いわゆる復元のイメージ)

  • 周辺情報や統計的な推測で“それっぽい見た目”に補われる(推測・生成)

  • 加工の仕方が甘く、隠せていない情報が漏れる(そもそも匿名化が成立していない)

  • 動画の連続フレームから推測材料が増える(動画特有の問題)

ここで最初に押さえておきたいのは、「見えたように感じる」ものが、必ずしも“元の真実そのもの”とは限らない点です。とくにAIが関与するタイプの話題では、「もっともらしい画像が出てくる」ことと「実際に元の情報が復元された」ことは別物になり得ます。見た目がリアルでも、実態は推測や補完に過ぎず、結果が外れている場合もあります。

しかし、だからといって安心してよいわけでもありません。推測や補完であっても、当事者の尊厳を傷つけたり、二次被害を生んだり、特定につながったりすることは十分にあり得ます。つまり「復元か、推測か」の議論は大切ですが、被害対策としては「その行為が拡散・特定・脅迫・嫌がらせにつながるか」という現実面のほうが重要です。

また、モザイクには種類があります。一般的には「ブロック状の粗い加工(ピクセル化)」がイメージされますが、ぼかし、塗りつぶし、スタンプ、黒帯なども広く“モザイク的加工”として扱われがちです。どの加工方式か、加工の強さが十分か、元データの解像度がどうかによって、安全性の評価は変わります。

結局のところ、「モザイク破壊」という言葉が示す本質は、単に画像処理の話ではなく、匿名化の失敗、または匿名化の限界に関する問題だと捉えるほうが、現実に即しています。

映像で起こりやすい理由

静止画より動画が危険と言われやすいのには、いくつかの理由があります。重要なのは「必ず見える」という断言ではなく、推測材料が増えやすい構造にあるという点です。

1つ目は、動画が「連続したフレーム」で構成されていることです。モザイクがかかっていても、フレームごとのブレや被写体の動き、背景の変化などがあると、見る側が情報を補いやすくなります。人間の視覚自体が、断片情報から全体像を推測して理解する性質を持っているため、「一瞬だけ見えた気がする」「前後の文脈で分かってしまう」ことも起こります。

2つ目は、音声やテロップ、会話の内容など、映像以外の手がかりがセットで残りやすいことです。顔や体の一部にモザイクをかけても、会話の中に固有名詞が出れば、地域や学校、職場が推測される場合があります。背景に特徴的な店名や駅名が映っていれば、場所が絞り込まれることもあります。動画は情報量が多い分、匿名化の漏れも生まれやすいのです。

3つ目は、共有・拡散のされ方です。短尺動画や切り抜きがSNS上で流通しやすく、拡散スピードも速い傾向があります。拡散が速いほど、削除や訂正が追いつきにくくなり、被害が拡大しやすくなります。

ここから言えるのは、動画の匿名化は「加工を一箇所に入れたら終わり」ではなく、複数の情報経路を同時に管理する設計が必要だということです。

モザイクに頼り切る危険

「モザイクをかけたから大丈夫」という発想が危ないのは、モザイクが隠すのが“情報の一部”に過ぎないからです。実際の特定や二次被害は、モザイク以外の手がかりで起こることが少なくありません。

たとえば、次のような要素は「本人の一部」や「生活圏」を示す強い手がかりになります。

  • 背景情報:駅名、店名、学校名、特徴的な建物、掲示物、地名が入ったポスター

  • 身体的特徴:髪型、体型、歩き方、アクセサリー、時計、靴、刺青、傷

  • 服装・持ち物:制服、企業ロゴ入りの服、部活ジャージ、通学鞄、社員証ストラップ

  • 音声:声質、話し方、方言、会話内容、周囲の固有名詞

  • 投稿文:撮影場所のヒント、日時、タグ、同行者の情報、当日の出来事

  • メタ情報:位置情報が付与される設定、端末やアプリの仕様(意図せず残る場合がある)

