私たちは一日約2万回もの呼吸を行っていると言われますが、「口で吸うか、鼻で吸うか」を意識している方は多くありません。
しかし、口呼吸が続くか、鼻呼吸に切り替えられるかによって、口の中の環境だけでなく、全身の健康や見た目、睡眠の質にまで影響が及ぶとされています。
最近、口の乾きや口臭が気になる
朝起きると喉がイガイガする
子どもの口がいつもポカンと開いている
このような悩みがある場合、呼吸の仕方が一つの原因となっている可能性があります。
本記事では、「口呼吸から鼻呼吸に切り替えた結果としてどのような変化が期待できるのか」と「実際に切り替えるための方法・注意点」を、できるだけ分かりやすく整理して解説いたします。
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口呼吸から鼻呼吸に切り替えることは、
口腔内の健康(虫歯・歯周病・口臭)
風邪などの感染症リスク
睡眠の質と日中のパフォーマンス
顔つきや表情、歯並びといった見た目
など、多方面に良い影響をもたらす可能性があります。
一方で、効果の実感にはある程度の期間と継続が必要であり、鼻炎や骨格などの問題がある場合には、自己流だけで解決しようとせず、耳鼻科・歯科・矯正歯科など専門家の力を借りることも重要です。
口呼吸 vs 鼻呼吸 — 基本の違いとそれが与える影響
鼻呼吸が持つ「天然マスク」の役割
鼻には、以下のような重要な役割があります。
フィルター機能:鼻毛や粘膜が、ホコリ・花粉・細菌・ウイルスなどをキャッチし、体内に入りにくくする
加温・加湿機能:冷たく乾いた外気を、体内に適した温度・湿度に近づけてから肺へ送る
においを感じる機能:嗅覚により、危険なにおいや食べ物の状態を察知する
つまり鼻呼吸は、「空気の質を整えてから体に取り込む」ための、本来のルートです。
口呼吸が及ぼすリスク:お口の健康・全身の健康・見た目
一方で、口呼吸が続くと次のような影響が懸念されます。
口腔内の乾燥
唾液が減り、細菌が増えやすい
虫歯・歯周病・口臭のリスク増加
感染症リスクの増加
フィルター機能をほとんど通さず空気を取り込むため、喉や気管支に負担がかかり、風邪や扁桃炎などになりやすい
歯並び・顎の成長への影響
舌の位置が下がりがちになり、上顎が狭くなる
出っ歯・ガタガタの歯並び・顔の骨格のアンバランスなどにつながる可能性
睡眠の質の低下
いびきや睡眠時無呼吸の一因となる
日中のだるさや集中力低下につながる
このように、口呼吸は「ただのクセ」と片づけられない、多方面への影響を持つ習慣です。
鼻呼吸に切り替えたらどう変わるか — 期待できる効果とその理由
口腔内の健康改善(虫歯・歯周病・口臭)
鼻呼吸に切り替えると、口を閉じている時間が増えるため、口の中が乾燥しにくくなります。
これにより、次のような変化が期待できます。
唾液の量・働きが保たれ、細菌が増えにくくなる
虫歯や歯周病のリスクが下がる
口臭の主な原因である「細菌の分解」によるニオイ物質が減りやすくなる
毎日の歯みがきやフロスに加え、呼吸の仕方を見直すことは、お口の健康を守るうえで大きな意味があります。
風邪・アレルギーなど呼吸器系トラブルの予防
鼻呼吸では、鼻粘膜のフィルターが働くため、以下のような効果が期待されます。
ウイルス・細菌・ホコリの侵入をある程度ブロック
冷たく乾燥した空気による喉への刺激を軽減
喉の炎症や風邪のリスクが下がりやすい
もちろん、鼻呼吸さえしていれば一切病気にならないわけではありませんが、呼吸のルートを本来の「鼻」に戻すことは、防御力を上げる一助となり得ます。
睡眠の質・集中力・生活の質の向上
