Windowsの更新中に突然PCが重くなり、操作がまともにできないほど遅くなることがあります。タスクマネージャーを開くと「Modern Setup Host」がCPUやディスクを大きく使用しており、「ウイルスではないか」「終了してよいのか」「放置して大丈夫か」と不安になる方も少なくありません。
Modern Setup Hostは、多くの場合Windows Updateや機能更新プログラムの処理に関わる正規のプロセスです。そのため、やみくもに停止や削除をすると、更新が失敗したり、最悪の場合は起動不良につながったりすることがあります。一方で、いつまでも高負荷が続く場合は、更新が詰まって同じ処理を繰り返している可能性もあります。
この記事では、まず正規プロセスかどうかを確認し、次に「待つべき状況」と「対処すべき状況」を切り分けます。そのうえで、リスクの低い方法から順番に、負荷を下げて更新を完了させるための復旧手順を詳しく説明します。
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Modern Setup Hostとは何か
setuphost.exeの役割と動くタイミング
Modern Setup Hostは、Windowsの大型アップデート(機能更新プログラム)やアップグレードの過程で利用されるプロセスです。更新プログラムのダウンロード後、インストールに必要な準備作業を進める役割を担うため、ファイル展開や検証、互換性チェック、インストール準備などが集中的に行われます。
この「準備作業」が重い理由は、単にプログラムを入れ替えるだけではないからです。Windowsの更新は、システム全体に関わる多数のファイルを差し替えたり、設定を引き継いだり、ドライバーや周辺機器との整合性を確認したりします。さらに、バックアップや復旧のための退避領域を確保することもあり、ストレージへの読み書きが増えやすくなります。
その結果として、次のようなタイミングでModern Setup Hostが目立つことが多いです。
「Windows Updateを実行」した直後に、ディスク使用率が急上昇した
再起動を伴う更新の前後で、CPUが高い状態が続く
「更新プログラムを構成しています」「○%」の表示が長い
スリープ復帰後に更新が再開し、PCが重くなる
ここで重要なのは、更新作業中に負荷が上がること自体は珍しくないという点です。特に機能更新プログラムはファイル量が大きいため、PCの性能やストレージの種類によっては、体感として「固まった」と感じるほど遅くなる場合があります。
ファイルの保存場所の目安
正規のsetuphost.exe(Modern Setup Host)は、更新処理に関連するフォルダー配下に存在することが一般的です。代表的には次の場所が目安になります。
C:$WINDOWS.~BT\Sources\setuphost.exe
C:$Windows.~WS\Sources\setuphost.exe
これらはWindowsのアップグレードや機能更新に使われる作業領域です。普段は表示されない場合がありますが、更新が走ると作成されることがあります。
ただし、環境や更新状況によってパスは揺れます。大切なのは「更新関連のフォルダー内にあるか」「Microsoftの署名が確認できるか」といった観点です。もし、ユーザープロファイル配下や一時フォルダー、見慣れない場所に同名の実行ファイルが存在し、かつ署名や発行元が不審な場合は注意が必要です。
高CPUや高ディスクになる主な原因
大型アップデート中の一時的な負荷
最も多いのは、更新処理そのものが重いケースです。特に機能更新プログラムは、短時間で終わるセキュリティ更新と違い、次のような処理が連続します。
ダウンロードした更新ファイルの展開(圧縮の解凍)
既存システムの状態チェック(互換性、容量、構成)
新しいシステムファイル群の配置準備
ロールバック(復旧)に備えた退避作業
このとき、ストレージがHDDの場合は読み書き性能がボトルネックになりやすく、ディスク使用率が長時間100%近くに張り付くことがあります。SSDでも、空き容量が少なかったり、バックグラウンドで別の重い処理が走っていたりすると、更新が進みにくくなります。
また、更新のピーク時にはCPUも上がります。これは暗号化・検証・展開といった処理が重なるためで、低電圧CPU搭載のノートや古い世代のPCでは顕著です。「ファンが急に回り続ける」「カーソルがカクつく」といった症状が出ても、更新が進んでいるなら一時的なことが多いです。
更新の詰まりとキャッシュ破損
負荷が上がること自体は正常でも、長時間まったく進まない、再起動しても同じところで止まる、といった場合は「詰まり」が疑われます。詰まりが起こる典型パターンは次のとおりです。
更新に必要なキャッシュやダウンロードデータが破損している
Windows Update関連のサービスが不整合を起こしている
過去の更新失敗が残り、更新コンポーネントが不安定になっている
外部要因(セキュリティソフト、常駐ツール、ドライバー)が干渉している
この状態では、Modern Setup Hostが同じ作業を繰り返したり、エラーを抱えたまま進めようとして負荷だけが続いたりします。特に「ディスク使用率は高いが、更新の進捗が増えない」「一定時間おきに負荷が上がって下がるを繰り返す」といった場合は、復旧手順を検討すべきサインです。
空き容量不足やディスクの遅さ
