「休職するくらいなら退職した方がいい」「知恵袋を見ると、みんな退職を勧めている」──
このような言葉を目にして、不安や罪悪感、焦りを感じていませんか。
本記事では、
休職と退職の本質的な違い
それぞれのメリット・デメリット
知恵袋などの匿名掲示板との正しい付き合い方
実際に検討すべき手順・チェックポイント
を、できる限り平易な言葉で整理いたします。
「もう限界だけれど、いきなり退職して本当に大丈夫なのか」
「会社に申し訳なくて休職を言い出せない」
という方が、自分の状況に合わせて冷静に判断できる状態になることをゴールとした記事です。
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「休職するなら退職しろ」という言葉は、匿名の個人の体験から生まれた一つの意見にすぎません。
休職は雇用を維持したまま距離を取るための制度であり、退職は会社との関係を完全に終える決断です。
心身の状態が不安定なときほど、退職を急ぐことはリスクが高いです。
判断前に、「健康状態」「会社の制度」「お金」「家族や専門家の意見」を必ず確認することが重要です。
休職と退職の基本的な違い
「休職」とは何か
会社との雇用契約はそのまま
業務から一定期間離れる制度
主な理由:メンタル不調、病気・ケガ、家族の介護など
期間や条件は、就業規則で定められていることが多い
多くの企業では「〇ヶ月〜〇年」など、休職できる上限期間や、休職中の給与・賞与・昇給の扱いなどが就業規則に明記されています。
「退職」とは何か
会社との雇用契約を完全に終了する
退職後は会社に戻る前提がない
再就職・転職・無職など、その後の選択は自分次第
一度退職すると、同じ会社に戻ることは「再入社」という扱いになり、簡単ではない場合が多いです。
一番大きな違い:戻る前提があるかどうか
休職:復職を前提とした一時停止
退職:会社との関係を終える決断
この前提が違うだけで、手続き・お金・将来の選択肢が大きく変わります。
「休職するなら退職しろ」という言葉が生まれやすい背景
匿名掲示板・知恵袋の回答が極端になりやすい理由
知恵袋などで「休職するくらいなら退職した方がいい」という意見が多く見られる背景には、次のような要因があります。
回答者がすでに退職済みで、退職を正当化したい心理
個々の経験を一般論として語ってしまう
職場環境が極端に悪かった人の声ほど、感情が強く目立ちやすい
匿名であるため、責任のない発言がしやすい
そのため、「退職してスッキリしました」「休職なんて意味ないです」といった、感情の強い体験談が目につきやすくなります。
会社側から「休職せず退職してほしい」と言われるケース
一部の職場では、上司や人事から次のようなプレッシャーをかけられることがあります。
「長く休まれると困る」
「戻ってこられてもポジションがない」
「どうせ辞めるなら早く決めてほしい」
しかし、就業規則で休職制度が定められている場合、条件を満たしているなら、従業員には休職を利用する権利があります。
感情的な言葉や圧力だけで、人生の大きな決断を急ぐ必要はありません。
休職と退職のメリット・デメリット比較
休職と退職の比較表
| 項目 | 休職 | 退職 |
|---|---|---|
| 雇用契約 | 継続 | 終了 |
| 給与 | 無給〜一部支給(会社規定による) | 退職後は原則なし |
| 健康保険・厚生年金 | 多くはそのまま継続(保険料負担は要確認) | 退職時に切り替え手続きが必要 |
| 失業給付(失業保険) | 原則対象外(就業中扱い) | 条件を満たせば受給可能 |
| 戻る場所 | 原則あり(部署は変わる場合あり) | なし |
| 精神的な区切り | 中途半端に感じる人もいる | 「辞めた」というスッキリ感が出やすい |
| 将来の選択肢 | 復職・転職どちらも準備しながら検討可能 | 転職・再就職などを一から選び直す |
| 社会保険の空白 | 原則発生しにくい | 手続きが遅れると空白期間が出ることも |
「お金」の側面から見た違い
