歩き始めに脚の付け根がズキッとしたり、立ち上がる瞬間に股関節が引っかかったりすると、「これって動かしたほうがいいの?」「ストレッチで治る?それとも悪化する?」と一気に不安が膨らみます。
実は股関節の痛みは、原因がはっきりしない段階でも“やってはいけない動き”を続けることで長引きやすく、よかれと思った運動や姿勢が逆効果になることもあります。
この記事では、股関節が痛い時に避けたいNG動作を、日常で起こりやすい場面(しゃがむ・座る・歩く・運動する・寝る)ごとに整理し、「代わりにどう動けばよいか」まで具体的に解説します。さらに、様子見でよいケースと受診を考える目安もチェックできるようにまとめました。今日からの動き方を整えて、悪化の不安を減らしていきましょう。
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股関節が痛い時にまず確認したいこと
痛む場所とタイミングをメモする
股関節の痛みは、痛む場所とタイミングで“疑いやすい負担のかかり方”が変わります。病院に行く・行かないに関わらず、まず次の項目を1分でメモしてみてください。スマホのメモ機能で十分です。
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痛む場所:脚の付け根(鼠径部)、股関節の外側、お尻に近いところ、太ももの前や横に放散する感じがあるか
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痛むタイミング:歩き始め、立ち上がり、階段、寝返り、座っていて立つ瞬間、運動中、運動後、翌朝
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痛みの質:ズキズキ、刺すよう、重だるい、引っかかる、詰まる感じ
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痛みの強さ:0〜10で何点か(例:普段3、階段で7)
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きっかけ:転倒・衝突などの外傷、運動量の増加、長時間歩行、仕事の姿勢変化など
たとえば、変形性股関節症では「立ち上がりや歩き始めに脚の付け根が痛い」といった出方があり、進むと持続痛や夜間痛が出ることもあると説明されています。痛みの出方を記録しておくと、受診時の説明が一気に楽になります。
受診を急ぐサイン(今日〜数日以内に相談を考える)
ここは最重要です。次に当てはまる場合、自己判断で無理をせず、できれば今日〜数日以内に整形外科へ相談する目安にしてください。
至急〜早めに受診を検討したいサイン
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痛みで体重をかけられない、歩けない、足を引きずる
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生活(家事・仕事)や睡眠が痛みで妨げられている
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痛みが強くなる、または良くなっても繰り返しぶり返す
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外傷(転倒・衝突・捻った等)のあとから強く痛い
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じっとしていても痛い(持続痛)、夜寝ていても痛い(夜間痛)
NHSでは、股関節痛が生活や睡眠を妨げる、悪化する・繰り返す、家庭で2週間対処しても改善しないといった場合に受診を勧めています。迷うときは「生活と睡眠に影響が出ているか」を基準にするのが分かりやすいです。
様子見してよいケース(ただし2週間が一つの目安)
痛みが軽く、歩ける、外傷ではない、生活に大きな支障がない――この条件がそろう場合は、まず“悪化させる動作を避けて負荷を下げる”ことが優先です。
ただし、様子見には期限を作ったほうが安心できます。家庭での対処を続けても改善しない場合の受診目安として、NHSは「2週間改善しない」を一つの基準にしています。
「よく分からないけれど不安」という場合も、2週間を区切りにして経過を見ると、迷いが減ります。
股関節が痛い時にやってはいけない姿勢と動作
ここでは「やってはいけないこと」を、日常生活で踏みがちな場面に分けて説明します。ポイントは、痛みを我慢して“可動域の深追い”や“ねじり負荷”を増やさないことです。
深くしゃがむ動作
深いしゃがみ込みは、股関節を強く曲げ込む姿勢です。痛みがある時期にこれを繰り返すと、股関節の前側(脚の付け根側)に詰まり感や痛みが出やすくなります。
避けたい例
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掃除や片付けで、深くしゃがんで長く作業する
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低い椅子や沈むソファから、反動で勢いよく立ち上がる
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しゃがんだ瞬間に「ズキッ」とくるのに続ける
代替策(今日からできる)
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床の物を拾うときは、机や壁に片手をつき、深く折りたたまずに膝も使う
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作業は床より「腰の高さ」に寄せる(台・作業台・カゴを活用)
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どうしても床作業が必要なら、短時間で区切り、途中で立って姿勢を変える
しゃがみ込みを“ゼロ”にできなくても、回数と深さを減らすだけで負担は下がります。
正座とあぐらなど床座り
床座りは、股関節を深く曲げたり、ねじれが入りやすかったりします。さらに「床から立つ」動作が頻発すると、股関節への負担が積み重なりがちです。
変形性股関節症では、正座や和式トイレが困難になることがあると説明されています。痛みがあるときに無理をすると、ますます避ける動作が増え、生活の自由度が落ちやすくなります。
避けたい例
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正座で長時間座る
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あぐらで片側に体重を乗せて座る
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床に座った状態から、手を使わず反動で立つ
代替策
