「不安に駆られる」「好奇心に駆られる」「衝動に駆られる」──この「駆られる」、なんとなく雰囲気は分かっても、いざ自分で使うとなると「強すぎない?」「別の言い方のほうが無難?」と迷いやすい表現です。しかも似た言葉に「駆り立てられる」「突き動かされる」「苛まれる」などがあり、ニュアンスの違いが曖昧だと文章全体の印象まで変わってしまいます。
この記事では、「駆られる」の意味を一言で押さえたうえで、よく使う定型表現を例文で確認し、類語との違いを目的別に整理します。さらに「狩られる」との誤字、強い感情語を使うときの注意点、ビジネスでの無難な言い換えまでまとめるので、読み終えたころには「この場面ならこの言い方」と自信を持って選べるようになります。
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駆られるの意味は感情に強く動かされること
駆られるの基本定義とニュアンスの強さ
「駆られる」は、端的に言えばある感情・衝動によって、気持ちや行動が強く動かされることを指します。重要なのは、「少し気になる」「軽く思った」よりも、もう一段強い「突き上げ」や「押し出し」が含まれやすい点です。
たとえば次の違いを比べると、感覚が掴みやすくなります。
「不安を感じた」:不安はあるが、落ち着いている可能性もある
「不安に駆られた」:不安が膨らみ、落ち着かず、確認や行動に向かいやすい
同様に、
「興味を持った」:関心が芽生えた段階
「好奇心に駆られた」:関心が強まり、確かめずにいられず、行動に移りやすい
つまり「駆られる」は、感情が内側からせき立てるような状態を描写するのに向いています。行動に直結することが多いので、「駆られて+行動」の形が非常に自然です。
不安に駆られて、何度もメール送信履歴を確認した
好奇心に駆られて、普段は読まない分野の記事まで読み始めた
衝動に駆られて、勢いで返信してしまった
なお、「駆られる」は前向き・後ろ向きどちらの感情にも使えます。ただし、一般に「不安」「焦り」「怒り」など負の感情と結びつくと緊迫感が増しやすく、文章の印象が強く出ます。反対に「好奇心」「向上心」などと結びつくと、前向きに動き出す勢いを表せます。
駆ると駆られるの違い
「駆られる」を理解するために、元の動詞「駆る」を軽く押さえておくと役立ちます。
駆る:追い立てる、走らせる、動かす
駆られる:感情や衝動に動かされる、追い立てられるように行動してしまう
「駆る」は、外から何かを動かすイメージが強い言葉です。
人を駆って作業を進める
馬を駆って移動する
一方で「駆られる」は、外から「誰かにやらされる」受身というより、感情に引っ張られて自分が動いてしまう状態を表すことが多いです。
不安に駆られる
好奇心に駆られる
焦りに駆られる
この違いを意識すると、「駆られる」は「感情が主役」「人が押し出される」という構造になりやすい、と理解できます。だからこそ、文章では「〜に駆られて」を置き、その後ろに具体的行動を続けると、読みやすく自然になります。
駆られるが自然に聞こえる定型表現と例文
「駆られる」は自由に組み合わせられるようでいて、実際には相性が良い名詞(感情語)がかなり決まっています。まず頻出の組み合わせを押さえると、理解も運用も安定します。
不安に駆られるの例文
「不安に駆られる」は最も定番です。根拠が薄い不安でも、状況の不透明さから膨らむ不安でも使えます。ポイントは、不安が「ただ存在する」のではなく、確認・行動へ押し出す強さがあることです。
返信が来ない時間が長く、不安に駆られて何度もスマホを見てしまった。
提出が完了しているはずなのに、不安に駆られて送信履歴を確認した。
忘れ物をした気がして、不安に駆られ、駅を出たところで引き返した。
体調の違和感が気になり、不安に駆られて症状を調べ続けてしまった。
「不安に駆られる」は、やや切迫した印象を持つため、文章のトーンを調整したい場合は言い換えも有効です。
不安に駆られて確認する
→ 念のため確認する
→ 心配になって確認する
→ 気がかりで確認する
「念のため」はビジネスにも非常に相性が良い言い換えです。強い感情表現を避けたい場面で役立ちます。
好奇心に駆られるの例文
「好奇心に駆られる」は、前向きに使いやすい定型です。「知りたい」「確かめたい」が強くなり、気づけば行動しているようなニュアンスが出ます。
好奇心に駆られて、普段は選ばない味の商品を試してみた。