休職の場合
会社からの給与はゼロ〜一部支給が一般的です。
社会保険料は、給与が出ていなくても発生する場合があります。
傷病手当金など、公的給付を受けられるケースがあります(健康保険の条件による)。
退職の場合
給与は退職日までで終了します。
健康保険・年金の切り替え(任意継続、国民健康保険、国民年金など)が必要です。
一定の条件を満たせば、失業給付(いわゆる失業保険)の対象となります。
※具体的な金額や条件は、加入している保険や勤続年数などによって変わるため、必ず最新の公的情報や会社の人事部にご確認ください。
こんなときは「休職」をまず検討した方がよいケース
心身の不調が強く、判断力に自信がないとき
うつ状態や強い不安で、冷静な判断が難しい
将来のことを考えるとパニックになる
仕事どころか、日常生活にも支障が出ている
このような状態では、「退職」という人生に大きな影響を及ぼす決断を、短期間で行うことは非常に危険です。
まずは休職で「時間」と「距離」を確保し、医師や専門家のサポートを受けながら回復を優先した方が、長期的に見て得策な場合が多いです。
職場はつらいが、仕事の内容自体は嫌いではないとき
職場の人間関係がつらい
上司と合わない
配置換えなどで環境が変われば続けたい気持ちはある
仕事そのものにやりがいを感じている場合、「退職」よりも「休職→復職(場合によっては異動希望)」のルートを一度検討する価値があります。
家族や近しい人が「今のあなたの状態で退職は危険」と感じているとき
周囲から見て、明らかに疲弊している場合は、本人以上に家族やパートナーの方が状況を冷静に見ていることがあります。
「いま退職を決めるのは早い」「まず身体を休めてほしい」という声があるなら、休職を使って一旦立ち止まる選択肢を考えてもよいでしょう。
こんなときは「退職」も視野に入れるべきケース
ハラスメントや違法行為が日常化している職場
暴言・暴力・執拗な叱責が日常化
明らかに違法な長時間労働・サービス残業
セクハラ・パワハラが繰り返されている
このような場合、単に「休む」だけでは根本的な解決になりません。
休職から復職しても、元に戻るのは同じ環境であることが多く、再発のリスクが高いです。
休職と並行して、
転職活動の準備
労働相談窓口や弁護士への相談
など、「辞める前提の逃げ道」を現実的に整えることも重要です。
会社の将来性が極めて不安な場合
給与遅配や倒産の噂が頻繁に出ている
業績悪化が明らかで、リストラ話が具体的に出ている
このような状況では、長期的に会社に残るメリットが小さいケースもあります。
休職で体調を整えつつ、退職を前提とした転職準備を進める、という二段階の選択も現実的です。
「どうしてもこの会社には戻りたくない」と明確に感じているとき
名前を聞くだけで動悸がする
社名を見るとフラッシュバックが起こる
会社のことを考えると涙が止まらない
ここまで感情が強くなっている場合、「復職」を前提とした休職はかえって精神的な負担になることがあります。
この場合も、いきなり退職届を出すのではなく、
医師の意見
家族や信頼できる第三者の意見
を踏まえつつ、退職のタイミングや準備を整えたうえで決断することが望ましいです。
実際にどう判断する?意思決定のステップ
ステップ1:現在の健康状態を客観的に確認する
心療内科・精神科・メンタルクリニックなどを受診し、医師の見解を聞く
診断書の内容(休職の必要性・期間の目安など)を確認する
医師に「いま退職を決めるリスク」についても質問する
医師が「まずは休職した方がよい」と判断する場合、無理に退職を急ぐ必要はありません。
ステップ2:会社の就業規則・制度を確認する
就業規則の「休職」「休業」「欠勤」「退職」などの項目を読み込む
休職の要件(勤続年数・診断書の有無など)を確認する
休職期間・給与の有無・社会保険料の扱いなどを確認する
不明点があれば、人事部や労務担当に問い合わせることをおすすめいたします。
ステップ3:お金のシミュレーションを行う
休職した場合:
休職中の収入の有無
傷病手当金などの公的給付の見込み
