薬を飲んだあと、「喉に薬が詰まった気がする」「飲み込んだはずなのに、喉に残っている感じが消えない」と不安になり、検索された方も多いと思います。Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトを読むと、同じような悩みを抱えている人がたくさんいる一方で、回答内容にばらつきがあり、かえって不安が強くなることもあります。
本記事では、そうした不安を少しでも整理できるよう、
どのような状態が「危険」なのか
今すぐできる安全な対処法は何か
どのくらい続いたら病院を受診すべきか
今後、薬が喉に詰まった感じを予防するにはどうすべきか
といった点について、公的機関や医療機関などが公開している情報をもとに、わかりやすく解説いたします。
あくまで一般的な目安であり、「大丈夫かどうか」を最終的に判断できるのは医師だけです。少しでも迷う場合は、早めに医師や薬剤師に相談することをおすすめいたします。
※本記事の内容は一般的な情報であり、特定の症状に対する診断や治療を行うものではありません。少しでも呼吸が苦しい・意識がぼんやりするなどの強い症状がある場合は、ただちに救急要請を検討してください。
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「詰まった感じ」は、実際の異物だけでなく、炎症やストレスなど複数の要因で生じうる
呼吸が苦しい・強い痛み・意識がもうろうとするなどの症状があれば、ためらわず救急要請を検討する
軽い違和感のみでも、数日〜数週間続く場合は、内科や耳鼻咽喉科の受診を考える
水なし・寝たままの服薬は避け、姿勢と水分量に注意することで、ある程度予防ができる
繰り返し飲み込みにくさがある場合は、剤形の変更や嚥下機能の評価などを、医師・薬剤師に相談する価値がある
薬が喉に詰まった「感じ」とは?考えられる原因の基礎知識
薬を飲んだあとに生じる「喉に詰まった感じ」には、いくつかのパターンがあります。実際に異物が残っている場合もあれば、見た目には異常がなくても、炎症やストレスなどによって違和感が続く場合もあります。
実際に薬や食べ物が引っかかっている場合
錠剤やカプセル、サプリメント、あるいは食べ物の一部が、喉(咽頭)や食道の途中に一時的に引っかかることがあります。特に以下のような条件で起こりやすいとされています。
大きめの錠剤・カプセルを飲んだ
水分が少ない状態で飲んだ
寝転んだ姿勢のまま、あるいは首を大きく反らせた姿勢で飲んだ
早食い・早飲みで、十分に飲み込む動作ができていなかった
多くの場合、十分な水分とともに時間が経てば自然に胃の方へ流れていきますが、ときに食道にとどまり、痛みや強い違和感が続くことがあります。
薬による喉・食道の炎症(薬剤性食道炎など)
錠剤やカプセルが喉や食道の粘膜に長く接触すると、その部分に炎症や傷(びらん・潰瘍)が生じることがあります。これを「薬剤性食道炎」と呼び、内視鏡検査で潰瘍が確認されるケースも報告されています。
この場合、薬そのものはすでに胃へ流れていても、
胸の真ん中あたりや喉の奥がヒリヒリ・しみる
飲み込むときに痛みが走る
痛みや違和感が数日続く
といった症状が出ることがあります。
異物がなくても違和感が続く咽喉頭異常感症
検査をしても目に見える異物や明らかな炎症が見つからないのに、「喉に何かが張り付いている」「詰まった感じが取れない」といった違和感が続く状態を、「咽喉頭異常感症」と呼びます。
原因としては、
ストレスや不安
逆流性食道炎などによる胃酸の逆流
喉や首周りの筋肉のこわばり
などが関係するとされています。薬を飲んだことがきっかけで違和感を意識し始め、その後も気になり続けるケースもあります。
誤嚥・窒息が疑われる危険な状態
薬や食べ物が、本来通るべき「食道」ではなく「気管(空気の通り道)」側に入ってしまうことを「誤嚥」と言います。このうち、気道がほぼ塞がれてしまうような状態になると、窒息の危険があり、緊急の対応が必要です。
次のような症状があれば、ただちに救急要請を検討してください。
息がしづらい、ゼーゼー・ヒューヒューという音がする
顔色が悪い、唇が紫色になっている
会話ができない・声を出せないほど息苦しい
意識がもうろうとしている・反応が弱い
このような状態は、インターネットで様子を見るべきではなく、一刻も早く医療機関につなぐことが最優先です。
今すぐ確認したい「危険なサイン」と受診・救急の目安
ここでは、症状の危険度と取るべき行動を整理します。あくまで一般的な目安であり、「迷ったら救急相談・受診」が基本とお考えください。
119番通報・救急外来を検討すべき症状チェックリスト
以下に一つでも当てはまる場合は、ただちに119番や各地域の救急相談窓口(例:#7119など)への連絡を検討してください。
息が苦しくて、数語以上の会話が続けられない
強い胸痛・喉の激痛が突然出現した