つまり、守るべきは「隠したい部位」だけではなく、再識別につながる情報の束です。モザイクはその束の一部しか対処できないため、頼り切ると、逆に油断が生まれます。この考え方が、後半の「投稿者ができる安全な匿名化と運用」に直結します。


モザイク破壊が問題になる場面

晒し・リベンジポルノ・誹謗中傷

もっとも深刻なのは、本人の同意なく画像・動画が公開され、拡散し、人格や生活を壊していくケースです。いわゆる晒しやリベンジポルノ、誹謗中傷は、被害者の生活圏に直接的な危害を与えます。

この種の被害で厄介なのは、当事者の心身の負担が大きいことに加え、拡散の速度が速く、複数の場所にコピーされやすいことです。投稿が削除されても、別アカウントで再投稿される、別の掲示板やSNSに転載される、まとめサイトに引用される、といった形で被害が連鎖しやすい傾向があります。

また、加害側が「モザイクがかかっているからセーフ」「顔が見えていないから問題ない」と誤解していることもあります。しかし、当事者が特定できる要素が残っていたり、人格攻撃の文脈で投稿されていたりすれば、権利侵害や違法性が問題になり得ます。さらに、拡散に加担した側も、意図が軽くても責任が問われる可能性があるため、「面白いから拡散」「注意喚起だから引用」という行為には慎重さが必要です。

個人情報の露出と再識別

成人向けの文脈だけでなく、ニュース映像、街頭インタビュー、イベント動画、学校行事、社内イベントなど、日常的な場面でも再識別の問題は起こります。むしろ、日常の文脈のほうが「特定に使える生活情報」が豊富に含まれがちです。

たとえば、顔にモザイクをかけていても、制服や名札、部活動のジャージ、会社ロゴ、背景の校門や駅、特徴的な施設が映っていれば、コミュニティ内では容易に特定されることがあります。本人が特定されれば、そこから住所や通学・通勤経路、交友関係へと波及する可能性もあります。

再識別が問題になるのは、加害意図がある場合だけではありません。善意の動画投稿でも、本人が望まない形で注目されたり、コメント欄で憶測が飛び交ったりするだけで、当事者は大きな負担を負います。投稿者・運用者は、公開によって生じるリスクを過小評価しないことが重要です。

著作権侵害・海賊版拡散との接続

加工されたコンテンツの再配布が、著作権侵害や海賊版問題に接続するケースもあります。たとえば、テレビ番組や配信コンテンツを無断で切り抜いて投稿する、モザイク部分をいじって“話題性”として再投稿する、といった行為が広がると、権利者の利益を侵害し、削除要請や法的措置の対象になり得ます。

ここで気をつけたいのは、「自分は加工しただけ」「引用のつもりだった」という主張が通りにくい場面があることです。著作権の世界では、利用目的、利用態様、引用の要件、権利者の許諾の有無など、複合的に判断されます。話題化のための投稿や、収益化を伴う投稿はとくにリスクが高まりやすいと考えておくべきです。


モザイク破壊と日本の違法性

わいせつ関連で問題になり得る行為

日本では、わいせつ物の頒布等に関する規定を含め、扱いによって刑事・民事の問題が生じ得ます。ここで重要なのは、「モザイクがあるかないか」だけで安全が決まるわけではない、という点です。内容、流通のさせ方、公開範囲、収益化の有無、脅迫や強要の有無など、行為態様によってリスクは大きく変わります。

また、本人の同意なく性的な画像・動画が流通する状況では、当事者の人格権やプライバシー侵害の問題も強く関わります。刑事面だけでなく、削除請求、損害賠償請求など民事面の争いにも発展し得るため、「法的にややこしいから触れない」が最も安全な姿勢です。

生成AI画像・動画でも成立し得る論点

「実写ではない」「AIが作った」「合成だ」という場合でも、公開される内容や文脈によっては、当事者への被害が現実に生じ得ます。とくに、実在の人物に似せて作成・拡散するタイプのコンテンツは、名誉や信用、プライバシーの問題を引き起こしやすく、状況次第で深刻な権利侵害になり得ます。

