「iPadをWindowsのサブディスプレイにできたら、作業がもっとはかどるのに…」そう思いながらも、具体的なやり方が分からずそのまま放置していないでしょうか。
無料アプリだけで本当に快適に使えるの?
有線接続と無線接続、どっちを選べばいい?
会社PCでも問題なく使える現実的な方法は?
といった疑問や不安があると、「あとで調べよう」と思いつつ、なかなか一歩を踏み出しにくいものです。
そこで本記事では、iPadをWindowsのサブディスプレイにする方法を、初心者でも再現しやすい手順で解説します。
読後には、「どのアプリを選び、どうつなげばいいか」がはっきりイメージでき、iPadを使って自宅でも仕事場でも快適なマルチディスプレイ環境を作れるようになるはずです。
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アプリ・ドライバなしでの実現は基本的に難しく、何らかの専用ツールが必要
無料で手軽に始めるなら spacedesk(無線)
安定性・低遅延・描画用途まで考えるなら Duet Display(有線)
Windowsのディスプレイ設定や縦画面活用で、作業効率はさらに向上
社内ルールやセキュリティ要件は事前に確認し、現実的な運用方法を選ぶ
お手元の環境や予算、用途に合わせて、まずは一番ハードルの低い方法から試してみてください。
まず知っておきたい「iPad × Windowsサブディスプレイ」の基本
SidecarはWindowsでは使えない?前提となる仕組み
よくある誤解の一つが、「MacだとSidecarでiPadをサブディスプレイにできるから、Windowsでも同じようにできるのでは?」というものです。
Apple純正のSidecar機能は、macOSとiPadOSの組み合わせでのみ動作する機能であり、Windowsは公式にはサポートされていません。
したがって、Windows PCからSidecarを使ってiPadをサブディスプレイ化することはできません。
Windows環境では、後述するspacedeskやDuet Displayなどの専用アプリを利用するのが基本的なアプローチとなります。
iPadは映像入力端子を持たない──なぜHDMIケーブルだけでは映らないのか
もう一つの誤解が、「iPadにHDMI変換アダプタをつなげば、PCの映像を映せるのでは?」というものです。
しかし実際には、iPadのUSB-C端子やLightning端子は映像の「出力」側として設計されており、一般的な外付けモニターのように映像の「入力」を受け取ることはできません。
そのため、PCからHDMIケーブルを直接接続しても、iPadが外部ディスプレイとして認識されることはありません。ここを勘違いしていると、ケーブルや変換アダプタを買い足しても期待した結果にならず、無駄な出費になってしまいます。
アプリ・ドライバが必要になる理由
WindowsでiPadをサブディスプレイ化する方法の多くは、
Windows側に専用ドライバやソフトを入れて、映像をネットワークやUSB経由で「擬似ディスプレイ」として出力する
iPad側のアプリがその映像を受け取り、画面に表示する
という仕組みで動いています。
このため、「アプリなしで」「インストール不要で」iPadをWindowsサブディスプレイにする、というのは基本的には現実的ではありません。
どこかのタイミングで、PC側・iPad側のどちらか、もしくは両方に専用ソフトを入れる必要があると考えてください。
代表的な方法① 無料アプリ「spacedesk」で無線サブディスプレイ化
まずは、無料で試したい方に適した「spacedesk」というアプリを使った方法です。
spacedeskの特徴(メリット・デメリット)
メリット
無料で利用できる(Windows側ドライバ、iPadアプリともに無料)
同一ネットワーク内の複数デバイスをサブディスプレイ化できる
インストールと接続手順が比較的シンプル
デメリット
無線接続が前提のため、Wi-Fi環境に性能が大きく左右される
動きの激しい動画やゲーム、描画用途では遅延を感じる場合がある
会社のネットワーク環境によっては接続が制限されることがある
事前準備(対応OS・ネットワーク環境の確認)
spacedeskを利用する前に、以下を確認してください。
Windows PC
対応OS:Windows 7以降(推奨はWindows 10/11)
管理者権限:ドライバインストールが許可されていること
iPad
iPadOSを搭載し、App Storeからアプリのインストールが可能であること
ネットワーク
PCとiPadが同じWi-Fi(同一ネットワーク)に接続されていること
できれば5GHz帯のWi-Fiや、PCの有線LAN接続が望ましい
Windows側のインストールと設定手順
spacedeskの公式サイトにアクセスし、Windows用ドライバをダウンロードします。