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できる範囲で椅子生活へ寄せる(座面は低すぎない)
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床座りが必要なら、座布団やクッションで高さを出す
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立ち上がりは「手を使って良い」と割り切る(机・膝・手すりを活用)
“意地でも正座”を続けるより、痛みが落ち着くまで環境を変えたほうが回復の近道になることが多いです。
脚を組む・内股・ひねり動作
脚を組む癖や、片側に体重を乗せる立ち方、急な方向転換などは、股関節周囲にねじれの負担をかけやすい動作です。スポーツの切り返しだけでなく、日常の「振り向く」「後ろの物を取る」でも起こります。
避けたい例
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椅子で脚を組む(特に長時間)
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立ったまま上半身だけをひねって物を取る
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痛い側に体重を乗せた“片足立ち”を続ける(台所作業など)
代替策
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物を取るときは、上半身だけでなく足ごと向きを変える
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キッチンや洗面所に「ちょい置き台」を作り、ねじって取る動作を減らす
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立ち作業は、片足に乗り切らず左右に体重移動を入れる
「ひねらない工夫」は地味ですが、痛みの再発を減らしやすいポイントです。
痛みを我慢して可動域を深追いするストレッチ
「固いから伸ばせば治る」と思って、痛い角度まで強引にストレッチするのは避けてください。痛みが強い時期は、組織が敏感になっており、深追いが悪化につながることがあります。
避けたいパターン
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痛いのにグイグイ伸ばす
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反動をつける(勢いで伸ばす)
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「今日中に柔らかくする」と急ぐ
代替策
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痛みが出ない範囲で、呼吸しながらゆっくり動かす
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伸ばすより「楽に動く範囲を保つ」意識に切り替える
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伸ばしたあとに痛みが増えるなら中止し、負荷を落とす
ストレッチは“痛みが落ち着いた後に、正しい範囲で”が基本です。
股関節が痛い時に避けたい運動とトレーニング
運動は大切ですが、痛みが強い時期にやり方を間違えると、治りにくくなります。ここでは「避けたい運動」と「その代わりに選びやすい活動」を整理します。
ランニングやジャンプなど衝撃が大きい運動
走る・跳ぶは衝撃が大きく、痛みがある股関節には負担が増えやすい動きです。特に硬い路面でのランニングや、ジャンプを繰り返す運動は注意が必要です。
「運動したい気持ち」を止めるのはつらいですが、痛みが出る日は一段階負荷を下げたほうが結果的に早く戻れます。
代替策
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ウォーキング(痛みが出ない範囲で短時間から)
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自転車(サドル高さを調整し、股関節を深く曲げすぎない)
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水中歩行・プール(可能なら)
深いスクワットや股関節を強く曲げる筋トレ
スクワット自体が悪いわけではありません。ただし、股関節が痛い時期に「深さ」や「重さ」を追うと、股関節の前側が詰まるように痛むケースがあります。
避けたい例
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深いスクワット(膝が高く上がるほど深い)
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重い負荷でフォームが崩れる
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痛いのに回数をこなす
代替策
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椅子からの立ち座り(浅い可動域から)
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痛みのない範囲でのヒップヒンジ(股関節を折りすぎない)
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ゴムバンド等で軽い抵抗から始める(不安が強い場合は専門家へ)
痛みがある日の運動の判断ルール(OK/注意/中止)
「今日は動いていいのか」を迷わないために、簡易ルールを持っておくと便利です。
中止(休む・負荷を下げる)
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動かすほど痛みが増える
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運動後に痛みが残る/翌日悪化する
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体重をかけると強く痛い
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痛みで歩き方が崩れる(引きずる、傾く)
注意(軽く・短くなら可)
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動くと少し違和感はあるが、痛みは強くならない
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終わった後に悪化しない