鼻呼吸が定着すると、睡眠中の呼吸が安定しやすくなります。結果として、
いびきの軽減
夜間の口の乾燥やのどの痛みの減少
途中で目が覚めにくくなる
翌朝のすっきり感の向上
といった変化を感じる方もいます。
質の良い睡眠は、日中の集中力・仕事や勉強のパフォーマンス・メンタル面の安定にも関わるため、鼻呼吸への切り替えは生活全般の質の向上に繋がりやすいといえます。
顔つき・フェイスライン・発音などの“見た目と機能”への効果
口呼吸が続くと、口元がゆるんだ表情になりやすく、舌や口周りの筋肉も正しく使われにくくなります。鼻呼吸が定着すると、
口を自然に閉じる時間が増え、口輪筋が使われやすくなる
舌が上あご側に収まりやすくなり、顎や歯並びへの負担が軽くなる
顔全体が引き締まった印象になりやすい
といった変化が期待されます。
また、舌や口の使い方が整うことで、発音や滑舌が改善するケースもあります。
鼻呼吸への切り替え — 方法と習慣化のステップ
チェック方法:自分が口呼吸かどうかを見極める
まずは、自分がどの程度口呼吸をしているかを確認することが重要です。以下の項目に複数当てはまる場合、口呼吸傾向がある可能性があります。
何もしていないとき、口が少し開いていると言われる
朝起きたときに、口やのどが乾いている
いびきをよく指摘される
日中も鼻より口で息をしている感覚がある
上の前歯が少し出ている、あるいは歯並びが気になる
鏡の前で「リラックスした状態で唇が自然に閉じているか」「舌先が上あごの前側(上の前歯の少し後ろあたり)に触れているか」を確認することも目安になります。
日常でできるトレーニング(あいうべ体操、舌の位置、口輪筋トレーニング)
口呼吸から鼻呼吸に切り替えるには、舌と口周りの筋肉を鍛え、正しい位置・動きを習慣にすることが大切です。
代表的な方法としては、以下のようなものがあります。
あいうべ体操
大きく「ア」と口を開ける
大きく「イ」と横に広げる
大きく「ウ」とすぼめる
大きく「ベー」と舌を思い切り前に出す
→ これを1セットとして、1日数セット続ける
舌の位置トレーニング
口を閉じた状態で、舌全体を上あごに軽く密着させる
舌先は上の前歯の少し後ろに置き、歯には触れないよう意識する
口輪筋トレーニング
口をしっかり閉じたまま上下の歯を軽く合わせ、数秒キープ
ストローを軽くくわえて落とさないように保つ など
これらを継続することで、「口を閉じて鼻で呼吸する姿勢」がとりやすくなります。
睡眠時の補助(鼻呼吸テープなど)の利用
日中は意識できても、睡眠中はどうしても口が開いてしまうという方も多くいらっしゃいます。
その場合、ドラッグストアなどで販売されている
口を軽く閉じるテープ
鼻の通りをサポートするテープ
などを使う方法もあります。
ただし、以下の点には注意が必要です。
強く貼りすぎて呼吸が苦しくならないようにする
肌が弱い方は、かぶれや赤みが出ないか確認する
息苦しさ・違和感が強い場合は使用を中止する
あくまで「補助的な道具」であり、苦しさを我慢してまで続けるべきではありません。
耳鼻科や矯正の必要性:構造的・病的な問題への対応
努力しても鼻呼吸がうまくできない場合、以下のような背景が隠れている可能性があります。
アレルギー性鼻炎や慢性的な鼻づまり
副鼻腔炎などの鼻の病気
顎が小さい、歯列が狭いなどの骨格的な問題
扁桃肥大などによる気道の狭さ
このようなケースでは、自己流のトレーニングだけで改善を目指すのは難しく、医療機関での診断・治療が重要です。
耳鼻科や、必要に応じて歯科・矯正歯科に相談し、適切な治療や矯正計画を立てることをお勧めいたします。