ダウンロードしたインストーラーを実行し、画面の指示に従ってインストールします。
インストール完了後、PCを再起動します。
再起動後、タスクトレイにspacedeskのアイコンが表示されていれば準備完了です。
Windowsの「設定」→「システム」→「ディスプレイ」を開き、後で拡張ディスプレイとして認識されることを確認します(接続後に設定します)。
iPad側アプリの設定と接続方法
iPadでApp Storeを開き、「spacedesk」で検索します。
検索結果から「spacedesk」をインストールします。
インストール後、アプリを起動すると、同じネットワーク上にあるspacedeskサーバー(Windows PC)が一覧表示されます。
接続したいPCをタップすると、数秒ほどでiPadにWindowsの画面が表示されます。
必要に応じて、Windows側のディスプレイ設定で「拡張」「複製」や解像度、配置位置を調整します。
快適に使うためのWi-Fi設定と画質・解像度の調整ポイント
可能であれば、PCは有線LAN接続、iPadは5GHz帯のWi-Fiに接続する
ルーターとPC・iPadの距離を近づけ、障害物を減らす
spacedesk側の設定で解像度や画質を少し下げると、遅延やカクつきが改善する場合がある
Windowsの「ディスプレイ設定」で、サブディスプレイ側の解像度を適切な値に調整し、文字がにじまないようにする
代表的な方法② 有線接続対応「Duet Display」で低遅延サブディスプレイ化
次に、有料でもよいので安定性と低遅延を重視したい方に向いているのが、Duet Displayです。
Duet Displayの特徴と料金体系のイメージ
Duet Displayは、元Appleエンジニアが開発したサブディスプレイアプリで、iPadやiPhoneを外部ディスプレイとして活用できます。
主な特徴は以下のとおりです。
Windows・Macの両方に対応
有線(USBケーブル)接続に対応し、無線接続も利用可能
低遅延かつ高画質で、テキストはもちろん動画・描画用途にも向く
Apple Pencilに対応した「Pro」機能も提供
料金はサブスクリプション形式で、プランによって機能が異なりますが、「まず低遅延のサブディスプレイとして使いたい」という用途であれば、スタンダードプランで十分なケースが多いです。
有線接続のメリット(遅延・安定性・画質)
有線接続には、無線接続と比較して以下のメリットがあります。
通信が安定しており、遅延が小さい
Wi-Fi環境に依存しにくく、業務用ネットワークでも比較的利用しやすい
高解像度・高リフレッシュレートでも画面が滑らかに表示されやすい
特に、
プレゼン資料を頻繁に切り替える
動画編集やアニメーションを伴う作業を行う
Apple Pencilでの描画を行う
といった用途では、有線接続のメリットが大きくなります。
Windows側クライアントの導入手順
Duet Displayの公式サイトにアクセスします。
「ダウンロード」からWindows用クライアントソフトをダウンロードします。
インストーラーを実行し、画面の指示に従ってインストールします。
必要に応じてPCを再起動し、タスクトレイまたはスタートメニューからDuetを起動します。
iPadアプリの初期設定と接続
iPadでApp Storeを開き、「Duet Display」を検索してインストールします。
アプリを起動すると待機画面が表示されます。
iPadとWindows PCを、純正または品質の高いUSBケーブルで接続します。
数秒〜十数秒ほどで、iPad側にWindows画面が拡張ディスプレイとして表示されます。
Windowsのディスプレイ設定で、解像度や配置、スケーリングを調整して最適な表示にします。
Apple Pencilやクリエイティブ用途で使う場合のポイント
Duet Displayの上位プラン(Duet Proなど)では、Apple Pencilの筆圧・傾き・ホバーなどがサポートされ、液タブに近い感覚で利用できます。
PhotoshopやIllustratorなどのグラフィックソフトと組み合わせる場合は、描画遅延や筆圧検知の挙動を事前に確認しておくと安心です。
長時間の描画作業では、iPadの発熱・バッテリー消費が増えるため、電源接続しながら利用することをおすすめします。
どの方法を選ぶべきか?用途別おすすめパターン
ここまでご紹介した内容を踏まえ、代表的な用途別におすすめ構成をまとめます。
テキスト作業中心(メール・チャット・ブラウザ)の場合
優先したいポイント:低コスト・手軽さ
おすすめ:spacedesk(無線接続)
メールやチャットアプリ、ブラウザをiPad側に常時表示しておくだけであれば、多少の遅延があっても実用上は問題ないケースが多いです。無料で始めたい場合は、まずspacedeskを試してみるとよいでしょう。
動画視聴・オンライン会議を快適にしたい場合