「AIだから現実の被害はない」と決めつけるのは危険です。受け手がそれを真実だと誤認し、本人に攻撃が向かったり、生活圏での不利益が生じたりすることは十分にあり得ます。技術の新しさではなく、「誰に、どんな害が、どのように発生するか」という観点で考えることが重要です。

プライバシー・名誉毀損・肖像権・著作権の観点

モザイク破壊という言葉が話題になると、どうしても成人向けの文脈だけが注目されがちですが、実際には以下のような論点が幅広く絡みます。

  • プライバシー権:本人が公開を望まない私生活上の事実や画像・動画が流通する

  • 名誉毀損・侮辱:社会的評価を下げる内容の投稿、悪意ある文脈での晒し

  • 肖像権・人格権:本人の顔や容姿、特徴が無断で利用される

  • 著作権:他人の写真・動画・番組等の無断転載、切り抜きの再投稿

注意したいのは、これらが単独で問題になるだけでなく、複合的に重なることが多い点です。例えば「個人を特定できる形での晒し(プライバシー侵害)」に「人格攻撃の文章(名誉毀損・侮辱)」が添えられ、「本人の画像の無断利用(肖像権)」と「転載(著作権)」が混ざる、といった形です。こうなると、削除の優先度も上がり、相談先も複数に分かれる可能性があります。

行為別リスク整理表

※以下は一般的な整理であり、個別事案の適法性を断定するものではありません。判断に迷う場合は、相談窓口や専門家に確認してください。

行為典型的なリスク危険度の目安なぜ危ないか
見つけて閲覧する有害情報への誘導、心理的ダメージの増大サイト誘導や詐欺、マルウェア等の二次リスクもあり得ます
端末に保存する端末流出・誤送信による二次拡散中〜高「自分だけが持つ」が成立しにくく、漏れたときの責任が重くなります
友人へ送る・グループ共有拡散行為として責任が重くなりやすい“小さな共有”が連鎖し、止められなくなる典型ルートです
SNS等で再投稿・引用被害拡大の中心行為になりやすい非常に高規約違反・権利侵害・違法性の問題が一気に高まります
収益化(広告、販売、誘導)重大化、悪質性が強く見られやすい極めて高金銭が絡むと悪質性が評価されやすく、対応も厳しくなりがちです
本人を脅す・迫る恐喝・強要など別の重大犯罪に接続極めて高被害者の安全確保が最優先となり、早急な相談・通報が必要です

被害にあったときの対処手順

最初にやること:証拠保全

被害対応で最初にやるべきことは、できる範囲での証拠保全です。削除依頼、通報、相談、弁護士への依頼など、次のアクションは「何が起きたか」を示す材料があるほど進めやすくなります。投稿が消されると、追跡や説明が難しくなることもあります。

最低限、次の情報は確保しておくとよいでしょう。

  • URL(可能なら該当投稿、アカウント、スレッド、転載は禁止リンクの両方)

  • 投稿日時、表示名、ユーザーID、アカウント情報

  • 画面全体のスクリーンショット(投稿内容、画像・動画のサムネ、コメント欄、拡散状況が分かるもの)

  • 拡散経路(引用元、再投稿先、まとめサイト等のリンク)

  • 脅迫や要求がある場合:メッセージの全文、送信者情報、送信日時

ただし、精神的に耐えられない状況もあります。無理に一人で抱え込まず、信頼できる人に手伝ってもらう、相談窓口に「証拠の取り方から教えてほしい」と頼む、弁護士に代行や方針相談をするなど、負担を分散することが大切です。

削除依頼の考え方と相談先

削除の進め方は、掲載場所と内容によって変わります。基本の考え方は次の通りです。

  1. 投稿先プラットフォームの通報機能・ヘルプを使う

  2. 反応が遅い、どこに出せばよいか分からない場合は、外部の相談窓口で整理する

  3. 違法性が高い、脅迫がある、被害が拡大している場合は、警察相談や弁護士相談も検討する

相談先を使うメリットは、「どの権利侵害に当たりそうか」「どんな証拠が必要か」「どこに削除依頼を出すべきか」を一緒に整理してもらえる点です。削除依頼は感情だけで訴えるよりも、「権利侵害」「規約違反」「本人の同意なし」「個人特定の危険」といった客観的な要素でまとめるほうが通りやすくなります。

