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ロボトミー手術でどうなる?術後の変化と後遺症、現代治療との違い

「ロボトミー」と聞くと、「人格が壊れる」「別人になる」「感情がなくなる」といった強い言葉が先に立ち、怖さだけが残ってしまう方も多いはずです。けれど、断片的な情報のままでは、何が事実で何が誇張なのかがわからず、モヤモヤが消えません。
本記事では、ロボトミー手術が脳のどこに何をする手技なのかを押さえたうえで、術後に起きやすい変化を「感情」「意欲」「判断」「対人関係」などの言葉だけで終わらせず、日常生活での影響として具体的に整理します。さらに、なぜ普及し、なぜ廃れたのかという歴史的背景や日本での経緯も踏まえ、現代のECT・rTMS・DBSといった治療と同列に語ってはいけない理由を比較表で明確化します。読み終えたときに、不安が整理され、納得して次の行動が取れる状態を目指します。

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目次

ロボトミー手術は何をする手術か

ロボトミーと前頭葉白質切截術の関係

一般に「ロボトミー」と呼ばれるものは、脳の“葉(lobe)”に関わる神経の通り道を断ち、前頭葉と他の脳領域の連絡を変える手術を指します。ブリタニカでは、神経経路を切断する外科的手技として説明されています。
日本語圏では「前頭葉白質切截術」という表現が使われることもあり、さらに英語圏ではlobotomyのほかleucotomy(ロイコトミー)と呼ばれることもあります(用語の揺れが多いのが特徴です)。

この用語の揺れが、誤解の温床になります。たとえば、現代のDBS(脳深部刺激)やrTMS(経頭蓋磁気刺激)まで「ロボトミーの仲間」として括ってしまう説明が出回ることがありますが、目的・方法・可逆性・制度設計が別物です(後ほど比較表で整理します)。

どこをどう処置するのかをやさしく説明

前頭葉、とりわけ前頭前野は、次のような働きと関係が深いとされます。

  • 衝動を抑え、感情を調整する

  • 目標を立て、順序立てて行動する

  • いくつもの情報を踏まえて判断する

  • 人間関係の文脈を読み、適切にふるまう

ロボトミーは、こうした機能に関わる前頭葉系のネットワークと、他の領域(視床など)との連絡に外科的侵襲を加え、結果として“興奮・不安・強迫などの症状が弱まること”を狙ったと説明されます。教材資料でも、前頭葉と間脳・視床の線維結合を遮断し前頭葉脱落症状を人為的に起こす、という趣旨の説明が確認できます。

ただし、ここで重要なのは「症状だけが都合よく消える」わけではない点です。ネットワークの連絡を断つということは、症状の一部が弱まる可能性と同時に、生活を支える機能まで落ちるリスクを抱えます。ブリタニカのQ&Aでも、意図された効果(緊張や興奮の低下)とともに、無気力・受動性・集中困難・情動反応の浅さなどが生じ得ることが整理されています。

当時なぜ治療として期待されたのか

ロボトミーが一定期間“治療”として受け入れられた背景には、当時の精神医療が抱えていた切実な問題があります。
薬物療法の選択肢が乏しく、長期入院が一般的で、患者本人の苦痛も家族の負担も非常に大きい状況の中で、「興奮や激しい不安を鎮める」ことが短期的には“成果”として見えやすかった面があります。

しかし、短期的な鎮静と、長期的な生活の質は別問題です。鎮静が得られたように見えても、主体性や意欲、対人機能が損なわれれば、本人の人生にとっては重大な不利益になり得ます。その評価の難しさと、不可逆性が、のちの強い反省と批判につながります。


ロボトミー手術のあとに起きやすい変化

先に要点:術後変化は「生活の困りごと」として現れる

「術後にどうなるか」を理解する近道は、医学用語や強い言葉に振り回されず、生活行動の変化として捉えることです。
ブリタニカが挙げる代表的影響(無気力、受動性、集中困難、情動反応の浅さ)は、日常では次のような形で表れやすいと考えるとイメージがつきます。