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翌日に残らない
OK(段階的に増やす)
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安静時の痛みがほぼない
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日常動作で悪化しない
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低負荷で痛みが出ない
急性の筋肉損傷などでは、AAOSが「まずは安静(痛みを増やす活動を避ける)と冷却」を示しており、最初の数日は特に無理をしないことが重要です。スポーツや筋トレを急いで再開すると、治りが遅くなることがあります。
股関節が痛い時の生活の工夫(代替策)
ここは「やってはいけないこと」を実生活に落とすパートです。痛みがある時期ほど、“頑張り”より“設計”が効きます。
立ち上がり・物の拾い方のコツ
立ち上がり(椅子から)
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座面が低すぎない椅子にする(沈むソファは避ける)
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足を少し引き、上体を前に倒して体重移動してから立つ
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反動で勢いよく立たず、ゆっくり立つ
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痛い側に体重を一気に乗せない(左右均等を意識)
床の物を拾う(深いしゃがみ込みの代替)
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机や壁に片手を添える
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痛くない側の脚を少し後ろに引き、股関節の折れを浅くする
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背中を丸めすぎず、膝も使って下へ
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痛みが出たら中止し、道具(マジックハンド等)を使う
「拾う・立つ」を安全にすると、日常の痛みの総量が減りやすくなります。
椅子・トイレ・寝方の調整
トイレ
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和式は深く曲げやすく、股関節の負担が増えやすい傾向があります。痛みがある間は洋式を選ぶほうが安心です。変形性股関節症では和式トイレや正座が困難になり得ることも示されています。
座り方
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脚を組む癖をやめる(骨盤がねじれやすい)
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長時間同じ姿勢を続けない(30〜60分で一度立つ)
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クッションで座面を少し高くして、股関節の曲げ込みを減らす
寝方
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仰向け:膝の下にクッションを入れると楽になることがあります
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横向き:脚の間にクッションを挟むと、股関節のねじれを減らせます
夜間に痛む場合は、寝具調整だけで解決しないこともあるため、痛みが強い・続く場合は受診も視野に入れてください。
痛みを増やしにくい活動の選び方(負荷管理の考え方)
股関節痛のセルフケアで重要なのは、「完全に動かさない」でも「痛みを我慢して動かす」でもなく、負荷を管理して“許容量の範囲で動く”ことです。
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1日の中で波を作る(家事や外出を分散し、連続時間を短く)
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痛みが出る前で止める(“痛みが出ない範囲”を守る)
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良い日にやり過ぎない(翌日に悪化しない量で止める)
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痛みで歩き方が崩れるなら、その時点で負荷が高いサイン
「頑張りすぎた翌日に痛い」は、体が出している分かりやすい警告です。翌日に残らない範囲へ調整していきましょう。
病院は何科?受診の流れとよくある検査
まずは整形外科が基本
股関節の痛みは、関節そのもの、周辺の筋肉や腱、姿勢や歩き方など、原因が複合することがあります。最初の窓口としては整形外科が一般的です。痛みの場所や動きの制限、外傷の有無などから評価し、必要に応じて検査へ進みます。
問診で聞かれやすいこと(受診前の準備)
受診がスムーズになるよう、次をメモしておくと役立ちます。
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いつから痛いか/きっかけはあるか(外傷・運動量・仕事)
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どの動きで痛いか(歩き始め、階段、立ち上がり、寝返り等)
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夜間痛や持続痛があるか
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痛み止め・湿布の使用状況
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既往歴(腰痛、膝痛、骨粗鬆症など)や服薬
NHSの股関節痛の資料でも、受診前に症状のメモを取ることが推奨されています。自分の言葉で説明しやすくなるだけで安心感が上がります。
レントゲンなど検査の概要(怖く感じやすいポイントの整理)
股関節痛では、状態確認としてレントゲンなどの画像検査が検討されます。痛みの出方や診察所見によっては、追加で別の検査を提案されることもあります。
「検査=重症」と決めつけず、原因を絞って適切な対処をするための手順として受け止めると気持ちが楽になります。
股関節痛のよくある質問
湿布と痛み止めは使ってよい?