好奇心に駆られ、評判の店にふらりと入ってみた。
好奇心に駆られて調べ始めたら、気づけば深夜になっていた。
好奇心に駆られ、ルールを確認しないまま新しい機能を触ってしまった。
最後の例のように、好奇心は明るいだけでなく「不用意さ」にもつながり得ます。文章の狙いが「わくわく」なのか「うっかり」なのかで、後ろに置く行動を選ぶとニュアンスが整います。
前向き:好奇心に駆られて挑戦した/試した
注意喚起:好奇心に駆られて触ってしまった/確認を怠った
「もう少し穏やかにしたい」場合は、次の言い換えが使えます。
好奇心に駆られる
→ 興味が湧く
→ 気になってしまう
→ 関心を持つ
衝動に駆られるの例文
「衝動に駆られる」は、感情が急に立ち上がって行動へ直結する印象が強い表現です。勢い・短絡・後悔のニュアンスが出やすいので、使う場面を選ぶと文章が締まります。
衝動に駆られて、勢いで高い買い物をしてしまった。
衝動に駆られて送ったメッセージを、後から読み返して後悔した。
衝動に駆られそうになったが、一晩置いて考え直した。
衝動に駆られて言い返しそうになり、いったん席を外した。
「衝動」は強い語なので、ビジネスや対外文書では避けたい場合が多いです。そのときは、「衝動」を外して行動だけを穏やかに説明すると安全です。
衝動に駆られて返信した
→ 早合点して返信した
→ 配慮が足りないまま返信した
→ 十分に検討せず返信した
焦燥感に駆られるなど近い言い回し
「焦り」「焦燥感」「危機感」など、締め切りや遅れが絡む場面でも「駆られる」はよく使われます。追い立てられるような感覚を表しやすいからです。
期限が迫り、焦燥感に駆られて手当たり次第に作業を進めた。
遅れを取り戻そうとして焦りに駆られ、確認を省いてしまった。
危機感に駆られて対策を始めたが、後から見ると優先順位がずれていた。
焦りの文脈では、文章が攻撃的・雑然としやすいので、「何に焦ったのか」「どう行動したのか」を具体化すると読みやすくなります。
焦りに駆られた(だけ)
→ 焦りに駆られて、確認せずに送信した
→ 焦りに駆られて、相談する前に独断で進めた
駆られるの類語と言い換えは目的で選ぶ
「駆られる」を理解した次に壁になりやすいのが、「似た言葉が多い」問題です。類語は意味が近い一方、文章の印象を大きく変えます。そこで、目的(どんな印象にしたいか)から選ぶと迷いが減ります。
駆り立てられると駆られるの違い
「駆り立てられる」は、「駆られる」よりもさらに「追い立てられる」感が強く、焦りや外圧、追い詰められた雰囲気を出しやすい表現です。
駆られる:感情に動かされる(中〜強)
駆り立てられる:追い詰められて動く(強、圧迫感が出やすい)
例を比べると、差が見えます。
不安に駆られて確認した(落ち着かないが、まだ自分でコントロール可能)
不安に駆り立てられて確認した(かなり追い詰められ、せき立てられる印象)
小説や心理描写では「駆り立てられる」が効く場面があります。一方、説明文や日常文ではやや大げさに響くこともあるため、ニュートラルにまとめたいなら「駆られる」の方が無難です。
突き動かされると駆られるの違い
「突き動かされる」は、内側から動く点では近いものの、前向きな動機や信念・使命感と相性が良い表現です。「感情の揺れ」よりも「動機の強さ」に焦点が当たりやすいです。
突き動かされる:使命感、強い願い、価値観
駆られる:不安、焦り、好奇心、衝動など幅広い感情
例:
使命感に突き動かされて行動した(前向きなエネルギー)
不安に突き動かされて行動した(言えなくはないが、少し硬くなる)
不安に駆られて行動した(自然)
「前向きに背中を押される」感じを出したいなら「突き動かされる」が便利です。「感情の波に押される」なら「駆られる」が合います。
苛まれると駆られるの違い
「苛まれる」は、行動よりも「苦しみ」の継続に焦点が当たる言葉です。読み手に「つらさ」「責められるような気持ち」を強く伝えたいときに効果的です。
苛まれる:苦しさが続く状態の描写
駆られる:感情が行動を引き起こす描写
例:
不安に駆られて確認する(行動の引き金)
不安に苛まれる(不安が続いて苦しい)
自責の念に苛まれる(強い苦しみの継続)
自責の念に駆られて謝罪する(苦しみが行動へ直結)
どちらが正しいというより、文章で描きたい中心が「状態」なのか「動き」なのかで選ぶと、表現がぴたりと決まります。
迷ったときの言い換え早見表