生活費をどのくらいカバーできるか
退職した場合:
退職金の有無・金額
失業給付の受給開始時期・見込み額
貯金だけで何ヶ月生活できるか
ざっくりでも構いませんので、「休職した場合」と「退職した場合」の双方を計算してみることが重要です。
ステップ4:信頼できる第三者に相談する
家族・パートナー
友人(同じ会社以外)
産業医・社外のカウンセラー
労働相談窓口
知恵袋やSNSの匿名の意見よりも、あなたの事情を知っている人・専門家の意見の方が、はるかに現実的なアドバイスになります。
判断を誤らないためのチェックリスト
退職を決める前に確認したいことチェックリスト
医師の診断を受けている
診断書の内容(休職の必要性)を確認した
会社の就業規則で休職制度の内容を把握した
休職した場合・退職した場合の収入と支出を試算した
家族や信頼できる人に現状を共有し、意見を聞いた
匿名掲示板の意見だけで判断していない
一時的な感情(怒り・悲しみ・絶望)だけで決めていない
「退職した後に後悔しないか」を冷静なタイミングで考えた
1つでも「まだできていない」と感じる項目がある場合、退職届を出す前に一度立ち止まることをおすすめいたします。
知恵袋の体験談をどう扱うべきか
体験談は「参考」にはなるが「正解」ではない
知恵袋には、次のような貴重な情報も含まれています。
「休職した結果、こう変わった」という生の声
「退職してよかった/後悔した」などのリアルな感想
特定の業界・職種ならではの事情
しかし、それらはあくまでその人個人の条件下での結果です。
あなたの年齢・家族構成・貯金額・健康状態・仕事の内容・会社の状況が異なれば、同じ選択をしても同じ結果になるとは限りません。
ネガティブな書き込みに引きずられないために
読む時間帯を決めて、だらだら検索し続けない
読んでつらくなるトピックからは意識的に離れる
「そういうケースもある」と距離を置いて見る
落ち込んでいるときほど、ネガティブな情報ばかりが目に入りやすくなります。
インターネットの情報はあくまで「材料の一つ」として扱い、最終的な判断は自分と専門家との対話を軸にすることが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 休職から復職しても、また再発しそうで不安です。
A. 不安を感じるのは自然なことです。
復職の前に、
勤務時間の調整(時短勤務・勤務日数の調整)
業務内容の見直し
配置転換や部署異動の可能性
などを、産業医や人事と相談しながら調整できないか確認するとよいでしょう。
Q2. 上司に「迷惑だから休職するくらいなら辞めて」と言われました。
A. 感情的な発言に押されて、即座に退職を決める必要はありません。
就業規則で休職制度が定められており、条件を満たしている場合は、従業員側にも正当な権利があります。
人事部や労務担当、産業医など、別の窓口にも相談することをおすすめいたします。
Q3. 退職したい気持ちが強いのですが、それでも一度休職した方がよいでしょうか。
A. 「今は辞めたい気持ちが100%」でも、心身が回復してくると考え方が変わることがあります。
そのため、医師から「今は重要な決断を避けた方がよい」と言われている場合は、一度休職で時間を確保し、回復した状態であらためて退職を検討する方が、後悔しにくい傾向があります。
Q4. 休職中に転職活動をしてもよいのでしょうか。
A. 就業規則や状況によりますが、一般的には「療養を目的とした休職」の場合、転職活動にどこまで時間やエネルギーを割けるかは慎重に判断する必要があります。
まずは体調の安定を優先し、主治医と相談しながら、負担にならない範囲で情報収集から始めるのが無難です。
Q5. 将来のキャリアを考えると、休職と退職のどちらが有利ですか。
A. 一概にどちらが「有利」とは言えません。
同じ会社でキャリアを積みたい:休職→復職ルート
環境を変えてキャリアをやり直したい:休職で体調を整えつつ、退職・転職の準備
といったように、「自分が今後どう働きたいか」によって最適解は変わります。