痛みで動きが崩れると、かばう歩き方や姿勢が続いて別の場所(腰や膝)まで痛くなることがあります。そのため、医師や薬剤師の指示に従って適切に使うのは選択肢になります。
ただし、薬や湿布は体質・持病・併用薬で注意点が変わります。特に、胃腸が弱い、腎臓の病気がある、喘息がある、妊娠中、血液をサラサラにする薬を飲んでいるなどの場合は、自己判断で増量せず必ず相談してください。
冷やすのと温めるのはどっち?
目安として、急な外傷直後や熱感・腫れが強いときは冷却を優先し、落ち着いてきたら温めが楽になるケースがあります。
AAOSの急性の股関節の筋損傷のセルフケアでは、安静と冷却が基本に挙げられています。
ただし、冷やして悪化する・温めて悪化するなど反応は個人差もあるため、「やってみて悪化するなら中止」をルールにしてください。
ストレッチはいつから再開できる?
まずは「痛みがない範囲での軽い動き」からです。痛みを我慢して可動域を広げようとすると、逆に長引くことがあります。
再開の目安は次の通りです。
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日常動作で悪化しない
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伸ばした後に痛みが増えない
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翌日に残らない
この条件を満たさないなら、ストレッチを押し切らず、負荷を落とすか、受診を検討したほうが安全です。
寝ていると痛むのは危険?
夜間痛や持続痛は、受診を考えるサインの一つです。特に、睡眠が妨げられるほどなら早めの相談をおすすめします。変形性股関節症でも夜間痛があり得ることが説明されていますし、N
HSでも「睡眠に影響がある」「悪化する」「改善しない」場合の受診を案内しています。
2週間待っても大丈夫?それともすぐ病院?
目安として、歩ける・生活が回る・痛みが軽い場合は負荷を落として様子見しつつ、2週間改善しないなら受診を検討してください。反対に、体重をかけられない、睡眠が妨げられる、外傷後などは早めに相談したほうが安全です。
まとめ:股関節が痛い時に避けるべき行動と、今日からの最短ルート
股関節が痛い時にまず避けたいのは、深いしゃがみ込み、正座やあぐらの床座り、脚組みや急なひねり、痛みを我慢したストレッチ、衝撃の強い運動や深いスクワットです。これらは股関節に「深い曲げ込み」や「ねじれ」「衝撃」を増やし、痛みを長引かせる原因になり得ます。
一方で、日常生活は止められません。大切なのは「やめる」だけでなく、代替動作に置き換えることです。椅子の高さを変える、床作業を腰の高さへ寄せる、拾い方を工夫する、寝方にクッションを使う――こうした小さな設計で負担は確実に下がります。
そして、次に当てはまる場合は迷いすぎず整形外科へ相談してください。
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生活や睡眠に支障がある
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痛みが悪化する・繰り返す
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2週間改善しない
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外傷後に強い痛みがある
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体重をかけられない
「悪化させないで済む」という安心と、「どう動けばいいか分かる」という自信を
、今日から取り戻していきましょう。
参考にした情報源
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日本整形外科学会(JOA)「変形性股関節症」
https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/hip_osteoarthritis.html -
NHS(英国国民保健サービス)「Hip pain in adults」
https://www.nhs.uk/symptoms/hip-pain/ -
AAOS OrthoInfo(米国整形外科学会)「Hip Strains」
https://orthoinfo.aaos.org/en/diseases–conditions/hip-strains/ -
Whittington Health NHS「Hip pain(患者向け資料PDF)」
https://www.whittington.nhs.uk/document.ashx?id=16149