「かえりみる」を漢字にしようとして、顧みると省みるのどちらかで手が止まったことはありませんか。どちらも同じ読みですが、意味の中心が違うため、文章の印象や伝わり方が変わります。とくにビジネスメールや謝罪文、報告書では、定型句の誤用が目立ちやすく、損をしがちです。
本記事では、顧みるは「回顧・配慮」、省みるは「反省」という軸をもとに、対象と気持ちの向きで一瞬判定できるコツを整理します。さらに「危険を顧みず」「わが身を省みる」など、間違えやすい定型句を一覧で確認できるようにし、すぐ使える例文も用途別に掲載します。読み終えた頃には、迷いが消え、どの文章でも自信を持って書き分けられる状態を目指せます。
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顧みると省みるで迷う場面はどこか
同じ読みで漢字が違う同訓異字
「顧みる」「省みる」は、どちらも「かえりみる」と読みます。このように、同じ読みで意味が異なる漢字を使い分ける語を、同訓異字と呼びます。日本語には同訓異字が多く、特に文章語では、漢字の選び方がそのまま“書き手の意図”として読まれます。
「顧」の字は、後ろを振り向くようなイメージや、気にかけて目を向ける感覚につながります。
「省」の字は、省察(せいさつ)=自分をよく見つめて考える、という方向に寄ります。
字面の印象に頼り切る必要はありませんが、最初の理解としては役に立ちます。大切なのは、文章の意味を崩さないことです。漢字の選択によって「回顧のつもりが反省に読まれる」「配慮の話が自己批判に見える」など、文脈がねじれることがあるためです。
文章で誤用が起きやすい定型句
迷いが増える最大の要因は、慣用的に固まった言い回しが多いことです。「かえりみる」を含む表現は、会話より文章で出やすく、さらに“決まった形”で用いられることがよくあります。
たとえば、次のような表現は頻出です。
危険をかえりみず
批判をかえりみない
周囲をかえりみる
わが身をかえりみる
省みて恥じない
定型句は便利ですが、定型であるがゆえに誤字が目立ちます。逆に言えば、よく使う定型句だけでも押さえると、実務の文章での迷いはかなり減ります。
顧みるの意味と使える場面
顧みるは、基本的に「振り返る」「回顧する」「気にかける」という方向に広がる語です。反省のニュアンスが中心になることは少なく、どちらかといえば“出来事や対象に目を向ける”語感が強いのが特徴です。
使える場面を整理すると、次の3つに分けるとわかりやすくなります。
過去を思い返す(回顧)
対象を気にかける(配慮・顧慮)
後ろを振り向く(文字通りの動作)
それぞれを例文と一緒に見ていきましょう。
過去を回顧する
「回顧」の用法は、時間の流れを振り返り、出来事や経験を思い出して整理する場面で使います。ここでは、反省というより「思い返す」「振り返ってみる」感覚が中心です。
例文:創業当時を顧みると、試行錯誤の連続だった。
例文:この一年を顧みて、挑戦の数は多かったと感じる。
例文:学生時代を顧みれば、あの出会いが転機だった。
この用法でのコツは、「対象が出来事全体や期間」になっているかを確認することです。「当時」「一年」「学生時代」「これまでの歩み」「歴史」など、時系列のまとまりが主語・目的語になりやすいのが特徴です。
また、顧みるは“語り”のトーンにも合います。スピーチや挨拶文で、過去を振り返って感謝を述べるような文脈でも自然に馴染みます。
例文:これまでの歩みを顧みると、支えてくださった皆さまの存在の大きさを実感します。
「回顧」は感情の色として、懐かしさ、感謝、しみじみとした評価を乗せやすい一方で、「改めるべき点」の指摘を中心にしたい場合は、省みるの方がしっくりきます。
気にかける、配慮する
顧みるには「気にかける」「配慮する」という意味があり、この用法が誤用の温床になりやすいところです。なぜなら「反省する」と混ざりやすいからです。
例文:忙しさにかまけて家族を顧みない日々が続いた。
例文:周囲を顧みず、自分の主張だけを押し通してしまった。
例文:相手の状況を顧みて、連絡の頻度を調整した。
「顧みない」「顧みず」は特に頻出で、「気にしない」「配慮しない」「構わない」方向の意味になります。ここで「省みない」を当てると、「反省しない」になってしまい、意味が変わってしまうことが多いです。
この用法の判定ポイントは、次の通りです。
対象が自分以外(家族、周囲、相手、状況、批判、危険)になっている
意味が“反省”ではなく“配慮・気にかける”になっている
たとえば「批判を顧みない」は、「批判を反省しない」ではなく「批判を気にしない」という意味として自然です。よって顧みるが適します。