似た語の差を、文章作成の場面で使えるように、目安としてまとめます。
| 表現 | 強さの目安 | 主な焦点 | 似合う場面 | 例 |
|---|---|---|---|---|
| 駆られる | 中〜強 | 感情が行動を押し出す | 説明文、日常文、小説 | 不安に駆られて確認する |
| 駆り立てられる | 強 | 追い詰められ感 | 強い心理描写、危機的状況 | 焦りに駆り立てられる |
| 突き動かされる | 中〜強 | 動機・使命感 | 意義や信念の語り | 使命感に突き動かされる |
| 苛まれる | 強(苦) | 苦しみの継続 | つらさの描写 | 自責の念に苛まれる |
| かき立てられる | 中 | 高ぶり・盛り上がり | 期待・興奮・気分 | 期待にかき立てられる |
「駆られる」に近いけれど、もっと無難にしたい場合は、「〜を感じる」「〜が強まる」「念のため」など、感情語そのものを弱めたり、行動の理由を事務的に言い換えたりするのが安全です。
駆られるの誤用を防ぐポイント
「意味は分かっているのに、文章にすると不安」という場合、多くは誤用というより「事故りやすいポイント」を踏んでしまっています。ここでは実務に近い形で、つまずきを整理します。
狩られるなどの誤字に注意
最も分かりやすい落とし穴が誤字です。
駆られる:感情に動かされる
狩られる:狩りの対象になる(捕らえられる、獲物になる)
変換で「狩られる」が出ることもあるため、「〜に駆られる」という定型を打ったときは、最後に一度だけ漢字を見直す習慣をつけると安心です。特に提出物や社外メールでは、誤字は内容以前に信用に響きやすいので要注意です。
強い感情の文脈での配慮と書き換え
「駆られる」は勢いを帯びる表現です。だからこそ、負の感情と結びつくと印象が鋭くなりやすい面があります。
怒りに駆られて
嫉妬に駆られて
恐怖に駆られて
これらは小説やドラマの描写では自然ですが、対人・対外文書で使うと、「感情任せ」「制御できない」印象を与えかねません。特に謝罪や報告の文脈では、原因説明として危うい表現になりがちです。
穏やかに整えたいときは、次の方向で書き換えると安全です。
1)感情語を弱める
怒りに駆られて言い返した
→ 感情的になって言い返した
→ 冷静さを欠いて言い返した
2)行動の前に「一時的に」を置く
不安に駆られて確認した
→ 一時的に不安が募り、念のため確認した
3)理由を事務的にする
不安に駆られて再確認した
→ 念のため再確認した
文章の目的が「感情の描写」なのか「説明としての報告」なのかを意識し、後者なら感情表現を落とすほうが読み手に優しいです。
主語の置き方と文の整え方
「駆られる」は「〜に駆られて+行動」で安定します。主語の置き方で迷うときは、まずこの型を思い出すと整います。
不安に駆られて、再度確認しました。
好奇心に駆られて、試してみました。
焦りに駆られて、急いで対応しました。
逆に、能動形に寄せた構文は、文脈次第で硬くなったり不自然に感じられたりします。
好奇心が私を駆った
不安が私を駆った
文学的な響きが出るため、狙いが「描写」なら成立しますが、一般の説明文では違和感を持たれやすいことがあります。迷った場合は、慣用的に定着している「〜に駆られて」を選ぶのが安全です。
誤用回避のための簡易チェックリストも置いておきます。
変換は「駆られる」になっているか(狩られるになっていないか)
「〜に駆られて+行動」の形になっているか(文が宙に浮いていないか)
対外文書で負の感情語(怒り・嫉妬等)を使っていないか
大げさに響く場合、言い換え(念のため、気になって等)が可能か
ビジネスで駆られるを使うときのコツ
ビジネス文書では、「正しい日本語」であること以上に、「相手にどう見えるか」が重要になります。「駆られる」は感情の色が乗るため、使い方に工夫が必要です。
使ってよい場面と避けたい場面
使ってよい場面(社内向け・軽めの振り返り)
日報や個人の所感で、判断や行動の背景を簡単に述べる
チーム内で「なぜ確認したか」を共有する(大ごとではない)
文章に少し人間味を出したい(相手が近い関係)
例:
不安に駆られて確認しましたが、問題ありませんでした。
好奇心に駆られて試してみたところ、手順が簡略化できそうです。
避けたい場面(社外・重要報告・謝罪)
取引先への正式連絡、障害報告、品質・安全に関わる報告
謝罪文、責任範囲が問われる文書
「衝動」「怒り」など制御不能に見える語を含む文章