切り替え後の変化 — どのくらいで実感できるか?期間の目安
鼻呼吸への切り替えによる変化は、個人差はあるものの、おおよそ次のような目安で表れることが多いとされています。
| 期間の目安 | 主に期待できる変化例 |
|---|---|
| 約1週間 | 鼻呼吸を意識できる時間が増える/「自分が口を開けていた」ことに気づきやすくなる |
| 約1ヶ月 | 日中の鼻呼吸が習慣化しやすくなる/口の乾きが減ってきたと感じる |
| 約2〜3ヶ月 | 睡眠時の口呼吸やいびきが減る/朝の喉の痛みやだるさが軽くなる |
| 約3ヶ月以降 | 口臭・虫歯リスクの低下、顔つき・表情の変化、疲れにくさなどを実感しやすくなる |
ただし、これはあくまで一つの目安であり、
年齢
もともとの鼻・口腔の状態
トレーニングや習慣化の頻度・継続度
によって大きく変わります。「少なくとも数ヶ月単位で取り組む」という心構えが重要です。
注意点・こんな人は特に注意が必要
鼻炎・副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎を持つ人
鼻づまりが慢性的にある方が無理に鼻呼吸だけを意識すると、
かえって呼吸が苦しくなる
口も鼻も中途半端になり、睡眠の質がさらに悪くなる
といったことも起こり得ます。
このような場合はまず、耳鼻科でアレルギーや炎症の治療を行い、「鼻で吸える状態」を整えることが優先です。
顎や歯並びなど構造上の問題がある人
顎が小さい
歯がガタガタで、舌の置き場がない
上顎が狭く、鼻腔も狭い
といった場合は、舌の位置トレーニングだけで根本改善することは難しいケースもあります。
その場合、**矯正歯科での相談(歯列・顎の拡大など)**が選択肢となります。
無理な矯正を避けるための心得
鼻呼吸が大事だからと言って、
我慢しながらテープで口を強く固定する
苦しいのに無理に鼻だけで呼吸し続ける
といった方法はおすすめできません。
違和感や苦しさが強い場合は一度中止し、自己判断ではなく専門家に相談する姿勢が安全です。
よくある質問(FAQ)
Q. 年齢が大人でも鼻呼吸に変えられますか?
A. 多くの場合、成人であっても鼻呼吸への切り替えは可能です。ただし、長年のクセや、鼻・口腔の構造的な問題が影響していることもあるため、トレーニング+必要に応じた医療的サポートの両輪で取り組むことが望ましいです。
Q. 鼻呼吸にしたら、虫歯にならなくなりますか?
A. 鼻呼吸により口腔内が乾きにくくなり、虫歯リスクが下がる可能性はありますが、歯みがき・フロス・定期検診などの基本ケアは不可欠です。呼吸の改善はあくまで「リスクを下げる一要素」とお考えください。
Q. 鼻炎やアレルギーがあるのですが、鼻呼吸を目指してよいですか?
A. 目指すこと自体は問題ありませんが、まずは鼻炎やアレルギーのコントロールを優先することが重要です。薬物療法や生活環境の見直しなど、耳鼻科での治療と併行して行うのが安全です。
Q. 鼻呼吸テープや器具は毎日使っても大丈夫でしょうか?
A. 一般的な商品は、正しい使用方法を守れば多くの方にとって安全とされています。ただし、
息苦しさ
肌荒れ・かぶれ
頭痛や強い違和感
などがある場合は、使用を中止し、必要に応じて医師に相談してください。
Q. 子どもがいつも口を開けています。すぐ矯正した方がよいですか?
A. 成長期の子どもの口呼吸は、歯並びや顎の発育に影響し得るため、早めの対応が望ましいです。ただし、
まずは耳鼻科で鼻の状態を確認
そのうえで、小児歯科や矯正歯科に相談
という流れで、原因を整理したうえで矯正の必要性を検討することをお勧めいたします。