振り返って見る
顧みるには、後ろを振り返って見るという直接的な意味があります。日常会話よりも、文章語として使われることが多い印象です。
例文:背後の物音に気づき、思わず顧みた。
例文:名前を呼ばれ、立ち止まって顧みると、友人が手を振っていた。
この用法は迷いにくい一方で、意味がわかっているからこそ「省みる」にしてしまう誤字が起きることがあります。動作としての“振り向く”であれば、顧みるが基本です。
省みるの意味と使える場面
省みるは、「自分の心や行いを振り返り、良し悪しを考え、改めようとする」方向の語です。要するに、反省・自省に強く結びつきます。顧みるが“対象に目を向ける”だとすると、省みるは“自分を見つめる”です。
省みるがしっくりくるのは、次のような文脈です。
失敗や指摘を受けたあとに、原因を考える
言い方・態度・判断のまずさを認め、改善策につなげる
過去の行いを道徳的・倫理的に検討する
文章では、謝罪文・再発防止策・振り返りレポート・評価コメントなどで頻出します。
自分の言動を振り返り反省する
もっとも基本となる用法です。対象は原則として「自分の言動」「自分の判断」「自分の対応」です。もちろん第三者について書く場合もありますが、その場合も“本人が反省している”という意味で用いられます。
例文:説明が不足していた点を省みて、資料を改訂いたしました。
例文:不用意な発言を省みて、今後は表現に注意します。
例文:準備不足だったことを省み、次回は段取りを見直します。
例文:感情的になった対応を省みて、まずはお詫びを申し上げます。
省みるは、単に過去を振り返るだけでなく、「改める」「改善する」方向に自然につながります。ですから、次のような構文がよく合います。
省みて、〜する(行動改善)
省みた結果、〜が必要だとわかった(気づき)
省みるべき点(反省項目)
ビジネス文書で使う場合は、反省にとどめず「再発防止」「改善策」へつなげると、読み手が受け取りやすくなります。
省みる→改善につなげる書き方(おすすめの流れ)
事実(何が起きたか)
自分側の至らなさ(省みる点)
原因(なぜ起きたか)
対策(次からどうするか)
この流れで書くと、「省みる」が単なる反省ではなく、責任ある振り返りとして機能します。
省みて恥じないの意味
「省みて恥じない」は、「自分の行いを振り返っても恥ずかしくない」「後ろめたさがない」という意味で使われます。反省の視点で自分を検討する、という前提があるため「省」が適しています。
例文:省みて恥じない判断を積み重ねたい。
例文:省みて恥じないと言えるよう、透明性を重視する。
この表現は、やや硬い文体で、規範意識や信念を示す場面に向きます。注意点として、強い言い切りになりやすいので、対外的な文章で使うときは相手との関係性に配慮すると安全です。
例文:省みて恥じないよう、判断過程を記録し共有します。
(断定ではなく姿勢の提示になり、角が立ちにくい)
顧みると省みるの使い分けを一瞬で判断するコツ
使い分けは、意味を“暗記”するより、判断の手順を持つ方が安定します。迷う場面の多くは、文章を書いている途中で起きるため、その場で即断できる仕組みが役に立ちます。
ここでは、短いチェックで判定できるように整理します。
何を振り返るかで決める
まずは目的語(何を顧みる/省みるのか)に注目します。これが最も強力です。
出来事・状況・時代・過去全体を振り返る → 顧みる
自分の言動・判断・態度・過失を振り返る → 省みる
迷ったら、いったん次のように置き換えてみてください。
顧みる →「過去を振り返る」「思い返す」「気にかける」
省みる →「反省する」「自省する」「改める点を探す」
置き換えたときに意味が自然に通る方が正解です。
判断が速くなる3問チェックリスト
□ 振り返る対象は自分自身の言動か
□ 反省や改善の意図が文の中心か
□ よくある定型句として固定されていないか
上から順に答えると、ほとんどのケースで迷いが解消します。
反省の有無で決める
次に「反省」を軸にします。省みるは反省の語感が核にあります。顧みるは、回顧や配慮であり、反省は必須ではありません。
反省・改善が核 → 省みる
回顧・配慮・気にかけるが核 → 顧みる
境界ケースの考え方(例:「言動をかえりみる」)
この文は両方の漢字が入りそうに見えますが、意図で変わります。
言動を顧みる:言動を“振り返って整理する”。回顧寄り。
例:これまでの言動を顧みると、挑戦が多かった。言動を省みる:言動を“反省して改める”。改善寄り。
例:不用意な言動を省みて、謝罪と再発防止を行う。
