受診後に「嫌われたかもしれない」「医師の反応が冷たかった」と感じたことはありませんか。けれど多くの場合、原因は態度の良し悪しではなく、限られた診察時間の中で情報がうまく伝わらず、診療の質が落ちてしまうことにあります。
話が長くなる、自己診断を押し付ける、薬や検査を指定する、服薬情報を隠す、無断で録音・撮影する――こうした行動は、医師を困らせるだけでなく、誤解や確認作業を増やし、結果的にあなた自身が損をしやすくなります。
本記事では、医師が「困る」と感じやすいNG行動12選を、感情論ではなく医療安全と時間配分の観点から整理します。さらに、診察の冒頭30秒で要点が伝わるテンプレ、質問を3つに絞って納得を引き出すコツ、録音やSNS投稿で揉めないための線引き、迷ったときの#7119活用まで、忙しい人でもそのまま使える「受診の型」をまとめました。
次の受診から、気まずさを減らし、短時間でも納得できる診療につなげたい方は、ぜひ参考にしてください。
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医者が最も嫌うのは失礼より診療の質を落とす行動
受診で気まずくなる本当の原因は「性格」ではない
受診のあとに「嫌われたかも」「冷たかった」と感じると、次に病院へ行くこと自体が憂うつになります。けれど多くの場合、問題は性格の相性ではなく、診療が成立しにくくなる“状況”にあります。
外来診療は、限られた時間の中で次の作業を同時に進めています。
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今すぐ対応が必要な危険サインがないかを見極める
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症状の原因候補を複数想定して、優先順位をつける
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必要な検査を選び、不要な検査を減らす
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治療の選択肢(薬・生活調整・経過観察)を提示し、合意を取る
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薬の飲み合わせや副作用、既往歴の影響を確認する
ここで患者側の情報が「散らばる」「抜ける」「つながらない」状態になると、医師は安全策として“守りの診療”を取りやすくなります。守りの診療は悪ではありませんが、検査が増えたり、説明が最小限になったりしやすく、患者側の満足度は下がりがちです。
忙しい人ほど損しやすい「伝え方のズレ」
仕事や家庭で時間がない人ほど、受診は「短期決戦」になりやすいです。ところが急いでいると、伝え方が次のようになりがちです。
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結論より背景から話し始め、主訴が後回しになる
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ネットで見た病名や薬名から入ってしまう
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今日聞きたいことが整理されず、終わってから後悔する
このズレを直すだけで、医師の反応が変わることは珍しくありません。好かれるためではなく、診療の精度を上げるために、受診の型を身につけるのが近道です。
まずこれだけでOK:診察の冒頭30秒テンプレ
30秒で伝わる「5点セット」
診察室でいちばん強い武器は、長い説明ではなく「順番」です。冒頭30秒は次の5点だけで十分です。
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主訴:いちばん困っている症状は何か
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開始時期:いつから始まったか
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変化:良くなっているか/悪化しているか
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増悪・軽快条件:何で悪化し、何で楽になるか
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心配点・生活影響:何が怖いか、生活にどう影響しているか
例(咳の場合)
「1週間前から咳が続いて、夜に悪化して眠れません。熱は高くないですが、階段で少し息切れがして不安です。」
例(腹痛の場合)
「昨日の夜から右下腹が痛く、歩くと響きます。吐き気が少しあり、食欲が落ちています。仕事を休むべきか心配です。」
「全部話さなきゃ」をやめると診療が速くなる
症状が多いと、全部を丁寧に説明したくなります。けれど診察は、主訴を軸に周辺情報を集めるほど早くなります。
どうしても複数あるときは、次の言い方が角が立ちにくく有効です。
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「主に困っているのはこれで、ほかにも2〜3点あります。優先順位を一緒に決めてください」
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「一番つらいのはこれです。残りは関連があるかだけ確認したいです」
医者が最も嫌う患者がやってはいけないこと12選
1. 症状の説明が長い・順序がない
話が長いこと自体が悪いのではなく、緊急性の判断に必要な情報が埋もれるのが問題です。特に「いつから」「どこが」「どれくらい」が曖昧だと、医師は安全策として検査や追加質問を増やすしかなくなります。
やるべきことは、長さより順序です。後半のテンプレを使えば十分です。
2. 最初から診断名を決めつける
「たぶん〇〇病」「絶対△△」のように病名で固定すると、医師は“その病名に引っ張られないように”慎重になり、かえって遠回りになり得ます。
患者が持ち込むべきは、病名ではなく事実(症状・時間・条件)です。
3. ネット情報で対抗する
調べることは悪くありません。問題は、診察室が“論破合戦”になることです。
言い換えるだけで、対立は協力に変わります。
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×「ネットでは違うって書いてあります」
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○「調べた情報があるのですが、自分の場合は当てはまりますか?」
4. 薬や検査を指定して要求する
「抗生物質をください」「CTを撮ってください」と結論を指定すると、医師は妥当性の説明に時間を割かれます。
