医療費控除を調べ始めた瞬間に、多くの方が手を止めるのが「総額」と「支払額」の違いです。領収書には大きな金額が並ぶのに、申告画面では「支払った医療費」と書かれている――この時点で「どっちを入れるのが正解なのか」と迷い、知恵袋で検索しても回答が分かれていて不安が増える、という流れは決して珍しくありません。
本記事では、その迷いを最短で解消できるように、医療費控除の基準になる金額を一次情報の考え方に沿って整理し、領収書の見方、医療費通知とのズレの扱い、補てん金額(高額療養費・保険給付など)の差し引きまで、つまずきやすいポイントを順序立てて解説いたします。さらに、「総額は10万円超なのに控除できない」ケースの理由や、e-Tax入力で迷いやすい欄の考え方も、計算例付きで具体的に確認できます。
「間違えたくない」「損をしたくない」「できれば今日中に申告を終わらせたい」という方は、まずは本記事の手順どおりに、ご自身の領収書のどこを見るべきかから一緒に整理していきましょう。
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医療費控除で迷う総額と支払額の違い
医療費控除を調べていると、「領収書に総額が書いてあるが、確定申告では支払額を入れるのか」「10万円の判定は総額なのか支払額なのか」といった疑問にぶつかりやすいです。知恵袋でもこの論点は頻出で、回答が割れて見えることがあります。
医療費控除で基準になる金額はどれか
医療費控除で基準になるのは、原則としてその年中に実際に支払った医療費です。医療機関が請求した「医療費の総額(いわゆる10割)」そのものを、そのまま10万円判定に使う考え方ではありません。
ここで混乱が起きる典型は次のすれ違いです。
誤解されがち:総額(10割)で10万円を超えていれば対象
実際の考え方:実際に支払った医療費を集計し、そこから補てんを差し引き、さらに10万円(または所得の5%)を差し引く
たとえば、医療費の総額が大きくても、健康保険の自己負担割合(1〜3割など)により、窓口での支払額が小さいケースは珍しくありません。この場合、「総額が10万円を超えているから控除できる」とは限らず、現実に支出した額で判断します。
また、医療費控除は医療費そのものが返ってくる仕組みではなく、所得から一定額を差し引く「所得控除」です。還付(または税負担軽減)は、控除額に税率が掛かった分になるため、医療費の総額が大きい=大きく戻る、とは言い切れません。
10万円基準と所得200万円未満の基準
医療費控除は、概ね次の考え方で計算します(上限があります)。
(実際に支払った医療費の合計 - 保険金などで補てんされる金額)- 10万円
ただし、総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円の代わりに総所得金額等の5%を差し引く
この「10万円(または所得の5%)」は、「医療費の総額」ではなく、あくまで「実際に支払った医療費(自己負担等)」を集計したうえで適用する基準です。ここを取り違えると、知恵袋でよく見る「総額が10万円超なのに対象外だった」という状況になります。
医療費控除で家族分を合算できる条件
医療費控除は、本人分だけでなく、自己と生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費も対象になり得ます。ここで重要なのは「誰が医療を受けたか」よりも、家計として誰が負担したか(支払ったか)です。
実務上の整理ポイントは次のとおりです。
家族分を合算するなら、領収書・医療費通知情報を「受診者」「医療機関」「支払日」で整理する
医療費控除の申告者(誰の確定申告に載せるか)は、税率や他の控除(住宅ローン控除等)との兼ね合いで有利不利が変わる
迷う場合は、e-Tax等で試算して差を確認するのが確実
医療費控除の総額と支払額を領収書で確認する
領収書にある総額と自己負担額の読み方
医療機関・薬局の領収書には、形式はさまざまですが、一般に次のような情報が含まれます。
医療費の総額に相当する情報(点数、10割相当額など)
保険者負担分
自己負担額(窓口で支払った金額)
その他(食事療養費、差額ベッド代、文書料など)