また、著作権侵害の可能性がある場合は、権利者側の窓口や、著作権関連の相談導線を利用するほうがスムーズなケースもあります。誹謗中傷の文脈が強い場合は、誹謗中傷に対応する相談・支援窓口のほうが話が早いこともあります。状況に応じて「窓口を使い分ける」意識が重要です。

警察への通報・相談の目安

警察への相談を検討すべき目安として、次のような状況が挙げられます。

  • 脅迫、強要、金銭要求がある

  • 個人情報(住所、勤務先、学校など)が露出している

  • 未成年が関わる可能性がある

  • 執拗な嫌がらせが継続し、生活の安全が脅かされている

  • 拡散スピードが速く、被害が急拡大している

  • 画像・動画が明らかに悪質に流通している(販売、誘導など)

「どの法律に当たるか」を自分で確定させる必要はありません。まずは事実を整理し、証拠とともに相談することが重要です。相談時に役立つのは、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どのように」「どの程度拡散しているか」を時系列でまとめたメモです。恐怖や混乱が強いときほど、短い箇条書きでもよいので形にしておくと、話が通りやすくなります。

人権相談を使う場面

ネット上の晒しや誹謗中傷は、学校や職場など現実の生活圏での人権侵害と結びつくことがあります。たとえば、投稿が原因で登校・出社が困難になる、周囲からの偏見や差別を受ける、職場で不利益が生じる、といったケースです。このように生活上の被害が大きい場合、人権相談の導線を使って状況を整理し、助言を受けることが有効な場面があります。

人権侵害の相談は、削除だけでなく「生活を守るために何ができるか」という視点での支援につながる可能性があります。ネットと現実がつながってしまったときこそ、孤立しないルートを確保することが大切です。

緊急度別の行動チェックリスト

以下は、状況に応じて迷わず動くためのチェックリストです。該当が多いほど緊急度は高いと考えてください。

緊急度:高(今日中に動く)

  • 脅迫・強要・金銭要求がある

  • 住所、勤務先、学校などの個人情報が明確に出ている

  • 家族や職場への連絡を示唆されている

  • 未成年が関わる可能性がある

  • 拡散が急増している、転載先が増え続けている
    推奨アクション

  • 証拠保全(URL、スクショ、メッセージ全文)

  • プラットフォーム通報

  • 警察相談・通報、弁護士相談も検討

  • 身の安全確保(周囲に共有、通勤通学経路の見直し等)

緊急度:中(数日以内に整える)

  • 本人特定につながる画像・動画が出回っている

  • 誹謗中傷が継続している

  • コメント欄で個人情報の推測が始まっている
    推奨アクション

  • 証拠保全

  • 相談窓口で削除依頼の方針整理

  • 主要な転載先の洗い出しと対応順の決定

緊急度:低(予防・体制づくり)

  • 今後の投稿や運用が不安

  • 組織での公開ルールが曖昧
    推奨アクション

  • 投稿前チェックリストの導入

  • 同意取得フロー、レビュー体制の整備

  • 相談先と緊急連絡フローの共有


投稿者ができる安全な匿名化と運用

モザイクだけでは足りないケース

投稿者側の対策で最も大切なのは、「隠したい箇所にモザイクをかける」だけで終わらせないことです。モザイクは視覚情報の一部を隠すだけで、次のような条件が重なると匿名化が破綻しやすくなります。

  • 生活圏が狭いコミュニティ(学校、職場、地域)に属している

  • 背景に固有の手がかりが映り込む(校門、社名、店名、駅名)

  • 音声や会話内容が具体的(固有名詞、日程、場所の言及)

  • 服装や持ち物が特徴的(制服、部活着、企業ロゴ)