希望があるなら、“目的”として伝えると噛み合います。
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○「肺炎が心配です。検査が必要か教えてください」
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○「痛みが強くて仕事ができないので、痛み止めの選択肢を知りたいです」
5. 指示を守らず結果だけ求める
薬を飲めない、通院できない、生活上の注意を守れない——それ自体は珍しいことではありません。問題は、それを伝えずに「治らない」とだけ言うことです。医師は評価ができません。
守れない事情(副作用、費用、眠気、勤務、育児)を言えば、代替策を一緒に考えられます。
6. 複数受診で情報が分断される(はしご受診)
同じ症状で医療機関を転々とすると、検査が重複しやすく、薬の重複や飲み合わせ確認が難しくなります。
「早く治したい」ほど、実は遠回りになりやすいポイントです。
医療機関を変えざるを得ないときは、紹介状(診療情報提供書)や検査結果をつなぐだけで、診療の質は上がります。
7. 遅刻・無断キャンセルを繰り返す
予約制では、遅刻や無断キャンセルが他の患者の診療にも影響します。結果として自分の診察時間も短くなり、説明不足が起きやすくなります。
遅れそうな時点で連絡し、「短時間でも可能か」「別日に変更すべきか」を相談するのが最もトラブルになりにくい方法です。
8. クレームが目的化している
不満を伝えることは必要です。けれど怒りの表現が目的になると、会話が進みません。
コツは、事実/困りごと/希望を分けることです。
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事実:「前回、説明が早くて理解できませんでした」
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困りごと:「不安で眠れません」
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希望:「図で説明してほしい、メモの時間がほしい」
9. 録音・撮影・SNS投稿を無断で行う
診察内容を忘れないために録音したい、家族に正確に伝えたい——その目的は自然です。ただ、無断で行うと信頼関係が壊れやすく、院内ルール違反になることもあります。
大切なのは次の3点です。
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病院は院内ルールとして録音・撮影を禁止/許可制にできる
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他の患者や職員のプライバシー、個人情報の写り込みが起きやすい
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SNS等への公開は“録音すること”とは別次元のトラブルになる
したい場合は、後半の「許可の取り方テンプレ」を使い、目的と範囲を明確にして相談するのが安全です。
10. 過去の医師や医療者を攻撃して味方作りする
「前の病院はひどかった」から始めると、医師は状況把握より感情の火消しに時間を取られます。
伝えるべきは攻撃ではなく、「何が分からなかったか」「今回どうしたいか」です。
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○「前回の説明でここが理解できませんでした。今回はそこを確認したいです」
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○「治療方針に納得したいので、別の視点も聞きたいです」
11. 薬・サプリ・市販薬を隠す
隠すのは危険です。飲み合わせや副作用の見落としが起きやすくなります。
言いづらいサプリや市販薬ほど、医師にとっては重要な安全情報です。お薬手帳がなくても、スマホのメモや現物写真で構いません。
12. 緊急性の判断を誤り、時間外受診を常態化する
夜間・休日の受診は、必要なときに使うための仕組みです。
ただし「我慢しすぎ」も危険です。重要なのは、迷ったときの相談導線を持つことです。
#7119(救急安心センター)が利用できる地域なら、判断に迷うときの強い味方になります。
一目で分かる:NG行動12選の早見表
NG行動と代替行動一覧
| NG行動 | 起きやすい不利益 | 代替行動(これだけで改善) |
|---|---|---|
| 話が長く順序がない | 緊急性判断が遅れる/追加質問が増える | 30秒テンプレの順で話す |
| 診断名を決めつける | 判断が偏る/遠回り | 症状の事実を先に伝える |
| ネット情報で対抗 | 時間消耗/対立 | 「自分の場合当てはまるか?」と質問 |
| 薬・検査を指定要求 | 妥当性説明に時間 | 不安の目的を伝え必要性を確認 |
| 指示不遵守で結果要求 | 治療評価ができない | 守れない事情を正直に共有 |
| はしご受診 | 情報分断/重複投薬 | 紹介状・検査結果で情報をつなぐ |
| 遅刻・無断キャンセル | 自分の診察が短くなる | 遅れる時点で連絡し相談 |
| クレーム目的化 | 解決が遠のく | 事実・困りごと・希望に分解 |
| 無断録音・撮影・投稿 | 信頼崩壊/規定違反 | 許可取得+目的と範囲を明確化 |
| 他院批判 | 連携が難しくなる | 分からなかった点・今回の目的を話す |
| 薬/サプリを隠す | 相互作用・副作用リスク | お薬手帳orメモor現物写真で提示 |
| 時間外受診の常態化 | 割増・医療資源負担 | 迷ったら#7119、危険なら119 |
受診がうまくいく準備チェックリスト
持ち物チェック(忘れても代替可能)
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保険証(またはマイナ保険証)
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お薬手帳(なければ服薬メモ・薬袋・写真でも可)
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市販薬・サプリの情報(名前、量、開始時期)
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過去の検査結果、紹介状(あれば)
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アレルギー歴、持病、手術歴のメモ(思い出せないなら“ある/ない”だけでも)
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体温・血圧などの記録(ある人は直近1〜2週間分が目安)