  • “やろうと思っても始められない”が増える

  • 自分から人に関わる・決める・進めるが難しくなる

  • 感情の反応が薄く、喜びや悲しみが伝わりにくくなる

  • 周囲から「落ち着いた」と見える一方で、本人の内面の豊かさが損なわれる

以下、もう少し細かく「何が」「どの場面で」困りやすいかを見ていきます。

感情が平板化するとはどういう状態か

「感情が平板化する」という表現は、単に無表情になることを指すわけではありません。
むしろ、反応の振れ幅が小さくなる喜怒哀楽が伝わりにくくなる出来事に対する“心の動き”が薄く見えるといった形で語られます。ブリタニカの説明でも、情動反応の深さや強さの低下が言及されています。

生活の中では、たとえば次のようなズレとして表れます。

  • 家族の出来事(喜び・悲しみ)に反応が乏しく見える

  • 危険な状況でも危機感が薄く、慎重さが欠ける

  • 叱責されても反省が深まらず、同じことが繰り返される

  • 本人は苦痛が減ったように感じる一方、周囲は「人柄が変わった」と受け止める

ここで注意したいのは、周囲にとって“扱いやすくなった”ように見えることがある点です。見た目の鎮静が、本人にとっての回復と一致するとは限りません。

意欲や自発性が落ちると生活で何が起きるか

無気力・受動性・自発性の低下は、記事でも触れられることが多い影響です。
ただ、言葉だけだと抽象的なので、生活の場面に翻訳します。

自己管理(身だしなみ・健康・お金)

  • 着替え、入浴、歯磨きなどの基本動作が後回しになる

  • 服薬や通院、食事の調整など、健康管理が継続しにくい

  • お金の管理が雑になり、衝動買い・支払い忘れが起きる

家事・段取り(計画→実行の連鎖)

  • 料理や掃除を「始められない」「続かない」

  • 複数工程の作業(買い物→調理→片付け)が途切れる

  • 予定を立てても実行に移せず、先延ばしが増える

対人(関係を“保つ”作業)

  • 連絡を返さない、会う約束が続かない

  • 相手の立場を想像して調整することが難しくなる

  • 必要な謝罪や説明ができず、誤解が増える

こうした変化は、外から見ると「怠け」「無関心」と誤解されやすい一方で、本人の“始動する力”そのものが落ちている可能性があります。

判断力・集中力・対人関係への影響

ブリタニカが挙げる「集中困難」も、実生活に直結します。
判断力や集中力の低下は、次のような形で現れやすくなります。

  • 本を読んでも内容が頭に入らない

  • 作業中に別の刺激へ注意が逸れ、ミスが増える

  • 優先順位を付けられず、重要なことが後回しになる

  • “その場の空気”に合わせた判断が苦手になり、トラブルが増える

対人面では、「共感が薄れたように見える」「場に合わせにくい」「衝動を抑えにくい」といった形で語られることがあります。これは「性格が変わった」と一括りにされがちですが、実際には複数の機能が絡み合い、生活全体に影響が波及していると捉えるほうが理解しやすいでしょう。

合併症や死亡リスクが語られる理由

ロボトミーに強い批判が向けられてきた理由の一つが、合併症や死亡を含む重大なリスクです。ブリタニカの説明にも、死亡例があったことが記されています。

また、より本質的な問題は、不可逆性です。うまくいかなかった場合、薬のように「中止」「変更」「調整」で戻す発想が取りにくい。だからこそ、同意・倫理・適応の妥当性が厳しく問われることになります。


ロボトミー手術が廃れた理由と日本での経緯

向精神薬の登場で何が変わったのか

ロボトミーが衰退した要因としてよく挙げられるのが、薬物療法の進歩です。
薬には副作用もありますが、合わなければ変更でき、症状の変化に応じて調整できます。「不可逆な外科介入」と比べたとき、調整可能性は決定的な違いです。