  • 投稿文で状況説明をしすぎる(「◯◯駅前で」「◯◯大会の帰りに」等)

たとえば「顔だけ隠した街頭インタビュー」でも、背景の看板、音声、撮影場所、撮影時間帯、服装などが組み合わさると、地域コミュニティでは特定されてしまう可能性があります。匿名化の目的が「全国の不特定多数に対して特定されない」なのか、「身近な関係者にもバレない」なのかで、求められる水準が大きく変わる点にも注意が必要です。

匿名化の基本方針

匿名化のゴールは、「見えなくする」ではなく、その人だと分からない状態にすることです。実務的には、次の5つの観点で漏れを潰していくと安全性が上がります。

  1. 顔・頭部まわり
    顔だけでなく、輪郭、耳、髪型、ほくろ、眼鏡なども識別に使われます。顔にモザイクをかけても、耳や髪の特徴で分かるケースはあり得ます。可能なら顔だけではなく、識別に使われやすい範囲を広めに扱う設計が必要です。

  2. 身体特徴・動作
    刺青、傷、体型、姿勢、歩き方などは意外と強い手がかりになります。動画では動作の癖が残るため、静止画よりも注意が必要です。

  3. 背景・周辺環境
    住所や学校名が写っていなくても、窓の外の景色、店の内装、駅の構造、道路標識など、位置を絞れる要素は多数あります。背景のほうが危険な場合もあるため、「被写体だけ処理して終わり」にしないことが重要です。

  4. 音声・テキスト
    音声は声質だけでなく内容が危険です。固有名詞、日付、地名、所属が分かる会話は特定につながりやすいので、必要に応じて音声処理やテロップの調整を検討します。テロップも同様で、情報を盛りすぎると危険が増します。

  5. 投稿情報(説明文・タグ・時間・位置情報)
    「どこで撮ったか」「いつ撮ったか」「誰といたか」を書きすぎると、映像以上に強い手がかりになります。タグやハッシュタグも、コミュニティを絞り込む要因になり得ます。位置情報の扱いも、端末設定やアプリ仕様に左右されるため注意が必要です。

以下は、公開前に確認できる投稿前チェックリストです。

投稿前チェックリスト(再識別リスクの点検)

  • 顔だけでなく、耳・髪型・特徴的な装飾も識別要素になっていないか

  • 刺青、傷、名札、制服、企業ロゴが映っていないか

  • 背景に地名、店名、学校、駅、掲示物、車のナンバーがないか

  • 音声に固有名詞、地名、所属、日程が含まれていないか

  • 投稿文で場所・日時・同行者が推測できないか

  • コメント欄で特定が進みそうな要素を置いていないか

  • 本人の同意があり、公開範囲と期間が合意されているか

  • 取り下げや削除要請が来た場合の対応ルートがあるか

組織運用のポイント

企業・学校・自治体・メディアなど、組織で運用する場合は、個人の注意力に依存するのではなく、仕組みで事故を減らすことが重要です。具体的には次のような設計が有効です。

  1. 同意取得の標準化
    口頭同意だけでなく、可能な範囲で「公開先」「利用目的」「公開期間」「撤回方法」を明確にします。イベント撮影などでは、会場掲示や事前案内で周知し、個別の配慮が必要な人に申し出てもらえる導線を設けることも有効です。

  2. 公開前レビュー(複数人チェック)
    編集担当だけでなく、第三者の目を入れると漏れが減ります。チェック項目を固定化し、レビュー観点がブレないようにします。

  3. NG事例のナレッジ化
    「背景の掲示物で学校が特定された」「音声の固有名詞で所属が推測された」など、ヒヤリハットを蓄積し、次回以降のチェックに反映します。

  4. 削除・問い合わせフローの整備
    公開後に「写り込みを消してほしい」「公開を止めてほしい」という要望が来ることはあります。窓口を明確にし、社内で誰が判断するか、どの範囲なら即対応するかを決めておくと、炎上や被害拡大を抑えやすくなります。