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症状メモ(次のテンプレ)
症状メモテンプレ(コピペ用)
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いつから:
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どこが:
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どんな感じ(痛みの種類など):
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強さ(10段階):
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頻度:ずっと/波がある/特定のときだけ
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悪化する条件:
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楽になる条件:
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伴う症状(熱、吐き気、息切れ等):
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生活への影響:睡眠、仕事、家事、食事
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これまでにしたこと(市販薬・対処):
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心配していること:
忙しい人向け「今日の質問は3つだけ」
受診で後悔する最大要因は、聞きたいことが散らばることです。まずは3つに絞ると、時間内に収まりやすくなります。
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「いま考えられる原因候補は何ですか?」
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「今日からやることの優先順位を教えてください(薬/生活/再受診の目安)」
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「悪化したら、どんな症状で“すぐ”受診すべきですか?」
診察室での伝え方と相談の進め方
会話が噛み合う「型」は3つのステップ
診察室での会話は、実は次の流れが最もスムーズです。
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事実を伝える(症状テンプレ)
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不安・希望を添える(何が怖いか/避けたいか)
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合意を作る(優先順位と次の一手を確認)
この順番さえ守れば、丁寧さや話術がなくても十分に伝わります。
医師の説明が難しいときの質問フレーズ集
理解できないことは恥ではありません。むしろ、分からないまま帰るほうが危険です。
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「今の説明を私の言葉で言い直してもいいですか?合っているか確認したいです」
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「一番大事なポイントを3つにすると何ですか?」
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「今日やること/様子を見ることを分けて教えてください」
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「薬の副作用で特に注意する症状はありますか?」
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「再受診の目安は“何日後”と“どの症状”ですか?」
「お任せします」を安全に言い換える
丸投げに聞こえない形にすると、治療の合意形成が速くなります。
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「効果と副作用のバランスで、私にはどれが良さそうですか?」
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「仕事で運転があるので、眠気が強い薬は避けたいです。代替はありますか?」
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「通院回数を減らしたい希望があります。方針を一緒に考えたいです」
録音・撮影・SNS投稿で揉めないための線引き
先に押さえるべきは「許可」と「範囲」
録音・撮影は、目的が正当でも手順を間違えると一瞬で不信になります。揉めないための前提は次の通りです。
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病院は、プライバシー保護等のため録音・撮影を禁止/許可制にしていることがある
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診察内容には個人情報が含まれ、第三者の声や映り込みが起きやすい
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“自分のメモ用”と、“SNS等で公開”はリスクがまったく違う
角が立たない許可の取り方テンプレ
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「説明を家で忘れないようにしたいので、今の説明だけ録音してもよろしいですか?」
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「家族に正確に共有したいので、録音が可能か確認したいです。難しければ要点をメモします」
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「録音が院内ルールで難しい場合、重要点を書面やプリントでいただけますか?」
共有・SNS投稿は基本的に別問題
録音やメモが許可されたとしても、第三者への共有やネット投稿は別問題です。
医療機関名や医師名、会話の切り取りは誤解や炎上を生みやすく、結果的に自分の受診環境を悪化させます。どうしても共有が必要なら、家族など最小限にし、個人が特定される情報は避けましょう。