知恵袋的な「どっち問題」は、領収書に「総額」が目立つ形で載っている一方で、実際に払った自己負担額が小さく表示され、どちらを集計すべきか迷うことで起こりがちです。
基本は、「窓口で実際に支払った金額(自己負担)」を集計の起点にすると整理しやすくなります。
取り違えを防ぐため、領収書を確認する際は次の順でチェックすると安全です。
「今回領収額」「自己負担額」「お支払額」など、窓口で支払った金額を特定する
その支払日が当年中(1/1〜12/31)か確認する
公費負担や減額等があり得る場合は、明細や医療費通知とも突合する
医療費控除で集計するのはどの欄か
確定申告(医療費控除の明細書)やe-Taxの入力では、最終的に「支払った医療費」「あなたが負担した医療費」といった趣旨の欄にまとめます。ここは「総額(10割)」ではなく、現実に負担した支払額を入れる前提です。
実務の流れとしては、次の対応関係で考えると迷いが減ります。
領収書の「総額」:参考情報(医療費の全体像)
領収書の「自己負担額(支払額)」:医療費控除の集計の中心
そこに交通費等を足し、補てん金額を差し引いて最終計算へ
医療費控除で交通費を含めるときの整理方法
通院に伴う交通費は、医療費控除の対象になり得ますが、医療費通知(マイナポータル連携等)には載りません。そのため、医療費通知ベースで申告する場合でも、交通費は別途集計が必要です。
整理のコツは次のとおりです。
受診日ごとに「区間」「交通手段」「金額」をメモする(スマホのメモで十分です)
IC利用など領収書が出ないものは、記録を残す(後から説明できる形)
タクシー利用は必要性が問われ得るため、事情(病状、公共交通利用が困難等)を簡単に残す
医療費控除で医療費通知と領収書が違うときの考え方
医療費通知と領収書が不一致になる主な理由
医療費通知情報(マイナポータル連携等)の「窓口負担相当額」と、窓口で実際に支払った金額が一致しないことは起こり得ます。代表的な理由は次のとおりです。
端数処理(10円単位・1円単位など、計算・表示の単位差)
審査・査定、請求の確定タイミングの違い
公費負担医療等の反映のされ方の違い
医療費通知に載らない支払い(自由診療、通知対象外の費用等)
この不一致があると「どちらが正しいのか」と悩みがちですが、実務では「どちらを軸にするか」を決め、必要な補正を行う、という形で整理するのが現実的です。
医療費控除は医療費通知ベースと領収書ベースのどちらで進めるか
選び方は、正確性と手間のバランスです。目安としては次のとおりです。
医療費通知ベースが向くケース
通知にほぼ漏れがなく、差が端数程度
特殊事情(公費負担、査定など)が少ない
とにかく入力を簡素化したい
領収書ベースが向くケース
通知対象外の支出が多い
公費負担等で通知と差が大きい可能性がある
交通費など追加項目が多い
重要なのは、医療費通知ベースで進めても、差が大きい・漏れがある場合は、領収書等で補正する必要が出る点です。
医療費控除で不足分を追加・補正する手順
差があるときの安全な手順は次のとおりです。
医療費通知の対象期間・対象医療機関に漏れがないかを確認する
不一致が出た医療機関・薬局について、領収書で「実際に支払った金額」を確認する
通知に載らない医療費(通知対象外の支払い、交通費等)を別途集計して追加する
公費負担や減額等がある場合は、最終的に「実際に負担した額」になるようにe-Tax入力で調整する
補てん金額(高額療養費、保険給付等)を整理し、適切に差し引く
この運用により、「通知は便利だが万能ではない」という前提で、過大・過小の申告リスクを下げられます。
医療費控除の計算で重要な補てん金額の扱い
医療費控除で差し引く補てん金額の代表例
医療費控除では、実際に支払った医療費から、保険金などで補てんされる金額を差し引きます。代表例は次のとおりです。
生命保険等の入院給付金・手術給付金
健康保険等の高額療養費、家族療養費
出産育児一時金 など
注意点は、補てん金額が自動的に医療費通知へ反映されるとは限らないことです。給付の種類によっては、自分で支給決定通知や振込記録を整理し、申告で入力する必要があります。
また、補てん金額が申告時点で未確定の場合、見込額で差し引く考え方が案内されていることがあります。後日差が出た場合は、修正申告等の検討が必要になるため、未確定の給付がある場合は資料を保存しておくと安全です。