更新には想像以上に空き容量が必要です。更新ファイルの展開や退避、復旧用データの作成などが重なるため、空き容量が少ないと処理が進みにくくなります。結果として、ディスクの読み書きが頻発し、使用率が張り付くように見えることがあります。
また、ディスクが遅い・劣化している場合も症状が増幅します。HDDの健康状態が落ちていたり、エラー訂正が頻発していたりすると、Windowsは読み書きをリトライしながら処理を進めるため、時間がかかり負荷が高い状態が続きます。更新に限らず普段から「起動が遅い」「アプリの立ち上げが重い」と感じているなら、更新時の負荷が大きく出やすいです。
正規プロセスかウイルスかを確認する
Modern Setup Hostは正規プロセスであることが多いとはいえ、同名を装った不審な実行ファイルが存在しないとは言い切れません。ここでは「必要以上に怖がらず、しかし確認は確実に」行うための手順を説明します。
ファイルの場所を開いて確認する
タスクマネージャーから、動作中のプロセスが実際にどのファイルを参照しているか確認できます。
タスクマネージャーを開きます(Ctrl + Shift + Esc)
「詳細」または「プロセス」タブで「Modern Setup Host」を探します
右クリックし「ファイルの場所を開く」を選択します
ここで開いたフォルダーが更新関連の場所(例:C:$WINDOWS.~BT\Sources など)であれば、正規の可能性が高いです。反対に、ダウンロードフォルダーや見慣れないサードパーティのフォルダー、ユーザープロファイル配下の不自然な場所であれば、追加確認が必要です。
なお、同名ファイルが複数存在している可能性もあります。大切なのは「タスクマネージャーから開いた場所」が、現在負荷を出している実体である点です。エクスプローラー検索で見つけた別ファイルと混同しないよう注意してください。
デジタル署名と発行元を確認する
ファイルの場所を確認できたら、次は署名の確認です。署名は「正規の配布元から提供されたファイルかどうか」を判定する強い手がかりになります。
setuphost.exe を右クリックし「プロパティ」を開きます
「デジタル署名」タブを確認します(表示がない場合は別のタブ構成のこともあります)
署名者がMicrosoft関連であるか、詳細で発行元が妥当かを確認します
ここでMicrosoftの署名が確認でき、ファイルの場所も更新関連フォルダーであれば、過度に疑う必要はありません。逆に署名がない、署名者が不明、場所が不審、といった条件が重なる場合は、セキュリティソフトでのフルスキャンや、必要に応じた専門家相談を検討してください。
まず試す安全な対処
高負荷が出たときに重要なのは、「状況を悪化させない範囲で」できることから順に実行することです。更新中に強引な停止や削除を行うと、失敗時の復旧が難しくなる場合があります。ここでは安全性の高い対処から説明します。
進捗があるなら待つべき目安
「待つべきか、動くべきか」の判断は難しいところですが、次のような場合は“処理中”の可能性が高いため、基本は待つほうが安全です。
Windows Updateの画面で進捗が少しずつでも動いている
ディスクアクセスランプが断続的に点滅している
タスクマネージャーでディスク使用率が上下しながら推移している
PCが完全にフリーズではなく、遅いながら操作ができる
機能更新は、体感では止まっているように見えても、裏で長い処理をしていることがあります。特にHDD環境やスペックが控えめなPCでは、数十分〜数時間かかることも珍しくありません。焦って電源断をするより、AC電源に接続し、放熱を確保し、しばらく待つ判断が安全です。
ただし、次のような場合は詰まりの可能性が上がります。
数時間単位で変化がなく、同じ状態が繰り返される
再起動しても毎回同じタイミングで高負荷になる
更新が失敗した旨の表示が出たり、エラーコードが出たりする
この場合は、以降の対処を進める価値があります。
PC再起動と不要アプリ終了
更新処理の一時的な不整合であれば、再起動で改善することがあります。再起動前に行うことは次のとおりです。
開いているファイルを保存し、可能なら作業を終了する
ブラウザのタブや重いアプリ(動画編集、ゲーム、仮想環境など)を閉じる
外付け機器を必要最小限にする(不要なUSB機器は外す)
そのうえで再起動し、起動後にWindows Updateの状態を確認します。再起動直後はバックグラウンドタスクが多く走るため、少し落ち着くまで待ってから確認すると状況が掴みやすくなります。
ここで改善するケースは、軽微な詰まりや一時ファイルの整理が起点だった場合です。逆に、再起動を挟んでも毎回同様の高負荷が続く場合は、次の段階へ進みます。
Windows Updateのトラブルシューティング
Windowsには、Windows Updateの不整合を自動修復するトラブルシューティング機能があります。手順はバージョンにより表示が異なりますが、概ね次の流れです。
設定を開く
システム(または更新とセキュリティ)を開く
トラブルシューティングからWindows Update関連を実行する
この機能は「サービスの状態確認」「更新関連の設定リセット」「簡易的な修復」などを自動で試みます。万能ではありませんが、難しい操作をする前に試す価値があります。実行後は再起動し、更新が進むか確認してください。
更新が終わらないときの復旧手順