顔色が明らかに悪い、冷や汗が出ている
意識がぼんやりしている、呼びかけへの反応が弱い
大量の血を吐いた、黒い便が出た
症状の危険度と行動の目安(例)
| 症状の例 | 危険度の目安 | 推奨される行動 |
|---|---|---|
| 呼吸が苦しい、会話ができない | 非常に高い | 119番通報・至急の救急受診 |
| 強い胸痛・喉の激痛、血を吐く | 高い | できるだけ早く救急外来を受診 |
| 飲み込みで痛みが強く、食事や水分がとれない | 中等度 | 当日〜翌日に医療機関を受診 |
| 違和感はあるが、普通に会話・飲食ができる | 低〜中等度 | 経過観察しつつ、必要に応じて受診 |
※あくまで一般的な目安であり、最終的な判断は現場の医師によります。
当日〜翌日に受診を考えたい症状の目安
次のような場合は、命にかかわる緊急性は高くないことが多いものの、当日〜翌日中に内科や耳鼻咽喉科などへの受診を検討してください。
喉や胸の痛みが強く、飲食がつらい
「刺すような痛み」が数時間以上続いている
違和感や軽い痛みが1〜2日経っても改善しない
胸焼けや酸っぱい逆流感が続く
薬剤性食道炎や食道潰瘍などの場合、内視鏡検査で病変が見つかることもありますので、無理な自己判断は避けるべきです。
自宅で様子を見つつ経過観察してよいケース
次の条件を満たす場合は、まずは自宅で様子を見ながら、経過を観察してもよいと考えられます。
呼吸が苦しい・胸が締め付けられるような痛みはない
水や飲み物は普通に飲める(むせずに飲める)
食事もある程度取れている
違和感はあるが、「強い痛み」ではない
ただし、違和感が数日以上続く、または徐々に悪化するような場合は、早めに受診することをおすすめいたします。
薬が喉に詰まった感じがするときの直し方・対処法
ここでは、すぐに試すことができる対処法と、「やってはいけないこと」を整理します。
まず落ち着いて試したい安全な対処ステップ
姿勢を整える
立つか、背筋を伸ばして椅子に座り、少しあごを引きます。
上を向きすぎたり、寝転んだ姿勢のままにはしないようにします。
少量ずつ水やぬるま湯を飲む
一度に大量の水を流し込むと、かえって飲み込みにくくなる場合があります。
口の中を少し湿らせてから、少量ずつ何回かに分けて飲みます。
数分〜数十分、様子を見る
多くの場合、時間の経過とともに薬は胃へ流れていきます。
この間に、呼吸が苦しくなる・痛みが強くなるようなら速やかに受診を検討してください。
それでも強い違和感が続く場合
痛みや飲み込みにくさが強い → 内科・耳鼻咽喉科などへの受診を検討します。
高齢者や持病のある方、過去に食道・胃の病気を指摘されたことがある方は、早めの受診が安心です。
やってはいけない対処(ごはんの丸飲みなど)
昔から「魚の骨が喉に刺さったらごはんを丸飲みすれば良い」といった言い伝えがありますが、これは現在では推奨されていません。骨や異物がより深く刺さる、粘膜を傷つけるなどのリスクが指摘されています。
やってよい対処・やってはいけない対処(例)
| 行動 | 推奨/非推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| 少量ずつ水やぬるま湯を飲む | 推奨 | 異物や薬をゆっくり流しやすくするため |
| 背筋を伸ばし、あごを少し引いて飲む | 推奨 | 食道への流れが良くなり、誤嚥を防ぎやすくなる |
| ごはんやパンを「丸飲み」して押し流す | 非推奨 | 異物を余計に押し込む・粘膜を傷つけるおそれがある |
| 首を大きく反らして上を向いて飲む | 非推奨 | 気道が開き、誤嚥のリスクが高まる |
| 強く叩く・指を突っ込んでかき出そうとする | 非推奨 | かえって奥へ押し込んだり、喉を傷つける可能性がある |
薬がPTPシートごと喉・食道に引っかかった可能性があるとき
錠剤やカプセルを覆っている銀色の「PTPシート」を誤って飲み込んでしまうと、のどや食道を傷つけ、穴があく(穿孔)などの重い合併症につながるおそれがあります。
PTPシートごと飲み込んでしまった可能性が少しでもある
喉や胸に鋭い痛みがある
といった場合は、自己判断で様子を見るのではなく、できるだけ早く医療機関を受診してください。救急外来を案内される場合もあります。
違和感が数日〜数週間続く場合に考えられることと受診先
飲んだ直後の「詰まった感じ」が、そのまま数日〜数週間にわたり続くケースもあります。
薬剤性食道炎・食道潰瘍が疑われるサイン
次のような場合、薬剤性食道炎や食道潰瘍などの可能性があり、内視鏡検査が検討されることがあります。
飲み込むと胸の真ん中がズキッと痛む
温かい飲み物や酸っぱいものがしみる
数日経っても痛みや強い違和感が改善しない
こうした症状がある場合は、早めに内科・消化器内科を受診し、必要に応じて検査を受けることが重要です。