日本の歴史資料でも、1950年代にクロルプロマジン導入が病床数増加などに影響した旨が言及され、当時の医療環境が読み取れます。

倫理問題と同意の問題が大きくなった背景

ロボトミーの批判は「危険だから」だけではありません。
どの患者に、どの程度の説明で、どのような同意で実施されたのか。社会防衛的な目的が混じっていなかったか。結果を誰がどう評価したのか。こうした倫理の問いが、不可逆性と結びつくことで重大さを増します。

教材資料では、厚生省通知が「最後の手段」としての位置づけに触れていたこと、さらに1975年に日本精神神経学会が精神外科を否定する決議(趣旨)に至ったことが示されています。
また、ロボトミーの混乱と終焉を扱う学術論文でも、1975年の決議に至る顛末が記録されています。

日本ではどう整理され、どう語られてきたか

日本では、戦後の医療制度・病床数の増加、治療指針の運用、社会的批判や訴訟などが絡み合い、ロボトミーをめぐる議論が展開しました。学術論文には、当時の社会状況とロボトミーを巡る出来事が整理され、最終的に1975年の学会決議に至った流れが述べられています。

ここから読み取れる重要点は、「歴史的に行われたロボトミー」を、現代の一般医療としてそのまま想定するのは適切ではない、ということです。
ただし、ここで慎重に言い回しを選ぶ必要があります。制度や法的な“禁止”を一般記事が断言すると、例外事例や制度の読み替えで誤解を生む可能性があります。そこで本記事では、学術史料と学会決議の存在を根拠に「一般医療として同列に扱うべきではない」という整理に留めます。


現代にロボトミーはあるのか

先に結論:ロボトミーと現代治療は同列ではない

結論から言うと、歴史的に広く行われたロボトミーと、現代の治療(ECT・rTMS・DBSなど)を同列に扱うのは適切ではありません。
最大の理由は、不可逆性・調整可能性・適応の限定・倫理審査と同意の設計が note レベルではなく“制度として”違うからです。

ロボトミーと現代治療の違いが一目でわかる比較表

観点 ロボトミー(前頭葉白質切截術など) ECT(電気けいれん療法) rTMS(反復経頭蓋磁気刺激) DBS(脳深部刺激) 定位手術(例:一部の精神外科的手技)
目的 興奮・不安等の軽減を狙うが影響が広くなり得る 難治性うつ等で症状改善を狙う うつ等で脳活動の変化を狙う 重症・治療抵抗性など“最後の手段”領域で補助療法(表示あり) 標的を限定し症状軽減を狙うが適応は厳格化の方向
侵襲 外科的介入(切断) 医療機器による治療(外科切断ではない) 非侵襲(頭蓋外から磁気刺激) 外科的に電極を留置 外科的(ただし標的は限定)
可逆性 原則不可逆 手技自体は可逆的運用(中止可) 中止可 刺激設定の変更・停止が可能(調整可) 手技による(不可逆のものもあり得る)
調整可能性 低い 条件調整はあるが切断ではない 刺激条件調整 高い(設定で調整) 手技による
適応の限定度 当時は広がったが批判・反省で衰退 適応判断が重要 適応判断が重要(専門外来あり) 成人の治療抵抗性OCD等、表示上も限定が明示 高度に限定される傾向
倫理審査・同意 歴史的に問題化 現代は同意・体制が重視 同意・体制が重視 同意・倫理・審査の重要性が強い 同意・倫理・審査の重要性が強い
読者が混同しやすい点 “脳への介入=全部同じ”と誤解されやすい “ショック”語感で誤解されがち “脳をいじる”誤解 “ロボトミーの現代版”誤解 “同じ精神外科”の雑な括り

この表で見てほしい最重要点は、ロボトミー=切断(不可逆)、一方で現代治療の多くは中止・調整の余地があり、適応が限定され、説明と同意が制度として重視されるという点です。NCNPではECTやrTMS等の実施・案内があり、ニューロモデュレーションとして整理されています。
またDBSについてはFDAのHDEページで適応表示(治療抵抗性OCD、SSRI複数回不成功など)が明確に書かれています。