迷ったときの安全導線:救急受診・時間外受診の考え方
危険サインがあるときは迷わず緊急対応
次のような症状がある場合は、自己判断で様子を見るのは危険です(地域の案内に従いつつ、緊急性を優先してください)。
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意識がもうろう、呼びかけに反応しにくい
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片側の麻痺、ろれつが回らない、突然の激しい頭痛
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強い呼吸困難、唇が紫、胸の強い圧迫感
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激しい腹痛が続く、吐血、黒色便、止まらない出血
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けいれんが続く、高熱でぐったりしている など
「救急車?今すぐ受診?」で迷うときの相談先
危険サインほどではないが迷うとき、地域で実施されていれば #7119(救急安心センター) が相談先になります。
一方で明らかに緊急なら、#7119ではなく119が優先です。
時間外受診を減らすと、あなたの診療も良くなる
時間外受診や大病院集中は、医療資源の負担だけでなく、待ち時間の増加や医師の疲弊にもつながります。自分の診療の質を守るためにも、可能な範囲で「時間内受診」「かかりつけの相談」「情報の一元化」を意識すると、結果的に得をします。
よくある質問(気まずくならない言い方まで)
医師に「お任せします」は言ってはいけない?
言ってはいけないわけではありません。ただし、選択肢が複数ある場面では、後から「思っていたのと違う」が起きやすい言葉です。
安全な言い換えは、「優先したい条件」を添えることです。
例:「副作用が少ないほうを優先したいです」「通院回数を減らしたいです」
セカンドオピニオンは嫌がられる?
本来は、納得のための選択肢です。角が立たない伝え方は次です。
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「不信感ではなく、納得して治療を続けたいので別の意見も聞きたいです」
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「紹介状や検査結果を揃えて相談したいです」
“対立”ではなく“理解と納得”の文脈に置くと進めやすくなります。
症状が多すぎて、どう話せばいい?
まず主訴を1つ決め、残りは「優先順位を一緒に決めてください」と言うのが最短です。
メモに「今日の優先順位:①②③」と書いて持参すると、診察が崩れにくくなります。
薬を断りたい/減らしたいときはどう言う?
結論だけ伝えるより、理由を添えると代替案が出やすいです。
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「眠気が心配で運転があります」
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「胃が荒れやすいです」
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「費用面が厳しいです」
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「授乳・妊娠の可能性があります」
医師は“患者が続けられる治療”を一緒に作るために情報が必要です。
忙しくて通院できない場合は?
次の3点だけ押さえると、無理のない通院計画が立ちます。
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次回受診の目安(何日後/どの症状なら)
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今日の優先順位(薬/生活/検査)
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記録する項目(体温、痛み、咳の頻度など最小限で)
まとめ:医師に嫌われないより、受診の成果を最大化する
医師が困るのは、礼儀が完璧でないことよりも、診療の質を落とす行動です。話が散漫、自己診断の押し付け、服薬情報の隠し、無断録音、はしご受診——これらは誤解や安全確認の難しさを生み、結果的に自分が損をしやすくなります。
今日からできる改善は難しくありません。
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30秒テンプレで主訴→時期→変化→条件→心配点を伝える
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質問は3つに絞り、優先順位と再受診の目安を確認する
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録音・撮影は許可+範囲の明確化を徹底する
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迷ったときは、地域で実施されていれば#7119を活用する
受診は「好かれる場」ではなく、「一緒に解決する場」です。型を持つだけで、短時間診療でも納得感は大きく変わります。
参考にした情報源
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厚生労働省「外来医療のかかり方に関する 国民の理解の推進について(PDF)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000601283.pdf -
厚生労働省「上手な医療のかかり方(#7119案内ページ)」
https://kakarikata.mhlw.go.jp/kakaritsuke/7119.html -
総務省消防庁「救急安心センター事業(#7119)ってナニ?」
https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html -
協会けんぽ(例:広島支部)「上手な医療のかかり方(PDF)」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/hiroshima/kouhou/2023121819.pdf -
病院の院内掲示例(撮影・録音の許可制/禁止の案内)
https://www.seiseikai.jp/html/no_photography_or_recording.html -
法律事務所コラム(施設管理権による撮影・録音禁止の考え方の解説)
https://www.watanabelaw.jp/?p=1488