医療費控除で補てんを差し引く上限と注意点
補てん金額で最も重要なのは、次のルールです。
補てん金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引く
引ききれない金額が出ても、他の医療費からは差し引かない
たとえば、A病院の入院費に対して受け取った保険給付が入院費を上回った場合でも、その上回り分をB病院の通院費から差し引く、といった処理はしません。ここを誤ると、控除額を過小にしてしまい、結果的に損をする可能性があります。
実務では、次の整理が有効です。
給付金ごとに「どの医療費に対応するか」をメモする
医療費側も「医療機関・受診者・支払日」で分類しておく
上回りが出ても、他へ振り替えない(引きすぎない)
医療費控除の還付額の目安を把握する
医療費控除の還付額(または税負担軽減額)は、概ね次のイメージです。
控除額 × 所得税率(+関連する税の要素)
住民税にも影響が出る場合がある
ここでの控除額は、(支払った医療費-補てん-10万円等)で決まります。
そのため、医療費(支払額)が10万円を少し超えた程度では、還付が数千円〜1万円台に収まることもあり得ます。申告後に「思ったより戻らない」と感じる方は、控除の仕組み(医療費が丸ごと返る制度ではない)を先に押さえると納得しやすくなります。
医療費控除のケース別判定と計算例
医療費控除で総額は10万円超でも支払額が10万円未満の例
状況(例)
領収書の総額(10割相当)が合計で120,000円
窓口で実際に支払った自己負担額が合計で36,000円
補てん金額は0円
所得200万円以上で10万円基準を適用
判断
医療費控除は「実際に支払った医療費」を起点にします。
この例では、(36,000円-0円)-100,000円=マイナスとなり、医療費控除は発生しません。
このケースは知恵袋で最も多い誤解の一つです。「総額が10万円超=対象」とは限らず、自己負担の支払額で判断する点が要です。
医療費控除で高額療養費や保険給付がある例
状況(例)
支払った自己負担額の合計:300,000円
後日支給された高額療養費:80,000円
所得200万円以上で10万円基準を適用
計算(例)
支払った医療費:300,000円
補てん:80,000円を差し引く
さらに10万円を差し引く
→ 控除額の目安:(300,000-80,000)-100,000=120,000円
注意点
補てんの差し引きは「目的となった医療費を限度」とするため、給付がどの支出に対応するかを整理することが重要です。補てんの整理が曖昧だと、引きすぎ・引かなさすぎの原因になります。
医療費控除で年をまたいで支払った医療費の例
状況(例)
12月に受診したが、支払いは翌年1月になった
受診した年と支払った年が異なる
扱い
医療費控除は原則として「その年中に支払った医療費」が対象です。したがって、年末に受診したとしても、実際の支払いが翌年であれば、その翌年分の対象になります。
実務では、領収書の発行日だけでなく、クレジット決済日や振込日など「実際の支払日」を確認するとミスを防げます。
医療費控除で夫婦どちらが申告するかの考え方
夫婦で家族分を合算できる場合、「どちらが申告すべきか」は次の考え方が基本です。
所得税は累進課税のため、一般に税率が高い方が控除を取るほど効果が大きくなりやすい
ただし、住宅ローン控除など他の控除との兼ね合いで結果が変わる場合がある
住民税への影響も含めて比較したい場合は、両パターンで試算が有効
最も確実なのは、e-Tax等の作成画面で、夫婦それぞれのパターンを入力して還付・納付見込みを比較することです。
医療費控除をe-Taxで申告する手順
医療費控除で医療費通知を使って入力する流れ
医療費通知(マイナポータル連携等)を活用する場合の流れは、次の整理が分かりやすいです。
医療費通知情報を取得する
通知情報を基に「支払った医療費」を入力・反映する
端数差など軽微な不一致があることを前提にしつつ、差が大きい医療機関は領収書で確認する
通知に載らない医療費(自由診療等)や交通費があれば追加する
高額療養費・保険給付など「補てんされる金額」を整理して入力する
自動計算された控除額・還付見込みを確認する
医療費通知は入力を大幅に簡素化できますが、差異があるケースへの補正手順を押さえておくと安心です。