ここからは、更新の詰まりやシステム側の不整合を疑うときの手順です。ポイントは「順番」です。いきなり大きな変更を加えるより、影響範囲の小さいものから段階的に進めるほうが安全です。
SFCでシステムファイルを修復する
SFC(System File Checker)は、Windowsのシステムファイルの整合性を検査し、破損があれば修復を試みる仕組みです。更新がうまく進まない原因にシステムファイルの破損が関わる場合、改善につながることがあります。
Windowsの検索に「cmd」と入力します
「コマンドプロンプト」を右クリックし「管理者として実行」を選びます
次のコマンドを実行します
sfc /scannow
完了まで時間がかかることがあります。実行中はPCを操作できますが、できれば不要な作業は避けてください。結果が表示されたら、再起動してWindows Updateを再試行します。
SFCの結果で「修復できなかった」と表示される場合もあります。その場合は次のDISMに進みます。
DISMでイメージを修復する
DISM(Deployment Image Servicing and Management)は、Windowsのコンポーネントストアやイメージの不整合を修復するために用いられます。SFCが「表に見えるシステムファイルの整合性」を直すのに対し、DISMは「修復の元になる部品側」を整えるイメージです。
管理者のコマンドプロンプトで次を実行します。
DISM /Online /Cleanup-Image /RestoreHealth
こちらも時間がかかる場合があります。途中で止まったように見えても、一定時間待ってください。完了後は再起動し、改めてWindows Updateを確認します。必要に応じて、DISMの後にSFCをもう一度実行すると整合性が取りやすいこともあります。
更新キャッシュを整理する手順
SFCやDISMでも改善しない場合は、更新のキャッシュやダウンロードデータが詰まりの原因になっている可能性があります。代表的な対処が、Windows Updateのダウンロード関連フォルダー(SoftwareDistributionなど)をリセットし、更新データを取り直させる方法です。
ただし、手順を誤ると更新が中途半端な状態で残る場合があるため、慎重に進めてください。基本の考え方は次のとおりです。
Windows Updateに関係するサービスを停止する
ダウンロード済みの更新キャッシュを削除またはリネームする
サービスを再開し、更新を再度実行させる
実際の操作では、管理者権限が必要です。作業中はWindows Updateを触らず、完了後に再起動してから更新をやり直します。更新データの再ダウンロードが発生するため、回線状況によっては時間がかかります。
「どのフォルダーを消すのか不安」「業務PCで万一が怖い」という場合は、無理に実行せず、復元ポイントの作成や管理者・専門サポートへの相談を優先してください。安全性を最優先にすることが、結果的に復旧を早めます。
再発を防ぐ設定と注意点
復旧できたとしても、更新のたびに同じようにPCが重くなると困ります。ここでは、再発を減らし、更新中のトラブルを避けるためのポイントを整理します。
アクティブ時間の設定
更新は、作業中に走ると体感が大きく悪化します。Windowsには「アクティブ時間」という設定があり、利用時間帯を登録しておくことで、作業中の自動再起動や更新のタイミングを調整しやすくなります。
仕事や学習の時間帯はアクティブ時間に設定する
夜間や離席時間帯に更新が走るように調整する
これにより、更新のピーク負荷が作業時間に重なる確率を下げられます。特にノートPCで日中使い続ける方は、負荷が出ても困らない時間に更新を寄せるだけでストレスが減ります。
やってはいけないこと
Modern Setup Hostの高負荷で焦ると、強い対処をしたくなりますが、次の行為は避けてください。
更新中に更新関連フォルダーを手動で大量削除する
正規性確認をしないままsetuphost.exeを削除する
何度も強制電源断を繰り返す
「重いから」とサービスをむやみに無効化する
更新処理は複数の要素が連携しています。途中で構成を壊すと、更新失敗だけでなく、次回以降の更新が連鎖的に失敗したり、起動や復旧に余計な手間がかかったりします。まずは正規性の確認と、段階的な復旧手順を守ることが重要です。
それでも解決しない場合の次の手
ここまでの手順でも改善しない場合は、環境要因や根本的な不整合が疑われます。次の観点で見直してください。
ストレージ空き容量の確保:不要ファイルや一時ファイルを整理し、余裕を持たせます
常駐ソフトの影響の切り分け:セキュリティソフトや最適化ツールなどが更新に干渉する場合があります。必要に応じて一時的に負荷の原因になり得る常駐を減らします
周辺機器・ドライバー:特殊なドライバーや古い周辺機器が更新の互換性チェックで引っかかることがあります。不要な周辺機器を外し、ドライバー更新も検討します
更新手段の切替:Windows Updateからの更新が失敗し続ける場合、公式の更新アシスタントやインストールメディアを使うほうが成功率が上がるケースがあります
また、更新が絡む高負荷は「PCの性能不足」ではなく「更新の設計上、一定の負荷が出る」ことも多いです。特にHDD搭載機では、更新時の体感悪化が大きく出やすい傾向があります。頻繁に困っている場合は、ストレージをSSDへ換装できる機種なら検討するだけでも体感が大きく変わることがあります。