書き手がどちらを言いたいのかを明確にすると、漢字は自動的に決まります。逆に言えば、文章の意図が曖昧だと迷いは消えません。迷ったときは「何を伝えたいのか(回顧か反省か)」を一段はっきりさせるのが近道です。
迷いやすい境界例の言い換え
どうしても決めきれないときは、潔く言い換えると文章の品質が上がることがあります。特にビジネス文では、誤用リスクを減らし、読み手の理解も速くなります。
顧みるが合う言い換え
回顧する
振り返る
思い返す
気にかける
配慮する
省みるが合う言い換え
反省する
自省する
内省する
見直す
改める点を検討する
たとえば「危険をかえりみず」は、言い換えるなら「危険を顧みず」「危険をものともせず」「危険を承知で」などが自然です。「危険を省みず」は、反省と関係がなく、違和感が出やすくなります。
また、文章の意図をはっきりさせたいときは、次のように二段構えにするのも有効です。
例文:当時の判断を振り返り、改善すべき点を省みました。
(回顧=振り返り/反省=省みるを分けて書ける)
「顧みる/省みる」を無理に一語で済ませず、文を分けることで伝わりやすくなることも多いです。
顧みると省みるの定型句と例文一覧
ここは“覚える”ほど強くなる領域です。特に定型句は、意味がほぼ固定されているため、一覧として手元に置いておくと誤用を避けやすくなります。
まずは、両者の違いを一目で確認できるように比較表を置きます。
| 項目 | 顧みる | 省みる |
|---|---|---|
| 中心の意味 | 回顧する/気にかける | 反省する/自省する |
| 対象 | 出来事・状況・相手・周囲など(自分以外も多い) | 自分の言動・判断・態度(自分中心) |
| ニュアンス | 振り返る・配慮する・気にする | 改める・見直す・恥じる点を考える |
| 相性のよい語 | 歩み、歴史、当時、危険、批判、周囲 | 至らなさ、言動、対応、判断、改善、再発防止 |
この表を頭に置いた上で、定型句を確認していきます。
顧みるの定型句
| 表現 | 意味 | 推奨漢字 | 例文 |
|---|---|---|---|
| 危険を顧みず | 危険を気にせず | 顧みず | 危険を顧みず救助に向かった。 |
| 批判を顧みない | 批判を気にかけない | 顧みない | 彼は批判を顧みない姿勢を貫いた。 |
| 周囲を顧みず | 周囲に配慮しない | 顧みず | 周囲を顧みずに発言してしまった。 |
| 家庭を顧みない | 家庭に配慮しない | 顧みない | 仕事優先で家庭を顧みない時期があった。 |
| ふり返り顧みる | ふり返って見る・回顧する | 顧みる | 過去をふり返り顧みて、次を考える。 |
顧みる定型句の覚え方
「危険」「批判」「周囲」「家庭」など、自分以外の対象が多い
意味は「気にしない」「配慮しない」「構わない」になりやすい
書いている途中で迷ったら、目的語が自分以外かを確認すると、顧みる側に寄ります。
省みるの定型句
| 表現 | 意味 | 推奨漢字 | 例文 |
|---|---|---|---|
| わが身を省みる | 自分の行いを反省する | 省みる | まずわが身を省みる必要がある。 |
| 省みて恥じない | 振り返っても恥ずべき点がない | 省みて | 省みて恥じない判断をしたい。 |
| 行いを省みる | 行為の是非を見直す | 省みる | 自らの行いを省みて、再発防止を誓った。 |
| 言動を省みる | 言動を反省する | 省みる | 不用意な言動を省みて謝罪した。 |
| 省みるべき点 | 改めるべき点 | 省みる | 省みるべき点を整理し、対応を見直す。 |
省みる定型句の覚え方
「わが身」「行い」「言動」「点」など、自分の内側に向く語が多い
意味が「反省」「見直し」「改善」につながる
「省みるべき点」などの表現は、報告書・振り返り・改善策の文書で非常に使い勝手が良い一方、使いすぎると“反省だけしている印象”になることがあります。できれば、次のように改善策をセットで書くとバランスが良くなります。
例文:省みるべき点を整理し、手順書とチェック体制を更新しました。
ビジネスでそのまま使える短文例
ビジネス文では、「顧みる/省みる」を使う場面がだいたい決まっています。用途別に、すぐに使える形をまとめます。
謝罪・お詫び(省みる)
ご指摘を受け、確認不足だった点を省みて、直ちに是正いたしました。
本件の対応を省みて、再発防止のための手順を見直します。
不適切な表現があった点を省み、関係者の皆さまにお詫び申し上げます。
振り返り・レポート(顧みる/省みるの併用)
今期を顧みると、挑戦の機会が増えた一方、共有の遅れが課題でした。
当時の判断を顧みて、情報の集約方法を改善する必要があると感じました。
対応の遅れを省みて、承認フローを簡素化します。