ECTやrTMSは何を目指す治療か

NCNPの案内では、ECTはうつ病・双極性障害・統合失調症等に対して実施され、rTMSは薬物療法が奏効しないうつ病などに実施される旨が示されています。
ここで押さえるべきは、「ロボトミーのように脳の連絡を切って変えてしまう」という発想ではなく、神経活動を調整する(モデュレートする)という枠組みで説明されている点です。

DBSはなぜ“最後の手段”として語られるのか

DBSは、精神領域でも研究・臨床の議論が続く分野で、適応は限定されます。FDAのHDE表示では、慢性で重症、治療抵抗性のOCDに対し、複数のSSRI不成功などの条件が明記されています。
つまり、「何でも治す魔法」ではなく、厳しい条件を満たした上での補助療法として位置づけられていることが読み取れます。


SNS・動画の誤情報を見抜くためのチェックリスト

5項目チェック(保存版)

ロボトミーは強い言葉で拡散されやすく、誤情報も混ざります。次の5項目でフィルタすると、だいぶ安全に整理できます。

  • 出典は一次・権威ソースか(百科事典、公的機関、学術資料など)

  • 年代が明記されているか(1930〜70年代の話と現代を混ぜていないか)

  • 術式名が正確か(ロボトミー/前頭葉白質切截術/ロイコトミーなどの混同がないか)

  • 現代治療と同列にしていないか(ECT・rTMS・DBSを“ロボトミーの仲間”と断言していないか)

  • 「別人になる」等の断言が先行していないか(生活機能の変化として説明しているか)


よくある質問

ロボトミーで性格は完全に別人になりますか

「完全に別人」と言い切れる単純な話ではありません。ただし、無気力・受動性・集中困難・情動反応の低下などが生じ得るという整理は、権威ソースに見られます。
周囲からは「性格が変わった」と見えることがありますが、実態は“人格”という一語で片付けるより、生活機能に関わる複数の要素が変化していると捉えるほうが理解しやすいでしょう。

記憶はなくなりますか

ロボトミーについては、記憶喪失そのものというより、集中や判断、情動反応の変化として語られることが多いです。
ただし医療史としては事例の幅があり、当時の周術期管理も含め、影響を一律に語るのは適切ではありません。

いま日本で受けられますか

本記事は医療提供の可否を断定するものではありません。ただ、日本ではロボトミーを含む精神外科をめぐる議論があり、1975年に日本精神神経学会が精神外科を否定する決議に至ったことが、学術資料・教材資料で確認できます。
このため、少なくとも“歴史的に広く行われた意味でのロボトミー”を、現代の一般医療として想定するのは適切ではない、という整理になります。

現代医療も結局は危ないのでは、と不安です

不安が出るのは自然な反応です。ここで大切なのは、「不可逆な切断」なのか、「調整・中止が可能な治療」なのかを分けて考えることです。NCNPの案内が示すように、ECTやrTMSは現代の枠組みで適応を評価し、安全性の説明を行いながら提供されます。
DBSのように外科的介入を含むものでも、FDAの表示で適応が厳密に限定されていることが確認できます。
不安が強い場合は、ネット検索よりも、主治医や専門外来で「自分の状態に当てはめた説明」を受けるほうが安心につながります。


まとめ

ロボトミー手術で「どうなるか」を短く整理

  • ロボトミーは、脳の神経経路を切断して症状の鎮静を狙った歴史的手技として整理されます。

  • 意意味着としては緊張・興奮が下がることがある一方、無気力・受動性・集中困難・情動反応の浅さなど、生活機能の低下が生じ得るとされています。

  • 不可逆性と、同意・倫理の問題が強い批判と反省につながりました。

  • 現代のECT・rTMS・DBSは、目的・方法・可逆性・適応の限定・審査設計が異なり、同列視は誤解を生みます。

次に取るべき行動

  • SNSや動画の情報は、本文の「5項目チェック」でふるいにかける

  • 治療不安がある場合は、主治医または専門外来で“自分の場合”の説明を受ける

  • 制度や適応、臨床運用は変わり得るため、古い記事の断言は避ける(更新日の確認)


参考にした情報源