優先したいポイント:映像の安定性・音声の途切れにくさ
おすすめ:
自宅であれば spacedesk+5GHz Wi-Fi+有線LAN
より確実さを求めるなら Duet Display(有線接続)
ZoomやTeamsなどの会議画面をサブディスプレイに出しておくと作業効率が上がりますが、映像がカクつくとストレスになります。Wi-Fi環境が不安な場合は、Duet Displayによる有線接続を検討してください。
イラスト・デザインなどペン入力を重視する場合
優先したいポイント:遅延の少なさ・筆圧への追従性
おすすめ:Duet Display(有線接続)+上位プラン(Duet Proなど)
Apple Pencilを本格的に活用したい場合は、有線接続とペン対応に最適化された環境が前提となります。無料ツールでも試すことはできますが、仕事として使うレベルであれば、有料のDuet系を検討する価値は十分あります。
会社PCでインストール制限がある場合の現実的な選択肢
まずは以下を確認してください。
管理者権限の有無
サードパーティ製ソフトウェアのインストールポリシー
社内ネットワークでの外部通信に関する制限
そのうえで、
社内PCに一切インストールできない場合
純粋なサブディスプレイ化は難しく、リモートデスクトップやWeb会議経由など別の手段を検討する必要があります。
インストールは申請次第で可能な場合
利用目的と安全性を説明し、spacedeskやDuetの導入を申請
無線接続が禁止されている場合は、有線接続のみで運用できるDuet Displayの方が社内承認を得やすいケースもあります
さらに快適にするための設定・レイアウトのコツ
Windowsのディスプレイ設定で「拡張」「複製」を切り替える
iPadをサブディスプレイとして認識したら、Windows側で以下の設定を行います。
デスクトップで右クリック →「ディスプレイ設定」を開く
「複数のディスプレイ」で
「表示画面を拡張する」:作業領域を広げたい場合
「表示画面を複製する」:プレゼン資料を同じ画面で見たい場合
を選択します。
ディスプレイの配置図をドラッグして、実際の物理配置に合わせて並び順を調整します。
縦画面でiPadを使うと便利なシーンと設定方法
iPadは、縦画面でも快適に利用できるのが大きな利点です。
縦画面が便利なシーン
チャットやメール、Slack・Teamsのタイムライン表示
WebページやPDF資料の縦スクロール閲覧
縦長のToDoリストやカンバンボードの表示
設定方法(例)
iPadを縦向きに設置する
Windowsの「ディスプレイ設定」で、該当ディスプレイを選択し「向き」を「縦」に変更
必要に応じて、拡大率(スケーリング)を調整して文字サイズを最適化
スタンド・ケーブル・ハブなど周辺機器の選び方
スタンド
角度調整ができ、縦・横どちらでも安定して置けるものを選ぶ
長時間視線を向ける位置に設置できる高さのものが理想的
ケーブル(Duet Displayなど有線利用時)
純正ケーブル、もしくは信頼できるメーカーのMFi認証(Lightning)のもの
長さは0.5〜1.5m程度が取り回しやすい
ハブ・ドック
USB-Cポート不足を解消したい場合は、電源供給(PD対応)とUSB-Aポートを兼ね備えたハブを選ぶ
バッテリー消費と発熱を抑えるための工夫
画面の明るさを必要最低限まで下げる
不要なアプリを終了させ、バックグラウンド通信を抑える
長時間使用する場合は、充電しながら利用する
発熱が気になる場合は、スタンドで机との隙間を作り、風通しを良くする
よくあるトラブルとチェックリスト
接続できない・iPadが認識されないとき
PCとiPadが同じネットワーク(同じWi-Fi)に接続されているか
Windows側のファイアウォールやセキュリティソフトでブロックされていないか
spacedeskやDuetのサービスが実行中になっているか
ケーブル接続の場合、ケーブルやポートの不良がないか
動作が重い・遅延が大きいとき
2.4GHzではなく5GHz帯のWi-Fiに接続できるか確認
PC側で重いアプリケーションを多重起動していないか
spacedeskやDuetの設定で解像度・品質を一段階下げてみる
可能であれば、無線から有線接続(Duet Display)への切り替えを検討
画質が粗い・文字がにじんで見えるとき
Windowsのディスプレイ設定で、サブディスプレイの解像度がiPadの解像度に近い値になっているか
スケーリング(拡大率)が大きすぎないか(125〜150%程度を目安に調整)
アプリ側の画質設定が低画質モードになっていないか
社内ルールやセキュリティが気になる場合の確認ポイント
利用予定のアプリが社内規定で許可されているか(ソフトウェア導入ポリシーの確認)
データがどの範囲まで外部へ転送されるのか(社外クラウドを経由するかどうか)
端末紛失時のリスクをどう管理するか(リモートワイプやパスコードロックなど)