理由は単純で、「感情に押されて動いた」と読めると、管理や判断の妥当性が揺らぎやすいからです。こうした場面では、感情を語るより、事実と手順を淡々と述べるほうが信頼されます。
無難な言い換え例(例:〜に促される、〜を感じる)
ビジネスで「駆られる」のニュアンスを残しつつ穏やかにするなら、「感情語+駆られる」を、次のように置き換えると良いです。
不安に駆られて確認した
→ 念のため確認いたしました
→ 確認の必要性を感じ、再確認いたしました
→ 認識違いがないか確認いたしました好奇心に駆られて試した
→ 関心があり試しました
→ 検証のため試しました
→ 参考として試しました焦りに駆られて送信した
→ 急いで送信してしまいました(※謝罪文ではその後に再発防止を添える)
→ 確認不足のまま送信してしまいました
「促される」という語は、感情を直接出さずに「動機」を表せるため、文章が落ち着きます。
危機感に駆られて対応した
→ 必要性に促され、対応いたしました
→ 状況を踏まえ、対応いたしました
社内メール例文テンプレ
そのまま使える形に近いテンプレートを用意します。場面に合わせて、感情を出す版と、事務的にする版を使い分けてください。
テンプレ1:社内での軽い共有(感情あり)
お疲れさまです。手順が合っているか少し不安に駆られ、念のため再確認しました。結果、手順は問題なく、このまま進めて大丈夫です。
テンプレ2:社外にも回る可能性がある(感情なし・事務的)
お世話になっております。念のため該当箇所を再確認いたしました。現時点で問題は確認されておりません。引き続き進行いたします。
テンプレ3:強い言葉を避けたい謝意・訂正
先ほどのご連絡について、確認不足がありました。正しい内容は以下の通りです。混乱を招き申し訳ございません。今後は送信前の確認を徹底いたします。
テンプレ4:衝動表現を避けた自己反省(社内)
先ほどの文面は表現が強くなっていました。配慮が足りず申し訳ありません。以後、送信前に文面を整えてから共有します。
「駆られる」を使う場合も、「結果どうだったか(問題なかった/修正した)」をセットで書くと、感情だけが残らず、読み手の不安を増やしにくくなります。
駆られるの背景を知ると使い分けが楽になる
意味や例文を押さえた後、最後に背景を知ると「なぜこの言葉はこう響くのか」が腑に落ち、言い換え判断も速くなります。
駆の漢字が持つ追い立てるイメージ
「駆」という字は、馬を走らせる、追い立てるイメージと結びつきやすい漢字です。そこから「駆る」には「勢いをつけて動かす」「追い立てる」ニュアンスが生まれます。
このイメージを踏まえると、「駆られる」は単に「動機がある」ではなく、追い立てられて動く、あるいは背中を強く押される感じが出やすい、と理解できます。
だからこそ、
不安に駆られる(不安が追い立てる)
焦りに駆られる(焦りが追い立てる)
のような表現が定着し、読み手にも直感的に伝わりやすいのです。
慣用的受身としての駆られる
「駆られる」は形としては受身(〜られる)ですが、一般的な受身文の感覚だけで捉えると、少し説明しづらい場面が出ます。たとえば「先生に叱られる」のように、行為者がはっきりしている受身とは違い、「不安に駆られる」では行為者が人ではなく感情です。
このため、「〜に駆られる」は、文法的というより慣用的にまとまった言い方として覚えておくと安定します。実際、日常的には「好奇心が私を駆る」のように能動形へ戻さず、「好奇心に駆られる」という型で用いることが多いです。
この性質を知っていると、文章作成で「主語をどうするべきか」と悩む時間が減り、自然な文を素早く作れます。
心理的にはどんな状態を指しやすいか
心理状態としての「駆られる」を、もう少し具体的に言うなら、次のような場面に当てはまりやすいです。
感情が膨らみ、頭の中で同じことを繰り返し考えてしまう
その感情を落ち着かせるために、確認や行動をしたくなる
行動した後で「やりすぎたかもしれない」「なぜあんなことを」と振り返りやすい
たとえば「不安に駆られて何度も確認する」は、まさに「確認行動」によって不安を下げようとする心理に近い動きです。「好奇心に駆られて調べ続ける」も、知的な欲求が満たされるまで止めにくい状態をよく表します。
つまり「駆られる」は、感情の説明であると同時に、「行動が起きるメカニズム」を短い言葉で伝える便利な表現です。だからこそ、後ろに具体的行動が続くと説得力が増します。