医療費控除で領収書を集計して入力する流れ
領収書ベースで行う場合は、次の手順で迷いが減ります。
当年中に支払った領収書を集める(家族分を含めるなら対象者も整理する)
各領収書から「窓口で支払った金額」を拾い、医療機関・受診者ごとに合計する
交通費などを別途集計して加算する
給付金(高額療養費、保険給付等)を「対応する医療費」と紐付けて整理する
e-Taxで「支払った医療費」と「補てんされる金額」を入力する
計算結果(控除額・還付見込み)を確認し、明細書の内容を確定する
「総額」と「支払額」で迷う場合でも、領収書集計は「窓口で支払った金額」中心で整理すれば、入力欄の意味と一致しやすくなります。
医療費控除の明細書と領収書の提出・保管
医療費控除は、通常「医療費控除の明細書」を提出(または入力)し、領収書は提出不要の運用が一般的です。ただし、領収書や医療費通知、給付金の支給決定通知等は、確認に備えて一定期間保管が必要になります。
また、医療費通知を利用した場合でも、通知に反映されない支出や差異の補正が起こり得ますので、少なくとも「差が出た部分」「追加した部分」に関係する資料は、後から追える形で整理しておくと安全です。
医療費控除で間違えやすい点とFAQ
医療費控除の誤解を防ぐチェックリスト
10万円判定を「総額(10割)」で見ていない(原則は実際に支払った医療費)
支払日が当年中かを確認した(未払い分は支払った年の対象)
医療費通知と領収書の差を把握し、必要なら補正する
補てん金額は目的となった医療費を限度として差し引いている
補てんが上回った分を、他の医療費から差し引いていない
交通費など通知に載らない分を別途集計した
家族合算は「生計を一にする」前提で整理した
夫婦どちらで申告するか、必要なら試算して比較した
医療費控除のよくある質問
医療費控除は総額が10万円超なら対象ですか?
原則として、医療費控除の基準は「実際に支払った医療費」です。総額が10万円を超えていても、自己負担の支払額が基準に届かなければ控除が発生しないことがあります。
医療費控除は支払額が10万円未満でも控除できますか?
総所得金額等が200万円未満の方は、10万円ではなく「総所得金額等の5%」が基準になるため、条件によっては支払額が10万円未満でも控除が発生する可能性があります。
医療費控除で医療費通知と領収書が違うときはどうしますか?
医療費通知ベースでも領収書ベースでも進められますが、差が大きい場合や通知に載らない支出がある場合は、領収書等で確認し、最終的に実際の負担額に合わせて補正するのが安全です。
医療費控除で高額療養費や保険給付はどこで差し引きますか?
「補てんされる金額」として差し引きます。差し引きは「目的となった医療費を限度」とし、引ききれない分を他の医療費から差し引くことはしません。
医療費控除で家族分は合算できますか?誰が申告するのが有利ですか?
納税者が、生計を一にする配偶者・親族のために支払った医療費なら合算対象になり得ます。誰が申告すると有利かは税率や他の控除で変わるため、試算して比較するのが確実です。
医療費控除で通院交通費は含められますか?
通院に必要な交通費は対象になり得ますが、医療費通知には載らないため、別途記録して集計する必要があります。
医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらが得ですか?
同一年で併用できない前提で、どちらが有利かを試算して選ぶ形になります。医療費控除は「支払額-補てん-10万円等」を起点に、セルフメディケーション税制は対象医薬品の購入額等を起点に比較するのが基本です。
医療費控除の要点と次の行動
「総額と支払額どっち問題」は、原則として実際に支払った医療費(自己負担等)が基準です。
医療費通知と領収書に差があれば、差の理由を把握し、必要に応じて領収書で補正して「実際の負担額」に合わせます。
補てん金額は差し引きますが、目的となった医療費が上限で、上回り分を他の医療費から差し引かない点が重要です。
次の行動としては、(1)当年中に支払った自己負担額の集計、(2)補てん金額の整理、(3)医療費通知利用か領収書集計かの方針決定、(4)e-Tax入力と補正、の順に進めると、迷いを最小化しながら申告を完了できます。