咽喉頭異常感症・逆流性食道炎など他の原因
検査をしても異物や明らかな炎症が見つからない場合でも、ストレスや逆流性食道炎などに関連した「咽喉頭異常感症」が原因となっていることがあります。
喉に何かが張り付いている
つばを飲み込むと引っかかる感じがする
痛みよりも「違和感・異物感」が中心
といった場合には、このような病態が疑われます。治療には、生活習慣の見直しやストレス対策、必要に応じて薬物療法が用いられます。
何科を受診すべきか、診察でよく聞かれること
飲み込み時の痛みが目立つ → 内科・消化器内科
喉の違和感や声のかすれが目立つ → 耳鼻咽喉科
むせやすい・飲み込みそのものが難しい → 嚥下障害に詳しい医療機関
受診時に伝えるべき情報(チェックリスト)
どの薬(市販薬・処方薬)を、何錠飲んだか
いつ(何時ごろ)飲んだか
どのような姿勢で飲んだか(立って・座って・寝てなど)
水分はどのくらい一緒に飲んだか
どの部位が、どのように痛い/違和感があるか
持病や現在服用中の他の薬
これらをメモして持参すると、診察がスムーズになります。
薬が喉に詰まった感じを予防する正しい飲み方
「喉に詰まった感じ」を繰り返さないためには、日ごろの薬の飲み方を見直すことが大切です。
姿勢・水分量・タイミングのポイント
錠剤・カプセルの服用時には、次のようなポイントを意識すると安全性が高まります。
姿勢
立つか、背筋を伸ばして座ります。
少しあごを引いて、顔をやや下向きにします(上を向きすぎないようにします)。
水分量
口を少し湿らせたうえで、コップ半分〜1杯程度の水やぬるま湯と一緒に飲みます。
高齢者では、口の中が乾燥していると飲み込みにくくなるため、事前に少量の水で口を潤します。
タイミング
寝る直前ではなく、飲んだあともしばらく上体を起こしていられるタイミングで服用します。
寝たまま薬を飲むのは避けます。
服薬補助ゼリーなどの活用と注意点
錠剤やカプセルが飲みにくい場合、服薬補助ゼリーなどを使用すると、スムーズに飲み込めることがあります。
ゼリー状の製剤で薬を包み込み、喉の通りを良くする
誤嚥リスクの高い高齢者では、とろみ調整剤や簡易懸濁法なども検討される
ただし、薬によっては砕いたり溶かしたりすると効果や安全性に影響するものもあります。自己判断で薬を口の中で砕く・溶かす前に、必ず医師・薬剤師に確認してください。
高齢者・子どもに薬を飲ませるときの工夫
高齢者や子どもは、飲み込む力が弱くなっていたり、体格が小さかったりするため、特に注意が必要です。
必ず上体を起こし、正しい姿勢で飲ませる
一度にたくさんの錠剤を飲ませず、1錠ずつゆっくり飲ませる
飲みにくさを感じていないか、表情や反応からこまめに確認する
飲み込みにくさが続く場合は、剤形変更(粉薬・液剤など)を医師に相談する
よくある質問(Q&A)|知恵袋で多い疑問への回答まとめ
Q1:水なしで薬を飲んでしまいました。喉に違和感がありますが大丈夫ですか?
水なしで錠剤やカプセルを飲むと、喉や食道に引っかかりやすくなり、潰瘍などの原因になることがあるため、基本的には避けるべき飲み方です。
すでに飲んでしまった場合は、
上体を起こし、少量ずつ水やぬるま湯を追加で飲む
強い痛みや飲み込みにくさ、胸の痛みがあれば早めに受診する
といった対応を考えてください。
Q2:喉の違和感が1週間以上続いています。重大な病気でしょうか?
1週間以上違和感が続く場合、薬剤性食道炎・食道潰瘍、逆流性食道炎、咽喉頭異常感症など、いくつかの原因が考えられます。
必ずしも重大な病気とは限りませんが、長引く症状は自己判断せず、
まずは内科・耳鼻咽喉科など、受診しやすい科で相談する
必要に応じて専門科を紹介してもらう
といった流れをおすすめいたします。
Q3:同じ薬を飲むと毎回喉にひっかかる感じがします。薬を変えてもらうべきですか?
同じ薬で毎回違和感が出る場合、
錠剤が大きすぎる
コーティングが飲みにくい
飲み方(姿勢・水分量)が合っていない
などが影響している可能性があります。薬を自己判断で中止することは避け、処方医や薬剤師に相談のうえで、
小さい錠剤やカプセル、粉薬、液剤などへの変更
服薬補助ゼリーの使用
服用タイミングの調整
といった選択肢を検討してもらうとよいでしょう。
Q4:どこまで自宅で様子を見てよいのか不安です
「どこまで様子を見てよいか」は、症状の強さや持病の有無によって変わるため、一概には言えません。ただし、
呼吸が苦しい、胸が締め付けられるように痛い、意識がもうろうとする → すぐに救急へ
強い痛みや飲み込みづらさがあり、食事や水分がとれない → 当日〜翌日に受診
軽い違和感のみで、飲食・会話は普通にできる → 短時間〜数日の経過観察も一案
という大まかなイメージを持っておくと、判断しやすくなります。
それでも迷う場合は、地域の救急相談窓口(#7119等)やかかりつけ医、薬剤師に電話で相談することをおすすめいたします。