姿勢・決意(顧みる/省みる)
周囲を顧みず進めてしまった点は反省しています。
(文章上は「顧みず」+「反省」で意味が自然につながります)わが身を省みつつ、透明性の高い運用を続けます。
ワンポイント
「顧みずに〜してしまった」は、次に「反省」「お詫び」をつなげると、文意がきれいに通ります。
「省みて〜します」は、改善行動を後ろに置くと説得力が上がります。
顧みると省みると似た言葉
「顧みる/省みる」を正しく使えるようになると、次に出てくる迷いが「鑑みる」「反省」「内省」「自省」などの近接語です。ここを整理しておくと、言い換えの精度が上がり、文章が引き締まります。
鑑みるとの違い
「鑑みる(かんがみる)」は、過去の事例や状況を“材料”として参照し、現在の判断や方針に反映させるときに使います。回顧や反省というより、「意思決定」に寄る語です。
顧みる:過去を振り返る(回顧/配慮)
省みる:自分を反省する(自省/改善)
鑑みる:過去や状況を踏まえて判断する(参照/考慮)
例文で違いを確認します。
例文:創業期を顧みると、挑戦が会社の文化を作った。
(回顧)例文:説明不足だった点を省みて、資料を改訂した。
(反省)例文:前回のトラブルに鑑みて、申請手順を変更した。
(参照して判断)
ビジネス文で「鑑みる」は便利ですが、硬い言い回しでもあります。柔らかくしたい場合は「踏まえて」「受けて」「考慮して」で言い換えると読みやすくなります。
言い換え例:前回のトラブルを踏まえて、申請手順を変更しました。
反省と内省との違い
省みるに近い言葉の中でも、「反省」と「内省」は似ているようで視点が少し違います。
反省:言動の良し悪しを見直し、次に改める意識が強い
内省:自分の考え方や価値観、心の動きを深く見つめる意識が強い
省みるは、反省寄りにも内省寄りにも使えますが、一般的な文章では「反省して改善する」方向で使われることが多いです。場面に応じて、次のように使い分けると自然です。
業務の不備、対応ミス、再発防止 → 反省/省みる
自分の価値観、判断軸、人との関わり → 内省/省みる(より深い振り返り)
例文で並べると違いが見えます。
例文:納期遅延の原因を反省し、チェック工程を追加した。
(改善行動が主)例文:なぜ焦りやすいのか内省し、自分の判断の癖を理解した。
(心の動きの理解が主)
文章の目的が「改善策の提示」なら反省・省みるが相性が良く、「自己理解を深める」なら内省がしっくりきます。
顧みると省みるのよくある質問
顧みると省みるはどちらも正しい場合がありますか
あります。特に「言動をかえりみる」「これまでをかえりみる」のように、対象が広く取れる表現では、書き手の意図によって選択が変わります。
回顧として整理する意図が強い → 顧みる
反省として改善する意図が強い → 省みる
迷いが残る場合は、次のどちらかで解決できます。
反省の意図があるなら、省みる+改善策を明記する
回顧の意図なら、顧みる+感想や評価を述べる
文の後半を整えると、漢字選択が自然に決まります。
かえりみないは省みないでもよいですか
多くの場合、「かえりみない」は「気にしない」「配慮しない」という意味で使われるため、「顧みない」が自然になります。特に「危険」「批判」「周囲」「家庭」などを目的語に取る場合は、顧みないに寄ります。
一方で「反省しない」という意味を明確に言いたいなら、「省みない」も意味としては成立します。ただし、文脈上の誤解を招きやすいので、「反省しない」「改善する気がない」などと明示してしまった方が安全なこともあります。
言い換え例:指摘を受けても反省しない態度が問題だ。
(誤解が少ない)
省みるは他人に対して使えますか
使えますが、注意点があります。「省みる」は“反省の主体”が基本的に本人であるため、他人に対して使う場合は「本人が反省した」という読みが自然になる形にすると違和感が減ります。
自然:彼は自らの言動を省みた。
(本人の反省)不自然になりやすい:相手を省みる。
(相手に配慮する意味なら顧みるが自然)
「相手に配慮する」「相手の立場を考える」という意味なら、顧みる(相手を顧みる、状況を顧みる)や、「配慮する」「慮る」を使う方が伝わりやすいです。
迷ったときの最短の覚え方はありますか
最短で覚えるなら、次の一行で十分です。
顧みるは回顧と配慮
省みるは反省
あとは、迷いやすい定型句だけ先に固定すると、文章作成中の迷いが激減します。特に次の4つは頻出なので、最優先で押さえるのがおすすめです。
危険を顧みず
批判を顧みない
周囲を顧みず
わが身を省みる
この4つが固まると、「顧みない=気にしない」「省みる=反省する」という軸が体感として定着します。