  5. 公開範囲の設計
    不特定多数に公開する必要があるのか、限定公開で足りないのかを見直します。公開範囲を狭めるだけでリスクが大きく下がるケースもあります。

組織運用は「完璧に安全」を目指すより、事故が起きにくい設計と、起きたときに速く収束させる体制をセットで持つことが現実的です。


よくある質問

本当にモザイク下は見えるのか

状況によります。加工方式、加工の強さ、元データの解像度、動画か静止画か、背景や音声の情報量など、多くの要因で変わります。「必ず見える」と断言するのも、「絶対に見えない」と言い切るのも危険です。

ただし、被害防止や運用設計として重要なのは、「見えるかどうか」よりも、特定・拡散・二次被害につながる要素が残っていないかです。仮に“完全復元”でなくても、当事者が傷ついたり、特定が進んだりすれば問題は起こります。安全設計は、最悪ケースを想定して行うのが基本です。

昔の粗いモザイクほど危ないのか

一概には言えません。粗いモザイクは「隠しているようで隠れていない」と感じられることもありますが、危険度はそれだけで決まりません。動画の圧縮や編集のされ方、元データの鮮明さ、加工対象が何か(文字、顔、背景)などでも変わります。

現実的な対策としては、「モザイクの強さ」だけを調整するのではなく、背景・音声・投稿文を含めた再識別リスク全体を減らすほうが効果的です。モザイクに過剰な期待を寄せず、複数の対策を組み合わせる姿勢が重要です。

加害投稿を見つけたら本人が連絡してよいか

基本的にはおすすめできません。相手が逆上する、追加拡散される、脅迫や要求が強まるなど、状況が悪化することがあります。やり取りが増えるほど心理的負担も増えやすく、冷静な判断が難しくなります。

まずは証拠保全を行い、プラットフォーム通報や相談窓口の助言を得たうえで、必要なら弁護士など第三者を介して対応するほうが安全です。身の安全が脅かされる状況がある場合は、早めに警察相談も含めて検討してください。

削除されないときの次の手

削除が進まない理由はさまざまです。プラットフォーム側が権利侵害を判断できない、通報内容が抽象的、証拠が不足、転載先が多い、海外サービスで対応が遅い、などが考えられます。

次の一手としては、次のような打ち手が現実的です。

  • 通報文の精度を上げる:何が権利侵害なのか、どの部分が問題かを具体化する

  • 転載先の優先順位をつける:拡散力が強い場所から先に対応する

  • 相談窓口で方針整理:適切な窓口に接続し、必要な証拠や手続を確認する

  • 弁護士相談を検討:削除請求や発信者情報開示など、次の段階が必要か判断する

  • 安全確保を優先:生活圏への影響が出ている場合は、身の安全を守る行動を先に取る

削除は「一回の通報で終わる」とは限りません。つらい作業ですが、手順を分解し、外部の支援を使い、負担を分散しながら進めることが大切です。


まとめ

「モザイク破壊」という言葉はインパクトが強い一方で、実態は「必ず元どおりに復元できる」といった単純な話ではありません。推測・補完が混ざることもあれば、そもそも匿名化の設計が甘く、背景や音声、投稿文から特定が進んでしまうケースもあります。だからこそ、モザイクに頼り切らず、再識別につながる情報全体を管理する視点が重要です。

被害に遭ったときは、次の流れを意識してください。

  • 証拠保全:URL、スクショ、日時、アカウント、メッセージ全文

  • 削除対応:通報機能+相談窓口で整理し、転載先も含めて順序立てて動く

  • 安全確保と相談:脅迫・拡散・個人情報露出がある場合は早めに警察相談や専門家相談

投稿者・運用者側は、顔だけを隠すのではなく、背景・音声・投稿文・公開範囲まで含めた匿名化設計と、公開前レビューや削除フローなどの体制づくりで事故を減らせます。

仕様や運用は変化します。困ったときほど自己判断で抱え込まず、相談窓口や専門家を早めに頼り、短いステップに分けて確実に進めてください。